明鏡止水
(めいきょうしすい)

 邪念がなく、静かに落ち着いた心境のこと。わだかまりのない心を曇りのない鏡と澄みとどまる水にたとえて言う。『荘子・徳充符』には「人は流水にかんがみることく、止水に鑑みる。かがみ明らかなるはすなわ塵垢じんこう止まらざればなり」とある。

名所に見所なし
(めいしょにみどころなし)

 名は必ずしも実を伴わないということ。せっかく名所旧跡を訪ねても、「何だ、これだけのものか」とがっかりする例は多い。

類語: 「名物にうまい物なし

名人は人を謗らず
(めいじんはひとをそしらず)

 名人と言われる人は、他人をけなしたりしない。名人は、自分の力に自信があるから他人のことは気にしないし、他人の長所を認める余裕もある。だから、他人の短所や欠点を批評したりしないということ。

明窓浄几
(めいそうじょうき)

 明るい窓と清潔な机。転じて、清潔で整頓された書斎のたたずまいをいう。

明哲保身
(めいてつほしん)

 聡明で物事の道理にもよく通じた人は、身を安全に全うするということ。『詩経・大雅・烝民』に「既に明にして且つ哲、もっの身を保つ」とあるのによる。本来は立派な処世の態度に言うものだが、今では身の安泰を図る処世術をそしって言うことが多い。

類語: 「明哲を保つ」

冥土の道に王はなし
(めいどのみちに王はなし)

 身分の上下にかかわらず、誰も死を免れることはできないということ。また、死後の世界では誰もが平等であるということ。

類語: 「死は偉大なる平等主義者」

命は天に在り
(めいはてんにあり)

 運命は天の定めるところであるから、人の力ではどうすることもできないということ。『史記・高祖本紀』にあることば。流れ矢に当たった漢の高祖(劉邦りゅうほう)は、「命はすなわち天に在り。扁鵲へんじゃく(名医の名)といえども何の益かあらん」と言って治療を拒んだという。

名物に旨い物なし
(めいぶつにうまいものなし)

 とかく名物には、おいしいものがない。字義通りの意味のほかに、名は実を伴わないことのたとえにも使う。

同意語: 「名物は聞くに名高く食うに味なし」
類語: 「名所に見所なし

明眸皓歯
(めいぼうこうし)

 美しく澄んだ目と白く輝く美しい歯。美人の形容に使う。非業の死を遂げた楊貴妃ようきひいたみ、杜甫とほは「哀江頭の詩」に「明眸皓歯今いずこにかある。血汚の遊魂帰ることを得ず」と詠んだ。756年、安禄山あんろくざんに追われて長安からしょくへ逃れる途中、玄宗げんそう馬嵬坡ばかいのはの仏堂で楊貴妃の命を絶った。

明明白白
(めいめいはくはく)

 はっきりしていて疑う余地のない様子。火を見るより明らか。

目が飛び出る
(めがとびでる)

 高い値段に驚くようす。

目が回る
(めがまわる)

 非常に忙しいようす。

目から鱗が落ちる
(めからうろこがおちる)

 あることがきっかけで、それまで分からなかった真相や本質が急に理解できるようになる。『新約聖書・使途行伝・九章』に「すると、たちまち目から鱗のようなものが落ち、サウロは元通り見えるようになった」とあるのに基づく。“The scales fall from one's eyes.”

同意語: 「目から鱗」

目から鼻に抜ける
(めからはなにぬける)

 非常に賢いようす。また、抜け目がなくすばしこいようす。見たものはすぐにぎ分ける。視覚と嗅覚きゅうかくが連携して鋭く働く。

同意語: 「目から入って鼻へ出る」
類語: 「一を聞いて十を知る

目糞鼻糞を笑う
(めくそはなくそをわらう)

 自分の欠点には気づかず、他人の欠点をあざ笑うこと。鼻糞をけなす目糞も汚いことには変わりがない。

類語: 「猿の尻笑い」、「鍋がやかんを黒いとけなす」

目高も魚のうち
(めだかもととのうち)

 メダカのような小魚でも魚には違いない。どんなに小さく頼りないものでも仲間のうちだということ。また、取るに足りない者が優れた者の中に交じっていることを言う。

類語: 「雑魚ざこの魚交じり」、「蝙蝠こうもりも鳥のうち

滅私奉公
(めっしほうこう)

 私心を捨て、国や社会のために尽くすこと。

目に余る
(めにあまる)

 余りにひどくて見過ごせない。

目に目を歯には歯を
(めにはめをはにははを)

 害を受けたら、それに相応する報復をするということ。『旧約聖書・出エジプト記』に「命には命で、目には目で、歯には歯で、手には手で、足には足で、火傷には火傷で、傷には傷で、打ち身には打ち身で償わなくてはならぬ」とある。応報刑主義は古代の正義であった。紀元前十八世紀に成立したバビロニアのハムラビ法典にも同様の記述が見られる。“An eye for an eye, a tooth for a tooth.”

