当意即妙
(とういそくみょう)

 その場にうまく適応した即座の機転をきかせるようす。当座の機転。

頭角を現す
(とうかくをあらわす)

 才能や学識が人よりも抜きんでて目立つこと。唐の韓愈かんゆの「柳子厚墓誌銘」に「嶄然ざんぜんとして頭角をあらわす」とあるのに基づく。「頭角」は頭の先。

灯火親しむ可し
(とうかしたしむべし)

 涼風が立ち、夜も長くなる秋は、灯火のもとで読書をするのにふさわしいということ。唐の韓愈かんゆの詩「符読書城南」に「時秋にして積雨れ、新涼郊墟こうきょに入る。灯火ようやく親しむ可く、簡編巻きぶる可し」とあるのに基づく。

堂が歪んで経が読めぬ
(どうがゆがんできょうがよめぬ)

 自分の落ち度や怠慢を、屁理屈をこねて言い逃れること。また、理屈ばかり並べるが、一向に実行に移さないこと。経が読めないのは仏堂が傾いて座りにくいからだと言い訳をすることから言う。

同意語: 「堂が歪んで経が読まれぬ」
類語: 「地が傾いて舞が舞われぬ」

同気相求む
(どうきあいもとむ)

 気の合う者は自然に親しく寄り集まる。『易経・乾卦』に「同声相応じ、同気相求む」とある。「同気」は同じ気質。転じて、同じ仲間を言う。

類語: 「牛は牛連れ馬は馬連れ」、「同類相求む」、「目の寄る所へは玉も寄る」、「友は類をもって集まる」、「類は友をもって集まる」、「類は友を呼ぶ」、「類を以て集まる

桃源
(とうげん)

 ⇒「武陵ぶりょう桃源

陶犬瓦鶏
(とうけんがけい)

 やきものの犬と素焼きの鶏。転じて、ただ形や外見のみがすぐれ、役に立たないもののたとえ。

同工異曲
(どうこういきょく)

 手法は同じだが趣が違うこと。また、表面は違っているようでも、内容はほぼ同じであること。唐の韓愈かんゆの「進学解」にあることば。もとは、音楽の演奏や詩文を作る手際は同じでも、その曲調や作品の趣が異なることを言った。

同日の論にあらず
(どうじつのろんにあらず)

 差が大きすぎて比べものにならないこと。昔は相手の地位や身分によって、事を行う日を別にしたことから、同じ扱いはできない意に転じた。『史記・遊侠伝』に「日を同じくして論ぜざるなり」とあるのに基づく。

同意語: 「同日の談ではない」

冬至冬中冬始め
(とうじふゆなかふゆはじめ)

 冬至は暦の上では冬の最中だが、実際には冬至から本格的な冬が始まるということ。冬至は二十四節気の一つ。太陽暦では十二月二十二日ごろ。一年中で太陽が最も南に寄るときで、昼が最も短くなる。暦の上では冬は立冬(十一月二十日ごろ)から始まるが、本当の寒さは冬至から。

同舟相救う
(どうしゅうあいすくう)

 敵同士でも危難に遭えば互いに助け合うということ。また、同じ境遇の者は互いに助け合うということ。

同意語: 「呉越同舟

同床異夢
(どうしょういむ)

 表向きは同じ立場にありながら考えが異なっていること。また、一緒にいながら心が離れていること。寝床はともにしても見る夢は別の意から言う。

唐人の寝言
(とうじんのねごと)

 さっぱり訳の分からないことば。「唐人」は中国人の古称。転じて、広く外国人の古称。ちんぷんかんぷんの異国語が、寝言でさらにちんぷんかんぷんになるの意から言う。

灯台下暗し
(とうだいもとくらし)

 身近な状況はかえって分かりにくいということ。「灯台」は灯心を立てた油皿をのせて火をともす台。岬に立つ灯台の下も暗いが、ここでいう灯台は航路標識のそれではない。

類語: 「近くて見えぬは睫」、「最も暗いのは燭台の下」

道聴塗説
(どうちょうとせつ)

