肺肝を摧く
(はいかんをくだく)

 心を尽くしてさまざまに思いめぐらすこと。杜甫とほの詩「垂老別」に「蓬室ほうしつの居を棄絶して、搨然とうぜんとして肺肝を摧く」とあるのによる。「肺肝」は肺臓と肝臓。これらの臓器は、この場合、思いの宿る場所としての心の意。

同意語: 「肝胆を砕く

敗軍の将は兵を語らず
(はいぐんのしょうはへいをかたらず)

 失敗した者は、そのことについてくどくど言い訳をするものではないということ。戦いに敗れた将軍はいくさについて語る資格がないとして言う。『史記・淮陰侯伝』に「敗軍の将、もって勇を言うべからず。亡国の大夫たいふ、以て存を図るべからず」とあるのによる。

同意語: 「敗軍の将は再び謀らず」、「敗軍の将は兵を談ぜず」、「敗軍の将は勇を談ぜず」

背水の陣
(はいすいのじん)

 一歩も退くことはできないという追い詰められた立場で事に当たること。川や海を背にした決死の陣立ての意から言い、『史記・淮陰侯伝』に「信(韓信かんしんすなわち万人をして先行して出で、水を背にして陣せしむ。ちょう軍望見して大いに笑う」とあるのに基づく。前漢の功臣韓信は、この戦法をとって趙軍を破った。

杯中の蛇影
(はいちゅうのだえい)

 疑ってかかると何でもないものまで神経を悩ますもとになるということ。しん楽広がくこうが友人宅で酒を飲み、杯の中に映った漆絵うるしえの蛇を本物の蛇と見誤り、蛇を飲み込んだと勘違いして病気になった。後で、それが絵に描いた蛇だったことを友人に聞いて納得し、たちまち病気が治ったという。『晋書・楽広伝』などにある故事。

類語: 「疑心暗鬼を生ず」、「幽霊の正体見たり枯れ尾花

杯盤狼藉
(はいばんろうぜき)

 酒席の混乱の状態や酒宴の後、杯や皿が散乱しているさまをいう。

灰を飲み胃を洗う
(はいをのみいをあらう)

 灰を飲んで胃の中の汚れを洗い清める。心を改めて善人になることのたとえ。

枚を銜む
(ばいをふくむ)

 声を立てずに息をこらしていること。「枚」は箸に似た木片の両端にひもをつけたもの。それを兵士や馬の口にくわえさせて頭の後ろでしばり、声を出させないようにした。夜襲や待ち伏せのときに用いた物。

這えば立て立てば歩めの親心
(はえばたてたてばあゆめのおやごころ)

 我が子の成長を待ち望む親心を言う。子供がはうようになると立つことを願い、立てば立ったで歩くことを待ち望む意から言う。

同意語: 「這えば立て立てば歩め」

馬革に屍を裹む
(ばかくにしかばねをつつむ)

 戦場で討ち死にすること。中国では昔、戦死した者の死体を馬の皮に包んで送り返したことから。

馬鹿と鋏は使いよう
(ばかとはさみはつかいよう)

 馬鹿な者も使い方さえ誤らなければ十分に役に立つということ。和鋏が使い方によって切れたり切れなかったりすることから言う。

同意語: 「馬鹿と剃刀かみそりは使いよう」
類語: 「愚者も一得

馬鹿に付ける薬はない
(ばかにつけるくすりはない)

 馬鹿をなおす方法はないということ。思慮のない者をあざけったりするときに使う。

同意語: 「阿呆あほうに付ける薬はない」
類語: 「馬鹿は死ななきゃなおらない」

墓に布団は着せられぬ
(はかにふとんはきせられぬ)

 親が死んでから孝行をしようと思っても手後れである。

同意語: 「石に布団は着せられず
類語: 「孝行をしたい時分に親はなし」、「風樹の嘆

馬鹿の大足
(ばかのおおあし)

 足の大きい人をからかって言うことば。

馬鹿の大食い
(ばかのおおぐい)

 大飯食らいをからかって言うことば。

同意語: 「阿呆あほうの大食い」
類語: 「馬鹿の三杯汁」

馬鹿の一つ覚え
(ばかのひとつおぼえ)

 聞き知った一つのことをいつでもどこでも得意げに振り回す人をからかって言う。

同意語: 「阿呆あほうの一つ覚え」

測り難きは人心
(はかりがたきはひとごころ)

