解衣推食
(かいいすいしょく)

 自分の着物を着せてあげたり、自分の食べ物を人に食べさせたりするように人に厚い恩恵を施すことをいう。

飼い犬に手を噛まれる
(かいいぬにてをかまれる)

 日ごろからかわいがっていた身内の者や部下に裏切られて、ひどい害を受けること。

類語: 「恩を仇で報じる」、「庇を貸して母屋を取られる

改易蟄居
(かいえきちっきょ)

 武士の家禄を没収して士籍から除く刑罰と、表門を閉めさせ一室で謹慎させる刑。

海翁好鴎
(かいおうこうおう)

 野心があると鳥もそれを察して近寄らない。野心を人に知られては折角の目的も達成しにくいというたとえ。

海外奇談
(かいがいきだん)

 だれも行ったことのない外国の話は何とでも言えるし自慢もできる。なんの根拠もないでたらめな話。

改過自新
(かいかじしん)

 自分のミスは素直に認め面目を一新すること。

貝殻で海を量る
(かいがらでうみをはかる)

 貝殻で海の水を汲んで、海水の量を量る。狭い料簡や浅薄な知識で大きな問題を論じる例え。

類語: 「管をって天をうかが

蓋棺事定
(がいかんじてい)

 生前の評価は当てにならない。一生が終わり棺のふたをして初めてその人の真の値打ちが決まるということ。

外寛内明
(がいかんないめい)

 外部に対しては寛大に接し、自分自身はよく省みて明晰めいせきに己を知り、身を慎むということ。

開巻有益
(かいかんゆうえき)

 本を開けば必ず得るところがある。読書は有益であるということ。

戒驕戒躁
(かいきょうかいそう)

 驕らず焦らず騒がず、慎んで静かに堅実にやりなさいということ。

会稽の恥
(かいけいのはじ)

 戦いに大敗した恥辱のこと。また、以前に受けた手ひどい屈辱のこと。春秋時代、越王えつおう勾践こうせんが会稽山の戦いで呉王夫差ふさに敗れ、降伏したという、『史記・越王勾践世家』に見える故事。

改弦易轍
(かいげんえきてつ)

 弦を取り替え、車の道を改める。方針、やり方、態度などを改変するたとえ。

開眼供養
(かいげんくよう)

 新しく仏像・仏画が出来上がって安置する時行う仏眼を開く儀式法要。この供養を経て魂が入るとされている。

開源節流
(かいげんせつりゅう)

 財源を開拓して流出を節約する。収入を増やして支出を抑える健全財政のたとえ。

開口一番
(かいこういちばん)

 口を開くとまず最初に。話を始めるやいなや。

解甲帰田
(かいこうきでん)

 武装を解いて田舎に帰ること。除隊して帰郷し、平和な暮らしに戻るたとえ。

外交辞令
(がいこうじれい)

 交渉をなごやかに進めるための外交上の応対話。口先だけのお世辞、社交辞令。リップサービス。

邂逅相遇
(かいこうそうぐう)

 偶然の出会い。思いがけずひょっこりと巡り合うこと。

回光返照
(かいこうへんしょう)

 夕日の照り返し。日没直前に一時空が明るくなること。転じて、亡びる寸前に一時的に勢いを出すこと。

骸骨を乞う
(がいこつをこう)

 主君に辞職を願い出ること。昔、中国では、臣下が君主に仕えるのは自分の身を捧げるということだった。だから、老臣が辞職を願い出るときには、せめて不要になった骸骨同然の体をお返しいただきたいと言ったことから。

同意語: 「がいを乞う」

解語の花
(かいごのはな)

 ことばを解する花。すなわち、美人のこと。元来は、楊貴妃のたとえ。

類語: 「物言う花

開山祖師
(かいざんそし)

 寺院を開いた開祖。転じて、ある物事を初めて行った先覚者、草分け、創始者のこと。

回山倒海
(かいざんとうかい)

 山を引き回し、海をひっくり返すほどさかんな勢いをいう。

海市蜃楼
(かいししんろう)

 蜃気楼。転じて、虚しいもののたとえ。空中楼閣、まぼろしの意。

改邪帰正
(かいじゃきせい)

 悪事から足を洗って、正道に立ち返ること。

鎧袖一触
(がいしゅういっしょく)

 鎧の袖でちょっと触れるほどのわずかな力で、あっさりと敵を打ち負かすこと。

外柔内剛
(がいじゅうないごう)

 表面は柔和で穏やかそうに見えるが、実は、意志が強くてしっかりしていること。

開心見誠
(かいしんけんせい)

 胸襟を開いて真心を示すこと。心を開いて誠をあらわす。

回心転意
(かいしんてんい)

 思い直して態度を改める。考え直し翻意すること。

海誓山盟
(かいせいさんめい)

 愛情が海や山のようにいつまでも変わらないことを誓う言葉。固く愛を誓うこと。

蓋世の気
(がいせいのき)

 世を覆い尽くし、圧倒するほどの盛んな意気。雄大な気性や才能を言う。中国、しんの時代の末期、項羽こううが作った詩の一句「力抜山兮気蓋世」(力は山を抜き、気は世をおおう)による。

開宗明義
(かいそうめいぎ)

 巻頭において全書の主旨を明らかにする。談話や文章の冒頭で大要を述べること。

咳唾成珠
(がいだせいじゅ)

 ⇒「咳唾珠を成す

咳唾珠を成す
(がいだたまをなす)

 何気なく口をついて出ることばでさえ、珠玉のような名言となるの意から、詩文の才能が極めて豊かであることを言う。

同意語: 「咳唾がいだ自ら珠を成す」、「咳唾成珠」

街談巷説
(がいだんこうせつ)

 世間のつまらない噂。風聞。

怪誕不経
(かいたんふけい)

 言動がでたらめで、あやしくて信用できない。筋道が通らず根拠がないこと。

海底撈月
(かいていろうげつ)

 海に映った月を見て本物と思い、海底から月をすくい取ろうとする。無駄なことをするたとえ。

改天換地
(かいてんかんち)

 大改造すること。自然環境(天)や社会(地)を徹底的に改変すること。一種の革命。

改頭換面
(かいとうかんめん)

 表面だけを改めて、内容の変わらないこと。頭を取り替え、面を付け替えても中身は同じということ。転じて、似たりよったりの意。

快刀乱麻
(かいとうらんま)

 ⇒「快刀乱麻を断つ

快刀乱麻を断つ
(かいとうらんまをたつ)

 紛糾した物事をきっぱりと見事に処理すること。もつれた麻を、よく切れる刀でばっさりと断ち切る意から言う。

同意語: 「快刀乱麻」

快馬加鞭
(かいばかべん)

 疾走する馬にむちを加える。速い上にも速くする。一層スピードアップすること。

櫂は三年艪は三月
(かいはさんねんろはみつき)

 櫂を使いこなすのは、艪を漕ぐよりもずっと難しいということ。水中に差し入れて水を掻きながら船を進める櫂は、一見たやすく操れそうだが、柄に綱をかけ艪杭ろぐいを支えにして漕ぐ艪よりもこつの習得に時間がかかる。

同意語: 「さおは三年艪は三月」

開物成務
(かいぶつせいむ)

 色々なことを開発し、事業を成し遂げること。

懐宝夜行
(かいほうやこう)

 宝をいだいて夜行く。危険な行動のたとえ。

開門揖盗
(かいもんゆうとう)

 自ら災いを招くこと。自分で門を開いて盗賊を迎え入れること。

隗より始めよ
(かいよりはじめよ)

 遠大な事業をおこすなら、まず身近なところから始めよということ。また、何事もまず言い出した者から始めよということ。戦国時代、えん昭王しょうおうに「どうしたら賢者を招くことができるか」と尋ねられた郭隗かくかいが、「まず自分のような二流の人物を優遇することから始められよ。そうすれば一流の人物はおのずから集まるだろう」と答えたという『戦国策・燕策』の故事から。

類語: 「死馬しばの骨を買う

怪力乱神
(かいりょくらんしん)

 ⇒「怪力乱神を語らず

怪力乱神を語らず
(かいりょくらんしんをかたらず)

 君子は人知では計り知れない神秘や不可思議な現象については語らないものだ。「怪」は怪しげな異変、「力」は尋常ではない勇気、「乱」は世の中を乱す非道、「神」は神秘的な現象。

同意語: 「怪力乱神」

偕老同穴
(かいろうどうけつ)

 夫婦が共に老いるまで、仲むつまじく連れ添うこと。生きているときな老いをともにし、死んでからは同じ墓の穴に葬られるの意で、『詩経・王風』などに基づく。

同意語: 「洞穴の契り」、「偕老の契り」、「偕老同穴の契り」
類語: 「お前百までわしゃ九十九まで

夏雲奇峰
(かうんきほう)

