粗衣粗食
(そいそしょく)

 粗末な食事と粗末な衣服。簡素な暮らし。

滄海の一粟
(そうかいのいちぞく)

 広大なものの中にある極めて小さいもの。また、天地の間にある人間の存在が極めて微小なものであるということ。滄海(青海原)に浮かんでいる一粒のあわの意から言う。北宋の蘇軾そしょくの「前赤壁賦」中の語句に基づく。

類語: 「大海の一粟」、「大海の一滴」

滄海変じて桑田となる
(そうかいへんじてそうでんとなる)

 世の中の変化の激しいこと。滄海(青海原)が変じて桑畑となるの意から言う。

同意語: 「桑田碧海へきかい」、「桑田変じて滄海となる」、「滄海桑田」、「滄桑の変」
類語: 「飛鳥川の淵瀬

喪家の狗
(そうかのいぬ)

 喪中の家の犬、または宿無し犬。転じて、痩せ衰えて元気のない人のたとえ。「喪家」は喪中の家。喪中の家の犬は、食物を与えてもらえないので痩せている。あるとき、孔子が弟子にはぐれて東門に佇んでいるのを見た人が、「まるで喪家の犬のようだ」と言ったことから。『史記・孔子世家』による。

創業は易く守成は難し
(そうぎょうはやすくしゅせいはかたし)

 新しく事業を興すことはたやすいが、それをしっかりと維持していくことは難しいということ。国家を建設するより、それを維持することの方が難しいの意から言う。中国・唐の太宗たいそうが「創業と守成ではどちらが難しいか」と問うと、側近の魏徴ぎちょうが「守成」と答えた。

糟糠の妻
(そうこうのつま)

 若く貧乏な時代から苦労をともにした妻のこと。また、苦労をともにした妻は立身出世した後も追い出すわけにはいかないということ。「糟糠」は酒糟さけかすぬかのことで、貧しい食べ物のたとえ。

造次顛沛
(ぞうじてんぱい)

 瞬時も怠りなく努めるさま。また、危急の場合や、あわただしい場合のこと。

宋襄の仁
(そうじょうのじん)

 無益な情けや不必要な義理立てのこと。また、そのためにひどい目にあうこと。中国の春秋時代、そうの襄公がの国と戦った際、公子が「敵の陣容が整わない今こそ攻撃の機会だ」と勧めたが、襄公は「君子は人の弱みにつけこむようなことはしないものだ」と言って攻撃せず、敵の準備が整ってから攻撃し敗れてしまった。

曾参人を殺す
(そうしんひとをころす)

 嘘であっても、何度も同じことを言われると、ついにはそれを信じてしまうというたとえ。

同意語: 「孔子の弟子の曾参そうしんの一族が人を殺した際、ある人が曾参の母親に「曾参が人を殺した」と告げたが信じなかった。ところが、同じことを三度言われると、母親は織りかけのはたを放り出して駆け出した。」

漱石枕流
(そうせきちんりゅう)

 ⇒「石に漱ぎ流れに枕す

滄桑の変
(そうそうのへん)

 ⇒「滄海変じて桑田となる

相即不離
(そうそくふり)

 互いに関係しあっており、切り離すことができないさま。密接な関係をいう。

そうは問屋が卸さない
(そうはとんやがおろさない)

 勝手なことばかり言っても、うまい具合にそうはならないということ。そんな安値では問屋が卸さない、つまり、原価を割って卸せと言っても、問屋は卸すことがないの意から言う。

双璧
(そうへき)

 並び称される二つの優れたもの。特に、そのような二人の人物。「璧」は「璧玉」などと使う「璧」で、宝玉の意。二つの優れた宝玉の意から言う。

草莽の臣
(そうもうのしん)

 仕官しない民間人。在野の人のこと。「草莽そうもう」は草むら、民間の意。古代中国の国の形態は一種の都市国家であった。孟子もうしは、城壁に囲まれた都市部に住む庶民を「市井しせいの臣」と呼び、城外に住む庶民を「草莽の臣」と呼んだ。

総領の甚六
(そうりょうのじんろく)

 長子はとかく甘やかされて育てられがちであるから、次子以下に比べおっとりとして世間知らずの者が多いということ。「総領」は家名を継ぐ者の意から、長子、特に長男の意。「甚六」はまぬけの意。

倉廩実ちて礼節を知る
(そうりんみちてれいせつをしる)

 ⇒「衣食足りて礼節を知る

葬礼帰りの医者話
(そうれいがえりのいしゃばなし)

 葬式の帰り道で、生前の病気や医者の善し悪しの話をする。いまさら言っても仕方のない愚痴のたとえ。

惻隠の心は仁の端なり
(そくいんのこころはじんのたんなり)

