大隠は市に隠る
(たいいんはいちにかくる)

 本物の隠者は、俗事に心を乱されることがないので、超然として町の中に住む。

大恩は報ぜず
(たいおんはほうぜず)

 人は小さな恩義にはいつか報いなくてはという負い目を感じるが、大き過ぎる恩義には気づかず、かえって平然としていられるということ。

類語: 「提灯を借りた恩は知れども天道の恩は忘れる

大海は芥を択ばず
(たいかいはあくたをえらばず)

 広い海が塵も芥もすべて流れ込むにまかせるように、度量の大きな人物はどんな人でもよく受け入れるということ。大人物は塵芥に例えられるような小人物でも受容し、包み込む。

同意語: 「大海は塵を択ばず」
類語: 「河海かかいは細流を択ばず

大喝一声
(だいかついっせい)

 大声で叱りつけること。

大願成就
(たいがんじょうじゅ)

 願いが遂げられること。大願が神仏の加護によってかなえられること。

対岸の火事
(たいがんのかじ)

 川向こうの火事はこちら側に飛び火することはない。どんな大事件であっても、見ている人間には関係なく、痛くも痒くもないというたとえ。

同意語: 「対岸の災害」

大姦は忠に似たり
(たいかんはちゅうににたり)

 大悪人は本性を隠して忠実に主君に仕えるので、かえって忠臣のように見える。「大姦」は極悪人。悪人も大物となればなかなか尻尾をつかませないものだ。

大義親を滅す
(たいぎしんをめっす)

 国や主君に尽くすためには、臣下は私情を棄て、親子兄弟さえも犠牲にするということ。『春秋左氏伝・隠公四年』にあることば。「大義」は人として行うべき重大な道義。昔それは、まず個を棄てて国家や君主に尽くすことであった。

大儀は大悟の基
(たいぎはたいごのもとい)

 大きな疑いを持つことが、大きな悟りに至る基本である。疑いを持たなければ悟りは開けないということ。

大器晩成
(たいきばんせい)

 優れた才能のある人は、若いころには目立たなくても、年を取ってから大成するということ。『老子・第四十一章』にあることば。鐘やかなえのような大きな器はそう簡単には完成しない。人も大人物になればなるほど成熟までに時間がかかる。

反意語: 「十で神童十五で才子二十過ぎればただの人」、「栴檀は双葉より芳し

大義名分
(たいぎめいぶん)

 ある行為のたてまえとなる理由づけや道理をいう。

大工の掘っ立て
(だいくのほったて)

 立派な家を建てるのが仕事の大工だが、自分は掘っ立て小屋のような粗末な家に住んでいる。他人のためには仕事だからせっせとやるが、自分のことにまで手は回らないたとえ。

類語: 「易者身の上知らず」、「医者の不養生」、「紺屋こうやの白袴

大言壮語
(たいげんそうご)

 意気盛んに、大変勇敢で大きなスケールの話しをすること。

同意語: 「壮言大語」

大賢は愚なるが如し
(たいけんはぐなるがごとし)

 本当の賢者は賢さを表に出さないから、一見愚者のように見える。

類語: 「大巧は拙なるが若し

大行は細謹を顧みず
(たいこうはさいきんをかえりみず)

 大事業を成し遂げようと志す者は、細かい事柄にこだわったりはしない。「細謹」は、ささいな礼儀作法。中国・前漢の高祖劉邦りゅうほうが、鴻門こうもんの会の宴会の半ばで身の危険を感じて便所に立ち、そのまま逃げ出そうとした際、楚王項羽こううに挨拶しようとした劉邦を止めて、付き添いの家臣がそのまま立ち去らせるために言った言葉。『史記・項羽本紀』の故事に基づく。

大巧は拙なるが若し
(たいこうはせつなるがごとし)

 本当の名人上手は技芸を飾ったり腕を自慢したりしないので、かえって下手くそに見えるものだ。『老子・第四十五章』にあることば。無為自然が最善の効果を生むので、何事も下手な小細工などしない方がよいということ。

