居安思危
(こあんしき)

 平安無事のときにも、危難に備え、用心を怠らないこと。

小家から火を出す
(こいえからひをだす)

 問題にもしていなかった、思いがけない所から火事が起こること。また、意外な者があちこちに波及するような事件を引き起こすこと。小さなみすぼらしい家から出た火が大火事になるの意で言う。

御意見五両堪忍十両
(ごいけんごりょうかんにんじゅうりょう)

 人の忠告は五両の値打ちがあり、辛いことや怒りをこらえて我慢することは十両の値打ちがある。人の意見をよく聞いて、何事にも忍耐することが大事だということ。

挙一明三
(こいちみょうさん)

 「一」を挙げて示せば、ただちに「三」を理解すること。非常に賢くて理解の早いたとえ。

同意語: 「一を聞いて十を知る

恋に上下の隔て無し
(こいにじょうげのへだてなし)

 男女の恋情は身分の上下などおかまいなく、誰にでも起こるものだということ。

同意語: 「恋に上下の差別なし」

鯉の滝登り
(こいのたきのぼり)

 立身出世のたとえ。黄河の上流にある竜門の急流をさかのぼった鯉は、竜となって天に昇るという伝説がある。

同意語: 「竜門の滝登り」

鯉の一跳ね
(こいのひとはね)

 捕らえられた鯉は一度だけ跳ねるが、あとはじたばたしない。諦めのよいこと。最後がいさぎよいことのたとえ。

同意語: 「鯉の水離れ」

恋の病に薬無し
(こいのやまいにくすりなし)

 恋という病気を治す薬はない。黄河上流の渓谷にある竜門の滝を登り切ることのできた魚は、化して竜になるという故事に基づく。

同意語: 「惚れた病に薬無し」

恋は思案の外
(こいはしあんのほか)

 恋は常識では計り知れないものだということ。

同意語: 「色は思案の外

恋は盲目
(こいはもうもく)

 恋愛は理性を奪い、分別を失わせるということ。英語の“Love is blind.”から。

同意語: 「恋は闇」
類語: 「色は思案の外」、「痘痕も靨

広大無辺
(こういだいむへん)

 とてつもなく広くて大きく、きわまりがないこと。

紅一点
(こういってん)

 多くの平凡な物の中で一つだけ優れて目立つこと。多くの緑の葉の中にただ一点の赤い花があって美しく目立つ意から言う。大勢の男性の中に一人だけ女性が交じることにも言う。

同意語: 「万緑叢中紅一点」

香囲粉陣
(こういふんじん)

 香りの囲いとおしろいの陣列。多くの美女に取り囲まれるさま。

荒淫無恥
(こういんむち)

 淫乱で無恥。みだらで恥知らず。堕落して品行の悪い女のこと。邪道に深入りするさま。

光陰矢の如し
(こういんやのごとし)

 月日は飛び去る矢のように瞬く間に過ぎ去るということ。

同意語: 「光陰逝水せいすいの如し」、「光陰流水の如し」
類語: 「うかうか三十きょろきょろ四十」、「月日に関守なし」、「歳月人を待たず」、「白駒の隙を過ぐるが若し

光陰流水
(こういんりゅうすい)

 月日の過ぎ去るさまは、水の流れの速いのと同じということ。

同意語: 「光陰矢の如し

行雲流水
(こううんりゅうすい)

 物事に執着することなく、成り行きに身をゆだねることを言う。漂う雲も流れる水も自然の動きに逆らうことはないの意から言う。物事のさまざまに移り変わるさまのたとえにも使う。

後悔先に立たず
(こうかいさきにたたず)

 事が終わって悔やんでも、もう遅いということ。

同意語: 「後の後悔先に立たず」
類語: 「後悔は遅れてやってくる」

高閣に束ぬ
(こうかくにつかぬ)

 (1)書籍を高い棚に積み上げたまま読もうとしないこと。
 (2)人材を見捨てて用いないこと。
 「高閣」は壁に吊す竹製の書棚。

豪華絢爛
(ごうかけんらん)

 「豪華」は派手で華やかな、「絢爛」は彩り豊かで美しいさま。すなわち、華やかに豊かで、光り輝くように美しいさま。

膏火自煎
(こうかじせん)

 自分自身の才能によって災いを招くことのたとえ。あぶらはそれ自身が燃えて無くなってしまうことから出た。

効果覿面
(こうかてきめん)

 ある事柄のききめや報いがすぐに現れること。すぐにはっきりとした結果や効果が出る。

鴻雁哀鳴
(こうがんあいめい)

 おおとりと雁が悲しげに鳴く。転じて、流民が窮状を声を上げて哀訴するさまのたとえ。

抗顔為師
(こうがんいし)

 たかぶった顔をして大先生ぶること。臆面もなく物知り顔をして、自分自身を先生だとうぬぼれるさま。

高岸深谷
(こうがんしんこく)

 世の中の変遷が著しいことのたとえ。高い丘が深い谷に変わり、深い谷が高い岸になるようなはなはだしい変化をいう。

傲岸不遜
(ごうがんふそん)

 「傲岸」はおごりたかぶるさま。「不遜」は思い上がってへりくだらないこと。つまり、人を見下すような態度を取ること。

厚顔無恥
(こうがんむち)

 あつかましく、恥知らずでずうずうしいこと。つらの皮の厚いこと。

剛毅果断
(ごうきかだん)

 意志がしっかりしていて気力に富み、物事に屈しないこと。思い切って事を行う。

綱紀粛正
(こうきしゅくせい)

 国家の規律・政治の方針や、政治家・役人の態度を正すこと。また、一般に規律を正すことをいう。

剛毅木訥
(ごうきぼくとつ)

 強い心と毅然たる態度で、しかも飾り気のない木訥とした人物は、本当にえらいということ。

剛毅木訥仁に近し
(ごうきぼくとつじんにちかし)

 欲に惑わされない強固な意志をもち、質朴で口数が少ないことは、仁そのものではないが仁に近いということ。『論語・子路』にあることば。

反意語: 「巧言令色鮮し仁

孔丘盗跖
(こうきゅうとうせき)

 人間死ねばだれでもみな塵となる。生きているうちが花、もっと楽しもうという意味。「孔丘」は孔子、大聖人をいう。「盗跖」は孔子と同時代の大泥棒。

綱挙目張
(こうきょもくちょう)

 要点をきちんと押さえれば、自然に解決されるというたとえ。また、文章の筋道がきちんと通って、読んで理解しやすいこと。

肯綮に中たる
(こうけいにあたる)