 詩人の陶淵明が四季をうたった詩の夏の句。夏は入道雲が現れて空に珍しい形の峰を描く。

替え着無しの晴れ着無し
(かえぎなしのはれぎなし)

 いつも良い着物を着ているが、それ一張羅で着替えがないということ。着替えがないから、いつかはそれもぼろとなる。

同意語: 「常上着じょうじょうぎの晴れ着なし」
類語: 「着たきり雀」

帰りがけの駄賃
(かえりがけのだちん)

 ⇒「行き掛けの駄賃

顧みて他を言う
(かえりみてたをいう)

 返答に詰まって、さりげなく話題を変えてごまかすこと。

同意語: 「左右を顧みて他を言う」

蛙の子は蛙
(かえるのこはかえる)

 何かにつけ子は親に似るものだ。結局、子は親の進んだ道をたどるものだ。凡人の子はやはり凡人に過ぎない。とても蛙の子とは思えないおたまじゃくしだが、成長すればやはり蛙になるの意から。

同意語: 「蛙の子は蛙の子」
類語: 「この親にしてこの子あり」、「瓜の蔓に茄子は生らぬ
反意語: 「鳶が鷹を生む

蛙の面に水
(かえるのつらにみず)

 どんな仕打ちを受けても平気なようす。蛙は顔に水をかけられても平然としていることから、注意されようが一向に動じない厚かましさを言う。

同意語: 「蛙の面に小便」
類語: 「アヒルの背に水をかける」、「牛の角を蜂が刺す」、「馬の耳に念仏

顔が売れる
(かおがうれる)

 広く世間に知られる。

顔が利く
(かおがきく)

 威力があって無理が通せる。

顔が広い
(かおがひろい)

 付き合いが広い。

顔から火が出る
(かおからひがでる)

 恥じて顔が真っ赤になる。

顔に泥を塗る
(かおにどろをぬる)

 相手の体面を汚す。

顔を貸す
(かおをかす)

 頼まれて付き合う

顔を潰す
(かおをつぶす)

 名誉を傷つける。

河海は細流を択ばず
(かかいはさいりゅうをえらばず)

 大人物は度量が広いから、すべての人を受け入れるということ。また、どんな人とでも付き合うようでなくては、大人物にはなれないということ。「河」は黄河を指し、黄河も海も、あらゆる水流を分け隔てなく受け入れるからこそ深く水を湛えることができるということから。

類語: 「泰山は土壌を譲らず」、「大海は芥を択ばず」、「大海は塵を択ばず」

下学上達
(かがくじょうたつ)

 まず手近なところから学び、次第に深遠な学問の道に至ること。孔子は、『論語・憲問』で「下学して上達す、我を知るは其れ天か」と言う。学びつつ人生を全うする生涯学習の理念もここにある。

同意語: 「下学して上達す」
類語: 「学問に王道無し

呵々大笑
(かかたいしょう)

 声高く大いに笑うこと。

瓜葛の親
(かかつのしん)

 親戚の縁につながること。うりくずはともにつる草の一種。つる草はその枝葉が互いにまといつくことから縁続きのたとえとなった。

柿の皮は乞食に剥かせ瓜の皮は大名に剥かせよ
(かきのかわはこじきにむかせうりのかわはだいみょうにむかせよ)

 柿の皮は薄く剥いた方がいいから卑しい乞食に剥かせ、瓜の皮は厚く剥いた方がいいから鷹揚な大名に剥かせるのがよい。果実の皮の剥き方の適否について言ったもの。

同意語: 「瓜の皮は大名に剥かせよ柿の皮は乞食に剥かせよ」
類語: 「魚は殿様に焼かせよ

餓鬼の目に水見えず
(がきのめにみずみえず)

 欲しい欲しいと熱望すればするほど、かえって求めるものを見失うということ。また、熱中のあまり肝心なものを見落とすこと。「餓鬼」は生前の悪業のために地獄に落ちた亡者。いつもひどい飢えと渇きに苦しんでいるが、だからこそ傍らに水があっても気がつかない。

類語: 「魚の目に水見えず人の目に空見えず」、「青い鳥

餓鬼も人数
(がきもにんず)

 つまらない者でも、人数に加えれば多少の役に立つということ。また、取るに足らない子供でも、数多く集まれば侮りがたい力をもつということ。「餓鬼」は地獄に落ちた亡者だが、いつも腹をすかせている点で、子供の卑称にも用いる。

類語: 「枯れ木も山の賑わい

蝸牛角上
(かぎゅうかくじょう)

 ⇒「蝸牛角上の争い

蝸牛角上の争い
(かぎゅうかくじょうのあらそい)

 ささいな、つまらない争い。また、取るに足らない枝葉末節の議論。「蝸牛」はかたつむり。蝸牛の左の角を領土とする触氏と右の角を領土とする蛮氏とが争い、死者数万人に及んだという寓話が『荘子・則陽』に見える。広大無辺の宇宙に比べ、人間世界の微小であることのたとえにも使う。

同意語: 「蝸牛の角の争い」、「蝸牛の争い」、「蝸牛角上」

家給人足
(かきゅうじんそく)

 世の中が繁盛しているたとえ。どの家も富んでいて人々もその生活に満足しているさま。

火牛の計
(かぎゅうのけい)

 夜陰に乗じて牛の角に剣を結び、尾につけた葦の束を燃やして敵陣に放つという奇策。中国の戦国時代、せい田単でんたんはこの奇計を用いてえんの軍勢を打ち破ったという。

科挙圧巻
(かきょあっかん)

 試験で最優秀の成績を収めること。

隔岸観火
(かくがんかんか)

 対岸の火事を眺めるさま。他人の危難を自分には無関係なこととして傍観すること。

革故鼎新
(かくこていしん)

 旧来の古いしきたりを改め、新しいものに変えること。

各自為政
(かくじいせい)

 それぞれが勝手に事を処理する。大局を顧みないで、自分勝手に振る舞うこと。

学者の取った天下なし
(がくしゃのとったてんかなし)

 学者は学問の上では天下国家を論じるが、実際に国を治めた例はないということ。学者は理論には長けていても、現実問題には疎いことを言う。

学者貧乏
(がくしゃびんぼう)

 学者は金儲けが下手で、その生活は貧しいということ。高遠な理論を説く学者も、営利や蓄財には不得手であることを言う。

類語: 「医者寒からず儒者寒し」、「学者と色男に富めるは少なし」、「学者と役者は貧乏」、「軍者ひだるし儒者寒し」

鶴寿千歳
(かくじゅせんざい)

 鶴の寿命は千年といわれることから、長寿、長生きのこと。

隠すより現る
(かくすよりあらわる)

 隠そうとすれば、かえって事は漏れやすいということ。隠そうとするやましさから言動は不自然となり、かえって秘密が知れやすくなる。

同意語: 「隠すことは現る」、「隠すことほど現る」、「隠すほどに知れる」、「隠せばいよいよ知れる」
類語: 「隠れたるより見わるるは莫し」、「思い内にあれば色外に現る

廓然大公
(かくぜんたいこう)

 さっぱりとして物事にこだわらず、公平なこと。廓は「くるわ」の意から、がらんと中空になった広いさまをいう。

鶴髪童顔
(かくはつどうがん)

 鶴のように白い髪と子供のように赤味を帯びた顔色。老人の血色のよい顔の形容。

格物致知
(かくぶつちち)

 物事の本質を究め、知見を深めること。朱子学では「物にいたり、知をいたす」と読み、物の道理を究め尽くして後天的な知力を磨き上げることを言う。陽明学では「物をただし、知をいたす」と読み、事物の非を正して先天的な知力を磨き上げることを言う。

各奔前程
(かくほんぜんてい)

 それぞれが自分の道を行く。自分の志望に添った道を選んで進むこと。

鶴鳴の士
(かくめいのし)

 多くの人から信頼される人物。また、登用されずに冷遇されている賢人のたとえ。

学問に王道無し
(がくもんにおうどうなし)

 学問には安直に習得できるような近道はない。エウクレイデス(英語名、ユークリッド)から幾何学を学んでいたエジプト王プトレマイオス(英語名、トレミー)一世が、「もっと簡単に学ぶ方法はないのか」と尋ねると、エウクレイデスは即座に「幾何学に王道なし」と答えたという故事に基づく。

類語: 「下学上達

楽屋から火を出す
(がくやからひをだす)

 みずから災いを引き起こすこと。内部から騒動が持ち上がること。「楽屋」は劇場の舞台裏に設けた部屋。そこで役者が出演の準備をしたり休息をしたりすることから、物事の内幕、内情のたとえに使う。

鶴立企佇
(かくりつきちょ)

 鶴が立つように、つま先立って待ち望むさま。

隠れたるより見わるるは莫し
(かくれたるよりあらわるるはなし)