同意語: 「大巧は為さざる所にあり」
類語: 「大賢は愚なるが如し

大功を成す者は衆に謀らず
(たいこうをなすものはしゅうにはからず)

 大事業を成し遂げるほどの者は、あれこれと人の意見を聞いたり相談したりはしないものだ。『戦国策・趙策』にあることば。指導者にしっかりとした決断力がないと、議論百出して収拾がつかなくなるし、機密も保てなくなる。

大悟徹底
(たいごてってい)

 物事の本質・真理を悟って執着心・煩悩を断ち切り、吹っ切れた心境になること。

大根を正宗で切る
(だいこんをまさむねできる)

 名刀正宗で大根を切る。事を大げさにすること。また、大人物につまらない仕事をさせるたとえ。「正宗」は名刀の代名詞ともなっている鎌倉時代の刀。

類語: 「鶏をくにいずくんぞ牛刀を用いん

泰山北斗
(たいざんほくと)

 その道の第一人者として仰がれ、尊ばれる人。「泰山」は中国山東省にある名山、「北斗」は北斗星で、ともに最も優れたものとして仰ぎ見られる対象。

同意語: 「泰斗」

大山鳴動
(たいざんめいどう)

 大きい山がうなりを発して揺れ動く。大きな騒ぎのたとえ。

大山鳴動して鼠一匹
(たいざんめいどうしてねずみいっぴき)

 大騒ぎしたわりには結果が小さいこと。「産気づいた山から生まれたのは鼠一匹」という、ローマの詩人ホラティウスのことばに基づく。大きな山が鳴り響き揺れ動く。何事かと思って見守れば、やがて飛び出してきたのはたった一匹の鼠だった。

大事の前の小事
(だいじのまえのしょうじ)

 (1)大きな事を行うときは、小さな事にも気を配らなくてはならないということ。大事をなさそうと思うならば、大事の前にきちんと小事をなしておけの意で、小事を軽んじては大事はなしえないことを言う。
 (2)大きな事を行うときは、小さな犠牲はやむを得ないということ。大事を前にしては小事はとるに足りないの意で、小事にかまけていては大事はなしえないことを言う。


類語: 「大事の前に小事なし」

大事は小事より起こる
(だいじはしょうじよりおこる)

 どんな重大な出来事も、ささいなことが原因となって引き起こされるということ。ちょっとした油断が大きな失策を招き、小さな事件が大事件に発展する。小事を侮ってはならない戒めとする。

大声は里耳に入らず
(たいせいはりじにはいらず)

 高尚な議論は、一般の人々にはなかなか理解されないものだ。『荘子・天地』にあることば。「大声」は優れた音楽。「里耳」は俗人の耳。もとは、格調の高い音楽は、俗謡を聴き慣れた耳にはちんぷんかんぷんだの意。

泰然自若
(たいぜんじじゃく)

 おちつきはらって物事に動じない。安らかでもとのまま変化せず平気な様子。

大胆不敵
(だいたんふてき)

 度胸があって物事を恐れないこと。また、そのようす。敵を敵とも思わないこと。

大智は愚の如し
(たいちはぐのごとし)

 本当の知恵舎は奥が深く、利口ぶったりしないので、一見すると愚者のように見えるということ。宋の蘇軾そしょくの「欧陽少師の到仕するを賀するの啓」に「大勇はきょう(臆病者)なるがごとく、大智は愚なるが如し」とあるのによる。小ざかしい人知を否定する老子の思想に基づくことば。

類語: 「大欲は無欲に似たり

大敵と見て恐れず小敵と見て侮らず
(たいてきとみておそれずしょうてきとみてあなどらず)

 強そうな敵や大勢の敵にもひるむことなく立ち向かい、弱そうな敵や小勢の敵にも油断することなく立ち向かわなくてはならないということ。

泰斗
(たいと)

 ⇒「泰山北斗

大同小異
(だいどうしょうい)

 少しは違っていても、大体は同じなこと。似たりよったり。

大道廃れて仁義あり
(だいどうすたれてじんぎあり)