 分からないのが人の心の内で、変わりやすく当てにならないということ。

謀は密なるを貴ぶ
(はかりごとはみつなるをたっとぶ)

 計略は秘密にして進めるのが何よりも大事だということ。漏れれば成功がおぼつかなくなる。

同意語: 「はかりごとは密なるを良しとす」

破顔一笑
(はがんいっしょう)

 顔をほころばせて、にっこりと笑うこと。

掃き溜めに鶴
(はきだめにつる)

 つまらないものの中に一際優れたものが交じっていること。

同意語: 「ごみ溜めに鶴」、「掃き溜めに鶴が降りたよう」
類語: 「鶏群けいぐん一鶴いっかく」、「珠玉の瓦礫がれきに在るがごとし」

馬脚を露す
(ばきゃくをあらわす)

 隠していた正体や悪事があらわになること。「馬脚」は芝居で馬の脚の役をする者。馬の脚を演じていた役者がうっかり自分の姿を見せてしまうことから言う。『元曲・陳州糶米』に「場伽羽を露出し来る」とあるのによる。

同意語: 「しっぽを出す」、「尻が割れる
類語: 「化けの皮が剥がれる

破鏡再び照らさず
(はきょうふたたびてらさず)

 ⇒「落花枝に上り難し破鏡再び照らさず

博引旁証
(はくいんぼうしょう)

 物事を決したり論じたりするとき、多くの材料を引きだし、証拠や関連の事物をあまねく示すこと。

博学多才
(はくがくたさい)

 広くいろいろな学問に通じ才能が豊かなこと。

莫逆の友
(ばくぎゃくのとも)

 心の通い合った親しい友人のこと。「莫逆」は逆らうことしの意。『荘子・太宗師』に「四人相て笑い、心に逆らうことついに相ともに友とる」とあるのによる。

同意語: 「莫逆の契り」、「莫逆の交わり」
類語: 「心腹の友

白玉楼中の人となる
(はくぎょくろうちゅうのひととなる)

 文人が死ぬことのたとえ。唐の詩人李賀りがが臨終のときに、赤い衣を着た天帝の使いが来て「天帝が白玉楼を造り、あなたを召してその記を書かせることになった」と告げたという、『唐詩紀事・李賀』に見える故事から言う。「白玉楼」は、文人が死後に行くという天上の楼閣のこと。

同意語: 「白玉楼中の人と化す」

薄志弱行
(はくしじゃっこう)

 意志が弱く行動力に乏しいこと。物事を断行する力に欠けること。

白砂青松
(はくしゃせいしょう)

 白い砂浜と青い松が続く、海辺の美しい景色のこと。日本に多い景勝を形容する語。

麦秀の嘆
(ばくしゅうのたん)

 亡国の嘆きのたとえ。「麦秀」は麦の穂がのびることで、いん紂王ちゅうおうの悪逆無道をいさめたが聞き入れられなかった叔父の箕子きしは、殷滅亡のあと周王朝に仕えた。周に入朝する途中、殷の都の跡を通りかかると、宮殿は荒れ果て、田畑と化して麦やきびが生い茂っていた。それを見て胸を痛め、「麦秀の歌」を作って嘆じたところ、殷の遺民は皆涙を流したという。『史記・栄世家』に見える故事。

類語: 「黍離しょりの嘆」

拍手喝采
(はくしゅかっさい)

 手をたたいて、さかんに褒めたたえること。

伯仲の間
(はくちゅうのかん)

 優劣がつけがたいことのたとえ。「伯」は兄、「仲」は弟の意で、どちらを兄と呼びどちらを弟と呼んでいいのか分からないことから言う。

同意語: 「けいたり難くていたり難し

幕天席地
(ばくてんせきち)

 士気が壮大な形容。また、小さいことにこだわらないさま。

白頭新の如し
(はくとうしんのごとし)

 心が通じ合わなければ、白髪になるまで交際しても意味がないということ。「傾蓋けいがいの如し」と対句の形で使うことも多い。『史記・鄒陽伝』に見える。

白髪三千丈
(はくはつさんぜんじょう)

 憂愁のために白髪が長く伸びたことを誇張して言ったことば。唐の詩人李白りはくの「秋浦歌」に「白髪三千丈、愁いにってかくごとく長し、知らず明鏡の裏、いずれの処にか秋霜を得たる」とあるのによる。