目に物見せる
(めにものみせる)

 思い知らせる。

目の色を変える
(めのいろをかえる)

 獲得しようと必死になる。

目の上の瘤
(めのうえのこぶ)

 目の上にある瘤は、始終気になってうっとうしい。自分より地位や実力が上で、何かにつけて目障りで邪魔になる存在のこと。江戸いろはがるたの一つ。

同意語: 「目の上のたんこぶ」

目の寄る所へは玉も寄る
(めのよるところへはたまもよる)

 目が動く所へ、目の玉、つまり瞳がついていく。同類の者は自然と集まってくること。また、似たようなことが引き続き起こることを言う。

類語: 「同気相求む」、「類は友を呼ぶ」、「類を以て集まる

目は口ほどに物を言う
(めはくちほどにものをいう)

 まなざしは、ことばと同じように感情を伝えることができるということ。喜怒哀楽の情はまず目に表れる。

類語: 「目は心の鏡」、「目は心の窓」、「目は舌ほどによく喋る」

目は心の鏡
(めはこころのかがみ)

 目を見れば、その人の心が分かるということ。『孟子・離婁上』にも「胸中正しければ、すなわ眸子ぼうしあきらかなり。胸中正からざれば、則ち眸子くらし」とあって、人は自分の心を隠すことができないことを述べる。

類語: 「目は口ほどに物を言う」、「目は心の窓」

目病み女に風邪引き男
(めやみおんなにかぜひきおとこ)

 目を患った女の風情と、風邪を引いた男の風情は粋だということ。うるんだ目を紅絹もみ(紅で染めた絹布)で押さえる女と風邪声でどこか気怠けだるそうな男は色っぽく感じられるものだ。

目を掩うて雀を捕らう
(めをおおうてすずめをとらう)

 現実を直視しないで、つまらない策を弄すること。すずめに気づかれるのを恐れて、自分の目に目隠しをして雀をつかまえようとする。自分に見えなければ相手も見えないと思う愚かしさ。

類語: 「耳をおおうて鐘を盗む

目を掛ける
(めをかける)

 かわいがって面倒をみる。

目を剥く
(めをむく)

 怒って大きな目でにらむ。

免許皆伝
(めんきょかいでん)

 師が芸術・武術などの奥義を残らずすべて弟子に伝授すること。

面従腹背
(めんじゅうふくはい)

 面と向かっては服従していながら、腹の中では背反しているようす。

雌鳥歌えば家滅ぶ
(めんどりうたえばいえほろぶ)

 妻が勢力をふるう家はやがて滅びるということ。権力は男が握るべきものという強い固定観念に縛られた古代中国では、古来、雌鳥が時を告げるのは不吉な前兆だとされた。

同意語: 「牝鶏晨す

雌鳥勧めて雄鶏時を作る
(めんどりすすめておんどりときをつくる)

 夫が妻の意見に従って動くこと。もともとは男性中心の道徳観から妻を非難して言ったもの。

同意語: 「雌鳥につつかれて雄鶏時を歌う」

面壁九年
(めんぺきくねん)

 目標を達成るるために、長年、わき目もふらずに勉学に励むこと。嵩山すうざんの少林寺にこもった達磨だるま大師が、九年の間、壁に向かって座禅を組み、ついに悟りを開いたという故事に基づく。

面々の楊貴妃
(めんめんのようきひ)

 それぞれが自分の妻や恋人を美人だと思うものだということ。「面々」は、それぞれ。「楊貴妃」は、中国・唐時代の絶世の美女の名前。

面目一新
(めんもくいっしん)

 世間の評判が良くなるように、外見や内容を変化させる。改善されること。

面目躍如
(めんもくやくじょ)

 世間の評価を上げて面目をほどこし、生き生きしているようす。