 仁や義などという道徳が説かれるのは、世の中から人の行うべき正しい道が失われたからであるということ。転じて、世の中が乱れると義理人情の価値が高まるの意でも使う。『老子・第十八章』にあることば。老子は、無為自然の道が行われ、人情が純朴だった昔にはことさら道徳など必要なかったと説く。

大同団結
(だいどうだんけつ)

 いくつかの団体や党派が、多少の意見の差をかまわずに一つにまとまり、共通の目的に向かうこと。

大徳は小怨を滅ぼす
(たいとくはしょうえんをほろぼす)

 恩恵を施すことが甚大であれば、小さな恨みは自然に消滅するということ。

鯛の尾よりも鰯の頭
(たいのおよりもいわしのかしら)

 大きな組織の中で低い地位に甘んじるよりも、小さな組織のトップに立つ方がよいということ。鯛の尾は体裁、鰯の頭は実質。名を捨てて実を取ることのたとえにも使う。

類語: 「鶏口けいこうとなるも牛後ぎゅうごとなるなかれ

大の虫を生かして小の虫を殺す
(だいのむしをいかしてしょうのむしをころす)

 ⇒「小の虫を殺して大の虫を助ける

大は小を兼ねる
(だいはしょうをかねる)

 大きな物は、それ自体の用途の他に、小さな物の代わりに使うことができるの意。

反意語: 「杓子しゃくしは耳掻きの代わりにならず」、「長持ち枕にならず」

大木は風に折られる
(たいぼくはかぜにおられる)

 ⇒「高木こうぼくは風に倒る

大欲は無欲に似たり
(たいよくはむよくににたり)

 (1)大望を抱く人は小さな利益などには目もくれないから、かえって無欲に見えるということ。
 (2)欲の深い人は欲に惑わされ、結局は損を招くので、無欲と同じ結果になるということ。


類語: 「大功は接なるがごとし」、「大智たいちは愚の如し

斃れて後已む
(たおれてのちやむ)

 死ぬまで努力を続け、日々怠ることがない。『礼記・表記』に「俛焉べんえんとして日に孳孳ししたるあり、斃れて後已む」とあるのに基づく。

同意語: 「死して後已む

高きに登るには低きよりす
(たかきにのぼるにはひくきよりす)

 高い所に登って行くには、まず低い所から登って行かなければならない。事を行う場合には、まず手近なことから始め、順序だてて着実に行うべきだということ。

類語: 「遠きに行くには必ず近きよりす」、「遠きに行くに必ず邇きよりす」、「千里の道も一歩から」、「千里の道も一歩より始まる

高嶺の花
(たかねのはな)

 遠くからただ眺めるばかりで、手に取って所有することのできないもののたとえ。「高嶺」は高い峰の意。

高嶺の花を羨むより足もとの豆を拾え
(たかねのはなをうらやむよりあしもとのまめをひろえ)

 現実を直視して、着実な利益をつかめ。

類語: 「己れの頭の蠅を追え

鷹は飢えても穂を摘まず
(たかはうえてもほをつまず)

 気位の高い鷹は、どんなにひもじくても、カラスやスズメのように人間が作った作物の穂をつついて食べるようなことはしない。転じて、誇り高く節操ある人は、窮しても不正な金品に手を出さないというたとえ。

類語: 「渇しても盗泉の水を飲まず」、「武士は食わねど高楊枝

高みの見物
(たかみのけんぶつ)

 高い場所から下の騒ぎなどを見物すること。転じて、利害関係のない立場から事の成り行きを見守ること。

宝の持ち腐れ
(たからのもちぐされ)

 せっかく価値のあるものを持っていながら、それを利用できないでいること。また、すぐれた才能や技能を持っていながら、それを活用できないでいること。

宝の山に入りながら空しく帰る
(たからのやまにはいりながらむなしくかえる)

 好機に恵まれながら望みを達成できないで終わること。また、大きな利益を得る機会があったのに何の利益も得られないこと。『正法念処経』に「汝人の身を得て道を修めざれば、宝の山に入りて手を空しうして帰るが如し」とあるのによる。

