無いが意見の総じまい
(ないがいけんのそうじまい)

 いくら説教してもおさまらなかった放蕩ほうとうや道楽も、金がなくなれば自然と止んで、もう意見をする必要がなくなることを言う。

内柔外剛
(ないじゅうがいごう)

 内心は弱々しいのに外見は強そうに見えること。本当は気が弱いのに外に現れた態度だけ強そうに見せること。

内助の功
(ないじょのこう)

 表立たない、内側での功績。夫の外部での働きを支える妻の功績をいうことが多い。

類語: 「鶏鳴の助

無い袖は触れぬ
(ないそではふれぬ)

 持っていなければ出したくても出しようがないということ。振りたくても袖がなくては振りようがないことから、特にお金がなくて援助しようにも援助できないことに言う。

泣いて暮らすも一生笑って暮らすも一生
(ないてくらすもいっしょうわらってくらすもいっしょう)

 ⇒「笑って暮らすも一生泣いて暮らすも一生

泣いて馬謖を斬る
(ないてばしょくをきる)

 規律を守るために、私情を離れ涙をのんで愛する者を処分すること。三国時代、しょく諸葛孔明しょかつこうめいは、腹心の部下であった馬謖ばしょくが命に背いて大敗を喫したことから、軍律違反のかどでやむなく斬罪に処した。『蜀志・諸葛亮伝』などに見える故事。

同意語: 「涙をふるいて馬謖を斬る」

内典外典
(ないてんげてん)

 仏教の書とそれ以外の書。また、国内の書物と外国の書物のこと。

無い時の辛抱有る時の倹約
(ないときのしんぼうあるときのけんやく)

 金がないときは借金などせずじっと辛抱し、あるときには倹約を心がけよということ。

内憂外患
(ないゆうがいかん)

 国内の心配事と、外国からしかけられるわずらわしい事態。また、個人における内外の心配事もいう。

長い物には巻かれろ
(ながいものにはまかれろ)

 権力を持つ人の言うことには、たとえ理不尽だと思ってもおとなしく従っていた方が得策であるということ。「太いものには呑まれろ」と対にして、それに続けて言うことも多い。

同意語: 「長い物には巻かれよ」
類語: 「泣く子と地頭じとうには勝てぬ」、「時の将軍に従え」、「時の代官日の奉行」

鳴かず飛ばず
(なかずとばず)

 ⇒「三年飛ばず鳴かず

鳴かぬ蛍が身を焦がす
(なかぬほたるがみをこがす)

 口に出してあれこれ言う人よりも、何も言わない人の方がかえって心の思いは切実であるということ。光を発する蛍を身を焦がす人に見立てたもので、多く、思いのたけが打ち明けられず悶々もんもんとして恋に身を焼く人のたとえに使う。「鳴くせみよりも」に続けて一句ともする。

流れに棹さす
(ながれにさおさす)

 時流に乗って物事が好調に進むこと。「棹さす」は棹で船を操って進めるの意で、「流れに棹さす」全体で、川の流れに乗って舟を下流へ進める意となる。

類語: 「得手に帆を揚ぐ

流れを汲みて源を知る
(ながれをくみてみなもとをしる)

 末を見てそのもとを知ること。流れの水を汲んでその水源のよしあしを察知する意から言い、人の言行の一端からその心のうちを察することができる意のたとえにも使う。

泣きっ面に蜂
(なきっつらにはち)

 泣いている子の顔を蜂が刺す。困っている状態に困ったことが重なって起こるたとえ。江戸いろはがるたの一つ。

類語: 「弱り目に祟り目」、「痛む上に塩を塗る

泣く子と地頭には勝てぬ
(なくことじとうにはかてぬ)

 道理の分からない子供や権力者とは争っても無駄であるということ。「地頭」は平安・鎌倉時代に荘園を管理し、税金を取り立てた役人。権力をかさに着て無理無体の横暴を働いたと言われる。

