能ある鷹は爪を隠す
(のうあるたかはつめをかくす)

 優れた能力の持ち主は、それを他人にひけらかしたりはしないということ。狩りをする鷹が爪をむき出しにしたのでは、逆に獲物にみすかされることから言う。同じ考えを裏から言ったものに、「空樽あきだるは音が高い」、「口達者の仕事下手」、「最も口達者な者が最も仕事をしない」、「能なし犬の高吠え」、「能無しの口叩き」、「吠える犬は噛みつかぬ」、「鳴く猫鼠捕らず」などがある。

同意語: 「上手の鷹は爪隠す」、「猟する鷹は爪隠す」
類語: 「深い川は静かに流れる」、「鼠捕る猫は爪隠す」、「能ある猫は爪隠す」、「鳴かない猫は鼠捕る」

能工巧匠
(のうこうこうしょう)

 技能に優れた大工、腕の良い職人。現代風にいうと、優秀なアーチスト、デザイナー、エンジニアなどのこと。

能事畢矣
(のうじおわれり)

 成し遂げなければならないことは、すべてやり尽くした、の意。

能書筆を択ばず
(のうしょふでをえらばず)

 書をくする人は、筆のよしあしに関係なく立派な字を書くということ。

類語: 「下手の道具調べ」、「弘法は筆を択ばず」、「善書は紙筆を選ばず

嚢中の錐
(のうちゅうのきり)

 才能のある人は、凡人の仲にあっても自然にその真価が現れるものだということ。袋の中に入れたきりの先はすぐに突き抜けてくることから言う。

同意語: 「錐の嚢中のうちゅうにおるがごとし」、「錐ふくろを通す」
類語: 「鶏群の一鶴

嚢中の物を探るが如し
(のうちゅうのものをさぐるがごとし)

 容易にできることにたとえ。袋の中の物を取り出すのは容易にできることから言う。『五代史・南唐世家』に「中国吾を用いてしょう(大臣)とさば、江南を取ること嚢中の物を探るが如きのみ」とあるのによる。宋の太祖・趙匡胤ちょうきょういんに重用された李穀りこくのことば。

能無しの口叩き
(のうなしのくちたたき)

 口先だけで何の取り得もない人を言う。何の役にも立たない人に限って余計なことをべらべらとしゃべることから言う。同じ考えを裏から言ったものに、「能ある鷹は爪を隠す」がある。

類語: 「吠える犬は噛みつかぬ

のけば他人
(のけばたにん)

 夫婦は、離婚すればまったくの他人になってしまうということ。「のく」は退くの意。どんなに惚れ合って結婚しても、元は他人同士。長年夫婦として苦楽を共にしても、別れてしまえば元の他人に戻るだけだということ。

類語: 「他人の別れ棒の端」

残り物に福がある
(のこりものにふくがある)

 人が取り残した物の中には、思いがけなくよい物があるということ。

同意語: 「余り物に福がある」

喉から手が出る
(のどからてがでる)

 欲しくて欲しくてたまらないこと。最初のうちは飲食物に限られていたが、やがて何についても言うようになった。

喉元過ぎれば熱さを忘れる
(のどもとすぎればあつさをわすれる)

 苦しいことも過ぎてしまえば、その苦しさを簡単に忘れてしまうことのたとえ。熱い物も飲み込んでしまえば、その苦痛がなくなることから言い、苦しいときに受けた恩も楽になればけろりを忘れてしまうことのたとえにも使う。

類語: 「雨晴れて笠を忘る」、「魚を得てうえを忘る」、「暑さ忘れれば陰忘れる」、「病治りて医者忘る

述而不作
(のべてつくらず)

 先賢の説を受け継いで述べ伝えるだけで、しいて自分の新説を立てようとしない。

上り一日下り一時
(のぼりいちにちくだりいっとき)

 坂道を上るには一日かかっても、同じ道を下るにはわずかな時間しかかからない。物事を作り上げるには長い時間と労力を要するが、壊すのはあっという間だというたとえ。

鑿と言えば槌
(のみといえばつち)

 よく気がきくこと。のみを使うにはつちが必要であることを察して事を行う意から言う。京都いろはがるたの一つ。

類語: 「かっと言えば痰壷たんつぼ

飲む打つ買う
(のむうつかう)

 大酒を飲み、ばくちを打ち、女を買うの意で、男の道楽の代表を並べたもの。

矩を踰えず
(のりをこえず)

 ⇒「心の欲する所に従えどものりえず

暖簾に腕押し
(のれんにうでおし)

 少しも手ごたえのないこと。力を入れて暖簾のれんを押しても一向に手ごたえがないことから言う。

同意語: 「暖簾のれんと相撲」、「暖簾のれんすね押し」、「暖簾のれんにもたれるよう」
類語: 「ぬかに釘」、「豆腐に鎹