 意見や批判がずばり急所を突くこと。

好景不長
(こうけいふちょう)

 いつまでもいいことは続かない。いい夢はいずれ破れるというたとえ。好景気はそう続くものではない。

口血未乾
(こうけつみかん)

 約束をしたばかりで、まだ何日もたっていないこと。昔、諸侯が盟約を結ぶ時には、牛の耳を裂いてその血をすする儀式があった。その口のまわりについた血が、まだ乾かぬうちに、という意味。

黄絹幼婦
(こうけんようふ)

 「絶妙」の意味。また判読の見事さ。「黄絹」は“色糸”であるから、この二字を偏と旁に置くと「絶」の字になる。また「幼婦」は“少女”でこれも同じく「妙」の字になる。

巧言令色
(こうげんれいしょく)

 ことばを飾り顔色を和らげて人を喜ばせ、こびへつらうこと。

巧言令色鮮し仁
(こうげんれいしょくすくなしじん)

 ことばを巧みに飾り、顔つきを和らげて人にへつらうような人には仁が少ないものだということ。『論語・学而』にあることば。「仁」はヒューマニズムの根幹をなす愛。人と人とが支え合いながら生きるための真の愛情を言う。

類語: 「花多ければ実少なし
反意語: 「剛毅木訥仁に近し

孝行をしたい時分に親はなし
(こうこうをしたいじぶんにおやはなし)

 親を亡くした後に、ようやくもっと孝養きょうようを尽くすべきだったという実感が迫ってくるということ。

類語: 「子養わんと欲すれども親待たず」、「樹静かならんと欲すれども風止まず」、「石に布団は着せられず」、「風樹の嘆」、「墓に布団は着せられぬ

後顧の憂い
(こうこのうれい)

 物事をやり終わった後に残る気がかり。のちのちの心配。

高材疾足
(こうざいしっそく)

 すぐれた才能や手腕があること、ある人のこと。

光彩奪目
(こうさいだつもく)

 目を奪うばかりの鮮やかさ、まばゆいばかりの美しさのこと。

幸災楽禍
(こうさいらくか)

 他人の災難を自分の幸いとし、人の不幸を楽しむ。ひとの災いを見て喜ぶという態度。

光彩陸離
(こうさいりくり)

 美しい光がまばゆい様子。光が入り乱れて美しく輝くさま。

高山景行
(こうざんけいこう)

 高い山と大きな道。情操が高尚で、行いが立派なたとえ。人柄がすぐれているさま。

恒産恒心
(こうさんこうしん)

 ⇒「恒産無き者は恒心無し

恒産無き者は恒心無し
(こうさんなきものはこうしんなし)

 一定の生業をもたない者には、しっかりした道義心も育たないということ。孟子が人々の生活安定を政治の基本として、その必要を強調した言葉。『孟子・滕文公上』にあることば。だから「国を治めるには人民に一定の仕事を与え、人民の暮らしが安定するように図らなければならない」と、孟子はせいの宣王に説く。

同意語: 「恒産恒心」
類語: 「衣食足りて礼節を知る」、「貧すればどんする

高山流水
(こうざんりゅうすい)

 高い山と流れる水。すぐれた楽曲のたとえ。

高視闊歩
(こうしかっぽ)

 目を上に向け、大またで歩く。肩で風切って歩くこと。人を見下ろしたような態度をいう。

口耳講説
(こうじこうせつ)

 聞きかじりの耳学問を、物知り顔ですぐ人に説くこと。浅薄な学者、学識のたとえ。

行尸走肉
(こうしそうにく)

 歩く屍と走る肉の意から、体だけで肝心な精神がないとして、無学・無能の人をあざけって言う語。『拾遺記・後漢』にあることば。

好事多魔
(こうじたま)

 ⇒「好事魔多し

口耳の学
(こうじのがく)

 聞いたことを未消化のまま人に教えるだけの、薄っぺらな知識や学問。すなわち、受け売りの知識や学問。『荀子・勧学』に「小人の学は耳より入りて、口より出づ。口耳の間は四寸のみ」とあるのに基づく。口と耳はわずかに四寸しか離れていないことから、聞いたことを未消化のまま鵜呑みにしてしゃべる、四寸足らずの間の学問の意で言う。

同意語: 「口耳こうじ四寸しすん」、「口耳こうじ四寸しすんの学」

孔子の孫
(こうしのまご)

 孔子顔した分別くさい男のたとえ。学者ぶった、しかつめらしい者をいう日本製のことわざ。

好事魔多し
(こうじまおおし)

 よいことには、なにかと邪魔が入りやすいということ。「魔」は「邪魔」などに見る「魔」で、求道心を妨げるものから転じて、支障・妨げの意。

同意語: 「好事多魔」、「好事魔を生ず」
類語: 「月に叢雲むらくも花に風」、「寸善尺魔

孔子も時に遇わず
(こうしもときにあわず)

 どんなに優れた人物でも、時勢に合わなければ埋もれてしまうことがあるということ。国を治める道を説いた孔子ですら、その高邁な教えを理解する権力者はなく、戦乱の世には受け入れられなかったことから言う。

同意語: 「聖人も時に遇わず」

好事も無きに如かず
(こうじもなきにしかず)

 たとえ好きなことであっても、無い方がいい。あればあったで煩わしいことが生じるから、何も無い方がいい。人生無事が一番だということ。

好事門を出でず
(こうじもんをいでず)

 善行はとかく世間に伝わりにくいということ。良い評判はなかなか広まらないが、悪い評判はあっという間に広がっていく。

類語: 「悪事千里を走る

巧取豪奪
(こうしゅごうだつ)

 あの手この手で巻き上げる。言葉巧みにだまし取ったり、力づくで奪ったりすること。

口尚乳臭
(こうしょうにゅうしゅう)

 年若く世間知らずの青二才をいう。

同意語: 「口になお乳の臭いあり」

攻城略地
(こうじょうりゃくち)

 城を攻略し、市街地を侵略すること。

同意語: 「城を攻め地を略す」

校書掃塵
(こうしょそうじん)

 校正の仕事というのは、机の塵を払うようなもので、何回やってもなお塵が残るように誤りがなくならないというたとえ。

公序良俗
(こうじょりょうぞく)

 一般社会の秩序と善良な習慣、ならわし。

黄塵万丈
(こうじんばんじょう)

 黄色い土けむりがもうもうと空高く舞い上がること。

後生畏るべし
(こうせいおそるべし)