 よいことばを聞いても、聞きっぱなしで心にとどめおかないこと。また、人の言説を受け売りすること。いいかげんな受け売りの学問の意にも使う。『論語・陽貨』に「道に聴きてみちに説くは、徳をこれ棄つるなり」とあるのに基づく。

尊い寺は門から知れる
(とうといてらはもんからしれる)

 価値の高いものは、その外面を見ただけでも分かるということ。ありがたい寺は山門の立派な構えを見ただけで分かるの意から言う。

同意語: 「尊い寺は門から」、「尊い寺は門から見ゆる」
類語: 「はやる稲荷は鳥居でも知れる」

問うに落ちず語るに落ちる
(とうにおちずかたるにおちる)

 問われたときは用心するから秘密や本心を漏らすことはないが、かえって何気なく話しているときに、うっかりそれを漏らしてしまうものだということ。

同意語: 「語るに落ちる」

盗に食を齎す
(とうにしょくをもたらす)

 盗人に食事を持っていってやる。敵を勢いづけるような愚かなまねをすること。

同意語: 「あだに兵をし盗にかてもたら

堂に升りて室に入らず
(どうにのぼりてしつにいらず)

 学問や技芸が、一定の水準に達してはいるが、まだ奥義をきわめるには至っていないということ。「堂」は客間、「室」は奥の間。『論語・先進』に「堂に升れり、いまだ室に入らざるなり」とあるのに基づき、客間に通るだけの資格はあるが、まだ奥座敷に入る資格はないの意から言う。学問の階梯かいていを、階段を上って堂に入り、それから室に至ることに見立てたもの。

反意語: 「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥

問うは一旦の恥問わぬは末代の恥
(とうはいったんのはじとわぬはまつだいのはじ)

 ⇒「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥

同病相憐れむ
(どうびょうあいあわれむ)

 同じく苦しい境遇に置かれた者は、互いに深く同情し合う。

同意語: 「同類相憐れむ」

豆腐に鎹
(とうふにかすがい)

 一向に手ごたえも効き目もないようす。京都系いろはがるたの一つ。田舎には荒縄で縛れるほど固い豆腐もあるが、それでも鎹を打ち込めばぐずっと崩れてしまう。

類語: 「ぬかに釘」、「石に灸」、「暖簾のれんに腕押し

唐変木
(とうへんぼく)

 気の利かぬ人や偏屈な人をいう語。まぬけ。

東奔西走
(とうほんせいそう)

 東西に奔走する。あちらこちらに、なにかと忙しく駆け回ること。

稲麻竹葦
(とうまちくい)

 人や物が非常に多く入り乱れているたとえ。周囲を幾重にも取り囲んでいるさま。

灯滅せんとして光を増す
(とうめつせんとしてひかりをます)

 物事が滅びる間際にしばらく勢いを盛り返すこと。また、人が死ぬ直前に少し容態がよくなること。『法滅尽経』にあることば。ろうそくなどの灯火がまさに消えようとするとき、瞬時明るさを増すことから言う。

同意語: 「ともしび消えんとして光を増す」

道理百篇義理一遍
(どうりひゃっぺんぎりいっぺん)

 物の道理を百回話して聞かせるよりも、義理の通った行いを一回して見せる方が、人の心を動かせるということ。

桃李物言わざれども下自ら蹊を成す
(とうりものいわざれどもしたおのずからけいをなす)

 徳のある人のもとには、黙っていてもその徳を慕う人々が集まってくるということ。『史記・李将軍伝賛』にあることば。桃やすももは何も言わないが、美しい花を慕い、熟した実を求めて人々が集まるので、木の下には自然と小道ができる。

同意語: 「成蹊せいけい

登竜門
(とうりゅうもん)

