糠に釘
(ぬかにくぎ)

 いくら努力しても、少しも手ごたえや効き目のないこと。ぬかに釘を打つ意から言う。

類語: 「牛に対して琴を弾ず」、「沼にくい」、「暖簾のれんと相撲」、「暖簾のれんに腕押し」、「泥にきゅう」、「豆腐にかすがい」、「馬の耳に念仏」、「馬耳東風ばじとうふう

抜かぬ太刀の高名
(ぬかぬたちのこうみょう)

 実際に手腕を示したわけではないのに、かえって重んじられること。また、口では有能そうなことを言うが、実際にはその手腕を示したことがない人をあざけって言うことば。太刀を抜いてしまえば実力が知れる、抜かぬうちが花だという意味合いで言う。

類語: 「取らずの大関」

抜け駆けの功名
(ぬけがけのこうみょう)

 他の仲間を出し抜いて得た手柄。味方が出陣する前に、こっそり陣を抜け出して敵陣に攻め入って立てた手柄の意から言う。

盗人に追い銭
(ぬすっとにおいせん)

 損をしたうえにさらに損をすること。「追い銭」は支払いを済ませたうでに、さらに払う余分なお金。泥棒に物を盗まれたうえに、さらに銭を与えてやる意から言う。

同意語: 「泥棒に追い銭」、「盗人に追い」、「盗人に追いを打つ」

盗人に鍵を預ける
(ぬすっとにかぎをあずける)

 災いのもとになるものを、それと知らずに助長すること。また、それと知らずに敵を助けて、みずから窮地に陥ること。

類語: 「あだに兵を貸す」、「盗人に蔵の番」、「猫にかつおの番」

盗人にも三分の理
(ぬすっとにもさんぶのり)

 悪事をするにもそれなりの理由はあるということ。また、その気になりさえすれば、どんな理屈でもつけられるということ。

同意語: 「泥棒にも三分の道理」、「盗人にも三分の理あり」

盗人の昼寝
(ぬすっとのひるね)

 何事にもそれ相応の理由があるということ。盗人が昼寝をするのも、実は夜の悪事に備えてするものだという意味合いで言う。

同意語: 「盗人の昼寝にも当てがある」

盗人を捕らえてみれば我が子なり
(ぬすっとをとらえてみればわがこなり)

 事が意外で、その処置に困ること。また、身近な者に対しても油断できないこと。「きりたくもありきりたくもなし」に続く『新撰犬筑波集』の対句から。

盗人を見て縄を綯う
(ぬすっとをみてなわをなう)

 ⇒「泥棒を見て縄を綯う

盗人上戸
(ぬすびとじょうご)

 甘い物、お酒のどちらもいける「両刀使い」のこと。いくら酒を飲んでもケロリとしていて顔に出ない人のことも指す。

濡れ手で粟
(ぬれてであわ)

 何の苦労もしないで利益を得ること。水に濡れた手であわをつかめば、たくさんの粟粒がそのままついてくることから言う。

同意語: 「濡れ手で粟のぶったくり」、「濡れ手で粟の掴み取り」、「濡れ手に粟」

濡れぬ先こそ露をも厭え
(ぬれぬさきこそつゆをもいとえ)

 過ちを犯さないうちはどんな小さなことも嫌がって慎むが、いったん過失を犯して(あるいは、情を通じて)しまえばもっとひどいことでも平気で犯すようになるということ。濡れる前には濡れることを嫌って露をさえ嫌がるが、一度濡れてしまえばどんなに濡れても気にしなくなることから言う。

類語: 「毒を食らわば皿まで」

濡れぬ先の傘
(ぬれぬさきのかさ)

 失敗しないように前もって用心すること。また、用心のために前もって備えておくこと。雨に濡れる前に傘を用意しておくことから言う。

同意語: 「転ばぬ先の杖