 若者はさまざまな可能性を秘めているのだから、畏敬すべきである。「後生」は後から生まれた者。

孔席暖まらず墨突黔まず
(こうせきあたたまらずぼくとつくろまず)

 道や教えを伝えるために東奔西走するたとえ。孔子と墨子は自分の道を伝えるために天下を歩き回っていたから、孔子の座席は暖まる暇がなく、墨子の家の煙突は炊事をしないことから黒くなることがなかった。

類語: 「席暖まるにいとまあらず

傲然屹立
(ごうぜんきつりつ)

 誇らし気にそびえ立つさま。また、堅固で揺るぎないさまをいう。堂々として山が険しくそびえ立つさま。

恍然大悟
(こうぜんたいご)

 ぼんやりした中から、ふと思い当たること。疑問が解けて、“はっ”と悟る。

浩然の気
(こうぜんのき)

 ⇒「浩然の気を養う

浩然の気を養う
(こうぜんのきをやしなう)

 俗世の煩わしさから解放され、のびのびとした大らかな心境となる。本来「浩然の気」は、正道を行い、道義心を身につけることによって五体にみなぎる勇気。

同意語: 「浩然の気」

鴻漸の翼
(こうぜんのつばさ)

 ひとたび飛翔すれば一気に千里をすすむといわれるおおとりのつばさ。転じて、スピード出世する優秀な人材、大事業が成功する人物のこと。

好大喜功
(こうだいきこう)

 やたら手柄を立てたがって功を焦るさま。とかくスタンドプレーの多い人を揶揄やゆしていう。

同意語: 「大を好み功を喜ぶ」

交淡如水
(こうたんじょすい)

 ⇒「君子の交わりは淡きこと水の若し

巧遅拙速
(こうちせっそく)

 ⇒「巧遅は拙速に如かず

巧遅は拙速に如かず
(こうちはせっそくにしかず)

 上手だがのろのろとした遅い仕上げより、下手でも仕事は早い方がよい。戦いでは速戦即決が大切であると説く兵法家孫子のことばに基づく。

同意語: 「巧遅拙速」

口中雌黄
(こうちゅうしおう)

 一度言ったことを、すぐ改めること。自分の意見や言論に誤りや不適当な所がある時には、訂正するという意味。そこから、文章や詩歌の添削の意味も出てきた。

口誅筆伐
(こうちゅうひつばつ)

 言葉と文章で激しく批判、攻撃すること。現代で言うと、ある事件、人物に対しマスコミ・報道機関が容赦なく批判を浴びせるたとえ。

高枕無憂
(こうちんむゆう)

 万全の策を立てておくこと。そうすれば君主も高枕で安眠することができ、国家の憂いもなくなるということ。

黄道吉日
(こうどうきちにち)

 陰陽道で何をしてもうまくゆくとされる吉日。転じて一般に、良い日柄をいう。

交頭接耳
(こうとうせつじ)

 頭を近付け耳に接して話す。内緒話。ひそひそ話。

荒唐無稽
(こうとうむけい)

 言葉や説明に根拠がなく、ばかげていること。でたらめであること。

紅灯緑酒
(こうとうりょくしゅ)

 繁華街や歓楽街のようすをいう。

狡兔三窟
(こうとさんくつ)

 悪賢いうさぎは隠れる穴を三つ持っていて、万一の場合そのどれかに逃げ込んで身の安全をはかる。危機に際し身の安全を守るのがうまいことのたとえ。

狡兎死して走狗烹らる
(こうとししてそうくにらる)

 利用価値のある間は使われるが、用なしとなればあっさりと捨てられるというたとえ。すばしこい兎が死ねば、それを追う猟犬は不用となって煮て食われるように、敵国が滅びれば、いかに戦功のあった家臣でも邪魔になって殺されるということ。

同意語: 「飛鳥ひちょう尽きて良弓かく」、「狡兎尽きて良犬らる」
類語: 「狡兔良狗

狡兔良狗
(こうとりょうく)

 功績のあった幹部、部下も利用価値がなくなると捨てられる。敵が滅びると功臣は殺されるという有名なたとえ。

類語: 「狡兎死して走狗烹らる

功成り名遂げて身を退くは天の道なり
(こうなりなとげてみをしりぞくはてんのみちなり)

 手柄を立て名声を得た後は、さっさと引退するのが自然の道にかなったやり方である。『老子・九章』にあることば。

郷に入っては郷に従う
(ごうにいってはごうにしたがう)

 どこに移り住もうと、人はその土地の風俗や習慣に従うのが平穏に暮らすこつであるということ。

同意語: 「郷に入っては郷に従え」
類語: 「ローマにありてはローマ人の如く」、「人の踊る時は踊れ」

孝は百行の本
(こうはひゃっこうのもと)

 孝行はあらゆる善行の基本である。「孝」は親によく尽くすこと。「百行」は、すべての善い行いのこと。。

同意語: 「孝は百行のもとい」、「孝は百行の始め」

好評嘖嘖
(こうひょうさくさく)

 評判がよく、しきりにほめたたえられるさま。「嘖」はざわざわと声を出して、しきりに騒いだりするさま。

行不由径
(こうふゆけい)

 道を行くなら小道を通らない。堂々と表通りの大道を歩む人生。

紅粉青蛾
(こうふんせいが)

 べに白粉おしろいと青く引いた眉。美人の上手な化粧をいう。蛾は、蛾の触覚のようにすんなりと曲線を描く美人の眉“蛾眉”をさす。

公平無私
(こうへいむし)

 行動、判断などが公平で、私的な感情や利益などに左右されないさま。

光芒一閃
(こうぼういっせん)

 光が一瞬、ぴかりと光るさま。白刃がひらめく、電光がきらめくさま。転じて、英雄の華々しくも短い、あっという間の人生。

厚貌深情
(こうぼうしんじょう)

 顔つきは親切なようでも、心の中は奥深くて何を考えているかわからない。人の心の知りがたいことのたとえ。また、態度も心も親切なことの意味もある。

弘法にも筆の誤り
(こうぼうにもふでのあやまり)

 どんな名人上手でも、時にはまさかの失敗をするということ。弘法大師のような書道の達人も、うっかり書き損じることがあるとして言うもの。

類語: 「ホメロスだって居眠りの失策」、「猿も木から落ちる」、「河童の川流れ」、「権者ごんじゃにも失念」、「孔子くじの倒れ」、「釈迦も経の読み違い」、「上手の手から水が漏れる」、「千慮の一失

弘法は筆を択ばず
(こうぼうはふでをえらばず)

