安楽死探偵「毒田切子」
安楽死探偵「毒田切子」最終話
「さすがの名探偵ザーマ・クロゥもお手上げのようね」
「ま、まだだ! 必ず私が犯人を見つけてみせる!」
「残念だけど時間切れよ」
「時間だと……? まさか貴様……」
「そう。先ほどの料理に、私の薬を入れさせてもらったわ」
「馬鹿なッ! なんてことを!」
「事件を深みに誘うだけの無能な探偵さんは黙っていなさい」
「くッ!」
「さて、皆さん。こちらの名探偵氏が説明してくださったように、今回の事件の犯人は必ずこの中にいると、私も確信しています。そこで、ある薬をさっきの料理に入れさせてもらいました」
ざわ……ざわ……
薬だって?
一体何だそれは!
自白剤でも盛ったってのか!?
「ふふふ、ご安心ください。そんなに野暮なものではありません。皆さんを安らかな眠りに誘 う薬です」
ざわ……ざわ……
「馬鹿なことはやめろ! 早く解毒剤を出すんだ!」
「持っていないわ」
「なんだと!? 何を考えているんだ毒田切子!」
そ、そうだ! なんだってこんなことを!!
俺たちを殺すつもりか! この人殺しめ!!
「まだわからないのかしら。この中の誰かが犯人なのよ。死にたくなければ早く名乗り出なさい。そうしたら、解毒剤を隠した場所を教えてあげる」
「隠しただと? この屋敷にか?」
「そう。でも探そうなどとはしないことね。あと五分もすれば、料理を口にしなかった私と名探偵氏以外は確実に死ぬ。とうてい間に合いっこないわ」
い、いやだ! 俺は死にたくない!
私だって!
ちょっと、誰がやったのか知らないけど、早く名乗り出なさいよ!!
なんだと! おまえこそ犯人なんじゃないのか!!
いや、まて! この女を締め上げて解毒剤のありかを吐かせるんだ!
そんなことをしている間に時間が来てしまうぞ!
誰よ、誰なのよ!!
「最悪だ……こんなこと、探偵のやることではない!」
「犯人の特定に手間取って、第二第三の殺人を防げないのもどうかと思うけど?」
「そ、それとこれとは……」
わ、わたしよ、私がやったのよ!!
「なッ! ウィンザー夫人……まさかあなたが……しかし、少なくともあなたには第二の殺人に関してはアリバイが」
あのとき、執事に返事をしたのは私ではないの……。蓄音機に私の声を入れておいたのよ。
「しかしこの屋敷には蓄音機などなかった! あなたには蓄音機を始末する余裕もなかったはずだ!!」
衣装タンスの底に隠しがあるのよ。蓄音機はそこにあるわ。慌てて隠しただけなのに、あれを見逃すなんて、あなたもとんだ名探偵ね。
「同感だわ」
「……」
さあ、白状したんだから、さっさと解毒剤の場所を教えてちょうだい。私が死ぬのは構わないけど、私だって恨みもない人たちに死んで欲しくはないもの。
「裏の焼却炉に隠してあるわ。あと二分。急げば十分間に合うでしょう」
うおお~! 俺が先だっ!
わ、私が先よっ!
慌てるなっ! うわったたたっ! お、押すなぁっ!
どたどたどたどたどた…………
「元気な人たちだこと」
「……誰のせいだと思ってるんだ」
「いいじゃないの。事件は無事解決したんだし。まったく、最初っから私に任せてくれればねえ」
「探偵という職業の評判を落とすだけだ」
「それはお互いさまでしょ」
ふふふ、ふふふふふ、あは、あははははははははは……
「な、なに? どうしちゃったの? ちょっと、ウィンザー夫人?」
切子さん……焼却炉に薬を隠したのって、いつ?
「お昼のちょっと前だけど」
知らなかったみたいだけど、ここの焼却炉はね、毎日お昼の最中に、執事が火をつけるの。
「……な、なんだって? それはつまり……」
(も、燃えてるじゃないか!!)
(解毒剤は、解毒剤はどうなるのォ!!)
(誰か焼却炉に飛び込め!!)
(無茶言うな!)