 秘密は世間に知れやすいということ。また、どんなに隠しても心中の思いは顔色に表れやすいということ。『中庸』に「隠れたるより見わるるは莫く、微かなるより顕るるは莫し」とあるのによる。隠れて悪事を行い、誰も知るものはないと思っても、自分が知っている限り隠しおおせるものではない。

類語: 「隠すより現る

学を好むは知に近し
(がくをこのむはちにちかし)

 学問を好む人は、知識を蓄積してやがては真の知者に近づくことができるということ。

駕軽就熟
(がけいしゅうじゅく)

 軽い車を駆って慣れた道を行く。慣れた仕事なので苦もなくやってのけること。「駕」は馬や牛に引かせる乗り物、乗り物に乗っていく、使いこなす、あやつる意。

家鶏野雉
(かけいやち)

 大事なものを嫌い、役に立たないものを好むこと。自分の家で飼っている鶏を嫌って野鳥の雉を珍重すること。

駆け馬に鞭
(かけうまにむち)

 疾駆している馬にさらに鞭を加える。勢いのついているものにさらに力を加えて、いっそう勢いづける例え。

類語: 「火に油を注ぐ」

駆けつけ三杯
(かけつけさんばい)

 酒席に遅れてきた者に、罰として酒を立て続けに三杯飲ませること。「駆けつけ」は助太刀のために駆けつけることから転じて、助太刀の意。もとは下戸に代わって杯を受ける者は、続けて三杯飲み干さなくてはならないという意であったという。

同意語: 「遅れ三杯」

陰に居て枝を折る
(かげにいてえだをおる)

 恩を仇で返すこと。恩人には見えない所で、その庭木の枝を折るの意から言う。

類語: 「恩を仇で返す

影の形に随うが如し
(かげのかたちにしたがうがごとし)

 影が実体について離れないように、いつもそばにつきそっている様子。

同意語: 「影の形に添う如し」
類語: 「形影相伴う」

影を畏れ迹を悪む
(かげをおそれあとをにくむ)

 心静かに反省することを忘れていると、いたずらに外物に煩わされるばかりで、いっときとして心の休まるときはないということ。自分の影におびえては走り出し、足跡が地につくことを恐れてはしきりに足を上げ下げする男がいた。日陰に入れば影は消え、動かなければ足跡がつくこともないのだが、それだけの思慮がないために、男は疲れ果てて死んでしまったという、『荘子・漁夫』の寓話に基づく。

花言巧語
(かげんこうご)

 口先だけのうまい言葉、美辞麗句。花のように美しく飾って言い、巧みに語ること。

夏侯妓衣
(かこうぎい)

 すだれの異称。夏侯という人は晩年になって音楽を好み、回りに多くの妓衣芸者がいたが、いずれも衣服の装いがなく、客にすだれを隔てて奏楽させたという故事による。

仮公済私
(かこうさいし)

 公事にかこつけて私腹を肥やすこと。公私混同して自分の利益を図るたとえ。

画工闘牛の尾を誤りて牧童に笑わる
(がこうとうぎゅうのおをあやまりてぼくどうにわらわる)

 絵描きでも、実物をよく見て描かないと思わぬ失敗をするということ。また、たとえ相手が無学であっても、専門家の意見には素直に耳を傾けなくてはならないということ。尾を振り上げて戦う闘牛の絵を秘蔵する人がいたが、それを見た牧童が、牛は尾を股の間に挟んで戦うものだと笑ったという、そう蘇軾そしょくの『戴嵩たいすうの画牛に書す』に基づく故事による。

駕籠舁き駕籠に乗らず
(かごかきかごにのらず)

 所有者はそれを人のために用いるばかりで、自分のためには使わないということ。駕籠かごきは人を駕籠に乗せて稼ぐのに忙しいの意から、人のために尽くすばかりで、自分のことには手が回らないことのたとえにも使う。

類語: 「紺屋こうやの白袴」、「鍛冶屋の竹火箸」、「髪結いの乱れ髪」、「餅屋餅食わず」

籠で水を汲む
(かごでみずをくむ)

 いくら苦労しても、一向に効果がないこと。籠で水を汲んでも、汲むそばから水は下に漏れてしまう。手段を誤れば、何事も徒労に終わることの教訓ともする。

同意語: 「味噌こしで水をすくう」、「ざるで水を汲む」、「ざるに水」、「かごで水汲み」
類語: 「灰で縄をなう」

駕籠に乗る人担ぐ人そのまた草鞋を作る人
(かごにのるひとかつぐひとそのまたわらじをつくるひと)

 世間には、さまざまな境遇の人がいるものだということ。

画虎類狗
(がこるいく)

 描画の才能のない者が、虎を描いても犬のようになってしまう。手本を真似るつもりでも似て非なるものになってしまうたとえ。

傘と提灯は戻らぬつもりで貸せ
(かさとちょうちんはもどらぬつもりでかせ)

 傘も提灯もともに必要な物だが、一時だけのもの。借りてもつい忘れがちなので、戻ってこないことが多いからそのつもりでいろということ。

火事あとの釘拾い
(かじあとのくぎひろい)

 大事な家を火事で焼いた後で釘を拾って歩いてもどうにもならない。大損をした後でちまちまと倹約しても、何の足しにもならない例え。

火事後の火の用心
(かじあとのひのようじん)

 時期を逸して、間に合わないこと。焼けてから火の用心を心がけても手遅れだ意から言う。

同意語: 「焼けた後の火の用心」
類語: 「取られた後の戸の締まり」、「生まれた後の早め薬」、「葬礼過ぎて医者話」

加持祈祷
(かじきとう)

 仏の力とその加護を祈念すること。加持は仏が不可思議な力をもって衆生を護る意。祈祷は、祈り、またはその儀式の作法をいう。護摩を焚いたりして、仏に感応するために行う祈り。

花枝招展
(かししょうてん)

 花の枝が風に揺れ動く、はなやかなさま。転じて、女性が着飾って歩くさま。

和氏の璧
(かしのたま)

 昔、中国にあったという名玉の名。転じて、素晴らしい宝玉。貴重な宝。「和氏のへき」とも読む。

同意語: 「連城の璧」
類語: 「完璧

禍従口生
(かしょうこうせい)

 わざわいは口より生ず。言葉遣いにはよく注意しなさいというたとえ。

火上注油
(かじょうちゅうゆ)

 火に油を注ぎ、事態をますます悪化させること。

華胥の国
(かしょのくに)

 古代中国の伝説上の帝王である黄帝が午睡の夢に見たという理想郷。

華胥の国に遊ぶ
(かしょのくににあそぶ)

 よい気持ちで昼寝をすること。

華胥の国の夢
(かしょのくにのゆめ)

 よい夢の意。

同意語: 「華胥の夢

華胥の夢
(かしょのゆめ)

 よい夢を見ること。また昼寝をすることのたとえ。

同意語: 「華胥の国の夢

家書万金
(かしょばんきん)

 ⇒「家書万金にあた

家書万金に抵る
(かしょばんきんにあたる)

 旅先で受け取る家人からの便りは、万金にも相当するほどの値打ちがある。

同意語: 「家書万金」

臥薪嘗胆
(がしんしょうたん)

 仇を討つために、また大きな目的を果たすために、長い間の試練に耐え、辛苦すること。

雅人深致
(がじんしんち)

 俗世間を超越した高尚な心の風流人が持つ、深いおもむきをいう。みやびやかで上品なさま。

歌人は居ながらにして名所を知る
(かじんはいながらにしてめいしょをしる)

 歌よみは、名所を讃えた古い歌を知っているので、自分では訪れたこともない名所のことをよく知っているということ。

佳人薄命
(かじんはくめい)

 美人はとかく薄幸であったり、短命であったりするものだ。美人は生来病弱であったり、その美しさゆえに数奇な運命にもてあそばれたりするから、なかなか幸せには恵まれないとして言う。

同意語: 「美人薄命」
類語: 「才子多病」、「天は二物を与えず

禍心包蔵
(かしんほうぞう)

 謀反むほんの心。心中、悪だくみを抱いていること。

苛政は虎よりも猛し
(かせいはとらよりもたけし)

 苛酷な政治は人を食い殺す虎よりも人民を苦しめるということ。「苛政」は重税を課しては厳しく取り立て、あくどく徴兵を強いる悪政。人民にとって苛政はどんな猛獣よりも恐ろしいものだとして言う。

同意語: 「苛政猛虎」

苛政猛虎
(かせいもうこ)

 ⇒「苛政は虎よりも猛し

河清を俟つ
(かせいをまつ)

 ⇒「百年河清を俟つ

風が吹けば桶屋が儲かる
(かぜがふけばおけやがもうかる)

 意外なところに影響が及び、思わぬ結果が生じることのたとえ。また、当てにならない期待をすることのたとえ。大風が吹くと砂ぼこりのために目を病む人が多くなる。目の悪い人は音曲を楽しみにして三味線を弾くので、三味線に張る猫の皮がますます必要となり、猫の数が減ってくる。猫が減れば桶を齧るネズミが増えるから、そこで桶屋が繁盛するという笑話による。

同意語: 「大風が吹けば桶屋が儲かる」、「風が吹けば箱屋が儲かる」

稼ぐに追い付く貧乏なし
(かせぐにおいつくびんぼうなし)

 懸命に働けば、貧乏することはないということ。

風にそよぐ葦
(かぜにそよぐあし)

 自分の意見をもたず、力のある者の言いなりになる人のたとえ。葦が風の吹くままにそよぐように、定見のない人は権力者の言うままに動き回ることから言う。バプティスマのヨハネは、断じて「風にそよぐ葦」などではなく、しなやかな衣服をまとった王宮人や、預言者でさえなく、それは預言者以上に偉大な存在であると、イエスが主張したときのことば。“A reed shaken with wind.”