 本当の名人上手は、どんな道具でも立派に使いこなすということ。弘法大師は空海の謚号しごう嵯峨さが天皇、たちばなの逸勢はやなりと共に三筆の一人と称された。弘法ほどの能書家ならば、どんな筆を使っても見事な字を書くはずだとして言う。

類語: 「下手の道具調べ」、「善書は紙筆を選ばず」、「能書筆を択ばず

光芒万丈
(こうぼうばんじょう)

 遠く四方に光を放ち、あたり一面に輝きわたるさま。聖人君主の出現、また偉人の功績をたたえる言葉。

豪放磊落
(ごうほうらいらく)

 気持ちが大らかで、神経が太く、小さなことにこだわらないさま。

高木は風に倒る
(こうぼくはかぜにたおる)

 地位や名声が高まれば高まるほど、嫉まれて非難や攻撃を受けやすくなるということ。樹木は高く伸びれば延びるほど風当たりが強くなることから言う。

同意語: 「大木は風に折られる」
類語: 「喬木きょうぼくは風に折らる」、「高木は風に嫉まる」、「高木は風に折らる」、「出る杭は打たれる」、「誉れはそしりの基

合浦珠還
(ごうほしゅかん)

 一度失った大事な物が再び手に戻ることのたとえ。

口蜜腹剣
(こうみつふくけん)

 口先は親切だが、内心は陰険で恐ろしい人のたとえ。

光明磊落
(こうみょうらいらく)

 胸にわだかまりがなく、公明正大であるさま。大らかでさっぱりしている状態。

功名を竹帛に垂る
(こうみょうをちくはくにたる)

 歴史にその名を残すたとえ。「ちく」は竹を削った札。「はく」は絹の布。紙が発明される前はこれに文字を書いていたことから、「竹帛」で書物、歴史の意となる。「垂る」は残すの意。

類語: 「竹帛の功

公明正大
(こうめいせいだい)

 心がはっきりと明らかで、正しく大きいさま。

毫毛斧柯
(ごうもうふか)

 わざわいの種は小さいうちに取り除いておかなければいけない。細いわずかな毛でも、はびこってからはおのが必要なまでになるということ。

紅毛碧眼
(こうもうへきがん)

 赤茶色の髪の毛と青緑色の眼。すなわち西洋人のこと。

蝙蝠も鳥のうち
(こうもりもとりのうち)

 取るに足らない者でも仲間の一人として認めること。また、くだらない人物が偉ぶって賢者の仲間入りをすること。蝙蝠は鳥ではないが、翼をもって飛ぶことは飛ぶのだから、まあ鳥の仲間に入れておこうかということ。

類語: 「雑魚の魚交じり」、「蝶々とんぼも鳥のうち」、「田作りも魚のうち」、「田作りも魚の中」、「目高も魚のうち

紺屋の明後日
(こうやのあさって)

 約束の期限が当てにならないこと。紺屋は客に聞かれればいつも「明後日に染め上がる」と請け負うが、その日になればまた「明後日には」と言い抜けたことから。藍染めは天候に左右されるから、なかなか約束通りには仕上がらない。紺屋は「こんや」とも読む。

同意語: 「明後日紺屋に今度鍛冶」
類語: 「医者の只今」、「問屋の只今

紺屋の白袴
(こうやのしろばかま)

 人のことばかりに忙しくて、自分のことをしている暇がないことを言う。白無地のたっつけ袴は紺屋の仕事着。紺屋のくせに白袴をはいているのは、客の注文に追われるばかりで、自分の袴を染めるゆとりがなかったからだろうと揶揄する。紺屋は「こんや」とも読む。

類語: 「易者身の上知らず」、「医者の不養生」、「駕籠かご駕籠かごに乗らず」、「左官の粗壁あらかべ」、「大工の掘っ立て」、「髪結いの乱れ髪」、「坊主の不信心」

後来居上
(こうらいこじょう)

 後から来た者が先行していた者を追い抜く。後輩が先輩を追い抜くことのたとえ。

興利除弊
(こうりじょへい)

 有益な事業を興し、無益な事業を廃すること。いいことを伸ばし、弊害を除去すること。

降竜伏虎
(こうりゅうふくこ)

 竜をくだし、虎を伏す。強大な敵を打倒することのたとえ。

黄粱一炊の夢
(こうりょういっすいのゆめ)

 ⇒「邯鄲の夢

膏粱子弟
(こうりょうしてい)

 富貴の家に生まれた人のこと。富裕な家の子供。美食する子弟。「膏」はあぶらの乗った肉。「粱」は味のいいあわのこと。膏・粱で美食を表す。転じて富貴の家、財産家のたとえとなった。

甲論乙駁
(こうろんおつばく)

 議論がいろいろ出てまとまらないこと。侃々諤々と議論百出し、百家争鳴する。「駁」はまだらになっていること。動詞としては、まぜかえすの意味。

高論卓説
(こうろんたくせつ)

 程度の高い論議。すぐれた意見。立派な理論など。

五蘊皆空
(ごうんかいくう)

 人間の心身は五蘊よりなっていて、定まった本体がなく無我であることをいう。五蘊は環境を含めて人間の心身を五種に分析したもの。「色」「受」「想」「行」「識」の五つ。

孤雲野鶴
(こうんやかく)

 「孤雲」は空に漂うちぎれ雲。「野鶴」は群れから離れて住む一羽の鶴。俗世間を捨て、名利を超越して隠居する人のたとえ。

孤影悄然
(こえいしょうぜん)

 ひとりぼっちでさみしそうなようす。しょんぼりして元気がないさま。

呉越同舟
(ごえつどうしゅう)

 (1)敵対する者同士が同じ場所に居合わせること。
 (2)敵対する者同士も共通の困難に遭遇すれば手を携えてそれに立ち向かうということ。
 春秋時代の呉と越は宿敵同士。両国の者がたまたま同じ舟に乗り合わせたのだが、暴風雨に襲われて舟が転覆しそうになると、互いが左右の手のように動いて助け合ったという、『孫子・九地』の故事に基づく。


同意語: 「同舟相救う

胡越の意
(こえつのい)

 互いに遠く隔たり、全く疎遠であること。気持ちが全く合わないたとえ。胡は中国北方の、越は南方の異民族。この二つの民族の遠い関係から出た言葉。

声なきに聴き形なきに視る
(こえなきにききかたちなきにみる)

 子は、親がそばにいなくても何を言おうとしているかを察し、親の姿をいつも心に描いていなければならない。親が言葉や行動に表さないうちにその気持ちを汲み取り、孝養をつくべきだということ。

古往今来
(こおうこんらい)