 そこを通り抜ければ立身出世ができる関門。「竜門」は黄河の上流にある急流。魚がここをさかのぼれば竜と化すという伝説に基づく。

蟷螂の斧
(とうろうのおの)

 力のないものが、力量もかえりみず強い相手に立ち向かうこと。「蟷螂」はカマキリの漢名。せいの荘公が出猟しようとしたとき、カマキリが前足をあげてその車輪に立ち向かってきたという、『韓詩外伝』の故事に基づく。

同意語: 「蟷螂が斧をもって隆車に向かう」、「蟷螂車轍に当たる」
類語: 「ごまめの歯軋り

遠い親戚より近くの他人
(とおいしんせきよりちかくのたにん)

 いざというときは、遠く離れて疎遠になった親類より近くに住む他人の方が頼りになるということ。

同意語: 「遠い従兄弟より近くの他人」、「遠くの親類より近くの他人」
類語: 「遠水近火を救わず
反意語: 「血は水よりも濃い

十日の菊
(とおかのきく)

 ⇒「六日の菖蒲十日の菊

遠き慮り無き者は必ず近き憂い有り
(とおきおもんばかりなきものはかならずちかきうれいあり)

 遠い将来のことまで考えて行動しないと、近いうちに必ず心配事が起こるということ。『論語・衛霊公』に「人遠く慮り無ければ、必ず近き憂い有り」とあるのに基づく。

同意語: 「遠慮なければ近憂きんゆうあり」

遠きに行くに必ず邇きよりす
(とおきにゆくにかならずちかきよりす)

 遠い場所へ行くには、まず近いところから歩き始める。物事を行うには一足飛びではうまくいかない。それなりの順序を踏んで、手近なことから着実に進めなければならないということ。

類語: 「高きに登るには低きよりす」、「千里の道も一歩から

遠きを知りて近きを知らず
(とおきをしりてちかきをしらず)

 自分から見て遠いことは分かるが、近いことはわからない。他人のことはよく分かるのに、自分のことは案外分かっていないということ。

類語: 「近くて見えぬはまつげ

遠くて近きは男女の仲
(とおくてちかきはだんじょのなか)

 かけ離れているように見えても、男女の仲は意外に結ばれやすいということ。

十で神童十五で才子二十過ぎればただの人
(とおでしんどうじゅうごでさいしはたちすぎればただのひと)

 幼少のときは天才と称された人も、長ずるにつれて多くは平凡な人になってしまうということ。

反意語: 「栴檀は双葉より芳し」、「大器晩成

時に遇えば鼠も虎になる
(ときにあえばねずみもとらになる)

 好機に恵まれれば、つまらない者でも出世して権勢を振るうようになるということ。時を得れば鼠も猫を倒し、虎の権力まで奪うことができるとして言う。

類語: 「時至れば蚯蚓みみずも竜となる」

時の用には鼻を削げ
(ときのようにははなをそげ)

 危急のときには、どんな手段でもとらざるをえないということ。必要とあれば、自分の鼻を切り落とさなくてはならないこともあることから言うとされる。

同意語: 「苦しい時は鼻をも削ぐ」、「時の用には鼻をも削ぐ」、「時の用には鼻を欠け」

時は金なり
(ときはかねなり)

 時間は金銭と同じように貴重であるから、無駄に費やしてはならないということ。ベンジャミン・フランクリンのことばとして知られる“Time is money.”の訳語とされるが、古くからある西洋のことわざとも言う。

時は人を待たず
(ときはひとをまたず)

 ⇒「歳月人を待たず

得意満面
(とくいまんめん)

 誇らし気なようすが顔じゅうに満ちていること。

毒食わば皿まで
(どくくわばさらまで)

 どうせ悪事を犯したのだから、いっそ悪事に徹してしまおうということ。いったん毒入りの料理を口にした以上、皿までなめても同じこと。死ぬことに違いはない。居直ってしまえば、悪行も怖いもの知らず無軌道となる。