 人の気の毒なさまを見てかわいそうだと思う気持ちが、仁をなす端緒であるということ。「惻隠の心」は不幸な人をあわれみいたむ心。「端」は端緒・始まりの意。『孟子・公孫丑上』にある。

速戦即決
(そくせんそっけつ)

 一気に勝敗を決してしまうこと。

則天去私
(そくてんきょし)

 自己本位の考えを捨てて、自然の中において物事を見極めようとする姿勢。

俎上の魚
(そじょうのうお)

 ⇒「俎板まないたの鯉

即決即断
(そっけつそくだん)

 時機・チャンスを逃さず、即座に決断を下すこと。

率先躬行
(そっせんきゅうこう)

 人より先に自分からすすんで実行すること。

率先垂範
(そっせんすいはん)

 自分がすすんで手本を示す。模範を見せること。

袖から火事
(そでからかじ)

 小さなことから大事が引き起こされるたとえ。1657年に江戸の大半を焼き尽くした振り袖火事は、施餓鬼せがきの仏事で焼いた振り袖が強風にあおられて空に舞い上がったのが原因になったことから。

袖触れ合うも他生の縁
(そでふれあうもたしょうのえん)

 袖が触れ合うようなちょっとしたことも、前世からの深い因縁によって起こるものであるということ。「他生」は「今生」の対語で、前世と来世の称。この場合は特に、前世の意。

同意語: 「袖すり合うも他生の縁」
類語: 「一樹の蔭一河の流れも他生の縁」、「躓く石も縁の端

備え有れば憂い無し
(そなえあればうれいなし)

 平生から事に備えて準備がきちんと「できていれば、何の心配もなくなるということ。『書経・説命中』に[[これ事を事とすれば、すなわれ備え有り。備え有ればうれえ無し」とあるのに基づく。

備わらんことを一人に求むるなかれ
(そなわらんことをいちにんにもとむるなかれ)

 完全無欠の人はいないのだから、一人の人間に完全を求めてはいけないということ。周公旦しゅうこうたんが、子の伯禽はくきんが魯の国に封ぜられるときに言ったことば。『論語・微子』に「君子はその親をてず。……故旧(古くからの友人)は大故(大きな過失)無ければ、すなわち棄てざるなり。備わらんことを一人に求むる無かれ」とあるのによる。

同意語: 「備わるを一人に求むるなかれ」

その子を知らざればその友を見よ
(そのこをしらざればそのともをみよ)

 人の性向は、その交際している友人を見れば分かるということ。『荀子・性悪』に「その子を知らざればその友をよ。その君を知らざればその左右を視よ」とあるのに基づく。

同意語: 「その人を知らざればその友を見よ」
類語: 「その子を知らざればその父を見よ」、「その子を知らざればその母を見よ」、「人はつきあっている友によって分かる」

その手は桑名の焼き蛤
(そのてはくわなのやきはまぐり)

 そちらの計略に乗せられてたまるものかの意で使う地口じぐち。地口とは、よく知られたことわざや慣用句をもじって言うしゃれ。「桑名」は三重県にある地名で、東海道五十三次の一つ。焼き蛤はその名物として有名。「その手は食わない」を「桑名」にかけて言う。

その所を得る
(そのところをえる)

 その人の能力や才能に最もふさわしい場所や地位を得ること。春秋時代の鄭の名宰相・子産に生きた魚が贈られた。子産は池に放し飼いにするように命じたが、係の役人はそれを食べてしまった。「初め元気のなかった魚もやがてのびのびと池中を泳ぐようになった」という役人の嘘の報告を聞いて、子産は「その所を得たるかな、その所を得たるかな」と喜んだという。『孟子・万章上』に見え、つじつまの合った嘘には賢者もだまされるというたとえ話の中に出てくる故事。

蕎麦の花も一盛り
(そばのはなもひともり)

 地味で目立たない蕎麦の花も、それなりに美しくみえる盛りの時期もある。転じて、娘は誰でも年頃になると、それなりの魅力が出て綺麗になるということ。

類語: 「鬼も十八番茶も出花」、「あざみの花も一盛り

損して得取れ
(そんしてとくとれ)

 一時的な損には目をつぶって、将来の大きな利益を考えよということ。

同意語: 「損をして利を見よ」
類語: 「損すれば得をする」、「損せぬ人に儲けなし」、「損は儲けの始め」

樽俎折衝
(そんそせっしょう)

 宴席で外交談判をして、戦わずして相手のほこ先をくじいたり、自国の国威を輝かせたりすること。単に、外交交渉の意にも使う。「樽俎」は酒樽と肉を載せる台。「折衝」は、今は交渉の意で使うが、元来は攻めてくる敵のほこ先をくじく意。『新書・雑事一』に見える故事による。