同意語: 「泣く子と地頭にはかなわない」、「泣く子と地頭には勝たれぬ」
類語: 「長い物には巻かれろ

泣く子は育つ
(なくこはそだつ)

 大きな声で泣く子は元気がある証拠だから、丈夫に育つということ。

類語: 「寝る子は育つ」、「赤子は泣き泣き育つ」

無くて七癖有って四十八癖
(なくてななくせあってしじゅうはちくせ)

 どんなに癖のないように見える人でも、多かれ少なかれ何らかの癖を持っているものだ。「七」は「無く」と頭韻を踏んで調子を整え、少ない数の代表とする。「四十八」は「四十八手」などと言うそれで、極端に数の多いことを言う。

同意語: 「無くて七癖」

鳴く猫は鼠を捕らぬ
(なくねこはねずみをとらぬ)

 よく鳴く猫は鼠を捕らない。鼠を捕るのは鳴かない猫である。人も同じで、よくしゃべる者は口先だけで、実行力が伴わないことを言う。

鳴くまで待とう時鳥
(なくまでまとうほととぎす)

 機が熟するまで辛抱強く待とうということ。「鳴かぬなら」の句に続けて、気が長く持久戦法を得意とした徳川家康が詠んだとされる句。短気で怒りっぽい、合理主義者の織田信長は「鳴かぬなら殺してしまえ時鳥ほととぎす」、自信家の豊臣秀吉は「鳴かぬなら鳴かしてみせよう時鳥」と詠んだとされ、戦国三武将の性格の違いを際立たせて面白い。『甲子夜話・五十三』に見える。

仲人の七嘘
(なこうどのななうそ)

 仲人の話は嘘が多くて当てにならないということ。仲人はとかく長所ばかり並べ立てて、欠点を隠すことから言う。

同意語: 「仲人の嘘八百」、「仲人の空言そらごと

仲人は宵の内
(なこうどはよいのうち)

 仲人は固めの杯の務めを終えたら、宵の内にさっさと引き揚げるがよいということ。夜は新郎・新婦の時間。

同意語: 「仲人は宵の口」

情けが仇
(なさけがあだ)

 好意や善意でしたことが、かえって相手に害をなす結果となってしまうこと。

同意語: 「恩が仇」、「慈悲が仇」、「情けが仇になる」、「情けの罪科」
類語: 「情けも過ぎれば仇となる」

情けに刃向かう刃無し
(なさけにはむかうやいばなし)

 情けをかけられれば、誰しも相手に刃向かうことができなくなるということ。『孟子・梁恵王』にも「仁者には敵無し」とあって、愛や情けが闘争から遠いことを説く。

情けは人の為ならず
(なさけはひとのためならず)

 情けをかけるということは、他人のためだけでなく自分のためにもなるということ。他人に情けをかけておけば、やがてはその報いが自分にめぐってくることから言う。

類語: 「積善せきぜんの家には必ず余慶よけい有り

梨の礫
(なしのつぶて)

 投げたつぶてが返ってこないように、手紙を出しても返事が返ってこないこと。音沙汰のないことのたとえ。「梨」は「無し」にかけての語呂合わせ。「礫」は投げた小石のこと。

為せば成る
(なせばなる)

 その気になってやれば、できないことはないということ。江戸時代、米沢藩主・上杉鷹山ようざんが家臣に示した歌に「なせばなるなさねばならぬ何事もならぬは人のなさぬなりけり」がある。やる気の大切さを説いたもの。

類語: 「精神一到いっとう何事か成らざらん

鉈を貸して山を伐られる
(なたをかしてやまをかられる)

 人に貸してやった鉈で自分の山の木をられる。好意でしてやったことで、かえって自分が被害を受けることを言う。

類語: 「ひさしを貸して母屋を取られる

夏は日向を行け冬は日陰を行け
(なつはひなたをいけふゆはひかげをいけ)