薪を抱きて火を救う
(たきぎをいだきてひをすくう)

 災害を除こうとして、かえってその害を大きくしてしまうこと。『戦国策・魏策』に「地を以て秦につかうるは、たとえばお薪を抱きて火を救うがごとし」とあるのに基づく。「火を救う」は火を防ぐの意。

類語: 「火を以て火を救う

多岐亡羊
(たきぼうよう)

 学問の道は多方面に分かれ、なかなか真理には到達しがたいということ。転じて、いくつもの方針があって、どれを選ぶべきか迷うこと。戦国時代の思想家楊朱ようしゅの隣家から羊が一匹逃げ出した。大勢で追いかけたが、道が幾筋にも分かれていたのでついに羊を見失ってしまった。それを見た楊朱が「学問の方法もさまざまに分かれるので、学者は真の生き方が分からなくなるのだ」と嘆いたという、『列子・説符』の故事に基づく。

同意語: 「岐路亡羊」、「亡羊のたん

多芸は無芸
(たげいはむげい)

 多くの技芸に通じている人は、かえって傑出した技芸が身につかないので、結局は無芸にも等しいということ。

類語: 「なんでも来いに名人なし」、「器用貧乏

竹屋の火事
(たけやのかじ)

 やたらにぽんぽんと叱るようすを言う。竹が燃えると、節がはじけてぽんぽんと音を立てることから。

同意語: 「竹薮たけやぶの火事」

蛸は身を食う
(たこはみをくう)

 資金繰りに詰まって、資本や財産を取り崩してしまうこと。蛸は飢えると自分の足を食うということから。

他山の石
(たざんのいし)

 どんなに劣った人の言行でも、つまらない出来事でも、それを参考にしてよく用いれば、自分の知徳を磨くことができるということ。『詩経・小雅・鶴鳴』に「他山の石、以て玉をみがくべし」とあるのにより、多く自分の戒めとなる誤った言動の意で使う。

類語: 「人こそ人の鏡」、「人のふり見て我がふり直せ

多士済済
(たしせいせい)

 立派な人物が多くいる形容。

多事多端
(たじたたん)

 仕事や処理すべき事が多く、忙しいこと。

多事多難
(たじたなん)

 事件や災難が多いこと。

多情多恨
(たじょうたこん)

 物事に感じやすく、恨んだり悲しむことが多いさま。愛情も強いが恨みの心も強いこと。

多情仏心
(たじょうぶっしん)

 物事に感じやすく移り気ではあるが、薄情なことができない性質をいう。

多勢に無勢
(たぜいにぶぜい)

 多人数の敵に少人数で立ち向かっても勝ち目がないということ。

類語: 「衆寡敵せず

蛇足
(だそく)

 あっても役に立たないもの。あると、かえって全体をそこなうもの。無用の長物。楚の国で数人の男たちが大杯一杯の酒を賭け、蛇の絵を早く描く競争をした。最初に描き上げた男はどんなもんだと得意満面。ゆとりを見せて足を描き添えたのだが、そんな蛇などいるものかと文句をつけられ、酒を飲みそこねたという故事に基づく。出典は『戦国策・斉策』。

同意語: 「画蛇添足」、「蛇をえがいて足を添う」、「蛇足をなす」

叩けば埃が出る
(たたけばほこりがでる)

 どんなに公明正大に見える人でも、細かく詮索すればやましい点が出てくるものだということ。

同意語: 「叩けば埃が立つ」
類語: 「垢はこするほど出る」、「新しい畳でも叩けばごみが出る」

叩けよさらば開かれん
(たたけよさらばひらかれん)

 ひたすら神に祈るなら、神は必ず救いの手を差し伸べて下さるということ。転じて、積極的に努力するなら、おのずから目的は達せられるということ。『新約聖書・マタイ伝』山上さんじょう垂訓すいくんに見えるイエスのことば。「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門を叩きなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門を叩く者には開かれる」とあるのに基づく。叩いて開かれるのは、神の国の門。“Ask, and you will receive, seek, and you will find, knock, and the door will be opened to you, For everyone who asks will receive, and anyone who seeks will find, and door will be opened to him who knocks,”