同意語: 「毒を食らわば皿まで」

徳孤ならず
(とくこならず)

 有徳の者は決して孤立しない。その徳を慕って必ず人が集まってくることをいう。

読書三到
(どくしょさんとう)

 読書の三つの心構え。心到、眼到、口到。集中し、眼をそらさず、声に出して読む。

読書尚友
(どくしょしょうゆう)

 書物を通じて昔の賢人に親しむこと。

読書百遍
(どくしょひゃっぺん)

 ⇒「読書百篇義自ら見わる

読書百篇義自ら見わる
(どくしょひゃっぺんぎおのずからあらわる)

 どんなに難解な書物でも、繰り返して読むうちに自然に意味が分かるようになるということ。『魏志・王粛伝・注』にあることば。

同意語: 「読書百篇義自ら通ず」、「読書百遍」

読書亡羊
(どくしょぼうよう)

 他のことに気を取られて、本来の任務をおろそかにしてしまうこと。ぞうこくという二人の下男が羊の番をしていたが、臧は読書に、穀は博打ばくちに夢中になって羊を逃がしてしまった。二人のしていたことは違うが、羊を逃がすという失敗をしたことに変わりはないという、『荘子・駢拇』の故事に基づく。

独断専行
(どくだんせんこう)

 他人に相談しないで勝手に決め、物事を行うこと。

毒にも薬にもならぬ
(どくにもくすりにもならぬ)

 害も及ぼさないが役にも立っていない。可もなく不可もない。あってもなくてもいいもの、居ても居なくてもいい人物のたとえ。

類語: 「沈香じんこうも焚かず屁もひらず

独立独歩
(どくりつどっぽ)

 他人にたよらず、自分で自分の考えを実行する。

とくを買いて珠を還す
(とくをかいてたまをかえす)

 外見や形式にばかり心を奪われ、中身の価値を忘れてしまうこと。また、真に値打ちのあるものを軽んじ、くだらないものを大切にすること。「とく」は引き出しのついた小箱。の人が美しく飾った小箱に珠を入れてていの人に売ったところ、鄭の人は箱だけを受け取って中の珠を返してよこしたという、『韓非子・外儲説左上』の故事に基づく。

類語: 「玉を還してひつを買う」

得を取るより名を取れ
(とくをとるよりなをとれ)

 利益を取るよ名誉を取るべきである。名誉は金銭に勝ることを言う。

反意語: 「名を取るより得を取れ

徳を以て怨みに報ゆ
(とくをもってうらみにむくゆ)

 怨みのある者を憎まず、かえて恩恵を施すということ。『論語・憲問』で、「徳を以て怨みに報ゆるは、如何いかん」と問われた孔子は、「直きを以て怨みに報い、徳を持って徳に報ゆ」と答えている。

反意語: 「恩を仇で返す

毒を以て毒を制す
(どくをもってどくをせいす)

 悪人や悪事を滅ぼすための手段として、他の悪人や悪事を利用すること。解毒剤として他の毒薬を用いるの意から言う。漢方では、毒虫や毒草で体内の毒を除く治療法がしばしば用いられた。

同意語: 「以毒制毒」、「毒を以て毒を攻む」
類語: 「火は火で治まる」、「邪を禁ずるに邪をもってす」

どこで暮らすも一生
(どこでくらすもいっしょう)

 どんな所に住もうと、人の一生には変わりがないということ。

同意語: 「蝦夷えぞで暮らすも一生江戸で暮らすも一生」

所変われば品変わる
(ところかわればしなかわる)

 土地が変われば風俗習慣も違ってくるということ。

類語: 「難波なにわの葦は伊勢の浜荻

年問わんより世を問え
(としとわんよりよをとえ)

 その人の年齢よりも、人生経験の中身を問題にしろということ。「世」はその人が送ってきた人生、渡ってきた世間の意。

徒手空拳
(としゅくうけん)