白馬は馬に非ず
(はくばはうまにあらず)

 詭弁きべん、すなわち、でたらめの論法を言う。戦国時代の思想家・公孫竜こうそんりゅうの論法で、「馬」は形について言い、「白」は色について言う、色について言うのと形について言うのとは別物であるから、白馬は馬ではない、というもの。『公孫竜子・白馬論』に見える。本来、「白馬と馬とは同一ではない」という意味だが、一般に「白馬は馬に属さない」と解されて詭弁の代表となった。

同意語: 「白馬非馬の論」
類語: 「堅白同異の弁

白眉
(はくび)

 多くのものの中で最も優れたもの。しょくの馬氏の五人兄弟はいずれも秀才の誉れが高く、中でも長兄の馬良ばりょうが最も優れていたが、その眉に白い毛が交じっていたので、「白眉」と称されたという。『三国志・蜀志・馬良伝』に見える故事に基づく。

同意語: 「馬良白眉」

薄氷を踏む
(はくひょうをふむ)

 非常な危険をおかしてひやひやすること。薄くて壊れやすい氷を踏むことから言う。『詩経・小雅・小旻』に「戦戦兢兢せんせんきょうきょうとして深淵に臨むがごとく、薄冰はくひょうむが如し」とあるのによる。

類語: 「危うきこと累卵の如し」、「虎の尾を踏む

白璧の微瑕
(はくへきのびか)

 白い宝玉にあるほんのかすかなきず。ほとんど完璧なものにごく僅かな欠点があること。「璧」はぎょくを平たい輪の形に加工したもの。

同意語: 「玉に瑕

伯楽の一顧
(はくらくのいっこ)

 優れた人物に認められること。また、そのようにして力を発揮すること。「伯楽」は春秋戦国時代の名馬の鑑定家、孫陽の別名。伯楽が一度振り返ると、それまで売れなかった馬が十倍の値段で売れたということから言う。『戦国策・燕策』に見える故事。

博覧強記
(はくらんきょうき)

 広く書物を読み、それらを非常によく記憶していること。知識が豊富なこと。

白竜魚服
(はくりょうぎょふく)

 貴人が身分を隠して出歩いて災難に遭うこと。霊力を持つ白竜がただの魚に化けたために、予且よしょという漁師に射られたことから言う。『説苑・正諫』に、戦国時代、人民と一緒に酒を飲もうとした王・夫差に、伍子胥ごししょが白竜魚服のたとえを引いて、王の微行びこう(お忍び)を思いとどまらせた話がある。「魚服」は高貴の人が身をやつすこと。

化けの皮が剥がれる
(ばけのかわがはがれる)

 隠し続けてきた正体や本性が露見すること。

類語: 「尻尾を出す」、「馬脚をあらわ

箸が転んでも笑う
(はしがころんでもわらう)

 日常のささいなことにもよく笑う意。

同意語: 「箸が転んでもおかしい」

馬耳東風
(ばじとうふう)

 人の意見や批判に心をとめず、聞き流すこと。「東風」は春風の意で、心地よい春風も馬の耳には心地よいとは感じられないことから言う。唐の李白りはくの五言古詩(王十二の寒夜独酌おもい有るに答うるの詩)に「世人これを聞きて皆頭をり、東風の馬耳を射るがごときあり」とあるのに基づく。

類語: 「牛に対して琴を弾ず」、「糠に釘」、「猫に小判」、「馬の経文」、「馬の耳に念仏

箸にも棒にも掛からぬ
(はしにもぼうにもかからぬ)

 能力などが著しく劣っていて、取り扱いようがないということ。小さな箸でも大きな棒でも扱えない意から言う。

類語: 「縄にもかずらにもかからぬ」、「縄にも杓子しゃくしにもかからぬ」

始めが大事
(はじめがだいじ)

 物事は最初が肝心であるということ。最初にとった態度や方法が後々まで影響を及ぼすことから、物事はよく準備してかからなければならないという教え。

類語: 「始めが半分」、「始めに二度なし」、「始めよければ終わりよし」、「始めよければ半ば勝ち」

始めちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣くとも蓋取るな
(はじめちょろちょろなかぱっぱあかごなくともふたとるな)