 夏にはあえて日の射す道を行き、冬にはあえて寒い日陰を行くように、進んで厳しい道を選び自らを鍛えよということ。

七転び八起き
(ななころびやおき)

 何度失敗してもくじけずに、勇をふるって立ち上がることのたとえ。七たび転んでも八たび起き上がるくらいの闘志をもって人生に臨めという意味合いで言う。

同意語: 「七転しちてん八起はっき

七度尋ねて人を疑え
(ななたびたずねてひとをうたがえ)

 紛失物は、何度も捜して自分に過失がないことを確かめてから、盗まれたのではないかと疑えということ。むやみに人を疑うべきではないことの教訓とする。

同意語: 「七度捜して人を疑え」、「七日捜して人を疑え」
類語: 「人を見たら泥棒と思え
反意語: 「人を見たら泥棒と思え

難波の葦は伊勢の浜荻
(なにわのあしはいせのはまおぎ)

 物の呼び名は、土地土地によって異なるものだということ。難波なにわ(大阪)で「あし」と呼ぶ植物を、伊勢では「はまおぎ」と呼ぶの意から言う。

類語: 「所変われば品変わる

名のない星は宵から出る
(なのないほしはよいからでる)

 夜早くから顔を出す星には名前もないものが多い。最初に出て来るものにはあまり良いものはないということ。また、待っているものが来ずに関係のないものが来ることを言う。

名は体を表す
(なはたいをあらわす)

 ものの名前というものは、そのものの実体をよく表しているということ。

ナポリを見てから死ね
(なぽりをみてからしね)

 南イタリアの港町であるナポリの景観の素晴らしいことを言う。西洋のことわざで、英語では“See Naples and die.”。

類語: 「日光を見ずして結構と言うな

怠け者の節句働き
(なまけもののせっくばたらき)

 ふだん怠けている者に限って、皆が休む日に忙しそうに働いたりするものだということ。一人だけ休日に張り切って働く人をあざけって言う。節句は物忌みの日。その日に働くことは、禁を破ることであった。

同意語: 「ならず者の節句働き」、「横着者の節句働き」、「愚か者の節句働き」

生兵法は大怪我のもと
(なまびょうほうはおおけがのもと)

 生かじりの知識や技能に頼ると、かえって失敗の原因となるということ。ちょっと聞きかじった武道に頼って大怪我をする意から言う。

同意語: 「生兵法は怪我のもと」、「生兵法は大きずのもと」
類語: 「小智は菩提の妨げ

生酔い本性違わず
(なまよいほんしょうたがわず)

 ⇒「酒飲み本性違わず

訛りは国の手形
(なまりはくにのてがた)

 なまりを聞くと、その人の生まれ育った国が分かるということ。なまりが、通行手形のようにその人の国を示すことから言う。

同意語: 「言葉は国の手形

蛞蝓に塩
(なめくじにしお)

 ナメクジに塩をかけると体が縮んでしまう。苦手なものに出会って、縮まってしゅんとしてしまうことのたとえ。

類語: 「青菜に塩

習い性と成る
(ならいせいとなる)

 後天的に身についた習慣もたび重なると、ついには生まれながらの本性のようになってしまうということ。『書経・太甲上』に「これなんじの不義、習い性と成る」とあるのによる。

類語: 「習慣は第二の天性なり

習うより慣れよ
(ならうよりなれよ)

 学習理論などによって組織的に学ぶよりは、実際に経験して慣れ親しむことが上達の早道であるということ。「習う」は人に教わるという意ではなく、学ぶ・学習するの意。

類語: 「習慣は第二の天性なり

ならぬ堪忍するが堪忍
(ならぬかんにんするがかんにん)

 我慢できないところをじっと我慢するのが、本当の堪忍というものである。「堪忍する」には、こらえる・我慢する意と、許す・勘弁するの意があるが、この場合は、前者の意である。

同意語: 「堪忍のなる堪忍は誰もする」
類語: 「忍の一字は衆妙の門

習わぬ経は読めぬ
(ならわぬきょうはよめぬ)