類語: 「求めよさらば与えられん

多々益々辨ず
(たたますますべんず)

 多ければ多いほど、うまく処理することができるということ。また、多ければ多いほど、都合がよいということ。漢の名将韓信かんしんが「私は兵が多ければ多いほどうまく使いこなします」と高祖(劉邦りゅうほう)に誇ったという、『漢書・韓信伝』の故事に基づく。

畳の上の水練
(たたみのうえのすいれん)

 方法は知っていても、実際の練習はしていないこと。また、理屈は分かっていても、実地の役に立たないこと。

同意語: 「畳水練」、「畑水練」
類語: 「机上の空論」、「畳の上の陣立て」

ただより高い物はない
(ただよりたかいものはない)

 ただで物を貰うと、お礼に金がかかったり頼みを聞かなくてはならなかったりで、結局は高いものにつくということ。借りた恩義には報い、もらった物にはお返しをするという文化習慣をふまえて言うもの。

田作りも魚の中
(たづくりもうおのなか)

 小魚でも魚の仲間には変わりがないように、どんな弱小なものでも味方の数に入るということ。「田作り」はごまめとも言い、ごく小さなイワシを干したもの。田圃の肥料に使ったら米が豊作になったことから、そう呼ばれる。

類語: 「蝙蝠こうもりも鳥のうち

立っている者は親でも使え
(たっているものはおやでもつかえ)

 急ぐ用事のあるときは、誰でもよいからそばに立っている者を使えということ。座っている人手近な人に自分の用を頼むとき、「親でも使えと言うのだから」と、このことばを言い訳にする。

脱兎の如し
(だっとのごとし)

 ⇒「始めは処女の如く後は脱兎の如し

立つ鳥跡を濁さず
(たつとりあとをにごさず)

 飛び立つ水鳥が水面を汚さないように、人も立ち去るときは、その後始末をきちんとしておかなくてはならないということ。また、引き際を潔くしなければならないということ。

同意語: 「さぎは立ちての跡を濁さず」、「飛ぶ鳥跡を濁さず」
反意語: 「後は野となれ山となれ

立て板に水
(たていたにみず)

 よどみなくすらすらと話すこと。滑らかな舌の運びを、立てかけた板に水がさっと流れるようすに見立てて言う。

類語: 「懸河の弁

蓼食う虫も好き好き
(たでくうむしもすきずき)

 辛くて苦い蓼を好んで食う虫もあるように、人の好みはさまざまだということ。

同意語: 「蓼の虫は葵に移らず」、「蓼食う虫」、「蓼虫りょうちゅう苦きを知らず」
類語: 「十人十色」

伊達の薄着
(だてのうすぎ)

 着ぶくれは格好が悪いからと、寒くても見栄を張って薄着をすること。「伊達」は、粋に見せようと外見を飾ること。

同意語: 「伊達の素袷すあわせ」、「伊達の素足」

盾の両面を見よ
(たてのりょうめんをみよ)

 物事は一面だけではなく、表裏全面をよく観察してから判断せよということ。“Look on both sides of the shield.”という西洋のことわざから。

立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花
(たてばしゃくやくすわればぼたんあるくすがたはゆりのはな)

 美人の姿を花に例えて、その美しさを言う。女性の美しさを、所作の面からとらえて言うところが特徴。

棚から牡丹餅
(たなからぼたもち)

 労せずして、思いがけない幸運に巡り合うこと。棚から落ちてきた牡丹餅がちょうど開いていた口に入るということから。

同意語: 「開いた口へ牡丹餅」、「棚ぼた」

他人の疝気を頭痛に病む
(たにんのせんきをずつうにやむ)

 自分とは関係のないことについて余計な心配をすること。「疝気」は漢方で下腹部の内蔵が痛む病気。

同意語: 「人の疝気を頭痛に病む」、「隣の疝気を頭痛に病む」

他人の飯を食わねば親の恩は知れぬ
(たにんのめしをくわねばおやのおんはしれぬ)

