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毎週のジョーク - [11]


体調

判事が被告に言った。
「お前は楽器店に押し入ってピアノを一台盗んだ罪で告発されている。
何か弁明することはあるか」
被告が答えた。
「ピアノを盗んだときは、私は身体をこわしていまして、
女房や子供を養わなければならなかったもんで、つい……」
判事が言った。
「なるほど、それでは身体が丈夫だったら、お前は銀行を建物ごと盗んだんじゃないのかね」


丸ごと

「お前を誘拐の容疑で逮捕する」
警部がジョーに言った。
「待ってください。
あっしは誘拐なんて大それたことはしてませんぜ。
なるほど、オーバーコートは盗んだかもしれませんがね」
ジョーは抗弁した。
「その通りだとも」
警部が答えた。
「お前は昨日、着ている人間ごとオーバーを盗んだんだものな」


酒呑み

町でも名うての呑兵衛のんべえが、密造ウイスキーの裁判で、証人として出廷した。
「あんたは、被告から今まで密造ウイスキーを買ったことがあるかね」
判事が尋ねた。
「えーと、閣下、あっしはその密造ウイスキーというのがどういうものかよくわかりませんのですが」
呑兵衛が答えた。
「良いウイスキーと悪いウイスキーの違いはあんたにもわかるだろう」
判事がさらに尋ねた。
「実を言うと判事さん」
長年酒を飲み続けてきた男が言った。
「あっしは、悪い酒ってのを飲んだことがあるとは思ってないんでしてね……」


ものは言いよう

判事が、何度も裁判所のお世話になったことのある酔っ払いを尋問していた。
「今度こそは」
判事は言った。
「常習飲酒の罪で起訴するぞ。
何か言いたいことはあるかね」
「いいえ」
と酔っ払いは答えた。
「あっしは、ただ始終喉が渇く性質たちなだけなんで」


アリバイ

取調べ室に来たサムは、刑事の厳しい目付きを見ただけで震えが止まらなかった。
「お前は、被害者に正当な対価を払うことなく、スミスフィールド・ハムを着服したことを認めるか」
刑事がいかめしく尋ねた。
「言われていることが、よくわかりませんのですが」
サムは途方にくれた様子で答えた。
「よろしい」
刑事が言った。
「それでは、お前は昨日の夜十一時にはどこに居たかね」
「へえ、納屋に居ましただ」
サムが答えた。
「なんだって、お前は立派な家を持っているじゃないか。
それなのに納屋でなんか寝るのかね」
「いいえ、違いますだ」
サムは否定した。
「あっしは、スミスフィールド・ハムを隠していたところなんで」


チビの弟

「被告は、これまでに犯罪を行ったことがあるかね?」
と判事が尋問した。
「もちろん、ねえですよ」
と見るからに凶悪な面構えの被告が否定した。
「今度のことだって、うちのチビの弟の銀行から
ちょっと銭を失敬しようとしたってだけのことでさあ。
兄弟同士のつまらん揉め事なんだ」
検事が口をはさんだ。
「発言を許可頂いて申し上げますが、被告の説明は不十分であります。
被告の末弟は第一ナショナル銀行の行員なのです」


アリバイ

ある家に放火して捕まった男の弁解。
「あっしじゃありませんぜ。
その日あっしはデトロイトで車を盗んでいましたからね」


信心

25種類もの鍵を持ち教会のドアを開けようとしてあれこれやっているところを捕まった男の言い訳。
「あっしはただお祈りする場所を探していただけでして」


奉仕活動

一人の酔っ払いが、自動車泥棒のとがで法廷に引き出された。
彼は弁明して言った。
「あっしは、その車を盗んだのではありません。
共同墓地の前に止まっていたんで、てっきりその持ち主が死んでしまったものと思って
交通妨害にならんよう移動しただけなんでさあ」


支払いはきちんと

「お前は何のためにタバコ店に押し入ったのか」
判事が尋ねた。
「へえ、十セントの葉巻を一本欲しかったものでごぜえやすから。
ただそれだけでごぜいやす」
男が答えた。
「それなら、何故レジスターを壊して開けたのかね」
判事が追及した。
「へえ」
男が答えた。
「代金の十セントを入れておこうと思いやして」


