煮え湯を飲まされる
(にえゆをのまされる)

 水を飲むつもりだったのに煮え湯を飲まされるように、大丈夫だと安心していたものに裏切られ、ひどい目にあうこと。また、信頼していた者に裏切られることを言う。

鳰の浮き巣
(におのうきす)

 不安定なことのたとえ。「にお」はカイツブリの古名で、水辺のあしの間などに作られた巣が水の増減や波のために揺れ動き、浮いているように見えることから言う。

同意語: 「葦巣いそうの悔い」

二階から目薬
(にかいからめぐすり)

 思うようにならなくてもどかしいこと。また、回りくどくて効果のないこと。二階から目薬をさしても的中しないことから言う。

同意語: 「天上から目薬」、「二階から目薬をさす」
類語: 「遠火で手をあぶる」、「隔靴掻痒かっかそうよう

逃がした魚は大きい
(にがしたうおはおおきい)

 一度手に入れかけて失った物は、惜しさのために実際より大きく見えるものだということ。

同意語: 「釣り落した魚は大きい」、「釣り落とした魚は大きい」、「逃げた魚は大きい」
類語: 「逃がした物に小さい物なし」、「逃げたなまずは大きく見える」

握れば拳開けば掌
(にぎればこぶしひらけばてのひら)

 同じ手であっても、握れば人を殴る拳になるが、開けば人をなでる掌になる。同じものでも、心の持ち方や状況次第で色々に変化するということ。

肉食妻帯
(にくじきさいたい)

 肉を食べ妻をもつこと。在家(一般人)の生活。出家は逆に菜食独身であった。

憎まれっ子世にはばかる
(にくまれっこよにはばかる)

 人から憎まれるような人が世間ではかえって幅をきかせるということ。

類語: 「悪貨は良貨を駆逐する

肉を切らせて骨を断つ
(にくをきらせてほねをたつ)

 ⇒「皮を切らせて肉を切り肉を切らせて骨を切る

逃げるが勝ち
(にげるがかち)

 戦いを避けて逃げることが正面切って戦うよりは得策であるということ。

類語: 「三十六計逃げるにかず」、「負けるが勝ち

錦を着て故郷に帰る
(にしきをきてこきょうにかえる)

 立身出世して晴れがましく故郷へ帰ること。「錦」は金糸・銀糸などで複雑な模様を織り出した豪華な絹織物で、帯や舞衣装などに仕立てる。

同意語: 「錦を飾る」、「錦を着て故郷へ帰る」、「錦を着て昼行く」、「故郷に錦を飾る」、「しゅうを着て昼行く」
類語: 「衣錦いきんえい

錦を着て夜行く
(にしきをきてよるゆく)

 立身出世しながら、故郷に帰ることがないこと。きらびやかな衣装をまとって夜道を行っても、誰の目にもとまらないことから、多く故郷に錦を飾ることのできない無念さを言う。『史記・項羽本紀』に「富貴にして故郷に帰らざるはしゅうて夜行くが如し」とあるのに基づく。ある人が、しん都・咸陽かんようを陥落させた項羽こううに、「咸陽のある関中は都とするにふさわしい土地である」と説いたのに対し、懐郷の思いにかられた項羽が答えたことば。これに対し、その人は項羽にことを「沐猴もっこうにして冠す(猿が冠をかぶっているようなものだ)」と評したため、釜茹での刑に処せられたという。

同意語: 「しゅうを着て夜行く」

西と言ったら東と悟れ
(にしといったらひがしとさとれ)

 人のことばには裏表があるから、ことばの裏にある意味を察しなければいけないということ。

二者択一
(にしゃたくいつ)

 二つの事物のいずれか一方だけを選ぶこと。

二束三文
(にそくさんもん)

 量が多くて値段が安いこと。二束もあるのに三文の値打ちしかないの意から言う。

二足の草鞋
(にそくのわらじ)

 一人の人が同時に二つの仕事をすること。昔、ばくち打ちが捕吏ほりの仕事を兼ねたことから言い、元来は、両立しがたい二つの仕事を同時にする意であった。

似た者夫婦
(にたものふうふ)

 夫婦は互いに性格や趣味が似てくるということ、または性格や趣味の似た者同士が夫婦になるということ。また、そうした夫婦のこと。

同意語: 「似た者が夫婦になる」
類語: 「牛は牛連れ馬は馬連れ」、「類は友を呼ぶ」、「類を以て集まる

日常坐臥
(にちじょうざが)

 毎日行われるいつもの生活。ふだん常々。いつも。

日常茶飯
(にちじょうさはん)

 毎日毎日の食事。転じて、あたりまえのこと。ごくありふれた事柄。

日暮道遠
(にちぼどうえん)

 日暮れて、道遠し。多忙のたとえ。年老いたのにしなければならないことが残っていること。

日光を見ずして結構と言うな
(にっこうをみずしてけっこうというな)

 日光の東照宮の美しさを称えたことば。

同意語: 「日光を見ないうちは結構と言うな」
類語: 「ナポリを見てから死ね

日進月歩
(にっしんげっぽ)

 日に、月に、絶え間なく進歩すること。絶えず進歩し、発展すること。

煮ても焼いても食えぬ
(にてもやいてもくえぬ)

 生で食えない物は、煮るか焼くかすれば食えるはずなのに、どう料理しても食えない。扱いようがなく手に負えない物、事、人などをたとえて言う。

類語: 「海千山千

二度あることは三度ある
(にどあることはさんどある)

 二度まで同じことが起これば、必ずもう一度同じことが起こるということ。

二桃三士
(にとうさんし)

 ⇒「二桃三士を殺す

二桃三士を殺す
(にとうさんしをころす)