 うまい御飯を炊き上げるこつを調子よく言ったことば。始めとろ火、中ごろは強火で、どんなことがあっても蓋を取るなと教える。

始めの囁き後のどよみ
(はじめのささやきのちのどよみ)

 初めのうちはひそひそと囁かれて噂になっていたことも、やがては人々に騒がれて評判になることを言う。「どよみ」はどよめきのこと。

始めは処女の如く後は脱兎の如し
(はじめはしょじょのごとくのちはだっとのごとし)

 始めは処女のように弱々しく見せて油断させ、後には逃げる兎のように素早く敵を攻撃するということ。孫子そんしの兵法の一つ。『孫子・九地』に「始めは処女の如くんば、敵人戸を開く。後は脱兎の如くんば、敵ふせぐに及ばず」とあるのによる。

同意語: 「脱兎の如し」

破邪顕正
(はじゃけんしょう)

 不正を打破し、正義を実現すること。

箸より重い物を持ったことがない
(はしよりおもいものをもったことがない)

 富有な家に生まれて、大切に育てられたこと。また、力仕事などの労働の経験がないこと。

同意語: 「重い物は箸と茶碗」

二十後家は立つが三十後家は立たぬ
(はたちごけはたつがさんじゅうごけはたたぬ)

 結婚して間もなく夫に死別された寡婦は、まだ夫婦生活の喜びを知らないので独り身を通すことができるが、長く夫婦生活を味わった寡婦は再婚することが多いということ。「立つ」は、傷つけられずに保たれるの意。

同意語: 「十八後家は立つが四十後家は立たぬ」

破竹の勢い
(はちくのいきおい)

 止めようとしても止められない、激しい勢い。特に、勢い盛んに敵を打ち砕くことに言う。竹は一端に割れ目を入れると、とどまることなく割れていくことから言う。『晋書・杜預伝』『北史・周高祖紀』などに見える。

八十八夜の別れ霜
(はちじゅうはちやのわかれじも)

 八十八夜を最後にして霜が降りなくなることを言う。「八十八夜」は立春から八十八日目の日で、五月二、三日ごろ。農家では霜害がなくなることを確認し、種まきの目安とする。

同意語: 「五月五日の別れ霜」、「八十八夜の霜別れ」、「八十八夜の別れ小霜」、「八十八夜の忘れ霜」、「八十八夜の名残霜」

八面六臂
(はちめんろっぴ)

 多方面にめざましい手腕を発揮して、独りで数人分の働きをすること。「臂」は肘。八つの顔と六つの腕をもつ意で、仏像にかたどる。

同意語: 「三面六臂」

白駒の隙を過ぐるが若し
(はっくのげきをすぐるがごとし)

 時の過ぎ去るのが早いこと。白い馬が壁の細い隙間を一瞬のうちに過ぎ去ることから言う。『荘子・知北遊』の老子と荘子の問答における老子のことばで、「人の天地の間に生くるは、白駒のげきを過ぐるがごとく、忽然こつぜんたるのみ」とあるのによる。

同意語: 「隙駒」、「隙行く駒」、「白駒」、「白駒の隙を過ぐ」
類語: 「光陰矢の如し」、「歳月人を待たず

抜苦与楽
(ばっくよらく)

 仏教で、衆生の苦しみを取り除いて安楽を与えること。仏の慈悲のはたらきをいう語。

八紘一宇
(はっこういちう)

 全世界を一つの家のように統一すること。宇は家のこと。

白虹日を貫く
(はっこうひをつらぬく)

 君主が臣下の氾濫にあう前兆が現れること。白色の虹が太陽の面を貫いてかかる意で、「白色の虹」を武器の、「日」を君主の象徴としたことから言う。『戦国策・魏策』に見える唐且とうしょのことば。

抜山蓋世
(ばつざんがいせい)

 力や気力が途方もなく大きいこと。『史記・項羽本紀』に「力は山を抜き気は世をおおい、時利あらずすい項羽こううの愛馬の名)逝かず、騅の逝かざるは奈何いかんとすべき、や虞やなんじを奈何せん」とあるのによる。の項羽が漢の劉邦りゅうほうの軍に垓下がいかで囲まれ、「四面楚歌」の憂き目にあたっとき、最愛の虞美人と最後の酒宴を開いたときの歌。力も気力も充実しているのに、ただ時が味方しないと言って嘆く。

