粋が身を食う
(すいがみをくう)

 粋人としてもてはやされることが結局は身の破滅になるということ。花柳界や芸事に通じた粋人の美的な生活意識が、物堅い現実世界と相反するものであることから言う。

類語: 「芸は身のあだ」、「詩を作るより田を作れ
反意語: 「芸は身を助く

水火を辞せず
(すいかをじせず)

 あらゆる苦難を厭わず、物事をやり抜く決意を言う。「水火すいか」は、水に溺れる苦しみ、火に焼かれる苦難のこと。

酔眼朦朧
(すいがんもうろう)

 酒に酔ったために目の焦点が定まらず、ものがはっきり見えないさま。酔ってぼんやりした様子をいう。

随喜渇仰
(ずいきかつごう)

 喜んで仏に帰依し、深く信仰すること。

炊臼の夢
(すいきゅうのゆめ)

 夢の中で妻の死の知らせを受けること。旅の途次、うすで飯を炊く夢を見た張胆ちょうたんが不思議に思い、王生せという夢占い師に判断を仰いだところ、「臼で炊くのは(「」に通ずる)がないからだ」と占ったという故事に基づく。予言通り妻は数ヶ月前に亡くなっていたという。

類語: 「虫が知らせる」、「虫の知らせ」

水魚の交わり
(すいぎょのまじわり)

 親密な交わり。また、夫婦の仲がむつまじいこと。蜀の劉備りゅうび諸葛しょかつ孔明こうめいとの交わりを「孤(朕)の孔明有るは、なお魚の水有るがごとし」と言ったという故事に基づく。『三国志・蜀志・諸葛亮伝』に見える。

類語: 「管鮑の交わり」、「魚と水」、「刎頸の交わり

推敲
(すいこう)

 詩や文章の字句を何度も練り直すこと。中唐の詩人、賈島かとうが「僧推月下門」の句を得、「推」を「敲」にすべきかどうかで悩み、す、たたくの身振り手振りを交えて呻吟しんぎんしていたところ、不注意にも知事の韓愈かんゆ(大詩人でもある)の車に行き当たってしまった。詩語の迷いを聞いた韓愈は納得し「敲」がよいと答えたという、「唐詩紀事」に見える故事に基づく。

随処作主
(ずいしょさくしゅ)

 どんな仕事につくにせよ、その主人公になった気持ちで勉励すれば必ず道が開けて正しい成果が得られよう、という教え。

酔生夢死
(すいせいむし)

 有意義なことを何もなすことなく無自覚に一生を送ること。酒に酔ったようにこの世に生まれ、夢を見ているように死ぬ意から言う。程頤ていい『明道先生行状記』に「酔生夢死して自ら覚らざるなり」とあるのに基づく。「酔・夢」はともに現実感覚のないことの象徴。

垂涎の的
(すいぜんのまと)

 欲しくて欲しくて思わずよだれを垂らしてしまうほどの食物。また、みんなが羨んで欲しがるもののこと。

水中に火を求む
(すいちゅうにひをもとむ)

 水の中で火を求めても得られない。ないものねだりをするたとえ。

類語: 「木にりて魚を求む

翠帳紅閨
(すいちょうこうけい)

 翡翠かわせみの羽で飾ったとばりと紅色の寝室。美しく飾った貴婦人の寝室のこと。

水天髣髴
(すいてんほうふつ)

 遠い沖の水面と空とがひとつづきになって、水平線の見分けがつきにくいこと。

酔歩蹣跚
(すいほまんさん)

 酔ってふらふら歩くこと。酔った足取りのおぼつかない様子。

酸いも甘いも噛み分ける
(すいもあまいもかみわける)

 酸っぱい物と甘い物の区別をよくわきまえて味わい、各々のいい面も悪い面も知り尽くしているということ。転じて、人生経験が豊富で、世事・人情によく通じていること。また、それをもとに穏便適切な判断が出来ることを言う。

同意語: 「酸いも甘いも知っている」、「酸いも甘いも知り抜く」

垂簾の政
(すいれんのまつりごと)

 幼少の天子に代わって、皇太后が行う政治のこと。「垂簾すいれん」はすだれを垂らすの意。男女の別が厳しかった時代には、皇太后が臣下に会うときには簾を垂らしたことによる。

据え膳食わぬは男の恥
(すえぜんくわぬはおとこのはじ)

 女の方からしかけた情事に応じないのは、男として立派なことでないということ。「据え膳」はすっかり整えられた食事の膳。転じて、女の方からしかけた情事。

末の露本の雫
(すえのつゆもとのしずく)

 人の寿命に長短はあっても、死ぬことにおいては変わりがないということ。葉末はずえの露も根もとの雫も、遅い早いの差はあっても結局は消えてしまうの意から、人の命のはかないことを言う。

頭寒足熱
(ずかんそくねつ)