 昔から今に至るまで、古今。

氷に鏤め水に描く
(こおりにちりばめみずにかく)

 氷に彫刻を施してもすぐに溶けて形がなくなり、水に絵を描いても流れて形を止めない。労して功のないたとえ。

同意語: 「脂に画き氷に鏤む
類語: 「脂に画き氷にちりば

五戒十重
(ごかいじっじゅう)

 在家の仏教信者が守るべき五つの戒めと、十の禁戒のこと。五戒は、
  1.不殺生(生き物を殺さない)
  2.不偸盗(盗みをしない)
  3.不邪淫(性に関して乱れない)
  4.不妄語(嘘をつかない)
  5.不飲酒(大酒しない)
の五つ。これらを破ると地獄へ落ちるという。

湖海の士
(こかいのし)

 地方にいる民間の有能な人物のたとえ。「湖海」は世の中、世間、民間をさし、都に対し、地方をいう。

狐仮虎威
(こかこい)

 他人の威勢をかさに着て威張ること。また、背後の力を利用してのさばるたとえ。

同意語: 「虎の威を借る狐

呉下の阿蒙
(ごかのあもう)

 昔のままで一向に進歩のない者を言う。また、無学でつまらない人物のたとえ。「呉下」は呉の地方。「阿」は親しみを表して人物につける接頭語で、日本語の「お」にあたる。中国の三国時代、呉の魯粛ろしゅくが久しぶりに呂蒙りょもうに会ってその学問の進歩に驚き、「君はもう呉にいたときの蒙さんではない」と感嘆した。

五顔六色
(ごがんろくしょく)

 色とりどりなさま。五つの顔に六色の彩り。変化の多様なさま。

古稀
(こき)

 七十歳のこと。唐の杜甫とほの『曲江詩』にある「人生七十古来稀なり」に基づく。古来、七十歳まで生きる人はめったにいないということから、長寿を祝う呼称となった。「古希」とも書く。

同意語: 「人生七十古来稀なり」

狐疑逡巡
(こぎしゅんじゅん)

 事に臨んで疑いためらって決心のつかないさま。思いきりがわるくぐずぐずしていること。

呼牛呼馬
(こぎゅうこば)

 他人からどんなに批判されても、平気でいることのたとえ。

呉牛喘月
(ごぎゅうぜんげつ)

 ⇒「呉牛月に喘ぐ

呉牛月に喘ぐ
(ごぎゅうつきにあえぐ)

 極端に恐れること。また、取り越し苦労をすること。呉の国の水牛はいつも酷暑に苦しんでいるので、月を見ても太陽かと思って喘ぎ出すという寓話が『世説新語・言語』にある。

同意語: 「呉牛喘月」
類語: 「蜀犬しょっけん日に吠ゆ

梧丘の魂
(ごきゅうのこん)

 罪もないのに殺される事を言う。中国の斉の景公という人が梧丘という所で狩りをした時の故事からきている。

故郷に錦を飾る
(こきょうににしきをかざる)

 功なり名を遂げて故郷に帰ること。「錦」は金糸銀糸で華やかな模様を織り出した高価な絹織物。

同意語: 「錦を着て故郷に帰る」、「故郷に錦を着て帰る」、「故郷へは錦を着る」、「故郷へ錦を飾る」
類語: 「衣錦の栄」、「衣錦還郷

黒衣宰相
(こくえさいしょう)

 僧侶の身分で天下の政治に参画する人のたとえ。徳川家康の政治顧問として活躍した天海僧正がその典型。黒衣は僧侶の衣装からその身分をあらわす。

告往知来
(こくおうちらい)

 洞察力が鋭く、打てば響く反応のよさをいう。往は、いにしえ、過去のこと。「知来」は未来を知ること。

告朔の餽羊
(こくさくのきよう)

 古来の行事や儀式は害のない限り残しておくべきだということ。また、実を失い形式ばかりが残っている虚礼のこと。「餽」は本来食偏に氣と書く。

国士無双
(こくしむそう)

 国の中で他と比べる者のないようなすぐれた大人物、偉大な人材のことをいう。

刻舟求剣
(こくしゅうきゅうけん)

 時勢の推移を知らず、旧習を固守する愚か者のたとえ。

同意語: 「落剣刻舟」

黒白分明
(こくびゃくぶんめい)

 黒白が、はっきりわかっている。ものごとの是非、善意がきわめて明瞭なこと。

極楽願わんより地獄作るな
(ごくらくねがわんよりじごくつくるな)

 死んで極楽へ行きたいと願うより、地獄へ落ちる原因を作らぬよう注意せよということ。また、この世で幸福になることを願うより、不幸になる原因を作るなという戒め。

国利民福
(こくりみんぷく)

 国家の利益と民衆の幸福。

刻露清秀
(こくろせいしゅう)

 秋の爽快な気配を表現する言葉。「刻露」は木々の葉が落ちて、山の稜線がすっかり現れること。秋の景色の形容。秋の天気、景色のさっぱりとしてすがすがしいさまをいう。

狐群狗党
(こぐんくとう)

 ろくでもない連中の集まりのたとえ。悪人仲間、そのグループのこと。狐の群れと、野良犬のグループ。

同意語: 「狐朋狗党」

孤軍奮闘
(こぐんふんとう)

 援軍がなく、周囲から孤立した小数の軍勢でよく戦うこと。

虎渓三笑
(こけいさんしょう)

 学問や芸術の話に熱中して、道中の長さを忘れること。虎渓は江西省の盧山にある谷の名。友人の帰りを送りながら、話に熱中のあまり虎渓を渡っても気づかず、三人で思わず顔を見合わせて大笑いしたという故事による。

虎穴に入らずんば虎児を得ず
(こけつにいらずんばこじをえず)

 思いきって危険を冒さなくては、大きな利益や成果を手に入れることはできないということ。また、身の安全ばかりを考えていては、功名は立てられないということ。虎の子を捕らえようとするなら、危険を覚悟で虎の棲む穴に入らなくてはならないことから言う。『後漢書・班超はんちょう伝』にあることば。

虚仮の一心
(こけのいっしん)

 愚かな者が、一つのことを一心にやろうとすること。また、愚かな者でも一心に取り組めば、目的を達成できるということ。

同意語: 「虚仮の一念」

沽券に関わる
(こけんにかかわる)

 人の体面や品位を左右するような、不都合な事態が生じること。「沽券」はもと土地・家などの売り渡し証文。

股肱の臣
(ここうのしん)