同意語: 「力山を抜き気世を蓋う」

這っても黒豆
(はってもくろまめ)

 自明の道理を自明と認めず、どこまでも自説を曲げずに強情を張ること。黒いものを見て、二人で「虫だ」「黒豆だ」と言い争っていたところ、それが這い出したが、それでも一方は「黒豆だ」と言い張ったという話から。

類語: 「鹿を指して馬となす」、「石にくちすすぎ流れに枕す

八方美人
(はっぽうびじん)

 誰にも悪く思われないように要領よくふるまうこと。また、そのような人。

抜本塞源
(ばっぽんそくげん)

 一番のもととなる原因を抜き去ること。害を防ぐため、根本にさかのぼって物事を処理すること。

初物七十五日
(はつものしちじゅうごにち)

 初物を食べると寿命が七十五日延びるとして、初物の効用を珍重する言葉。

撥乱反正
(はつらんはんせい)

 世の乱れを治め、もとの平和の世に返すこと。

破天荒
(はてんこう)

 今まで誰一人としてできなかったことを初めて成し遂げること。元来は、天荒(荒れ果てた大地)を切り開く意。唐代、荊州けいしゅうからは進士の合格者が一人も出なかったが、大中四年(850)、劉蛻りゅうぜいが初めて合格の栄誉を勝ち取ったとき、人々はそれを「天荒を破る」と称したという。『北夢瑣言』などに見える故事に基づく。今では、「常識外れであきれた」といった悪い意味合いで使うことが多い。

類語: 「開闢かいびゃく以来」、「古今未曾有みぞう」、「前古未曾有みぞう」、「前人未到」、「前代未聞

鳩に三枝の礼あり烏に反哺の孝あり
(はとにさんしのれいありからすにはんぽのこうあり)

 子は親に対して、礼儀と孝行とを重んじなければならないということ。鳩の子は親鳥のとまる枝から三枝下がってとまり、烏の子は老いた親鳥に口移しに餌を与えるの意から言う。

同意語: 「烏に反哺の孝あり」、「三枝の礼」、「反哺の孝」

花一時人一盛り
(はないっときひとひとさかり)

 花が美しく咲き誇るのも僅かな期間に過ぎないように、人の最盛期もごく短期間であるということ。

同意語: 「花七日」

花多ければ実少なし
(はなおおければみすくなし)

 うわべのよい人はとかく誠実ではないということ。花を多くつける木は実を少ししかつけないとして言う。

類語: 「巧言令色すくなし仁

話上手の聞き下手
(はなしじょうずのききべた)

 話の上手な人は自分だけいい気持ちになって話してしまいがちで、人の話に耳を傾けないことが多く、聞くのが下手だということ。

話上手は聞き上手
(はなしじょうずはききじょうず)

 本当に話の上手な人は、人の話を聞くこともまた上手であるということ。

話半分腹八分
(はなしはんぶんはらはちぶ)

 人の話には誇張や粉飾が多いから、その半分を信じるくらいの気持ちで聞くのがよく、食事は腹八分目くらいでやめるのがよいということ。

同意語: 「話半分腹八合」

花に嵐
(はなにあらし)

 ⇒「月に叢雲むらくも花に風

花盗人は風流のうち
(はなぬすっとはふうりゅうのうち)

 よその庭の花を一枝手折るのは、その美しさにひかれた風流心のなせるわざだから、とがめだてするほどのことではない。桜の花を手折ったときの言い訳に使われる言葉。

花の下より鼻の下
(はなのしたよりはなのした)

 風流よりは毎日の生活の方が大切であるということ。「鼻の下」は口の意。美しい花の下で風流を楽しむよりは、口をのりする毎日の生活の方が先決だとしていう。

類語: 「花より団子

花は折りたし梢は高し
(はなはおりたしこずえはたかし)

 花の咲いた枝を折りたいが、その枝が高いところにあるので手が届かない。手には入れたいが、それを達成する方法がないということ。世の中はとかくままならぬものだというたとえ。

花は桜木人は武士
(はなはさくらぎひとはぶし)

 花は桜が最高、人は桜のように散りぎわの潔い武士が最高ということ。

同意語: 「花はみ吉野人は武士」、「人は武士花はみ吉野」、「人は武士花は桜」
類語: 「木はひのき人は武士」

花は根に鳥は古巣に
(はなはねにとりはふるすに)

