幼女サイベルの呼び声
 さ、さいべるたんハァハァ! って、幼女じゃなくて妖女だっつーの。-完-
 冗談はさておき、名作と名高いらしい「妖女サイベルの呼び声」、未読の本に埋もれていたのをなんとなく引っ張り出して読んでみました。発狂死した祖父の日記を手にした主人公。日記には理解を超えた奇怪な内容が記されており、主人公はかつての一族の故郷であるインスマウスに潜む、禁断の魔道書ネクロノミコンを手にした妖女サイベルの存在を知ることになる。深き者どもディープ・ワンズを招くサイベルの呼び声に応えるかのように、主人公はインスマウスへと向かうのであった……という話ではなくっていうか、呼び声ってついてるだけでクトゥルフ風味というのも短絡的に過ぎるのではないかと言いたい。
 えー、それで結局どういう話かと言うと、伝説に語られるような動物たちと共に暮らす、召喚魔術を得手とする女魔術師のサイベルに曰くつきの赤子が預けられ、その子供を育てるうちにこれまで人と交わることのなかったサイベルにも少しづつ人間らしい感情が生まれ、結局その子供がらみで色々と問題が起きたり起きなかったりするという話です。ある出来事により憎しみの感情にとらわれて復讐しようとするサイベルは愛情をも知ってしまったために苦悩し、そのためにドロドロのぐっちゃんぐっちゃんな悲劇で終わるのかと思って読んでいたんですが、最後はえらく綺麗にまとめてあってビックリ。伊達に名作と言われてはいないってことですな。古本屋に行けば多分100円均一コーナとかに置いてあるんで、機会があったら読んでみたらいーんじゃないの。いや、投げやりな言い方してますが、普通に面白かったんで。腹かかえて爆笑するほどじゃないけども、ちょっと笑える程度には。って、そういう面白さじゃねえっつーの、とか言いたい。

ラス・マンチャス通信


 なんとなく買ってみた小説。「カフカ+マルケス+?=正体不明の肌触り」なんて帯には書いてありましたが、確かにカフカ的(マルケスは知らない。っつーか誰。ラーメン屋の親父?)ではある。つってもカフカ作品を偉そうに論じられるほど読んじゃいないんですが、アレでしょ、不条理なら全部カフカでしょ(偏見)。まあ短編の「橋」とかはもう不条理すぎてわけがわからないんですが、有名な「変身」のような不思議さ……は違うか、えーと、静かな不気味さを感じさせる始まりなわけですよ。家の中を好き勝手にはいずりまわる正体不明の存在。マーフィーさんの幽霊ならぬ妖怪じみたソイツに対し、主人公を含めた家族はソレをいないものとみなしていびつな日常生活を送っているんですが、あるとき姉にのしかかっていった薄汚いソイツを、主人公は殴り殺してしまう。それが原因なのか主人公は施設に入れられ、その後も何が理由なのかははっきりしないんですが、周りの人間から笑われたり相手にされなかったり仕事をクビになったり妖怪じみた存在に殺されそうになったりと、まあ色々なことがあったりなかったりするわけです。大まかな流れとしてのストーリーは理解出来るし、特に破綻もしていないんですが、どうにも不条理と言いますか、不可思議な部分が背景にあって、それが結局最後まで謎のままで終わってしまう。不可思議な話を不可思議なままで納得出来る人でないと少々厳しいタイプですかな。ただし、ラストは意外なほどにオチめいた話になっていて、まあ話全体を流れる不可思議さに対して解答を与えるという意味でのオチではないんですが、よくわからないままに話をスッパリと切られてしまったかのような不満をさほど感じさせない終わり方にはなってます。鉛色の空の下で粘度の高い空気の中を泳ぐような雰囲気を味わいたい人にはオススメってトコでしょうかねえ。うん、書いてて自分で何言ってんだかさっぱりわかりません。古本で100円くらいだったら試してみても……いや、ハードカバー本なんで300円くらい? まあそんぐらいだったらいいかな、という程度には面白かったです。
コメント一覧
コメント投稿

名前

URL

メッセージ

- CafeLog -