 奇策によって人を自滅させること。春秋時代、せいの景公の宰相・晏子あんしが用いた奇策で、三人の粗暴な勇士(公孫接・田開疆かいきょう・古冶子やし)に二つの桃を贈って、最も功績のあった者が食べるようにしむけて三人に争わせたところ、ついには三人とも自殺してしまったという故事に基づく。己れの勲功を述べ立てて、いち早く桃を取った公孫接と田開疆は、古冶子の反論にあって恥じ入って自害した。残った古冶子は一人生きるのは不義であるとして果てた。『晏子春秋・諫下』に見える。

同意語: 「二桃三士」

二兎を追うものは一兎をも得ず
(にとをおうものはいっとをもえず)

 同時に違った二つのことをしようとすると、結局二つとも失敗してしまうということ。二匹の兎を一度に捕らえようとしても一匹も捕まえることができないことから言う。

類語: 「あぶはち取らず」、「一も取らず二も取らず」、「欲の熊鷹くまたか股裂くる
反意語: 「一挙両得」、「一石二鳥

二人口は過ごせるが一人口は過ごせない
(ににんぐちはすごせるがひとりぐちはすごせない)

 ⇒「一人口は食えぬが二人口は食える

二の舞を演じる
(にのまいをえんじる)

 人の後に出てその真似をすること。また、前の人がした失敗を繰り返すことを言う。「二の舞」は舞楽の曲で、「案摩あまの舞」の次にそれを真似て舞う滑稽な舞のこと。

入境問禁
(にゅうきょうもんきん)

 他国に入ったら、まずその国の禁止事項を聞いて、それを犯さないようにすることが大切、という意味。

女房鉄砲仏法
(にょうぼうてっぽうぶっぽう)

 世の中の安泰を保つものは、女房、鉄砲、仏法の三つだということ。女性はその場の雰囲気を和らげ、鉄砲は無法者を取り締まり、仏法は人の心を正しく導く。「房」「砲」「法」と語呂合わせをして調子よく言った言葉。

女房と畳は新しい方が良い
(にょうぼうとたたみはあたらしいほうがよい)

 畳は新しい方が快適で、女房もまた新鮮なうちが生活に喜びが多いということ。

類語: 「女房と茄子なすは若いがよい」、「女房と菅笠すげがさは新しい方がよい」
反意語: 「女房と鍋釜なべかまは古いほどよい」、「女房と味噌は古いほどよい」

女房の妬くほど亭主もてもせず
(にょうぼうのやくほどていしゅもてもせず)

 女房はとかく亭主のことで焼きもちを焼くものだが、亭主は女房の思うほどにはもてるものではないという川柳。

女房の悪いは六十年の不作
(にょうぼうのわるいはろくじゅうねんのふさく)

 悪い女房を持つことは、自分一生の不幸であるばかりでなく、子孫にも悪い影響を及ぼし、それが六十年続くということ。

同意語: 「悪妻は百年の不作

如是我聞
(にょぜがもん)

 「このように私は聞いた」という意味。

二卵をもって干城の将を棄つ
(にらんをもってかんじょうのしょうをすつ)

 わずかな過ちを言い立てて、有為の人物を用いないことの愚を言う。「干城」は干(盾)と城の意から転じて、国を守る軍人。孔子の孫の子思ししが衛公に苟変こうへんという人物を推薦したところ、その才能は認めたが、かつて苟変が役人であったとき、人民に二個の卵を割り当てて取り立てたことがあったことを理由に採用を拒絶した。子思が「二卵をもって干城の将を棄つ。これ隣国の聞かしむべからず」と諫めたところ、公はその意見に従ったという。『孔叢子・居衛』に見える故事。

二律背反
(にりつはいはん)

 互いに対立、または矛盾する二つの命題が、同等の権利をもって主張されること。

鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん
(にわとりをさくにいずくんぞぎゅうとうをもちいん)

 小事を行うのに、大人物や大げさな方法を用いる必要はないということ。鶏を料理するのに、牛を切るのに使うような大きな庖丁ほうちょうを用いる必要がないことから言う。『論語・陽貨』に「夫子莞爾かんじとして笑って曰く、鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん」とあるのに基づく。

類語: 「正宗でまきを割る」、「大器小用」、「大根を正宗まさむねで切る

人間到るところ青山有り
(にんげんいたるところせいざんあり)

 人間は故郷を出て大いに活躍すべきである。「人間」は元来は「じんかん」と読み、世の中のこと。「青山」は墓地。人間はどこで死んでも骨をうずめる所くらいはあるの意から言う。

人間五十年
(にんげんごじゅうねん)

 人間の寿命はわずか五十年に過ぎないということ。舞の本『敦盛』に「人間五十年、化天けてんの内を比ぶれば、夢幻のごとくなり。一度生を受け滅せぬ物のあるべきか」とあり、織田信長が愛誦あいしょうしたことで名高い。

同意語: 「人間わずか五十年」、「人生わずか五十年」、「人生五十年」
類語: 「人間一生二万日」

人間万事金の世の中
(にんげんばんじかねのよのなか)

 世の中、結局は金がすべてで、最後は金の力がものを言うということ。

類語: 「地獄の沙汰さたも金次第

人間万事塞翁が馬
(にんげんばんじさいおうがうま)

 ⇒「塞翁が馬

忍の一字は衆妙の門
(にんのいちじはしゅうみょうのもん)

 忍耐こそが事の始まりで、成功への入口になる。「衆妙の門」は万物の微妙な道理の入口。耐え忍ぶことを身につければどんなことでも可能だということ。

類語: 「ならぬ堪忍するが堪忍