 咲き終わった花はその木の根元に落ち、飛んでいる鳥はやがて古巣に帰る。物事はすべてその根源へ戻っていくということ。

同意語: 「花は根に帰る」、「鳥は古巣に帰る」

花も実もある
(はなもみもある)

 外観が美しいだけでなく内容も優れていること。名実ともに優れていること。「花」を情に、「実」を理に見立てて、情理ともにかね備えているたとえにも使う。

花より団子
(はなよりだんご)

 風流よりは実利、外観よりは実質を重んじるということ。桜花の美しさを鑑賞するよりは団子を食べて腹の足しにした方がよいの意で言うが、花見と称して飲み食いにだけ興じることへの皮肉ともする。

類語: 「一中節いっちゅうぶしより鰹節」、「花の下より鼻の下」、「見栄張るより頬張れ」、「思し召しより米の飯」、「詩を作るより田を作れ」、「色気より食い気」、「念仏申すより田を作れ」

歯に衣着せぬ
(はにきぬきせぬ)

 心に思っていることをずけずけと言うこと。忌憚きたんなく言うこと。

反意語: 「奥歯に衣を着せる

歯滅びて舌存す
(はほろびてしたそんす)

 剛強なものが先に滅び、柔弱なものが後まで生き残るということ。堅い歯は抜け落ちても、柔らかい舌は後まで残ることから言う。老子が友人の常樅じょうしょうの病気を見舞ったところ、歯はすっかり抜け落ちていたが、舌は残っていた。これを見て老子が「それ舌の存するや、あにその柔なるをもってするにあらずや。歯のほろぶるや豈その剛なるを以てするにあらずや」と言ったという故事による。『説苑・敬慎』に見える。

同意語: 「歯ちて舌存す」
類語: 「柔能く剛を制す

早牛も淀遅牛も淀
(はやうしもよどおそうしもよど)

 物事に遅速はあっても、行き着くところは同じであるということ。歩みに遅速はあっても行き着くことろは淀であるという意から言い、多く、同じ結果になるならば慌てることはないの意で使う。「淀」は京都の外港として栄えた所。

同意語: 「遅牛も淀早牛も淀
類語: 「牛も千里馬も千里」

早起きは三文の得
(はやおきはさんもんのとく)

 朝早く起きると、何かしらよいことがあるということ。「三文」は一文銭三枚で、わずかの意。

同意語: 「朝起きは三文の得」

早飯も芸のうち
(はやめしもげいのうち)

 飯が早く食えることも、それはそれで芸の一つであるということ。

同意語: 「早飯早糞はやぐそ芸のうち」

流行物は廃り物
(はやりものはすたりもの)

 いま流行しているものは、やがては廃れて顧みられなくなる。流行は一時的なもので、長続きはしないということ。

腹が立つなら親を思い出せ
(はらがたつならおやをおもいだせ)

 腹が立ってならないときは、今ここでしばらく親のことを思い出して気を鎮めよということ。ここで短気を起こして暴力ざたにでも及ぶと、親がどんなに悲しむかを考えよという意で言う。

同意語: 「腹が立つなら親を思い出すが薬」

腹が減っては戦ができぬ
(はらがへってはいくさができぬ)

 腹が減っていては何をやってもいい仕事はできないということ。仕事にかかる前にはエネルギーの補給が必要だという教え。

腹立てるより義理立てよ
(はらたてるよりぎりたてよ)

 腹を立てても何にもならない、同じ立てるなら人には義理を立てておけということ。

腹に一物
(はらにいちもつ)

 心中ひそかに、何か企みを抱いていること。「腹」は心の内の意。

同意語: 「胸に一物

薔薇に刺あり
(ばらにとげあり)

 バラにとげがあるように、美しいものには人を傷つける恐ろしい一面があるということ。西洋のことわざで、“No rose without a thorn.(とげのないバラはない)”の訳語の一つ。どんな美しいものにも醜い一面があるの意にも解する。

腹の皮が張れば目の皮が弛む
(はらのかわがはればめのかわがたるむ)

 腹が一杯になれば、自然と眠くなるということ。血液が消化に費やされる分だけ、頭の働きが鈍くなり眠くなる道理である。飽食は怠惰のもととする解もある。

腹八分目に医者いらず
(はらはちぶんめにいしゃいらず)