 主君が最も頼みとする家臣。また、最も頼みとする部下。腹心。「股肱」は足のももと手のひじ。転じて、手足となって主君を補佐する家来の意となった。

虎口を逃れて竜穴に入る
(ここうをのがれてりゅうけつにいる)

 次から次へと災難に見舞われること。ようやく恐ろしい虎の前から逃げ出せたと思ったら、今度は竜の棲む洞穴に入りこんでしまう意。

類語: 「一難去ってまた一難」、「火を避けて水に陥る」、「前門に虎を防ぎ後門に狼を進む」、「前門の虎後門の狼

ここばかりに日は照らぬ
(ここばかりにひはてらぬ)

 太陽が照っているのはここだけではない。太陽がどこでも照っているように、世間は広くどこへ行っても生きていけるということ。

類語: 「米の飯と天道様はどこへ行っても付いて回る

心が消える
(こころがきえる)

 悲しみ・驚きに気が転倒する。

心が騒ぐ
(こころがさわぐ)

 気持ちが動揺する。

心ここに在らざれば視れども見えず
(こころここにあらざればみれどもみえず)

 心が他のことに奪われていると、たとえ目はその方に向いていても何一つ見えはしない。『大学』に「心ここに在らざれば視れども見えず、聴けども聞こえず、食らえども其の味を知らず」とある。心が上の空では視覚も聴覚も味覚も正常な働きを失ってしまう。だから、いつも精神を集中させて修養に努めなくてはならないと説く。

類語: 「見る気がなけりゃ見えやせぬ」

志ある者は事遂に成る
(こころざしあるものはことついになる)

 成し遂げようとする堅固な志があれば、たとえ難事に出会っても、最後には必ず成功する。後漢の光武帝が将軍を激励したときのことば。

同意語: 「志あれば成る」

志は髪の筋
(こころざしはかみのすじ)

 心を込めて贈れば、たとえ髪の毛のような些少な物でも、受け取った人は気持ちを酌んでくれるということ。

心に垣をせよ
(こころにかきをせよ)

 油断せずに用心せよ。

心の鬼が身を責める
(こころのおにがみをせめる)

 良心の呵責を受けて苦しむ。不誠実を厳しくとがめる良心を鬼にたとえる。

心の欲する所に従えども矩を踰えず
(こころのほっするところにしたがえどものりをこえず)

 自分の思うままに振る舞っても道理の規範から外れることはない。『論語・為政』の中で孔子はその生涯を振り返り、「七十歳の時に、欲望のままに動いても人としての道に違うことはないという心境に達した」と述懐する。

同意語: 「矩を踰えず」、「七十にして矩を踰えず」

心は二つ身は一つ
(こころはふたつみはひとつ)

 あれもしたい、これもしたいと思うのだが、体は一つきりなので両方はできないということ。

心安いは不和のもと
(こころやすいはふわのもと)

 あまりに親し過ぎる間柄は、かえって仲違いを招くということ。

心を砕く
(こころをくだく)

 あれこれと考え心配する。

心を許す
(こころをゆるす)

 相手を信頼して受け入れる。

古今東西
(ここんとうざい)

 昔から今に至るまで、東西四方あらゆる場所においての意。いつでもどこでも。

古今独歩
(ここんどっぽ)

 昔から今に至るまで及ぶものがないさま。他に比べるものがない。

乞食を三日すればやめられぬ
(こじきをみっかすればやめられぬ)

 気楽に暮らす乞食の味を一度でも覚えたら、もうやめることはできない。

類語: 「一度乞食をすればもうやめられぬ」

虎視眈眈
(こしたんたん)

 虎が獲物を狙って鋭い眼でじっと見下ろすようす。野望を遂げようとして機会をじっと狙う。

五十歩百歩
(ごじっぽひゃっぽ)

 わずかばかりの差はあっても、本質的には同じであるということ。退散したことには違いがないのに、戦場で五十歩逃げた者が百歩逃げた者を臆病だと言って笑ったという、『孟子・梁恵王上』の中の寓話に基づく。

同意語: 「五十歩を以て百歩を笑う」
類語: 「猿の尻笑い」、「目糞が鼻糞を笑う」、「六つも半ダースも同じこと」

小姑一人は鬼千匹に向かう
(こじゅうとひとりはおにせんびきにむかう)

 一人の小姑は千匹の鬼にも相当するほど嫁を苦しめ、悩ますものだということ。小姑は夫の姉妹。正しくは「こじゅうとめ」と言う。婚家で同居する夫の姉妹は、同性で年齢が近いために感情が対立しやすく、嫁にとってはしゅうとしゅうとめよりもやっかいな存在とされてきた。

同意語: 「小姑は鬼千匹」

五十にして四十九年の非を知る
(ごじゅうにしてしじゅうくねんのひをしる)

 五十歳になって初めて、それまで過ごしてきた四十九年がいかに過ちが多かったか分かる。人生は過ちの連続で、後悔することばかりが多いということ。

五十にして天命を知る
(ごじゅうにしててんめいをしる)

 五十歳になるとようやく天から与えられた自分の使命をさとるようになるということ。『論語・為政』の中で孔子がその生涯を振り返って言ったことば。

同意語: 「知命」

後生大事
(ごしょうだいじ)

 いつも心を込めて勤め励むこと。また、いつまでも物を大切に保管すること。

後生大事や金欲しや死んでも命のあるように
(ごしょうだいじやかねほしやしんでもいのちのあるように)

 あれもこれもと願う人間の欲ほど身勝手で際限のないものはないということ。「後生」は死後に住む世界。

同意語: 「後生大事や金欲しや地獄へ落ちても鬼に負けるな」

弧掌鳴らし難し
(こしょうならしがたし)

 一つの手のひらで手を打ち鳴らすことは難しい。人間は一人きりでは何もすることができないというたとえ。

後生願いの六性悪
(ごしょうねがいのろくしょうわる)

 極楽往生を願う者は善行を慎むべきなのに、実際には邪悪な行いをするということ。また、表面は信心深そうに見えても、内心には悪意があること。

同意語: 「後生願いの悪根性」

孤城落日
(こじょうらくじつ)

 昔の勢いを失い、助けるものもなく、ひたすら没落に向かう状態。

古色蒼然
(こしょくそうぜん)

 長い年月を経て、見るからに古びた趣をたたえているさま。古めかしいようす。

故事来歴
(こじらいれき)

 物事の、起源からそのたどった過程や歴史。物事のいろいろな由来や因縁のこと。

古人の糟魄
(こじんのそうはく)

