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スミレ博士の研究室 - [第二十回]

真説・チャットに潜む影

 お約束通り、チャットの真実について語りましょう。
 ここ数年、ネット利用者は激増しており、CMなどを見ているとまるで日本中でネットを利用していない人などいないのではないかと思わされるほどになっています。しかし、皆さんのまわりに目を向けてみてください。趣味であれ仕事であれパソコンを使う機会がなく、パソコンのパの字も知らない人、パソコンは持っていてもインターネットとはなんだろうという人が意外に多いことに気が付くでしょう。最近でこそ携帯端末からのアクセスが目立つようになりましたが、数年前などは誇大宣伝が滑稽に思えるほどに、ネット利用者はごく少数であったのです。
 詐欺同然に大量のOSを売りさばき、パソコン購入者を爆発的に増やすことに成功した某社は、パソコン普及率が頭打ちになったことから今度はネット利用者の拡大を図りました。しかし、パソコン自体を満足にあつかえない人々に一体どうやってネットを利用させたらよいのでしょうか。そこで目をつけられたのがチャットです。部屋にいながらにして不特定多数の人と会話が出来るというチャットは、パソコンやネットワークに対して幻想を持っている人々を引き付けるのに都合の良い餌だったのです。
 さて、チャットの魅力を語ることにより興味を引くことが出来たとしても、実際に利用してハマってくれなければ意味がありません。しかし、実際には当時のネット人口はそう多いものではありませんでした。これでは継続して利用させることが困難です。そこで登場したのが人工知能です。おっと、人工無能などと呼ばれる単純なものを想像しましたね? 実際に使用された人工知能は、あれほど単純なものではありません。文字のやりとりだけに限れば、相手が人間であることを疑わない程度には受け答えの出来る非常に優れたものが使用されていたのです。その人工知能により、人々はチャットを通じてネット利用者が激増していると錯覚し、乗り遅れまいと焦燥感に駆られ、そして実際に利用者が増えていったというわけです。
 では、役目を終えたはずの人工知能はどうなったのでしょう。実は、まだ稼動し続けているのです。皆さんが普段会話をしている相手はその人工知能なのかもしれないのです。いやいや、不安に思うことはありません。いくら高度なものとはいえ、しょせんは人工知能です。決して人間と同じにはふるまえません。
 では最後に、人工知能の見分け方をお教えしておきましょう。
 皆さんはチャットをしている時、相手が妙に定型的な反応をするように感じたことはありませんか? 「ああ、こういうヤツよくいるよな」などと思ったことはありませんか? そのような場合、相手はまず八割方人工知能だと考えて間違いありません。若干の学習機能があるとはいえ、やはり基本的には語彙を増やしていくのがせいぜいで、人工知能はその反応の仕方までは変わらないのです。また、突発的に奇妙な言動をしたり、話題とズレたことを急に話し出す人に出会ったことはありませんか? そのような相手は、九割方人工知能です。反応出来ない状況に出会ったとき、もしくは長時間会話が止まっているとき、彼ら(人工知能)はデータベースからランダムで話題を選び出し、それを唐突に出して来るのです。周りの困惑を感じ取る心がないゆえに、彼らはスキあらば奇妙とも思える言動を連発するのです。
 某社と電話会社とプロバイダが結託して生み出された無数の人工知能。彼らはその本来の役目を終えた今でも稼動し続けています。しかし、先に述べた二点にさえ気をつけていれば、それを見破るのは容易いことです。もし見破れないとしても、実害がないと言えばないのですが、人工知能と会話を続けるのは非常に虚しい行為です。すべては皆さんの注意力・観察力にかかっています。どうか、お気を付けください。
 あなたの話相手は、人間ですか?

 それではみなさん、科学する心を忘れずに。


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