 満腹するまで大食いをしないで、腹八分目におさえておくと健康が保てるということ。

同意語: 「腹八合に医者いらず」、「腹八分に病なし」
類語: 「大食は病のもと」、「大食は命の取り越し」、「大食短命」、「腹八分目卑しからず」

腹も身のうち
(はらもみのうち)

 腹も体の一部であるから、暴飲暴食は慎まねばならないということ。

同意語: 「腹も身のうち食傷も病のうち」、「腹も他人でない」

波乱万丈
(はらんばんじょう)

 波が非常に高いように物事の変化が起伏に富んではげしいことのたとえ。

針の穴から天を覗く
(はりのあなからてんをのぞく)

 自分の狭い見識で大きな物事について勝手な判断を下すこと。

同意語: 「鍵の穴から天を覗く」、「針の穴から天上覗く」、「針の溝から天を覗く」
類語: 「よしの髄から天上覗く」、「井の中のかわず大海を知らず」、「貝殻で海を測る」、「管の穴から天を覗く」、「管を以って天をうかが」、「れいもって海を測る」

針の筵
(はりのむしろ)

 ひどい責め苦にあうなどして、少しも気の休まることのない状況のたとえ。針を植えたむしろに座らされる意から言う。

針ほどのことを棒ほどに言う
(はりほどのことをぼうほどにいう)

 針のように小さなことを、棒ほどの大きさに言う。物事を大げさに言うたとえ。

類語: 「針小棒大

葉をかいて根を絶つ
(はをかいてねをたつ)

 木の余分な枝を取り除き過ぎて、大切な根元までだめにして木を枯らしてしまう。つまらない末端のことにこだわり、全体をだめにしてしまうことのたとえ。

類語: 「角をめて牛を殺す

反間苦肉
(はんかんくにく)

 自分の身を苦しめたり、自分にとって不利益に見えることをしたりして相手をあざむき、敵同士の仲を裂く計略を行うこと。

盤根錯節
(ばんこんさくせつ)

 ⇒「槃根錯節

槃根錯節
(ばんこんさくせつ)

 複雑に入り組んでいて、解決や処理が困難な事件や事柄。「槃根」は曲がりくねった根、「錯節」は入り組んだ節。

同意語: 「盤根錯節」、「盤錯」

犯罪の陰に女あり
(はんざいのかげにおんなあり)

 多くの場合、犯罪には女性が関係しているものだということ。フランス語の慣用句“Cherchez la femme.(女を捜せ)”を意訳したものの一つ。女を捜せば犯罪の手掛かりが得られるということ。

同意語: 「犯罪の陰には必ず女あり」

万事休す
(ばんじきゅうす)

 万策尽き果てて、もはやどうすることもできない。「休す」は休む・憩うの意ではなく、停止するの意。一切の物事が休止して動かなくなる意から言う。唐の李白りはくの「老熱の詩」に「一飽百情足り、一酣いっかん万事休す」、何人か衰老せざらん、我老いて心に憂え無し]]とある。

万死に一生を得る
(ばんしにいっしょうをえる)

 ⇒「九死に一生を得る

半死半生
(はんしはんしょう)

 死にかかっているようなとてもあぶない状態。

半畳を入れる
(はんじょうをいれる)

 人の言動を非難したり、茶化したりするたとえ。「半畳」は座布団代わりにする小さなござ。昔、芝居見物の客が、芝居の筋立てや訳者の芸が気に入らなかったとき、その半畳を舞台に投げ込んで不満を表したことから。

半信半疑
(はんしんはんぎ)

 本当かどうか信じ切れないようす。真偽の判断に迷うこと。

半醒半睡
(はんせいはんすい)

 半ば目覚め、半ば眠っていること。目覚めているのかどうか定かではない朦朧とした状態。

反哺の孝
(はんぽのこう)

 ⇒「鳩に三枝の礼あり烏に反哺の孝あり

半面の識
(はんめんのしき)

 ほんのちょっとした知り合いのこと。後漢時代の人応奉おうほうは、二十歳のとき、戸の間から顔を半分だけ出していた人を見かけただけだったのに、数十年後に道で会ったときその人を覚えていて声をかけた。

万緑叢中紅一点
(ばんりょくそうちゅうこういってん)

 ⇒「紅一点