誇り

「それでは腹が減っていたのでデリカテッセンに盗みに入ったというのだな。
それじゃ、どうして食べ物を盗まないで、レジスターから金を盗ったんだね?」
と判事が尋ねた。
「それなんです、判事さん」
と被告は答えた。
「私にも誇りというものがあります。
食いもんには金を払うことにしてるんです。
無銭飲食は沽券こけんに関わりますからね」


試着

万引きで捕まったある女性。
「私はその帽子を試しにかぶっただけですわ。
でもその帽子があんまり小さかったんで、
そのうちにかぶっているのを忘れてしまったんですの」


おとぼけ二人組み

ゴールドバーグとグリーンバーグは、町の雑貨屋に盗みに入ったという疑いをかけられていた。
色々な状況証拠からみて二人がホシであることは九分九厘確実だった。
だが、警察はどうしてもその直接証拠をつかむことが出来なかった。
二人は警察署にしょっぴかれ、厳しい取調べを受けた。
「おまえは、雑貨店には押し入ってはいないって言うんだな」
刑事が言った。
「どこのどいつが雑貨店なんかに押し入ったんですかい」
ゴールドバーグはぬけぬけとしらばくれた。
「おまえは、衣料品を九箱盗んだのか、盗まなかったのか、どっちなんだ」
刑事が追及した。
「そうですか、誰が盗んだんです?」
ゴールドバーグがとぼけた。
「よし、それじゃあおまえ、どんな仕事をしてるんだ」
「誰が仕事をしてるんですかい?」
ゴールドバーグが答えた。
「そうか、それならおまえはどうなんだ」
苛立った刑事は、今度はグリーンバーグに矛先を向けた。
「おまえはどうやって暮らしをたてているんだ、どこで金を稼いでいる?」
「そりゃ、どういうことです?」
グリーンバーグは言い返した。
「ゴールドバーグを手伝うってことが、急に違法になったんですかい?」


馬の勝手

「きみの伯父さんが馬泥棒で捕まったって話、本当かい」
フレッドがジョーに尋ねた。
「とんでもない、まったくの嘘っぱちだよ」
ジョーが答えた。
「伯父貴はユーモアセンス抜群でね。
いつも野生のオート麦がどっさり生えているところを知っているって言っていたのさ。
きみも知ってるだろうが、オート麦ってのは馬の大好物だろ。
それを聞いていた馬のやつが、ときどき伯父のあとにくっついて家まで来ちまったんだな」


ろくでなし

町の人々を震え上がらせた乱暴者が悪運つきてお縄を頂戴し、
刑務所に二十年の刑で放り込まれた。
十年ほど経ったある日、嵐に乗じて彼は脱獄した。
テレビは彼のニュースをひっきりなしに流し、警察はそこらじゅうに人相写真を貼った。
しかし、脱獄して数ヶ月後、彼はやっと古巣の町に戻ってきて、
真夜中、自分のアパートのドアを叩いた。
彼の女房は、亭主の顔を見るとすごい目で睨みつけて言った。
「このろくでなし、五ヶ月もどこをほっつき歩いてたんだい?」


大博打

公園のベンチで流れ者の浮浪者がよからぬ相談をしていた。
「いいか、チャーリー、おめえが銀行の中に入って行くんだ。
誰でも邪魔するやつは遠慮なく射ち倒せ。
金をみんなかっさらったら、外に出て来い。
俺は逃走用の車の中で待っている。
いいか、一つ忘れるな。
俺が伸るか反るかの大博打をやるんだってことを」
「つまり、こうかい?
俺が銀行の中に入り、誰でも邪魔するやつは射ち倒し、
あるだけの金をさらって出てくる。
あんたは、車の中で俺を待っている。
それなのに、あんたは、伸るか反るかの大博打をやるってのかい?
どこがその大博打なんだ?」
「俺は運転免許を持ってねえんだ」