風は吹けども山は動ぜず
(かぜはふけどもやまはどうぜず)

 まわりがいかに騒ごうと、泰然自若として少しも動じないこと。騒乱に巻き込まれても、悠然としているさまを山に見立てて言う。

同意語: 「風は吹けども山は動かず」

風邪は万病のもと
(かぜはまんびょうのもと)

 感冒はあらゆる病気のもとであるということ。こじれた風邪はさまざまな合併症を引き起こすことから言う。

同意語: 「風邪は百病のもと」、「風邪は百病の長」

禍棗災梨
(かそうさいり)

 無用の本を刊行することの無駄をそしる言葉。なつめや梨の木は版木の材料。くだらぬ書物を次々に出版されては、「なつめ」や「なし」の木にとっては、とんだ災難ということ。

可操左券
(かそうさけん)

 確かな証拠を手にしていること。転じて、充分に成就の見込みのあるたとえ。左券は契約の証拠として双方が一片ずつ所持した割符の左半分のこと。

雅俗共賞
(がぞくきょうしょう)

 高尚なひとも一般大衆も、みんなすべての人が鑑賞できる。内容が豊富でしかも理解しやすい作品をいう。

堅い木は折れる
(かたいきはおれる)

 折れにくそうに見える堅い木のほうが、かえって折れやすいものだ。日ごろから丈夫な人ほど大病にかかりやすかったり、柔軟性のない人ほど困難に屈しやすかったりすることのたとえに使う。

類語: 「柳に雪折れなし

難きを先にし獲るを後にす
(かたきをさきにしうるをあとにす)

 骨の折れる難しいことや人にいやがることを進んで引き受け、特になることや利益に繋がることを後回しにするということ。『論語』による。

片口聞いて公事を分くるな
(かたくちきいてくじをわくるな)

 一方だけの言い分を聞いて判定を下すな。訴訟の裁定は公平でなければならない。必ず両方の言い分を聞いて判定を下せという教え。「片口」は片方の言い分、「公事」は訴訟のこと。

類語: 「一方聞いて下知をすな」、「両方聞いて下知をなせ

画蛇添足
(がだてんそく)

 へびを描いて、足を添える。無用の付け足しのこと。

同意語: 「蛇足

刀折れ矢尽きる
(かたなおれやつきる)

 戦う手段がまったくなくなる。万策尽きる。頼む刀が折れ、射る矢もすでに尽きては、もはや戦いを続けることはできないことから言う。

同意語: 「弓折れ尽きる」、「弓折矢尽」

片棒を担ぐ
(かたぼうをかつぐ)

 仕事の半ばを受け持って、協力すること。「片棒」は先棒か後棒か、駕籠を担ぐときのどちらか一方の棒。駕籠舁きは二人そろわないと客が運べないことから言う。

類語: 「お先棒を担ぐ

語るに落ちる
(かたるにおちる)

 ⇒「問うに落ちず語るに落ちる

夏虫疑氷
(かちゅうぎひょう)

 見聞、見識の狭いたとえ。夏しか知らない虫に、冬の氷の冷たさを言ってもわからない。

火中取栗
(かちゅうしゅりつ)

 ⇒「火中の栗を拾う

火中の栗を拾う
(かちゅうのくりをひろう)

 他人の利益のために危険をおかすこと。猿におだてられた猫が囲炉裏で焼ける栗を拾うが、栗は猿に食べられて、猫はやけどをしただけだったという、ラ・フォンテーヌの寓話から。

同意語: 「火中取栗」

花鳥諷詠
(かちょうふうえい)

 自然とそれにまつわる人事を無心に客観的に詠ずること。

花鳥風月
(かちょうふうげつ)

 天地自然の美しい風景。また、それらを鑑賞することや、題材にした詩歌・絵画をたしなむ風雅の道をいう。

隔靴掻痒
(かっかそうよう)

 思うようにならなくて、もどかしいこと。靴を履いたまま痒い足をかくの意から言う。

同意語: 「靴を隔てて痒きを掻く」
類語: 「二階から目薬

鴬鳩笑鵬
(かっきゅうしょうほう)

 小物が大人物の行為を笑うたとえ。鵬が三千里も滑空すると聞いて、小鳥たちが笑ったというお話。

割鶏牛刀
(かっけいぎゅうとう)

 小さいことを処理するのに大きな道具を用いる必要はない。転じて、小事を処理するのに大人物の手を借りる必要はない、ということ。

確乎不抜
(かっこふばつ)

 意志がしっかりしていて動揺しないさま。「確固」とも書く。

割股満腹
(かっこまんぷく)

 自分の股の肉を切り取って食べて満腹しても自身は滅びる。一時しのぎの利益を図ったがためにかえって身を滅ぼすこと。また、人民を犠牲にして、かえって君主が滅びるたとえ。

活殺自在
(かっさつじざい)

 生かすも殺すも思いのままに、他を自分の思うがままに取り扱うこと。

渇して井を穿つ
(かつしていをうがつ)

 必要に迫られてから慌てても間に合わないということ。のどが渇いてから井戸を掘っても手遅れであることから、遅すぎる対応を戒めて言う。

同意語: 「渇に臨みて井を穿つ」
類語: 「飢えに臨みて苗を植う」、「戦を見て矢を」、「泥棒を見て縄を

渇しても盗泉の水を飲まず
(かつしてもとうせんのみずをのまず)

 どんなに困っても、不正なことはしない。「盗泉」は中国山東省泗水県にある泉の名。そこを通りかかった孔子は、からからにのどが渇いていたのに「盗泉」の名を嫌って、その水を飲まなかったという故事に基づく。

同意語: 「渇すれども盗泉の水を飲まず」
類語: 「鷹は飢えても穂をつまず」、「鷹は飢えても穂を摘まず

合従連衡
(がっしょうれんこう)

 弱国が力を合わせて強国に対抗したり、弱国が強国と手を結んだりする、さまざまな外交策の展開を言う。

勝って兜の緒を締めよ
(かってかぶとのおをしめよ)

 成功したからといって気をゆるめずに、さらに慎重であれ。「兜の緒を締める」は、心を引き締めて戦闘に備えるの意。

活剥生呑
(かっぱくせいどん)

 生きているまま皮を剥ぎ、丸のみする。他人の文章や詩歌をそのまま盗用するたとえ。

河童に水練
(かっぱにすいれん)

 知り尽くしている者になお教えようとしても無駄であるということ。泳ぎの達者な河童に水泳を教えようとしてもむなしいだけである。

類語: 「猿に木登り」、「釈迦に説法

河童の川流れ
(かっぱのかわながれ)

 どんな名人・達人にも、必ず失敗はあるものだということ。水中を自在に泳ぎ回る河童でも、時には水に押し流される。

類語: 「猿も木から落ちる」、「弘法にも筆の誤り」、「釈迦も経の読み違い」、「上手の手から水が漏れる」、「善く泳ぐ者は溺る」、「天狗の飛び損ない」

刮目して見る
(かつもくしてみる)

 目をこすってよく見る意で、先入観を捨てて相手を見直すこと。

同意語: 「刮目してこれを見る」

刮目相待
(かつもくそうたい)

 目をこすってよく見る。人の進歩、成功の著しいのを待望するたとえ。

勝つも負けるも時の運
(かつもまけるもときのうん)

 勝ち負けは時の運によるものだということ。力のある方が必ず勝つとは限らないとして、多く、武運つたなく敗れた人を慰めるのに使う。

同意語: 「勝つも負けるも運次第」
類語: 「勝敗は時の運」、「勝負は競いもの」、「勝負は時の運

褐を被て玉を懐く
(かつをきてたまをいだく)

 外からはそうと見えないが、内には優れた知恵や才能を秘めていること。「褐」は紡ぐ前の麻で織った粗末な着物。みすぼらしい身なりをして懐に抱いた「玉」は、真理、知恵、才能などのたとえ。

勝てば官軍負ければ賊軍
(かてばかんぐんまければぞくぐん)