 習っていないお経が読めないように、知識や経験のないことを急にやれと言われてもできるはずがないことを言う。

生業は草の種
(なりわいはくさのたね)

 生計を立てるための手段は草の種のように数が多く、どこに行ってもあるものだということ。

同意語: 「世渡りは草の種」

名を竹帛に垂る
(なをちくはくにたる)

 歴史に名を残すこと。「竹帛」は竹の札と絹のきれ。昔、これに文字を書いて記録したことから、書物・歴史書を言う。

同意語: 「竹帛の功

名を取るより得を取れ
(なをとるよりとくをとれ)

 実質の伴わない名誉や名目よりは、実利を取った方がよいということ。

同意語: 「名を取るより得を取る」
類語: 「名を捨てて実を取る」
反意語: 「得を取るより名を取れ

南華の悔
(なんかのくい)

 上司に逆らい、また余計なことを言って嫌われ、出世できないこと。

南柯の夢
(なんかのゆめ)

 はかない夢のたとえ。また、はかないこと一般のたとえ。唐のじゅん于〓うふん(〓は、上部が「林」に下部が「分」)は酒に酔って邸内のえんじゅの木の下で眠り、槐安かいあん国の南柯群の群主に任じられ、栄華を極めた二十年を過ごした夢を見た。夢から覚めてみると、槐の木の下には二つの穴があり、その一つには大蟻の王が住み、もう一つは南を向いた枝に通じ、それぞれが槐安国と南柯群を意味していたという。唐の李公佐の伝奇小説『南柯太守伝』による。

同意語: 「槐安かいあんの夢」、「槐夢かいむ
類語: 「邯鄲かんたんの夢

難行苦行
(なんぎょうくぎょう)

 辛く苦しい修行。転じて、非常な困難の中で苦労をすること。

難兄難弟
(なんけいなんてい)

 どちらがすぐれているか区別がつかない。優劣の判断がつきにくいさま。

難攻不落
(なんこうふらく)

 攻撃が難しく、なかなか陥落しない状況のこと。

南山の寿
(なんざんのじゅ)

 人の長寿を祝う言葉。「南山」は長安の南にある「終南山」のこと。終南山が永久に崩れないのと同様に、その人の事業が永久であること。転じて、長寿を祝う言葉になった。

汝自身を知れ
(なんじじしんをしれ)

 自分自分をよく知るべきであるということ。ギリシャのデルフォイのアポロン神殿に刻まれていた戒律で、アテナイの立法者ソロンのことばという。ソクラテスは、自分の分際をわけまえよという従来の解釈を再構築し、自己の無知を自覚せよの意として、それを己れの思想の根幹とした。

爾に出ずるものは爾に反る
(なんじにいずるものはなんじにかえる)

 自分の身から出た行為の報いは、よいことでも悪いことでも、いずれは自分自身に返ってくるということ。

南枝の悲しみ
(なんしのかなしみ)

 ⇒「越鳥えっちょう南枝なんしに巣くう

汝の敵を愛せよ
(なんじのてきをあいせよ)

 あなたを迫害する敵をこそ愛しなさいの意で、イエスの隣人愛の究極を表すことば。『新約聖書・マタイ伝』山上さんじょう垂訓すいくんに見える。

南船北馬
(なんせんほくば)

 あちこちと各地を旅行すること。中国の南部は川が多いので船で行き、北部は平原や山間部なので馬で行くの意から言う。

同意語: 「北馬南船」

なんでも来いに名人なし
(なんでもこいにめいじんなし)

 どんなことでも器用にこなせる人に、名人はいない。器用な人は、何でもかなりなレベルでやってのけるが、どれをとっても名人の域に達しているものはないということ。

類語: 「多芸は無芸

南蛮鴃舌
(なんばんげきぜつ)

 やかましいだけで意味の通じない言葉。外国人の、意味の通じない言葉を卑しめていう。