 手に何も持たないこと。事を始めるのに資金や地位などがまったくなく、自分の力だけがたよりであること。

年寄りの言うことと牛の鞦は外れない
(としよりのいうこととうしのしりがいははずれない)

 経験に裏打ちされた老人の意見には、間違いや見当はずれが少ないということ。「鞦」は牛や馬の尻に掛けて、くらや車のながえを固定させるひも。

類語: 「亀の甲より年の劫」、「老いたる馬は道を忘れず

年寄りの冷や水
(としよりのひやみず)

 老人が自分にふさわしくない危険なことや、差し出がましい振る舞いなどをすること。年寄りは若者の真似をして冷水を飲んだり浴びたりしないのが賢明と、老人らしからぬ行為を戒めたり冷やかしたりして言う。

類語: 「年寄りの夜歩き」、「年寄りの力自慢」、「老いの木登り」

塗炭の苦しみ
(とたんのくるしみ)

 非常な苦しみのこと。「塗」は泥水、「炭」は炭火の意で、泥にまみれ炭火で焼かれるような苦しみの意から言う。

とどのつまり
(とどのつまり)

 結局のところ。挙句の果て。成長するにつれて呼称の変わるボラが、最後にはトドとなることから言う。出世魚のボラは稚魚のときはハク、幼魚のときはオボコ、スバシリ、イナなどと呼ばれ、30センチ以上に成長してようやくボラになる。さらに大きくなって体長1メートルほどになったのがトドである。

隣の家の宝を数える
(となりのいえのたからをかぞえる)

 隣の家にどれだけ財産があっても、自分には関係がない。そんなものを数えてみても無意味で、何の役にも立たないということ。

類語: 「人の宝を数える

隣の花は赤い
(となりのはなはあかい)

 他人の物は何でもよく見えて、うらやましくなるということ。隣家の垣に咲くバラはひときわ赤く見え、庭の芝生も青々と見える。

同意語: 「よその花は赤い」
類語: 「隣の牡丹餅ぼたもちは大きく見える」、「隣の芝生は青く見える」、「隣の飯はうまい」、「隣の薔薇は赤く見える」

図南の翼
(となんのつばさ)

 大志を抱き、大事業を興そうとする計画のこと。「図南」は南にいくことを企てること。大鵬が壮大な翼を広げて南海に飛び立つという、『荘子・逍遙遊』の寓話に基づく。

同意語: 「図南の鵬翼ほうよく

駑馬十駕
(どばじゅうが)

 才能の乏しい人も努力をすれば賢者と肩を並べることができるということ。「駑馬」は足の遅い馬で、鈍才のたとえ。「駕」は馬が車を引いて進む一日の行程。駑馬でも十日歩き続ければ駿馬が一日で走る千里の道を行くことができるとして言う。

怒髪冠を衝く
(どはつかんむりをつく)

 逆立った髪の毛が冠を突き上げるほど、激しく怒るようすを言う。『史記・藺相如伝』に「怒髪上がりて冠を衝く」とあるのに基づく。

同意語: 「怒髪天を衝く」

鳶が鷹を生む
(とびがたかをうむ)

 平凡な親がすぐれた子供を生むことのたとえ。

同意語: 「鳶が孔雀を生む」
反意語: 「瓜の蔓に茄子は生らぬ」、「蛙の子は蛙

鳶も居ずまいから鷹に見える
(とびもいずまいからたかにみえる)

 見栄えのしない鳶でも、威厳のある態度を保っていれば鷹のように見える。立ち居振る舞いを正しくしていれば、どんな人間でも立派に見えるということ。

飛ぶ鳥跡を濁さず
(とぶとりあとをにごさず)

 ⇒「立つ鳥跡を濁さず

飛ぶ鳥の献立
(とぶとりのこんだて)