 たとえ道理に合わなくても、戦いに勝った者は正しく、負けた者は悪いということ。「官軍」は時の朝廷に味方する軍勢。明治維新で敗れた幕府方の軍勢は「賊軍」の汚名に泣いた。

同意語: 「勝てば官軍」
類語: 「成功すれば責められず」、「善の裏は悪」、「力は正義なり

我田引水
(がでんいんすい)

 自分の有利になるように物事を運ぶこと。また、自分の都合のよいように理屈をつけること。人の田のことは考えずに、我が田に水を引くの意から、手前勝手であることを言う。

同意語: 「我が田に水を引く」
類語: 「粉屋はみんなそれぞれに自分の水車に水を引く」

瓜田に沓を納れず
(かでんにくつをいれず)

 ⇒「瓜田かでんくつれず李下りかに冠を正さず

瓜田に沓を納れず李下に冠を正さず
(かでんにくつをいれずりかにかんむりをたださず)

 疑惑を招くような行為は避けた方がよいということ。瓜の畑で靴を履き直せば、瓜を盗んでいるのではないかと疑われ、すももの木の下で手をあげて冠の曲がったのを直すと、李を盗んでいるのではないかと疑われるというたとえから、疑わしい言動を戒める。

同意語: 「瓜田に沓を納れず」、「瓜田李下」、「李下に冠を正さず」

瓜田李下
(かでんりか)

 ⇒「瓜田かでんくつれず李下りかに冠を正さず

家徒四壁
(かとしへき)

 家は四方の壁があるだけ。家の中に何も無い極貧の形容。

門松は冥土の旅の一里塚
(かどまつはめいどのたびのいちりづか)

 めでたい門松だが、正月を迎えるたびに一つづつ年を取ることを考えると、死出の旅への一里塚のようなものだ。「一里塚」は、街道の傍らに土を盛り、松やえのきを植えた里程の目印。昔は一里ごとに置かれていた。

河図洛書
(かとらくしょ)

 得難い図書のたとえ。一般に用いられる「図書」の語源でもある。

鼎の軽重を問う
(かなえのけいちょうをとう)

 権威者の実力を疑うこと。また、統治者を軽んじ、その地位や権力を奪おうとすること。

鼎の沸くが如し
(かなえのわくがごとし)

 混乱が甚だしいようすや、議論百出して収まりのつかないようすのたとえ。混乱した天下などを、鼎の中でふつふつと湯が煮えたぎるさまに見立てて言う。

同意語: 「鼎ていふつ

悲しい時は身一つ
(かなしいときはみひとつ)

 逆境にあるときは、他人は誰も頼りにならないということ。苦しいとき、悲しいときに頼れるのは、結局自分だけだとして言う。

同意語: 「苦しい時は身一つ」、「悲しい時は一心」

金槌の川流れ
(かなづちのかわながれ)

 人の頭が上がらないこと。水に落ちた金槌は、柄は浮かんでも頭が沈むことから言う。いつも下積みで、出世の見込みのないことのたとえにも使う。

同意語: 「金槌の身投げ」、「金槌の川流れで浮かぶ瀬がない」

叶わぬ時の神頼み
(かなわぬときのかみだのみ)

 ⇒「苦しい時の神頼み

蟹の横這い
(かにのよこばい)

 はたから見れば不自然であっても、本人にはそれが一番適しているということ。ぎこちなく見えても、蟹は横に進む方が速いことから言う。

同意語: 「蟹の横這い猿の木登り」

蟹は甲羅に似せて穴を掘る
(かにはこうらににせてあなをほる)

 人はそれぞれ分相応の行いをするものだ。また、人はそれぞれの身にふさわしい望みをもつものだ。蟹は己れの甲羅の大きさに合わせて棲む穴を掘るということから言う。

類語: 「鳥は翼に従って巣を作る」

金請けするとも人請けするな
(かねうけするともひとうけするな)

 借金の保証人にはなっても、人の保証人にはなるなということ。「金請け」は借金の保証人、「人請け」は奉公人などの身元保証人。借金の保証は契約金額だけにとどまるが、人物の保証にはここまでという限りがない。うっかりすると、どんな迷惑が降りかかるか分からないということ。

金が唸る
(かねがうなる)

 ありあまるほど金銭がある。

金が敵の世の中
(かねがかたきのよのなか)

 世の中の悪事や不祥事は、すべて金が原因となって起こるものだということ。金は仇をなす敵のように、時に身を滅ぼし時に不和や反目を招くことから言う。

同意語: 「金が敵」、「金が頼みの世の中」

金が子を産む
(かねがこをうむ)

 預けた金銭に利息がつく。

金が物を言う
(かねがものをいう)

 金銭の力は絶大であるということ。どんなにやっかいなことでも、たいていは金の力で解決できることから言う。英語でもそのものずばり、“Money talks.”、“Gold speaks.”と言う。

同意語: 「金が物言う世の中」
類語: 「金の光は阿弥陀ほど」、「地獄の沙汰も金次第

金に飽かす
(かねにあかす)

 ふんだんに金銭を使う。

金に糸目を付けぬ
(かねにいとめをつけぬ)

 惜しげもなく、いくらでも金を使うこと。「糸目」は、風を平均して受けるように凧の表面に張る糸。糸目を付けない凧がコントロールを失うように、抑えることなく金を使うことを言う。

類語: 「湯水の如く使う」

金の切れ目が縁の切れ目
(かねのきれめがえんのきれめ)

 金のなくなったときが、関係の切れるときだということ。遊女と遊客のように、金銭によって成り立っている関係は多い。ちやほやされるのも金のあるうち、金が尽きれば掌を返したように冷たく扱われる。

同意語: 「愛想尽かしは金から起こる」
類語: 「貧乏神が飛び込めば愛はどこかへ飛んで去る」

金の光は阿弥陀ほど
(かねのひかりはあみだほど)

 金銭の力は絶大であるということ。金の力を有り難い阿弥陀仏の光明にたとえて言う。

同意語: 「金の光は七光り」、「金は仏ほど光る」
類語: 「金が物を言う

金の草鞋で尋ねる
(かねのわらじでたずねる)

 根気よく捜し求めること。いくら歩き回っても、鉄で作られた草鞋ならばすり減ることがないとして言う。

同意語: 「金の草鞋で捜す」、「金の足駄あしだで尋ねる」、「の草鞋で尋ねる」

金は天下の回り物
(かねはてんかのまわりもの)

 金銭は一か所にとどまるものではないのだから、いつかは自分のところにも回ってくるということ。貨幣は人の手から人の手に渡って、世の中を渡り歩くものだとして言う。

同意語: 「金は天下の回り持ち」
類語: 「貧乏難儀は時の回り」、「浮世は回り持ち

金は湧き物
(かねはわきもの)

 金銭は湧いて出るように、思いがけなく手に入るものだということ。

金持ち金使わず
(かねもちかねつかわず)

 (1)金持ちは、かえって金を使わないということ。無駄金を使わないからこそ金持ちであると、金持ちの堅実さを称えて言う。
 (2)金持ちは、とかくケチであるということ。しまり屋でケチだから金持ちになれるとして、多く金持ちの吝嗇りんしょくを非難して言う。


類語: 「金持ちと灰吹きは溜まるほど汚い

金持ち喧嘩せず
(かねもちけんかせず)

 利にさとい金持ちは、慎重であるということ。金持ちは一銭の得にもならないことを知っているから、人と争うことはしないの意で言う。心に余裕があったり有利な立場にあったりする者は、うかつにその立場を失うような争いはしないの意でも使う。

類語: 「金持ち身が大事」、「金持ち船に乗らず」、「千金の子は盗賊に死せず

金持ちと灰吹きは溜まるほど汚い
(かねもちとはいふきはたまるほどきたない)

 金持ちは財産が殖えるにつれてケチになるということ。「灰吹き」はたばこ盆についた竹製の筒。煙管きせるからたばこの灰や吸い殻を叩き落すのに使う。その灰吹きが残滓を溜めて汚くなるように、金持ちも財をなすほど金に汚くなるとして言う。

類語: 「金と塵は溜まるほど汚い」、「金持ち金使わず」、「成金の金惜しみ」

鉦や太鼓で捜す
(かねやたいこでさがす)

 大騒ぎしてあちこち捜し回る。「かね」は皿の形をした金属性の打楽器。昔は迷子が出ると「どんどこどんのちゃんちきち」と鉦や太鼓を打ち鳴らし、「迷子の迷子の三太郎やあい」と名を呼びながら捜し歩いた。

金を貸せば友を失う
(かねをかせばともをうしなう)

 友人間の金銭の貸し借りは不和のもとになるので、しない方がよいということ。イギリスの金言“Lend your money and lose your friend.”から。

類語: 「金を貸したのが縁の切れ目」

金を食う
(かねをくう)

 費用が多くかかる。

金を寝かす
(かねをねかす)

 金銭をためて活用しない。

下筆成章
(かひつせいしょう)

