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スミレ博士の研究室 - [第十九回]

チャットに潜む影

 やあやあ皆さん、お久しぶりのスミレです。一年ぶりというところでしょうかね。いやいや、私も別段遊んでいたわけではないのですよ。前回以後、やけにヤマンバギャルから戦いを挑まれましてね。それはもう千切っては投げ千切って投げという状況で、どうせなら寝技勝負に持ち込もうかとも思ったんですが、何せあのご面相ですからね。しょうがないので実験材料にもしてみたんですが、どうにも質が良くないというお粗末ぶりでした。頭にきたのでヤマンバギャルを見かける度に狩りまくりましてね。一体何千人片付けたのかはもうわかりませんが、そのおかげで最近は彼女らの絶対数が減少しているようでなによりです。

 さて、皆さんはチャットをやったことがありますか? コンピュータ上で、複数人を相手に文字情報のやりとりをするというアレです。口下手な人でも対人恐怖症な人でも相手の顔が見えないので気軽に会話を楽しむことが出来るので、現在かなりの人がチャットを楽しんでいるようですね。まぁ実際に人付き合いの苦手な人はチャット上でも問題を起こして追い出され、安住の地を求めて様々なチャットを渡り歩いたりするわけですが。
 実は今回、チャットに関してなかなかに面白い論文が発表されたので、簡単にご紹介致しましょう。私に言わせればちゃんちゃら可笑しいのですけれどもね。

「チャットに潜む影」 猫魂

1. はじめに

 チャットとは文字による会話である。直接対話をする場合には相手が見えるし、電話では相手の声が聞ける。しかし、チャットの場合は文字だけなのである。文章の組み立て方や話題の内容などからある程度相手の人物像は絞れるが、やはり文字通信だけではそううまくはいかないことが多いだろう。オフ会などで直接会って驚いた、という経験の持ち主も少なくないと思う。実はそれは当然で、文字のみのやりとりであるという部分に、重大な秘密が隠されていたのである。

2. 対話相手の謎

 今あなたは、チャットで誰かと話をしているとする。その相手とは一体誰であろうか。もちろんハンドルネーム(以下HN)ならば表示されている。仮にANIKI氏としておこう。あなたはANIKI氏とは以前からのチャット仲間で、彼(もしくは彼女)の趣味が自分と似通っていることを知っており、また、自分よりも多少過激な性格であることも知っている。その他にも彼に関して散発的な知識を持っている。そこで、それらを総合してみよう。一人の人間の人物像が浮かんでくるだろうか。答えは否である。おぼろげな人物像は浮かぶかもしれないが、非常に曖昧模糊としているはずだ。確かに人は他人のことを、いや、自分のことですら完全には知り得ない。だが、直接知っている人物のそれに対し、チャットの相手の人物像というのは、非常に掴みにくいものであるのは間違いない。いや、掴みにくいどころか、掴み得ないというのが正しいようにすら思えるではないか。
 あなたが普段チャットをしているのならば、その相手のことを思い浮かべてみて欲しい。明確な人物像が浮かばず、一体自分は誰と会話をしていたのだろうかと、不安に感じるのではないだろうか。

3. チャットに潜む影

 あなたは普段、チャットでどのような会話をしているだろうか。趣味の合う仲間同士の会話か、性格の合う仲間同士の会話か、それともただの世間話か。いずれにせよ、なにかしら共通の部分がなければ会話は成り立たない。ここに、対話相手の謎を解く鍵がある。
 もったいぶっても仕方がないので先に言ってしまうが、あなたがチャットで会話をしていると思っている相手は一切存在しない。すべては自分自身との対話なのだ。相手が何人だろうと関係ない。それらはすべて、あなたの深層意識が生み出した仮想人格にすぎないのだ。そんな馬鹿なと思うだろうが、思い出して欲しい。ほんのちょっとだけ会話を楽しんだつもりが、一時間二時間と経過していたということはないだろうか。当然のことである。何故なら、あなたの目の前で行われた会話はすべてあなた自身が打ち込んだのだから。あなたが相手の発言を待っている間、あなたの体はあなたの手を離れ、別の人格が文章を打ち込んでいるのだ。あなたがごく短い時間だと思っていても、別の人格が知らぬ間にあなたの体を使用しているため、実際にはかなりの時間が過ぎているということになる。
 チャットの場合は普段とは違い、気が合わないのならば会話を打ちきって別の場所に行けば良い。そして、いずれは気の合う仲間の集うチャットに落ちつく。自分自身と会話をしているというのなら、こんな無駄をする必要はないだろうと思うかもしれない。だがしかし、これは仮想人格の調整をしているのだ。あなたの中には無限とも言えるほどの人格がひしめいており、その中から話やすい人格を選び出しているに過ぎないのである。

4. まとめ

 チャットとは自分自身との会話である。では何故そのようなことが行われているのか。話し相手を求める心理からかもしれないし、自分自身を掘り下げる作業なのかもしれない。これについては、今後の研究を待たねばならないだろう。
 最後にもう一度言っておくが、チャットとは自分自身との会話である。私自身はこれが事実であると信じているし、他の研究者も早々に気が付き、原因について研究を進めてくれることを祈るのみである。

 いやはや、浅はかというか何というか。まあ目の付け所は悪くないので、あまり厳しくは言わないでおきましょう。次回は私がチャットの真実について語ることにします。

 それではみなさん、科学する心を忘れずに。


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