 伝え残された聖賢のことばや著書のこと。『荘子・天道』にあることば。「糟魄」は酒の搾りかす。「糟粕」とも書く。荘子は、聖人の本当の心は言語では伝えられないのだから、残されたことばや書物はただの搾りかすに過ぎないと軽蔑した。

五臓六腑
(ごぞうろっぷ)

 心臓や肺などの臓器と胃や腸などの器官。体内全体のこと。

五臓六腑に沁みわたる
(ごぞうろっぷにしみわたる)

 腹の底まで、つまり身に沁みて感じること。「五臓ごぞう」は心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓の五つを言い、「六腑ろっぷ」は、胃、胆、大腸、小腸、膀胱、三焦さんしょうの六つを言う。

炬燵で河豚汁
(こたつでふぐじる)

 一方では用心しながら一方では危険を冒すという矛盾した行為をすることのたとえ。

壺中の天
(こちゅうのてん)

 壺の中の世界。俗世間からかけ離れた別世界、一つの小天地。また、酒を飲んで俗世を忘れる楽しみのこと。中国の後漢時代、薬売りの老人が夜になると店先の壺の中に入るのを見た費長房ひちょうぼうが、老人に頼み込んで壺の中に一緒に入ったところ、そこには立派な御殿が立ち並び、酒や肴がふんだんにあったので、二人で飲み、かつ楽しんだ。

胡蝶の夢
(こちょうのゆめ)

 現実の世界と夢の世界の区別がつかないことのたとえ。また、この世のはかないことのたとえ。蝶になった夢を見た荘周そうしゅう(荘子)が目覚めたとき、自分が夢の中で蝶になったのか、それとも今、蝶が夢の中で自分になっているのか分からなくなってしまったという、『荘子・斉物論』の寓話に基づく。

克己復礼
(こっきふくれい)

 私欲にうち勝ち、社会の規範・礼儀に従って行動すること。

刻苦勉励
(こっくべんれい)

 心身を苦しめるほどに、ひたすら努力を積み重ねること。力を尽くし、つとめはげむ。

凝っては思案に能わず
(こってはしあんにあたわず)

 物事にあまり熱中すると、かえって冷静な判断がつかなくなるものだということ。

同意語: 「凝っては思案に余る」

骨肉相食む
(こつにくあいはむ)

 親子兄弟など、肉親同士で争うこと。「骨肉」は肉親、血縁関係の意。

類語: 「血で血を洗う

事が延びれば尾鰭が付く
(ことがのびればおひれがつく)

 物事は手早く進めないと、いろいろと余計なことが起こってやりにくくなる。魚にはなくてはならない尾と鰭だが、本体に付属するところから、余計なものの意に転じた。

尽く書を信ずれば即ち書無きに如かず
(ことごとくしょをしんずればすなわちしょなきにしかず)

 批判もせずに読み、その内容を鵜呑みにするだけなれば、そんな書物など読まない方がいい。『孟子・尽心下』にあることば。

琴柱に膠す
(ことじににかわす)

 融通のきかないことのたとえ。「琴柱」は琴の胴の上に立てて弦を支え、移動させることで音の高低を調節する器具。琴柱を膠で固定させてしまえば、決まった調子の曲しか奏でられなくなる。

言葉は国の手形
(ことばはくにのてがた)

 どこへ行っても、お国なまりでその人の故郷が分かるということ。「手形」は昔の旅行者が関所を通るために携えた通行手形。

同意語: 「訛りは国の手形

言葉は心の使い
(ことばはこころのつかい)

 言葉は心の中にある思いを表す手段である。心の中で思い、考えていることは、自然に言葉に表れるということ。

言葉は身の文
(ことばはみのあや)

 話す言葉を聞けば、その人がどんな人物かがわかる。言葉は、話す人の人格や品位を表すということ。

五斗米の為に腰を折る
(ごとべいのためにこしをおる)

 わずかばかりの俸禄ほうろくを得るために、ぺこぺこと人の機嫌をとる。「五斗米」は約五升の米。薄給を意味する。しんの時代の詩人陶淵明とうえんめいが県知事をしていたとき、若い上役が視察にくることになり、礼服で出迎えよと言われて、日棒の五斗米のために腰を折って若僧にぺこぺこするのはいやだと言って辞職した。

子供の喧嘩に親が出る
(こどものけんかにおやがでる)

 子供同士の喧嘩に、その親たちが口出しをしたり手出しをしたりする。大人気ないことのたとえにも、小事に干渉して騒ぎ立てることのたとえにも使う。

小糠三合持ったら婿に行くな
(こぬかさんごうもったらむこにいくな)

 少しでも財産があるなら、男は他家に婿入りしないで独立した一家を立てるべきだということ。「小糠三合」は、わずかばかりの財産のたとえ。

同意語: 「小糠三合あったら婿に行くな」、「小糠三合あるならば入り婿するな」

この親にしてこの子あり
(このおやにしてこのこあり)

 親がかくも立派であるからこそ、このような優秀な子が育つのだということ。親の出来が悪いから子の出来も悪いという好ましくない意味で使われることも多い。

同意語: 「この父ありてこの子あり」、「この父にしてこの子あり」
類語: 「蛙の子は蛙

子の心親知らず
(このこころおやしらず)

 親というものは我が子をいつまでも幼いままに見てしまうので、年々成長し発達する子供の気持ちがなかなか理解できないということ。

反意語: 「親の心子知らず

子は鎹
(こはかすがい)

 夫婦の仲を和やかに保つばかりか、危うくなった縁をつなぎとめてくれるのは、二人の間にもうけた子供であるということ。「鎹」は両端の曲がった「コ」の字形の鉄釘。二本の材木に打ち込んで、合わせ目をつなぎとめるのに用いる。

子は三界の首枷
(こはさんがいのくびかせ)

 親は子を思う心に引かされて、子のために苦労しながら生涯を終えるものだということ。「首枷」は罪人の首にはめて動きを封じる刑具。「三界」は三千世界。すなわち衆生が活動する全世界を言う。子を首枷にたとえ、この世では子に対する愛を断ち切れない親だからこそ、子のために自由を奪われると言うのである。

同意語: 「子は三界の首っ枷」

胡馬北風に嘶く
(こばほくふうにいななく)

 故郷の忘れがたいことのたとえ。北方の胡の地に生まれ育った馬は、他国にあっても北風が吹くごとに故郷を慕っていななくという意から。

同意語: 「胡馬北風にいばう」
類語: 「越鳥南枝に巣くう

五風十雨
(ごふうじゅうう)