 文才に恵まれていて、詩文を書き上げるのがきわめて速いこと。

家貧孝子
(かひんこうし)

 貧乏な家からは親孝行の子供が出るものだということ。

同意語: 「家貧しくして孝子顕る

禍福は糾える縄の如し
(かふくはあざなえるなわのごとし)

 幸せと不幸はより合わせた縄のように表裏一体であるということ。

同意語: 「吉凶は糾える縄の如し」
類語: 「禍は福のるところ福は禍のすところ」、「塞翁が馬」、「善の裏は悪」、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり

禍福無門
(かふくむもん)

 偶然ともとれる災いや幸せも、自分自身で招き寄せるものだというたとえ。

冑を脱ぐ
(かぶとをぬぐ)

 降参する。昔、戦いに敗れた武士は、冑を脱いで降参の意思を表した。

瓦釜雷鳴
(がふらいめい)

 素焼きの釜が雷のような音を響かせる。転じて、小人がはばをきかせて大声をあげ、威張り散らすたとえ。

株を守りて兎を俟つ
(かぶをまもりてうさぎをまつ)

 因習にとらわれて、臨機応変にふるまえないこと。また、一向に進歩のないこと。木の切り株にぶつかって死んだ兎を労せずして手に入れた農夫がすきを捨て、以来、ひたすら切り株を見守り続けて国中の笑いものになったという。

同意語: 「くいぜを守りて兎を待つ」、「守株しゅしゅ
類語: 「いつも柳の下にドジョウは居らぬ」、「柳の下にいつも泥鰌はいない

寡聞少見
(かぶんしょうけん)

 見聞が狭く、世間知らずで見識のないこと。

画餅充飢
(がべいじゅうき)

 絵にかいた餅で飢えをしのごうとするように、空想やイメージで自分を慰めようとすること。非現実的な世界へ逃避して現実の苦しみを忘れようとすること。はかない自己満足のたとえ。

画餅に帰す
(がべいにきす)

 計画などが失敗に終わり、せっかくの努力がむだになること。「画餅」は絵に描いた餅のこと。

類語: 「絵に描いた餅

壁に耳あり障子に目あり
(かべにみみありしょうじにめあり)

 とかく密談は漏れやすいということ。

果報は寝て待て
(かほうはねてまて)

 幸運を得ようとするなら、焦らずにその到来を待つのがよい。運を天に任せてじっと待っていれば、いつかは良い運に恵まれるとして言う。幸せは自力によるよりは、むしろ運によるとの考えに基づく。

類語: 「待てばなる」、「待てば海路の日和あり

鎌をかける
(かまをかける)

 本当のことを言わせようと、それとなく誘いをかける。さも知っているような振りをして相手に問いかけ、巧みに話を誘い出すこと。

噛み合う犬は呼び難し
(かみあういぬはよびがたし)

 当面する問題に取り組んでいるときは、はたから何を言われようと耳に入らないものだということ。噛み合いの喧嘩をしている犬はいくら呼んでも尻尾を振らない。人も自身の一大事にとらわれているときは、助言にも忠告にも耳を傾けようとしないものだ。

類語: 「闘雀とうじゃく人を恐れず」

雷が落ちる
(かみなりがおちる)

 いきなり大声で怒鳴りつけられることを言う。

神は正直の頭に宿る
(かみはしょうじきのこうべにやどる)

 正直な人には神様の加護がある例え。

同意語: 「正直の頭に神宿る

神は見通し
(かみはみとおし)

 神はどんなささいなことでも見ているから、ごまかすことはできないということ。

同意語: 「神仏は見通し」、「天知る神知る我知る子知る」、「天道様は見通し」、「仏は見通し」

噛む馬はしまいまで噛む
(かむうまはしまいまでかむ)

 人や柵に噛み付く癖のある馬は、死ぬまで直らない。悪い性質や癖は容易に矯正できないことの例え。

類語: 「三つ子の魂百まで」、「雀百まで踊り忘れず

亀の甲より年の劫
(かめのこうよりとしのこう)

 長い年月をかけて積んできた経験は貴く、価値があるということ。「コウ」の音が通じる「甲」は甲羅、「劫」はきわめて長い時間。「年のコウ」は、長年の功績の意から「年の功」とも書く。

類語: 「松かさより年かさ」、「年寄りの言うことと牛の鞦は外れない」、「老いたる馬は道を忘れず

亀の年を鶴が羨む
(かめのとしをつるがうらやむ)

 人の欲望には限りがないということ。「鶴は千年亀は万年」をふまえて、千年の寿命がありながら鶴はなお万年の寿命をうらやましがることから言う。

鴨が葱を背負って来る
(かもがねぎをしょってくる)

 都合のよいことが重なり、ますますおあつらえ向きである。鴨鍋に葱は欠かせない。鴨の肉ばかりか、同時に葱までも手に入ることから、物事がいっそう注文通りに運ぶことのたとえに使う。

鴨の水掻き
(かものみずかき)

 はたからは気楽そうに見えても、常に苦労は絶えないということ。のんびりと水に浮いている鴨だが、水中の水掻きはいつも動いていることから言う。

下問を恥じず
(かもんをはじず)

 目下の者に質問することを恥としない。分からなければ、相手が若輩であろうと後輩であろうと謙虚に質問することが大切であるということ。

類語: 「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥

痒い所に手が届く
(かゆいところにてがとどく)

 気配りが、こまかいところまで行き届くことを言う。痒いところをさっと掻いてくれる手は、痒みという不快感を小気味よく取り除いてくれる。

烏に反哺の孝あり
(からすにはんぽのこうあり)

 ⇒「鳩に三枝の礼あり烏に反哺の孝あり

烏の行水
(からすのぎょうすい)

 烏が水浴びをするときのさまから、ろくに洗いもせずに短時間で入浴をすますことを言う。

烏を鷺
(からすをさぎ)

 ⇒「鷺を烏と言う

借りてきた猫
(かりてきたねこ)

 いつもと違って、非常におとなしいさま。飼われている家では我が物顔に行動する猫も、よその家に連れてこられると片隅で小さくなるとして言う。

雁の使い
(かりのつかい)

 手紙のこと。匈奴きょうどに囚われていたかん蘇部そぶが、雁の足に手紙を結んで放し、漢帝に消息を伝えたという『漢書・蘇部伝』の故事による。

同意語: 「雁の玉章たまずさ」、「雁の文」、「雁の便り」、「雁書がんしょ」、「雁信」、「雁礼」、「雁帛がんぱく

下里巴人
(かりはじん)

 通俗的な音楽や文芸作品のたとえ。大衆受けのする歌謡曲、演歌、大衆小説、娯楽小説のたぐい。

画竜点睛
(がりょうてんせい)

 物事の最も肝心なところ。また、物事を立派に完成させるための、最後の仕上げ。転じて、ちょっとしたことばや行為が全体を引き立たせることのたとえにも使う。中国りょうの時代、とある絵師は金陵きんりょうの安楽寺の壁に竜を描いたが、瞳を入れると飛び去るからといって目には筆を入れなかった。しかし人々は信じない。そこで瞳を描き入れてみせると、竜はたちまちに天に上ったと『歴代名画記』にある。

画竜点睛を欠く
(がりょうてんせいをかく)

 最後の仕上げに落ちがあり、全体がきちんと完成していないことのたとえ。

類語: 「仏作って魂入れず

借りる時の地蔵顔済す時の閻魔顔
(かりるときのじぞうがおなすときのえんまがお)

 金を借りるときには地蔵菩薩のようなにこにこ顔だが、返す時には閻魔のような怖い顔になる。ようやく金が工面できたときは、有り難や有り難やとひたすら感謝するのに、いざ返済の段になると不当に金を奪われるように思えて不機嫌になる。

枯れ木に花が咲く
(かれきにはながさく)

 衰えていたものが再び栄える。また、臨むべくもないことが実現する。

類語: 「石に花咲く」、「埋もれ木に花が咲く」、「老い木に花」、「老い木に花が咲く」、「炒り豆に花

枯れ木も山の賑わい
(かれきもやまのにぎわい)

 つまらないものでも、ないよりはあった方がましだということ。たとえ枯れ木でも、あれば山に趣を添える。

同意語: 「枯れ木も山の飾り」、「枯れ木も森の賑かし」
類語: 「餓鬼も人数

彼も人なり我も人なり
(かれもひとなりわれもひとなり)

 彼も我も同じ人間なのだから、学べば聖賢の域にも達することができるということ。

同意語: 「彼も丈夫じょうふなり我も丈夫なり」

彼を知り己れを知れば百戦殆うからず
(かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず)

 敵と味方の情勢を熟知した上で戦えば、幾度戦いを重ねても敗れることはない。『孫子・謀攻』にある兵法の一つ。

寡廉鮮恥
(かれんせんち)