 親元を離れて他人の家の飯を食い、世間で苦労をしてみなければ、親のありがたみは分からぬということ。

他人は食い寄り
(たにんはくいより)

 ⇒「しんは泣き寄り他人は食い寄り

他人は時の花
(たにんはときのはな)

 他人の援助は、季節な花が咲いても長続きしないように一時的なものだから、いつまでも頼りにしてはならないという戒め。

楽しみ尽きて悲しみ来たる
(たのしみつきてかなしみきたる)

 楽しみも極まれば、やがて悲しみに襲われるということ。前漢の武帝は「秋風の辞」で、楽しみの果てに来る虚しさを「歓楽極まりて哀情多し」と詠んだ。

同意語: 「歓楽極まりて哀情多し

頼む木の下に雨が漏る
(たのむきのもとにあめがもる)

 頼りにしていたのに当てが外れること。

同意語: 「頼む木陰に雨が漏る」
類語: 「頼む蔵から火が出た」

旅の恥は掻き捨て
(たびのはじはかきすて)

 旅先には知人もないので、いつもなら恥ずかしくてできないような行いも平気でするものだ。

旅は道連れ世は情け
(たびはみちづれよはなさけ)

 旅には連れがある方が心強いように、この世の中を渡っていくには互いに支え合う人情が大切だ。江戸系いろはがるたの一つ。

同意語: 「旅は情け人は心」、「旅は心世は情け」
類語: 「よき道連れは里程を縮める」、「旅に道連れ人生に友」

多弁に能なし
(たべんにのうなし)

 口数の多い者ほど、いざ実行となると役に立たないものだ。無用なやつほどよくしゃべる。

類語: 「口ほどには手は動かず」、「口自慢の仕事下手

卵割らずにオムレツ作れず
(たまごわらずにおむれつつくれず)

 目的を達成するためには、それなりの代償が必要だということ。フランスのことわざから。

卵を見て時夜を求む
(たまごをみてじやをもとむ)

 あまりに気が早いことを言う。「時夜」は鶏が夜明けに鳴いて時を告げること。まだ卵なのに、もう鶏になったときを想定していることから。

玉となって砕くとも瓦となって全からじ
(たまとなってくだくともかわらとなってまったからじ)

 男子は身の安全を願って平凡な一生を送るより、正義や名誉のために潔く死ぬべきだということ。『北斉書・元景安伝』に「大丈夫だいじょうふは寧ろ玉砕すべきも、瓦全がぜんすること能わず」とあるのに基づく。

玉に瑕
(たまにきず)

 惜しいことに、わずかながら欠点があること。

同意語: 「白璧の微瑕
反意語: 「完璧

たまに出る子は風に遭う
(たまにでるこはかぜにあう)

 普段は家に閉じこもってばかりいる子供がたまに外へ出ると、その日が限って大風が吹く。やりつけないことをたまにすると、大失敗をしたりひどい目にあったりするたとえ。

玉の巵当なきが如し
(たまのさかずきそこなきがごとし)

 見かけは立派でも実際の役に立たないこと。また、優れているのに肝心なところに欠点があること。「巵」は杯、「当」は底。

玉琢かざれば器を成さず
(たまみがかざればきをなさず)

 どんなに優れた才能があろうとも、学問修養を積まなければ立派な人物になれないということ。『礼記・学記』に「玉琢かざれば器を成さず、人学ばざれば道を知らず」とあるのによる。玉も磨かなくては美しい宝器にはならない。

同意語: 「玉磨かざれば光なし」、「玉磨かざれば宝とならず」
類語: 「瑠璃の光も磨きがら」、「艱難汝を玉にす」

玉磨かざれば光なし
(たまみがかざればひかりなし)

 ⇒「玉琢かざれば器を成さず

璧を懐いて罪あり
(たまをいだいてつみあり)

 身分不相応な宝玉を持つと、とかく災いを招きやすいということ。『春秋左氏伝・垣公十年』に「匹夫罪無し、璧を懐いて其れ罪あり」とあるのによる。

同意語: 「匹夫罪なし璧を懐いて罪あり

玉を衒いて石を売る
(たまをてらいていしをうる)