 吹く風も降る雨もその時を得て、農耕上きわめて好都合であること。世の中が平穏無事であること。五日に一度は風が吹き、十日に一度は雨が降る。儒家ではその風が木の枝を鳴らすほど強く吹かず、その雨が大地をえぐるほど激しく降らないことが太平の世の瑞祥であるとした。

鼓腹撃壌
(こふくげきじょう)

 善政が敷かれ、人々が平和を楽しむさまを言う。「鼓腹」は食に満ち足りて腹つづみを打つこと、「撃壌」は足で大地を踏みならして拍子をとりながら歌うこと。

鼓舞激励
(こぶげきれい)

 ひとを励まし元気を出させること。ひとを奮い立たせはげますこと。

孤峰絶岸
(こほうぜつがん)

 山の高くそびえるさま。また、文章が他から抜きん出て優れるようす。

枯木寒厳
(こぼくかんがん)

 枯れた木と冷たい岩のごとく、世俗を超越して枯淡の境地にあるさま。

独楽の舞い倒れ
(こまのまいだおれ)

 自分だけが休む間もなく立ち働き、結局は大した成果も得られないまま倒れてしまうこと。勢いよく回り続けているときは支えがなくても直立する独楽だが、勢いが衰えるにつれてぐらぐらと揺れ始め、やがてばったりと倒れてしまう。

ごまめの歯軋り
(ごまめのはぎしり)

 実力のない者がやたらに憤慨し、いきりたつこと。ゴマメはカタクチイワシを干したもの。

類語: 「蟷螂とうろうの斧

米の飯と天道様はどこへ行っても付いて回る
(こめのめしとてんとうさまはどこへいってもついてまわる)

 どんな所にも陽の光が当たるように、人間はどんな苦境にあっても食っていけるということ。

類語: 「ここばかりに日は照らぬ

米の飯より思し召し
(こめのめしよりおぼしめし)

 白い米の飯もありがたいが、それを与えてくれた人の気持ちがいっそう嬉しいということ。また、贈り物はその中身より、それを贈ってくれた人の気持ちが嬉しいということ。

米を数えて炊ぐ
(こめをかぞえてかしぐ)

 こせこせと小事にこだわっていては、大事を成すことができないということ。また、けちけちと物惜しみをすること。

子養わんと欲すれども親待たず
(こやしなわんとほっすれどもおやまたず)

 子が親の恩を悟り、さて孝行をしようと思うときには、親はもうこの世にはいない。

類語: 「孝行をしたい時分に親はなし」、「風樹の嘆

子故に迷う親心
(こゆえにまようおやごころ)

 子を愛するがゆえに、親としてどうしていいか分からず、迷い悩んで正常な判断ができないことを言う。

孤立無援
(こりつむえん)

 ひとりぼっちで助けがないこと。

五里霧中
(ごりむちゅう)

 どうしたらよいのかの判断に迷い、方針や見込みがまったく立たないことを言う。「五里霧」は五里四方に立ち込める霧。後漢の張櫂ちょうかいが道術によって五里霧を起こし、人を霧に閉ざしては惑わせたという、『後漢書・張櫂伝』の故事に基づく。

転がる石には苔が生えぬ
(ころがるいしにはこけがはえぬ)

 体をこまめに動かして働く人は病気にならないというたとえ。また、職を転々と変える人は、地位も財産も身につかないというたとえ。本来はイギリスのことわざで、後者の意見だった。

同意語: 「転石苔を生ぜず」、「転石苔蒸さず」

転ばぬ先の杖
(ころばぬさきのつえ)

 しくじらないように前もって十分に用意しておくことが大切だということ。

同意語: 「濡れぬ先の傘
類語: 「跳ぶ前に見よ」、「備えあれば憂いなし」、「予防は治療に勝る

転んでもただは起きぬ
(ころんではただはおきぬ)

 心配しても、その失敗の中から何か利益を得ようとすること。抜け目のない人、貪欲な人のたとえ。

コロンブスの卵
(ころんぶすのたまご)

 一見、誰でも思いつき、誰にでもできそうなことだが、何のヒントもないときに初めてそれを行うのは至難であるということ。新大陸の発見など誰にでもできると中傷されたコロンブス。それではこの卵をテーブルに立ててみよといったが、誰にもできない。そこでコロンブスは卵の尻を潰して立ててみせ、西へ船を進めれば誰でもアメリカ大陸にぶつかったかも知れないが、それを最初に思いつき、実行したことが大切なのだと言ったという故事に基づく。とはいえ、本家本元の西洋にはない話だともいう。

子を知るは父に若くはなし
(こをしるはちちにしくはなし)

 子供の能力や長所・短所は、誰よりもよくその父親が知っているということ。『管子・大匡』に「子を知ること父にくはし、臣を知ること君に若くは莫し」とあるのに基づく。

類語: 「子を見ることは親にかず」、「子を知るものは親」

子を見ること親に如かず
(こをみることおやにしかず)

 親以上に子供のことを知っている者はいない。何と言っても、親が一番わが子の長所や短所を知っているということ。

子を棄つる藪はあれど身を棄つる藪はなし
(こをすつるやぶはあれどみをすつるやぶはなし)

 人は困窮して最愛の子を捨てることはあっても、自分の身を捨てることは出来ない。そういう悲しい存在だということ。

子を持って知る親の恩
(こをもってしるおやのおん)

 自分が親の立場になると、はじめて自分を育ててくれた親の在り難さが分かるということ。

困苦欠乏
(こんくけつぼう)

 物資の不足などからくる困難な状況に苦しむこと。

金剛不壊
(こんごうふえ)

 非常に堅く、決してこわれないこと。志をかたく守って変えないことのたとえ。

言語道断
(ごんごどうだん)

 言葉には言い表せないほど程度がはなはだしく悪いこと。

今是昨非
(こんぜさくひ)

 過去のあやまちを今はじめて悟ること。今になって過去の誤りに気付くこと。これまでのあやまちを後悔していう。

渾然一体
(こんぜんいったい)

 別々のもの、いくつかの物が溶け合って一体となっているさま。

権兵衛が種蒔きゃ烏がほじくる
(ごんべえがたねまきゃからすがほじくる)

 人がせっかく苦労した物事を後から台なしにしてしまうことから、愚かしい無駄な骨折りを言う。「三度に一度は追わずばなるまい」と続く俗謡に基づく。権兵衛は愚直な百姓。まくそばから種を烏についばまれているというのに、さて一向に気がつかない。

金輪奈落
(こんりんならく)

 地下の最も深い所の意から、物事のきわまる所、極限をいう。どこまでも、絶対に。