 頭は冷たくして足先は温かくするのが健康によいということ。

好きこそ物の上手なれ
(すきこそもののじょうずなれ)

 何であれ好きだということが上達の秘訣であるということ。好きなことには自然に熱心になることから言う。

同意語: 「好きは上手のもと」、「道は好むところによって安し」
反意語: 「下手の横好き

過ぎたるは猶及ばざるが如し
(すぎたるはなおおよばざるがごとし)

 度を過ごすことは水準に達していないことと同様によくないことだ。孔子が弟子を評して、過ぎた子張しちょうと及ばない子夏しかはともに十全ではないの意で、人の言行には中庸が大切であることを説いたもの。『論語・先進』にあることば。

同意語: 「過ぎたるは及ばざるが如し」
類語: 「分別過ぐれば愚に返る」、「薬も過ぎれば毒となる

空き腹にまずい物なし
(すきはらにまずいものなし)

 空腹のときには何でもおいしく食べられるということ。

同意語: 「ひだるい時にはまず物なし」、「ひもじい時にはまずい物なし」、「空腹にまずい物なし」、「空腹は最高のソース
類語: 「飢えては食を択ばず

杜撰
(ずさん)

 著述に間違いの多いこと。また、物事の仕方がぞんざいなこと。北宋の杜黙ともくの撰した詩は、規則にはずれて律に合わないものが多かったという故事に基づく。

雀百まで踊り忘れず
(すずめひゃくまでおどりわすれず)

 幼いときに身につけた習慣はいくつになっても改まりにくいということ。スズメは死ぬまで飛びはねる癖が抜けないことから言う。

類語: 「噛む馬はしまいまで噛む」、「三つ子の魂百まで」、「習慣は第二の天性なり

捨てる神あれば拾う神あり
(すてるかみあればひろうかみあり)

 一方で見捨てられても、他方で救いの手が差し伸べられることがあるということ。世間は広いから、あまりくよくよする必要はないといった意味合いで使う。

同意語: 「捨てる神あれば引き上げる神あり」、「捨てる神あれば助ける神あり」、「寝せる神あれば起こす神あり」、「倒す神あれば起こす神あり」
類語: 「閉ざす戸あれば開く戸あり」

脛に傷持つ
(すねにきずもつ)

 人には隠しているが、過去に悪事を犯していて、心の中で後ろめたさを感じていること。他人の目が届かない向こう脛に、傷を隠し持っていることから。

全ての道はローマに通ず
(すべてのみちはろおまにつうず)

 ローマ帝国の全盛時には、世界各地からの道がローマに通じていたということ。物事が中心に向かって集中すること、手段は違ってもめざす目標は同じであること、あらゆる物事は一つの真理に発していることなどのたとえとする。

類語: 「百川ひゃくせん海にちょうす」

すまじきものは宮仕え
(すまじきものはみやづかえ)

 他人に仕えることは気苦労の絶えないものだから、できるならすべきではないということ。「すまじき」はすべきではないの意。「宮仕え」は宮中などに出仕する意から、今では役所や会社に勤める意。

住めば都
(すめばみやこ)

 どんな辺鄙へんぴな所でも、慣れてしまえば住みよい土地だと思うようになるということ。

類語: 「我が家が都」、「住めば田舎も名所」、「住めば都で花が咲く」、「地獄も住家」

相撲に勝って勝負に負ける
(すもうにかってしょうぶにまける)

 相撲自体は断然優勢だったのに、最後の詰めを誤って勝負には負けること。物事の経過は順調だったのに、結果で失敗することを言う。

駿河の富士と一里塚
(するがのふじといちりづか)

 大きくかけ離れていて、比較にならないことのたとえ。「一里塚」は街道の目印として、一理(約4km)ごとに築いた土を盛った塚。その塚と富士山を比べることから。

類語: 「月とすっぽん」、「提灯ちょうちんに釣り鐘

寸進尺退
(すんしんしゃくたい)

 わずかに進んで大きく退くこと。得るものは少なく、失うものが多いことのたとえ。

寸善尺魔
(すんぜんしゃくま)

 世の中には、善いことより悪いことの方が多いということ。一寸の善に一尺の悪(善いことの十倍も悪いことがある)の意。善いことには、とかく多くの不都合や邪魔が生じやすいの意味にも言う。

類語: 「月に叢雲(むらくも)花に風」、「好事魔多し

寸鉄人を刺す
(すんてつひとをさす)

 短い言葉で見事に言い当てて、急所をつくこと。「寸鉄」は小さい刃物。ここでは、鋭い警句のたとえ。

寸を枉げて尺を信ぶ
(すんをまげてしゃくをのぶ)

 一寸(約3cm)の小さい物をさらに小さく曲げ、一尺(約30cm)の大きな物をいっそう長く伸ばす。小さな利益を捨てて、大きな利益を取るたとえ。

類語: 「小の虫を殺して大の虫を助ける