 立派な玉を見せておいて、実際はつまらない石を売りつける。いかにも値打ちがあるかのように見せかけて、実際は値打ちのないものを売るたとえ。「てらう」は見せびらかす意。

類語: 「羊頭狗肉

民の口を防ぐは水を防ぐよりも甚だし
(たみのくちをふせぐはみずをふせぐよりもはなはだし)

 人民の言論を圧迫して批判のことばを封じることは、川の水を防ぎ止めることから起こる害よりも恐ろしい。『史記・周本紀』にあることば。川の氾濫も恐ろしいが、言論の自由を奪われた人民の氾濫はそれ以上に恐ろしい結果を招く。

民は之に由らしむ可し之を知らしむ可からず
(たみはこれによらしむべしこれをしらしむべからず)

 (1)人民を為政者の施政方針に従わせることはできるが、なぜそうするのかという理由を理解させ納得させることは難しい。
 (2)人民は為政者の施政方針に従わせればよいのであって、その理由など説明する必要はない。
 『論語・泰伯』にあることば。


同意語: 「由らしむ可し之を知らしむ可からず」

矯めるなら若木のうち
(ためるならわかぎのうち)

 樹木の枝ぶりを整えるなら、柔軟性のある若木のうちに手を加えよの意。人間も、悪い性癖や欠点などは、幼少のうちに直した方がいいというたとえ。

類語: 「鉄は熱いうちに打て」、「老い木は曲がらぬ

ダモクレスの剣
(だもくれすのけん)

 栄華の最中にあっても、常に生命をおびやかす危険が身に迫っていることのたとえ。紀元前四百年ごろ、シチリア島のディオニュシオス一世は、廷臣ダモクレスがしきりに王の幸せを羨むので一日だけ王位に就かせた。権力の座に酔いしれ、すっかり満足したダモクレスが祝宴の最中にふと見上げると、なんと頭上には抜き身の剣が一本の馬の毛で吊るされているではないか。ディオニュシオスはこうして王座が常に危険のもとにあることをダモクレスに教えたという故事に基づく。

便りのないのは良い便り
(たよりのないのはよいたより)

 一通の手紙さえ来ないのは、その人が無事であることの証拠であるということ。肉親や親友など親しい間柄であれば、何か異変が起これば必ず連絡があるだろう。しばらく音信が途絶えたからといって案ずることはない。西洋のことわざから。

足らず余らず子三人
(たらずあまらずこさんにん)

 収入は少なすぎるでもなく多すぎるでもなく子供は三人いるというのが、楽しく暮らしていくのにちょうどよいということ。また、単に、子供の数は三人だが、少なくもなく多くもなくて理想的だという意味でも用いられる。

同意語: 「負わず借らず子三人」、「余らず過ぎず子三人」

他力本願
(たりきほんがん)

 他人の力ばかりあてにしていること。

足るを知る
(たるをしる)

 あるがままの我が身を満ち足りたものと悟り、不満を抱かないことを言う。老子のことばから。

足るを知る者は富む
(たるをしるものはとむ)

 満足することを知っている者は、たとえ生活は貧しくとも、心は富んで豊かである。

誰か烏の雌雄を知らん
(たれかからすのしゆうをしらん)

 是非や、優劣・善悪の判断が難しいことのたとえ。孔雀や鴛鴦おしどりの雌雄は誰にでも見分けられるが、真っ黒な烏ではいずれが雄やら雌やらさっぱり区別がつかない。『詩経・小雅・正月』に「ともに予を聖なりとうも、誰か烏の雌雄を知らん」とあるのによる。

暖衣飽食
(だんいほうしょく)

 暖かい衣服を着て腹いっぱいに食べる満ち足りた生活。物質的な要求が満たされた生活のことをいう。

弾丸黒子
(だんがんこくし)

 はじき玉とほくろ。狭い土地のたとえ。猫の額。

断簡零墨
(だんかんれいぼく)