 飛んでいる鳥を見て、まだ捕まえていないのに、もう料理の献立を考えている。成功したことを前提に、あれこれと次の計画を立てることを言う。

類語: 「沖な物あて」、「穴のむじなを値段する」、「捕らぬ狸の皮算用

飛ぶ鳥を落す
(とぶとりをおとす)

 権力や威勢が非常に盛んなようす。多く「飛ぶ鳥を落す勢い」の形で使う。

同意語: 「飛ぶ鳥も落ちる」

土崩瓦解
(どほうがかい)

 土がくずれ瓦が崩れ落ちる。物事が崩れて手のつけようがないこと。

富は屋を潤し徳は身を潤す
(とみはおくをうるおしとくはみをうるおす)

 豊かな財産は家屋を立派に飾るだけだが、徳はその人の品格を尊くするということ。『大学』に「富は屋を潤し、徳は身を潤す。心広くして体胖ゆたかなり」とあるのに基づく。

朋有り遠方より来たる
(ともありえんぽうよりきたる)

 志を同じくする友が遠方よりやって来た。「朋」は学問に志す友。『論語・学而』に「朋有り遠方より来たる、た楽しからずや」とある。

倶に天を戴かず
(ともにてんをいだかず)

 ⇒「不倶戴天

虎に翼
(とらにつばさ)

 それでなくとも勢力のある者に、さらに勢力を加えることを言う。『韓非子・難勢』に、「虎の為に翼をくることかれ」とあるのに基づく。

類語: 「鬼に金棒

捕らぬ狸の皮算用
(とらぬたぬきのかわざんよう)

 まだ手に入るかどうか分からないものを当てにして、あれこれと計画を立てること。狸を捕まえないうちから皮を売って儲ける計算をする意から言う。

同意語: 「皮算用」
類語: 「沖な物あて」、「穴の貉を値段する」、「飛ぶ鳥の献立

虎の威を借る狐
(とらのいをかるきつね)

 有力者の権勢に頼っていばる小人物を言う。狐がまさに自分を食おうとする虎に、「私は天帝に命じられた百獣の王。私を食べれば天帝の意に背くことになります。嘘だと思うならついてらっしゃい」と言った。虎が狐の後に従うと、果たして獣たちはみな逃げ出していく。虎は獣たちが自分を恐れて逃げたことに気づかず、狐の言を信じたという。『戦国策・楚策』の寓話に基づく。

同意語: 「狐仮虎威
類語: 「獅子の皮着て威張るロバ」

虎の尾を踏む
(とらのおをふむ)

 きわめて危険なことをすることのたとえ。尾を踏みつければ、怒った虎に噛み殺されるかもしれない。

同意語: 「竜の鬚を撫で虎の尾を踏む」
類語: 「薄氷を踏む

虎は死して皮を留め人は死して名を残す
(とらはししてかわをとどめひとはししてなをのこす)

 虎は死んだ後もその皮が珍重され、偉業をなした人は死後もその名を語り伝えられる。人は名誉を重んじ、後世に名が残るように努めなくてはならないことを言う。

同意語: 「虎は死して皮を残し人は死して名を残す」、「豹は死して皮を留め人は死して名を留む」
類語: 「人は一代名は末代

虎は千里を行って千里を帰る
(とらはせんりをいってせんりをかえる)

 虎の勢いの盛んなこと、また、子に対する親の愛情が深いこと。虎は一日に千里の道を走り、またその道を帰ることができることから言う。また、我が子を思って千里の道もいとわずに帰ってくるということにも言う。

虎を描いて狗に類す
(とらをえがいていぬにるいす)

 素質もないのに優れた人のまねをし、かえって軽薄になってしまうこと。また、不相応な理想を追い求めて失敗すること。後漢の馬援が甥を戒めて「杜李良ときりょう豪侠ごうきょうな人物だが、この正義の士を見習ったところで、失敗すれば天下の軽薄児となってしまうからやめた方がいい。虎を描こうとして、犬の絵となるようなものだ」と言ったという、『後漢書・馬援伝』の故事による。