 心がよこしまで恥をしらないさま。廉は心が清く正しいこと。

苛斂誅求
(かれんちゅうきゅう)

 税金を厳しく取り立てる酷政のたとえ。「斂」は絞るようにして集めるの意。

夏炉冬扇
(かろとうせん)

 時機を失して役に立たないもののたとえ。夏に火鉢が無用なら、冬の扇もまた無用だとして、役に立たない才能や言論のたとえにも使う。

類語: 「寒に帷子かたびら土用に布子ぬのこ」、「喧嘩過ぎての棒千切り」、「六日の菖蒲あやめ十日の菊

可愛い子には旅をさせよ
(かわいいこにはたびをさせよ)

 真に子供を愛するなら、甘やかさずに世の中の辛くて苦しい現実をつぶさに体験させた方がよいということ。昔の旅は、出立に水杯を交わしたほどで、危険と苦難の連続とも言うべき旅は、厳しい人生のたとえそのものだった。

同意語: 「いとおしき子には旅をさせよ」
類語: 「いとしき子には杖で教えよ」、「可愛い子には灸をすえ憎い子には砂糖をやれ」、「可愛い子は棒で育てよ」、「獅子の子落し

可愛さ余って憎さ百倍
(かわいさあまってにくさひゃくばい)

 可愛いと思う気持ちが強ければ強いほど、ひとたび憎悪の念が生じると、その憎さはことさら甚だしくなるということ。「愛」「憎」の情念を相反するものとしてではなく、表裏一体となったものとみなして、真理を鋭くえぐる。

川越して宿を取れ
(かわこしてやどをとれ)

 困難なことは後回しにしないで、先に片付けておく方がよいということ。江戸のころ、幕府の政策から、大きな川には橋がなく、旅人は川越し人足の助けをかりて渡河したが、ちょっとでも大雨が降ればすぐに川止めとなった。川を越す前に宿を取ると、そのまま何日も足止めを食うことにもなりかねないことから言う。

同意語: 「川を前に控えて宿るな」

川立ちは川で果てる
(かわだちはかわではてる)

 得意な技を持つ者は、かえってその技ゆえに身を滅ぼすことになる。「川立ち」は川辺に生まれ育った者。

同意語: 「川立ちは川」
類語: 「泳ぎ上手は川で死ぬ」、「山立ちは山で果てる」、「善く泳ぐ者は溺る

川に水を運ぶ
(かわにみずをはこぶ)

 水があり余っている川に水を運んでも、何の意味もない。無駄なな骨折りの例え。

類語: 「屋上屋を架す

皮を切らせて肉を切り肉を切らせて骨を切る
(かわをきらせてにくをきりにくをきらせてほねをきる)

 我が身にも傷は受けるが、相手にはより大きな損害を与える。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の、捨て身の覚悟を言う。

同意語: 「肉を切らせて骨を断つ」

華を去りて実に就く
(かをさりてじつにつく)

 虚飾を捨てて、堅実な態度をとる。見かけよりも内容が肝心である。

甘井先竭
(かんいせんけつ)

 良質のうまい水の出る井戸は、利用者が多いので最初に枯れる。いいものは、早くなくなるというたとえ。

閑雲野鶴
(かんうんやかく)

 俗世に煩わされず、悠々自適の生活を送ることをいう。静かに浮かぶ雲と野に遊ぶ鶴。

鑑往知来
(かんおうちらい)

 過去のことをよく参考にして将来を展望し、見通しを立てる。

感恩戴徳
(かんおんたいとく)

 心からありがたく思って感謝感激するさま。恩に着て敬愛の念を持つこと。

冠蓋相望む
(かんがいあいのぞむ)

 使者のカブル冠と車の上の大きなかさが、前後互いに見渡せる。車が次から次へ続いて絶え間がない様子を言う。

感慨無量
(かんがいむりょう)

 感慨がはかり知れないほどである。胸いっぱいにしみじみ感じること。

考える葦
(かんがえるあし)

 人間を指して言う。パスカルの『パンセ』に「人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎないが、それは考える葦である」とあるのに基づく。宇宙はひと吹きの風でなんなく人間を抹殺することができるが、人間は自分が死ぬこと、宇宙が強大なことを知るがゆえに、それを知らない宇宙よりも尊い存在であると説いて、人間の思惟しいの尊さを、ひいては思惟する人間の偉大さを言う。人間は尊厳は「考える」ことにあるから、正しく考えることに努めよう、これこそがいかに生きるかの要諦ようていであると、パスカルは言っている。

勧学院の雀は蒙求を囀る
(かんがくいんのすずめはもうぎゅうをさえずる)

 ふだんから身近に見たり聞いたりしていることは、いつの間にか覚えてしまうものだ。

類語: 「門前の小僧習わぬ経を読む

玩火自焚
(がんかじふん)

 火をもてあそんで自ら焼け死ぬ。自業自得のこと。

雁が飛べば石亀も地団太
(がんがとべばいしがめもじだんだ)

 身のほどもわきまえず、いたずらに他をまねようとする浅はかさを言う。飛び立つ雁を見て、飛ぶことのできない石亀が地団太を踏んでくやしがるの意。

侃侃諤諤
(かんかんがくがく)

 なにものも恐れず、正しいと思うことを遠慮なく主張すること。「侃侃」はのびのびとしてひるむことのないさま、「諤諤」ははばからずに、ずばりとおものを言うさま。

汗牛充棟
(かんぎゅうじゅうとう)

 蔵書がきわめて多いこと。車に積めばそれを引く牛が汗を流し、積み上げれば棟木に届くの意から。

歓欣鼓舞
(かんきんこぶ)

 踊り上がって喜ぶさま。にぎやかに、息をはずませ、鼓をたたいて歓喜するようす。

含垢忍辱
(がんくにんじょく)

 じっと屈辱に耐えること。忍の一字の態度。

艱苦奮闘
(かんくふんとう)

 艱難辛苦に耐え、刻苦勉励し、奮闘すること。頑張って困難を乗り越えること。

諫言耳に逆らう
(かんげんみみにさからう)

 ⇒「忠言耳に逆らう

頑固一徹
(がんこいってつ)

 自分の考えや態度を少しも曲げようとしないで押し通すさま。また、そういう性格。

眼光炯炯
(がんこうけいけい)

 眼が鋭く光り輝くさま。

顔厚忸怩
(がんこうじくじ)

 厚かましい顔にも、なおかつ恥の色が出てくる。恥ずかしくて耐えられないさま。

眼光紙背
(がんこうしはい)

 ⇒「眼光紙背に徹す

眼光紙背に徹す
(がんこうしはいにてっす)

 書を読むとき、字句を解釈するばかりでなく、行間にひそむ深い意味までよく理解することを言う。眼の光が紙の裏まで突き通すの意から言う。

同意語: 「眼光紙背」、「がん紙背しはいとおる」

眼高手低
(がんこうしゅてい)

 批評は優れているが、創作は劣っている。理想は高いが実力が伴わない。

函谷関の鶏鳴
(かんこくかんのけいめい)

 しん昭王しょうおうに捕らえられたせい孟嘗君もうしょうくんは、夜半、逃れてようやく函谷関に辿り着いた。しかし関は鶏が鳴くまでは開門しない。そこで鶏鳴の真似をよくする従者が鳴き真似をしてみせると、群鶏はそれに和して時をつくり始めた。そこで関所の門は開かれ、孟嘗君は無事脱出に成功したという。『史記・孟嘗君伝』の故事による。

同意語: 「鶏鳴狗盗」、「函谷鶏鳴」

函谷鶏鳴
(かんこくけいめい)

 ⇒「函谷関の鶏鳴

換骨奪胎
(かんこつだったい)

 故人の詩文から発想を取り入れながら詩句や構成を変え、独自の新しい作品を完成させること。骨を取り換え、こぶくろを取って使うの意。「胎」は子宮のこと。

同意語: 「骨を換えたいを奪う」、「奪胎換骨」

閑古鳥が鳴く
(かんこどりがなく)

 人気がなくて寂しいようす。また、客の姿がなく、商売が上がったりのようす。「閑古鳥」は「カッコウ」の異称。人気のない山里で聞くカッコウの鳴き声は寂しい。

類語: 「門前雀羅を張る

冠婚葬祭
(かんこんそうさい)

 元服・婚礼・葬儀・祖先の祭祀の、四つの重要な礼式。慶弔の儀式。

寒山拾得
(かんざんじっとく)

 唐の僧、寒山が経典を開き、同じく高僧の拾得がほうきを持っている姿は禅画の好題材となっている。

雁書
(がんしょ)

 ⇒「雁の使い

勘定合って銭足らず
(かんじょうあってぜにたらず)

 理論と実際とが合致しないことのたとえ。計算上は間違いがないのに、いざ数えてみると現金に不足があることの意から言う。

同意語: 「算用合って銭足らず」

寒松千丈
(かんしょうせんじょう)