 きれぎれの文書、はしきれに書いた文章。書いたものの断片。

断機の戒め
(だんきのいましめ)

 学業を途中で止めてはならないという戒め。若き孟子が勉強半ばにして家に戻ると、その母は織りかけていたはたの糸を断ち切ってみせ、学問を中途半端にするのはこれと同じであると戒めて師のもとに帰らせたという、劉向りゅうきょうの『列女伝・鄒の孟軻の母伝』の故事に基づく。

同意語: 「断機の教え」、「孟母もうぼ断機」、「孟母もうぼ断機の戒め」、「孟母もうぼ断機の教え」

短気は損気
(たんきはそんき)

 短気を起こすと結局は失敗し、自分の損になるということ。「損気」は「短気」と語呂を合わせた語で、「気」に特別の意味はない。

類語: 「短気は身を滅ぼす腹切り刀」、「短気は未練の初め」、「短気もわれ後悔も我」、「短慮功を成さず」

断琴の交わり
(だんきんのまじわり)

 極めて厚い友情によって結ばれた、親密な交わり。春秋時代の琴の名手伯牙はくがは自分の奏でる琴の音を真に理解した鍾子期しょうしきを唯一の友としたが、その死後は弦を断ち切り、二度と琴を弾こうとはしなかたっという。『列子・湯問』、『呂氏春秋・本味』に見える故事に基づく。

同意語: 「知音」
類語: 「刎頸の交わり

端倪すべからず
(たんげいすべからず)

 事の始めと終わりを見通すことができない。事態の成り行きが推測できないということ。「端」は山の頂で、「倪」は水のほとり。物事の始めと終わりの意。

断じて行えば鬼神も之を避く
(だんじておこなえばきしんもこれをさく)

 決意を固くして断行すれば、何者もこれを妨げることはできない。『史記・李斯伝』に「断じて敢行すれば、鬼神も之を避く」とある。「鬼神」は優れた能力をもつ恐るべき神霊。ためらずに事を行えば、鬼神さえも圧倒することができる。

男子の一言金鉄の如し
(だんしのいちげんきんてつのごとし)

 男がひとたび口にしたことばは、絶対に守られなくてはならないということ。「金鉄」は黄金と鉄。

類語: 「君子に二言なし」、「武士に二言はない

断章取義
(だんしょうしゅぎ)

 原文の意味に関係なく、自分の言に適する部分だけを取って自由に解釈する。

男女七歳にして席を同じうせず
(だんじょしちさいにしてせきをおなじうせず)

 七歳にもならば男女の区別をはっきりとさせなくてはならないということ。『礼記・内則』に「七年にして男女席を同じうせず、食を共にせず」とある。「席」は座るところや寝るところにしく敷物。男女は七歳になったら同じ敷物には座らず、食事も別々にとるというのが儒教の倫理観であった。

胆大心小
(たんだいしんしょう)

 大胆で、しかも細心の注意を払うこと。細心にして大胆。

断腸の思い
(だんちょうのおもい)

 きわめてつらく悲しい思いのたとえ。「断腸」ははらわたが断ち切られるような悲しみのこと。むかし中国で、猿の子を捕らえて船に乗せたところ、母猿が悲しい鳴き声を上げながらどこまでも追いかけて来て、ついには船の中に飛び込んで息絶えた。母猿の腹を割いてみると、悲しみのあまり腸がずたずたにちぎれていた。

単刀直入
(たんとうちょくにゅう)

 前置きや挨拶を抜きにして、直接本題に入り、核心をつくこと。

談論風発
(だんろんふうはつ)

 盛んに話し合ったり論じたりすること。次々に議論が続出するさま。

短を捨てて長を取る
(たんをすててちょうをとる)

 短所や欠点は取り除き、長所や美点だけを選んで取り入れるということ。『漢書・芸文志』に「し能く六芸りくげい(六経)の術を修めて、此の九家の言を観、短をてて長を取らば、すなわち以て万方の略に通ずべし」とあり、六経や諸子百家につき、その短所は捨て長所だけを取り入れて施政の資とすべきことを説く。