三日坊主日記【酔生夢死】

「伯爵様、食事の用意が整いましたが」
「むぅ、今カードがいいところなんだ。後にしてくれ」
「それでは、パンに肉や野菜を挟んだものをお持ちしましょう」
「それはありがたいが、何故素直にサンドイッチと言わんのだ」
「……かくして、パンに肉や野菜を挟んだものを、そのときの執事の名を取ってサンドイッチと名付けられたのである」
「いや、違うから。もうすでにサンドイッチって名称だし、大体おまえサンドイッチって名前じゃないだろ」
「世を忍ぶ仮の名前でございます」
「忍んでねーよ。今までサンドイッチなんて名乗ったことねえだろ」
「はっはっは、ジョークでございます」
「笑えねーよ。まあいい、それよりな、ワシは今食事より、花を摘みに行きたいっつーか、ぶっちゃけもよおしてしまってな。だが、この勝負が終わるまでは離れるわけにはいかん。そこでだ、何か適当なもの……そうだな、タライを持って来てくれんか」
「タライと言いますと、ドリフですか」
「なんでだよ。おまえはワシの頭に金ダライを落とす気か？」
「はっはっは、本気でございます」
「ジョークじゃねえのかよ！　主人の頭にタライ落としてどうする気だよ。おまえの人生にオチがつくっつー話だよ」
「ペッ」
「つまんねーこと言いやがってみたいな顔してんじゃねーよ。もういいよタライは。例のいけすかねえ侯爵の野郎から貰ったアヒルの器があったろう。あれを持って来てくれ」
「……こうして、マールバッハ伯爵が用を足すのに使用したアヒルをかたどった器が元となり、アヒルの携帯便器が広まっていくことになったのである……」
「いや、それはいいから早く持って来てくれ。もうもれそうなんだ」
「マールバッハ伯爵の名から、最初はマールと呼ばれていたが、初めて見た人たちが『Oh! マール！』と驚いていたことから、おまる、という名前になっていったのであった。……それでは、今取って参りますので」
「……うん、もういいから、とりあえず替えのズボンを持って来てくれ」