パットは軽犯罪を犯して判事の前に引き出された。
判事が尋ねた。
「お前は、自分が善良であると言い立てているが、誰かそれを証明できる人間がこの法廷にいるかね」
「はい、ごぜえますだ、閣下さま」
パットが答えた。
「そこにいる保安官がそうでごぜえます」
「なんだって」
保安官はびっくりして叫んだ。
「閣下、私はこの男をまったく知りません」
「ほれ、みろ」
パットは勝ち誇って言った。
「あっしはもう、十年間というものこの土地で暮らしていますだ。
それなのに保安官はこのあっしのことを知っていなさらねえ。
これこそあっしが善良だという証拠ではねえですかい」
「あなたは他人のためになるようなことを何かしてきましたか」
牧師は、ひざまずいている男に言った。
「はい」
男はうやうやしく答えた。
「私はずっと三人、いや四人にはなると思いますが、
それだけの刑事に常に仕事を与え続けてきました」
鉛管工業請負業のアート・ツェイグは、またしてもインチキ工事のかどで法廷に立つことになった。
「ツェイグ」
判事が怒鳴り立てた。
「この一年でお前がこの法廷に立つのは、今度で五度目だぞ。
ちっとは恥ずかしいと思わんのか、恥を知れ、ツェイグ」
「判事さんよ、いきなりそれなんですかい。
そんな言い方はないと思いますがねえ」
ツェイグは非難するように言った。
「確かにあっしがここに立つのは五度目でさあ。
でもあっしは、あんたのことをそんな風には言いませんぜ」
裁判官がうんざりした口調で言った。
「お前は、これで私の前に何度引き出されてきたことになるかね」
男が答えた。
「わかりませんや。
あっしはあんたの方で数えているだろうと思ってたもんで」
巡査部長がまたもや捕まって警察に舞い戻ってきた常習犯に言った。
「なんてことだ。
またやってきたのか」
男が答えた。
「そうなんで、旦那。
あっしに何か手紙は来てませんですかい」
法廷で被告が自己弁護をした。
「裁判長閣下」
彼は言った。
「私が四十マイルもスピードを出していたなんてとんでもないことです。
二十マイルも出してなかった。
いや、それどころか十マイルも出てなかったんです。
事実、パトロールの警官がやってきたとき、私はほとんど停まっていたんですから」
「もうそこらへんで止めといたほうがいいだろう」
裁判長がさえぎった。
「それ以上続けると、あんたの車はバックし始めることになる。
二十五ドルの罰金」
「裁判長さま」
被告が弁明を求められて言った。
「あっしが文書偽造の罪を犯したなんて、そんなことが出来るわけはありません。
あっしは何しろ、自分の名前さえ書けないんですから」
「お前は、お前の名前を署名したことで起訴されてるわけではないんだ」
判事が冷然と答えた。