 松は厳しい冬の寒さにもめげず、緑の葉をつけて岩の上に毅然とそびえる。節操の堅いこと。

含笑入地
(がんしょうにゅうち)

 安心大悟して死ぬ。笑いながら、ゆうゆうと死んで土に帰っていくということ。

干将莫邪
(かんしょうばくや)

 古代の二ふりの名剣の名。名剣のたとえ。干将は春秋時代の呉の刀工。莫邪はその妻の名。

含飴弄孫
(がんしろうそん)

 世事に関係のない老人の日課。毎日、世俗から離れて楽しく暮らすさま。年をとったら、政治や仕事などに関係しないで、飴をしゃぶりながら孫と無邪気に遊んでいるのがよい、という意。

玩人喪徳
(がんじんそうとく)

 人をもてあそべば、徳を失う。人をからかって馬鹿にすると、自分の信用も失ってしまう。

寛仁大度
(かんじんたいど)

 寛大で慈悲深く、度量の大きいこと。

韓信の股くぐり
(かんしんのまたくぐり)

 大志を抱く者は屈辱にもよく耐えるということ。

同意語: 「韓信股下こかよりづ」

勧善懲悪
(かんぜんちょうあく)

 善行を勧め励まし、悪事を懲らしめること。

完全無欠
(かんぜんむけつ)

 どの点から見ても、まったく欠点・不足がなく完璧であること。

肝胆相照
(かんたんあいてらす)

 ⇒「肝胆相照らす

肝胆相照らす
(かんたんあいてらす)

 互いに胸を開き、心底から親しく交わること。

同意語: 「肝胆相照」

肝胆胡越
(かんたんこえつ)

 見方によっては、近い関係のものも遠く、また異なったものも同じに見えるということ。

邯鄲の歩み
(かんたんのあゆみ)

 むやみに人まねをして、結局は自分の本分も忘れて中途半端になること。邯鄲はちょうの都。その都会人は、歩くのも上品であると聞いたえん国の若者が、邯鄲にでかけて歩行術を学ぼうとしたが、いっこうに身につかないうちに自分の歩き方まで忘れてしまい、ついには、腹ばいになって帰国したという。『荘子・秋水』に見える寓話に基づく。

同意語: 「邯鄲の」、「邯鄲の歩を学ぶ」、「邯鄲学歩」

邯鄲の夢
(かんたんのゆめ)

 人生の栄枯盛衰は一場の夢のごとくはかないということ。ちょうの都は邯鄲の宿にて、盧生ろせいという若者が道士呂翁りょおうから枕を借りて一眠りしたところ、とんとん拍子に出世して栄華を極めるという体験をしたが、目覚めてみると、それは黄粱こうりょうもまだ炊けないほどに短い間の夢であったという。唐の沈既済しんきさいの『枕中記』にある話に基づく。

同意語: 「一炊の夢」、「黄粱こうりょう一炊の夢」、「盧生ろせいの夢」、「邯鄲の枕」
類語: 「南柯の夢

肝胆を砕く
(かんたんをくだく)

 心の限りを使い、知恵を絞って思案に思案を重ねること。「肝胆」は肝臓と胆嚢たんのう。転じて、心の奥底。

同意語: 「肺肝を摧く

奸智術策
(かんちじゅっさく)

 腹黒い策謀。悪知恵と陰謀。また、よこしまで邪悪な考え。

管中窺天
(かんちゅうきてん)

 ⇒「管を以って天を窺う

眼中の釘
(がんちゅうのてい)

 邪魔者のたとえ。

眼中の人
(がんちゅうのひと)

 常に心にかけ、望みを託している人。意中の人のこと。目の中にしっかりとその姿が映っていて、忘れられない人の意。

歓天喜地
(かんてんきち)

 天を仰いで歓び、地にうつむいて喜ぶ。非常に喜んでいるようす。

旱天の慈雨
(かんてんのじう)

 待ち望んで果たされなかったことがようやく実現すること。日照り続きの後に降る、有り難い雨の意から言う。「干天の慈雨」とも書く。

同意語: 「日照りに雨」
類語: 「闇夜に提灯

観天望気
(かんてんぼうき)

 天を観察し、気を望む。天気を観望すること。予報官より、海辺の漁師のほうが、よく当てる場合がある。

甘棠の愛
(かんとうのあい)

 すぐれた為政者に対する尊敬と思慕の情。「甘棠」は甘い梨のこと。

艱難辛苦
(かんなんしんく)

 困難な状況や辛い場面に出会い、苦しみ悩むような大変な苦労。

艱難汝を玉にする
(かんなんなんじをたまにす)

 人は辛いことや苦しいことを乗り越えてこそ、大成するものだということ。英語の“Adversity makes a man wise.(逆境が人を賢くする)”を意訳したことばと言う。

類語: 「逆境を越えれば喜びに至る」、「苦労屈託身の薬」

堪忍袋の緒が切れる
(かんにんぶくろのおがきれる)

 もうこれ以上我慢できなくなって、こらえていた怒りがついに爆発すること。「堪忍袋」は我慢のできる許容量を袋に見立てた語。

同意語: 「こらえ袋の緒が切れる」

肝脳地に塗る
(かんのうちにまみる)

 肝臓も脳も土まみれになる。戦場でむごたらしい死に方をすること。また、困窮の極みに陥った状態の例え。

看破紅塵
(かんぱこうじん)

 浮き世を見限る。俗世間に愛想をつかす。また俗世から逃避すること。「紅塵」は俗世のたとえ。

間髪を入れず
(かんはつをいれず)

 事態が差し迫り、もはや一刻の猶予もならないこと。転じて、すかさず、すぐにの意。もとは、間に一筋の髪の毛も入れる余地がないの意。

汗馬の労
(かんばのろう)

 東奔西走する労苦のこと。馬に汗をかかせるほどに戦場を駆け巡る労苦の意。

韓悲白楽
(かんぴはくらく)

 韓愈かんゆには悲観的な詩作が多く、白楽天(白居易)には名前のとおり楽天的な傾向の詩が多いということ。

玩物喪志
(がんぶつそうし)

 珍奇なものや、目先の楽しみに熱中して、大切な志を失うこと。

完璧
(かんぺき)

 きずのない宝玉の意から、いささかの欠点もないこと。完全無欠。

類語: 「和氏かしたま
反意語: 「玉に瑕

完璧帰趙
(かんぺききちょう)

 完全無欠の意の「完璧」の語源。

管鮑の交わり
(かんぽうのまじわり)

 お互いの立場理解し、信頼しあって利害に捕らわれない親密な交わりのこと。中国の春秋時代、せいの名宰相といわれた管仲かんちゅうとその親友鮑叔ほうしゅくの交際のこと。若い頃二人は商いをして利益をあげたが、貧乏な管仲が儲けを多く取ることを鮑叔が許した。

類語: 「金石の交わり」、「金蘭の契り」、「水魚の交わり」、「刎頸の交わり

含哺鼓腹
(がんほこふく)

 食べたいだけ食べて、腹つづみを打つ。民衆が平和で豊かな暮らしを楽しむこと。「哺」は食物。

頑迷固陋
(がんめいころう)

 頑固で物事の正しい判断ができない。考え方が柔軟でなく道理に暗いこと。

同意語: 「狷介固陋

頑冥不霊
(がんめいふれい)

 頑固で道理がわからず、頭の働きが鈍いこと。

簡明扼要
(かんめいやくよう)

 簡潔明快で要を得る。簡にして要点を得て、よく筋道が通って理解しやすいこと。

歓楽哀情
(かんらくあいじょう)

 ⇒「歓楽極まりて哀情多し

歓楽極まりて哀情多し
(かんらくきわまりてあいじょうおおし)

 喜びや楽しみが極まると、やがて悲しい思いが生じてくるということ。

同意語: 「楽しみ尽きて悲しみ来たる」、「歓楽哀情」

冠履倒易
(かんりとうえき)

 上下の秩序がくずれて、逆さまになるたとえ。

閑話休題
(かんわきゅうだい)

 むだばなしや前置きを打ち切って、話の本題に入ること。本筋からそれている話をもとに戻す時に使う言葉。

棺を蓋いて事定まる
(かんをおおいてことさだまる)

 人はこの世を去ったとき、ようやくにして生前の事業や行いの真価が定まるものであるということ。

管を以って天を窺う
(かんをもっててんをうかがう)

 見識の極めて狭いことのたとえ。細い管の穴から天を覗き見ても、広大な宇宙を窺い知ることはできないことから言う。管は「くだ」とも読む。

同意語: 「管の穴から天を覗く」、「管中窺天」、「管中点をうかがう」
類語: 「よしの髄から天井覗く」、「葦の髄から天上を覗く」、「井の中の蛙大海を知らず」、「貝殻で海を量る」、「管中豹をうかがう」、「針の穴から天を覗く」、「蠡をもって海を測る