「あ~ららららら」
「あららじゃねえだろ!!」
「まあなんてゆーの? 不可抗力ってヤツ?」
「それですむかっ!」
「しょーがないじゃなーい。知らなかったんだも~ん。あら、ウィンザー夫人?」
……
「……死んでるようだな。まるで眠っているようだが」
「焼却炉に行った人たちの声も聞こえなくなったわね」
「……」
「……」
「ど、どうするんだよ!」
「そんなに怒らないでよ。いいじゃない、ウィンザー夫人のせいにしちゃえば。死人に口なしってね」
「おまえなあ……」
「そして、誰もいなくなった、か……」
「いや、うまいこと言った、みたいな顔されてもよ」
「さすがの名探偵ザーマ・クロゥもお手上げのようね」
「ま、まだだ! 必ず私が犯人を見つけてみせる!」
「残念だけど時間切れよ」
「時間だと……? まさか貴様……」
「そう。先ほどの料理に、私の薬を入れさせてもらったわ」
「馬鹿なッ! なんてことを!」
「事件を深みに誘うだけの無能な探偵さんは黙っていなさい」
「くッ!」
「さて、皆さん。こちらの名探偵氏が説明してくださったように、今回の事件の犯人は必ずこの中にいると、私も確信しています。そこで、ある薬をさっきの料理に入れさせてもらいました」
ざわ……ざわ……
薬だって?
一体何だそれは!
自白剤でも盛ったってのか!?
「ふふふ、ご安心ください。そんなに野暮なものではありません。皆さんを安らかな眠りに
ざわ……ざわ……
「馬鹿なことはやめろ! 早く解毒剤を出すんだ!」
「持っていないわ」
「なんだと!? 何を考えているんだ毒田切子!」
そ、そうだ! なんだってこんなことを!!
俺たちを殺すつもりか! この人殺しめ!!
「まだわからないのかしら。この中の誰かが犯人なのよ。死にたくなければ早く名乗り出なさい。そうしたら、解毒剤を隠した場所を教えてあげる」
「隠しただと? この屋敷にか?」
「そう。でも探そうなどとはしないことね。あと五分もすれば、料理を口にしなかった私と名探偵氏以外は確実に死ぬ。とうてい間に合いっこないわ」
い、いやだ! 俺は死にたくない!
私だって!
ちょっと、誰がやったのか知らないけど、早く名乗り出なさいよ!!
なんだと! おまえこそ犯人なんじゃないのか!!
いや、まて! この女を締め上げて解毒剤のありかを吐かせるんだ!
そんなことをしている間に時間が来てしまうぞ!
誰よ、誰なのよ!!
「最悪だ……こんなこと、探偵のやることではない!」
「犯人の特定に手間取って、第二第三の殺人を防げないのもどうかと思うけど?」
「そ、それとこれとは……」
わ、わたしよ、私がやったのよ!!
「なッ! ウィンザー夫人……まさかあなたが……しかし、少なくともあなたには第二の殺人に関してはアリバイが」
あのとき、執事に返事をしたのは私ではないの……。蓄音機に私の声を入れておいたのよ。
「しかしこの屋敷には蓄音機などなかった! あなたには蓄音機を始末する余裕もなかったはずだ!!」
衣装タンスの底に隠しがあるのよ。蓄音機はそこにあるわ。慌てて隠しただけなのに、あれを見逃すなんて、あなたもとんだ名探偵ね。
「同感だわ」
「……」
さあ、白状したんだから、さっさと解毒剤の場所を教えてちょうだい。私が死ぬのは構わないけど、私だって恨みもない人たちに死んで欲しくはないもの。
「裏の焼却炉に隠してあるわ。あと二分。急げば十分間に合うでしょう」
うおお~! 俺が先だっ!
わ、私が先よっ!
慌てるなっ! うわったたたっ! お、押すなぁっ!
どたどたどたどたどた…………
「元気な人たちだこと」
「……誰のせいだと思ってるんだ」
「いいじゃないの。事件は無事解決したんだし。まったく、最初っから私に任せてくれればねえ」
「探偵という職業の評判を落とすだけだ」
「それはお互いさまでしょ」
ふふふ、ふふふふふ、あは、あははははははははは……
「な、なに? どうしちゃったの? ちょっと、ウィンザー夫人?」
切子さん……焼却炉に薬を隠したのって、いつ?
「お昼のちょっと前だけど」
知らなかったみたいだけど、ここの焼却炉はね、毎日お昼の最中に、執事が火をつけるの。
「……な、なんだって? それはつまり……」
(も、燃えてるじゃないか!!)
(解毒剤は、解毒剤はどうなるのォ!!)
(誰か焼却炉に飛び込め!!)
(無茶言うな!)
「あ~ららららら」
「あららじゃねえだろ!!」
「まあなんてゆーの? 不可抗力ってヤツ?」
「それですむかっ!」
「しょーがないじゃなーい。知らなかったんだも~ん。あら、ウィンザー夫人?」
……
「……死んでるようだな。まるで眠っているようだが」
「焼却炉に行った人たちの声も聞こえなくなったわね」
「……」
「……」
「ど、どうするんだよ!」
「そんなに怒らないでよ。いいじゃない、ウィンザー夫人のせいにしちゃえば。死人に口なしってね」
「おまえなあ……」
「そして、誰もいなくなった、か……」
「いや、うまいこと言った、みたいな顔されてもよ」
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