同意語: 「虎を描いて成らず」

虎を野に放つ
(とらをのにはなつ)

 虎は檻に入れておいてこそ安全なのに、それを野に放してやる。危険極まりないもの、猛威をふるうものを自由にしてやるたとえ。また、危険を除かないで、災いの種を残すことを言う。

虎を養いて患いを残す
(とらをやしないてうれいをのこす)

 禍根を絶たずにおくと、後になって災いを招くということ。虎の子を殺さずに育てたために、やがて凶暴な猛虎となって手に負えなくなることから言う。

鳥なき里の蝙蝠
(とりなきさとのこうもり)

 優れた者のいない所では、つまらない者が幅を利かすということ。なまじ翼があるばかりに、鳥についたり獣についたりの日和見ひよりみ主義者として軽蔑されてきたのが蝙蝠。飛べば飛んだで、鳥のいない村里ならさぞ大きな顔ができるだろうとそしられる。

鳥の将に死なんとするその鳴くや哀し
(とりのまさにしなんとするそのなくやかなし)

 死に臨んだ鳥の鳴き声には悲痛な趣がある。『論語・泰伯』にあることば。「人の将に死なんとするその言うや善し」と対句をなす。

泥棒に追い銭
(どろぼうにおいせん)

 損した上に重ねて損をするたとえ。泥棒に金をとられた上、さらに金を恵んでやることから。自分に害を加えた相手に利益を与えることを言う。

同意語: 「盗人に追い銭

泥棒を見て縄を綯う
(どろぼうをみてなわをなう)

 急場に臨んでから慌てて対策を立てること。泥棒は捕り縄をなう間に、たんまり盗んで跡をくらましてしまう。

同意語: 「泥縄」、「泥棒を捕らえて縄を綯う」、「盗人を見て縄を綯う」
類語: 「渇して井を穿つ」、「戦を見て矢を矧ぐ」、「敵を見て矢を矧ぐ

団栗の背競べ
(どんぐりのせいくらべ)

 どれもこれも似たり寄ったりで、特に優れたものはないということ。「団栗」はカシ、クヌギ、ナラ、シイなどの実の総称。特に、クヌギの実を言う。わんのような殻で下半を包んだ固い実は形も大きさも代わり映えがしない。

呑舟の魚は枝流に游がず
(どんしゅうのうおはしりゅうにおよがず)

 高遠な志を抱く大人物は、こせこせとした俗世間には住まないということ。また、大人物は小事にこだわらないということ。『列子・楊朱』に「呑舟の魚は枝流に游がず、鴻鵠こうこくは高く飛んで汚池に集まらず」とある。「呑舟の魚」は舟を丸呑みにするほど大きな魚。善悪に関わらず大人物のたとえに使う。

飛んで火に入る夏の虫
(とんでひにいるなつのむし)

 自分から進んで災禍に身を投ずること。夏の夜、灯火を目がけて飛んでくる羽虫が、その火に焼かれて命を落とすことから言う。備え万全な敵陣に乗り込むなどの無謀な行動をあざけって言う。

鳶に油揚げを攫われる
(とんびにあぶらあげをさらわれる)

 大事なものをいきなり横合いから奪われることのたとえ。ふいに横取りされて呆然とするようすにも言う。悠々と空に輪を描いて飛ぶ鳶だが、獲物を見つけたときの動作は素早い。「鳶」は「とび」、「油揚げ」は「あぶらげ」とも読む。

問屋の只今
(とんやのただいま)

 返事ばかりで、実行が伴わないことのたとえ。問屋に注文すると、「はい、ただ今」と返事はよいが、待てど暮らせど届かないことから言う。

類語: 「医者のただ今」、「紺屋の明後日」、「鍛冶屋の明晩」