場所を選べ

「ロドリゴの奴がニューヨーク警察に捕まったんだってな」
とマフィアと思しき男がその仲間に話している。
「あいつ、どんなドジを踏みやがったんだ?」
「殺しさ。麻薬の売人をやっちまったんだ」
「殺しぐらい何だ。誰だってやってるじゃないか。
どうして挙げられたんだ?」
「いや、あいにく、消火栓の前に駐車している車の中でやっちゃったのさ」


被害の大きさ

テレビのレポーターが現場から実況中継をしていた。
「……犯人は被害者を刃物で刺し……」
そして最後にこう付け加えた。
「幸い、多額の所持金、有価証券は前日銀行に預けられていたため、
被害は命だけにとどまった模様です」


不死身の謎

「僕の伯父ともう一人の男はね、十階のビルから落っことされたんだ。
それでも命には全然関係がなかったんだ」
ボブがフレッドに言った。
「なんだって、そんな馬鹿な。信じられんよ。
どういうことなんだ?」
フレッドがびっくりして聞き返した。
「うん、二人とも落とされる前にもう殺されてしまっていたんだよ」
ボブが答えた。


場所が悪い

「弟さんはどこかへお出かけなんですか」
ハリーが尋ねた。
「いや、病院に入ってるんですよ。
娘に押されてしまってね」
「そりゃまたどうして。娘さんはまだ小さいでしょう。
病院に入るような怪我をするなんてちょっと信じられませんね」
ジュリーが答えた。
「いやね、娘が押したところが崖のふちだったんでね」


気の利く子守

フォーチューン夫人が帰宅した。
留守の間子守を頼んでおいた娘が言った。
「奥様、ウィリー坊やが虫を飲み込んじゃったんですよ」
「あら、大変。どうしましょう」
「でも大丈夫。
安心してくださいな」
子守のメアリーがほがらかに言った。
「すぐ殺虫剤を飲ませておきましたから」


家計

きわめて根拠ある推計によれば、米国が犯罪のために支払うコストは、
年に約二百億ドルに達する。
これを世帯数で割れば、一世帯当たり四百九十五ドルの出費となる。
つまり、割合で言うなら、米国人の家庭は、
教育に一ドル使えば、犯罪に一ドル八十二セント使い、
教会に一ドル寄付すれば、犯罪に十ドル支払っている計算になる。


和解の方法

ミシシッピーの川岸で少年が二人釣竿を垂れながら話していた。
「うちのパパはね、ここ二十年というもの、
マクスニックって男とずっと争っていたんだ。
でも、とうとうその争いも終わったよ」
トムが言った。
「へぇ、それじゃ怨みを水に流したんだね」
ジョージが尋ねた。
「いや、マクスニックを河に叩き込んで流してしまったんだ」
トムが答えた。


お楽しみはこれからだ

「これこれ、坊主、倒れた相手を殴っちゃだめじゃないか」
通りかかった男が、喧嘩をしている少年に注意した。
「何言ってやがんでェ」
少年が答えた。
「おいらが何のためにこいつを倒したと思ってるんだ」


親思い

「早く来てください、お巡りさん」
少年が息急き切って警官を呼んだ。
「もう三十分もどっかの男がパパと殴り合っているんです」
「なんで、もっと早く呼びに来なかったんだ」
警官が尋ねた。
「だって、ちょっと前まではパパの方が形勢がよかったんだもの」
少年が答えた。


同じこと

「おい、聞いたか。
ジョーが銃の掃除をしていて二度も自分を撃っちゃったんだって」
マイクが飛び込んできて、ハリーに言った。
「えっ、ほんとか、それで怪我は重いのか」
ハリーがびっくりして尋ねた。
「うん、最初の一発は致命的だった。
でも二発目のやつは大したことはないらしい」
マイクが答えた。


催促

銀行の窓口で、覆面をして拳銃を持った男が窓口の銀行員に言っている。
「おい、もたもたすんな、早くしろ。
俺は車をここの前にとめているんだぜ。
あそこは十五分しか駐車できないんだぞ」


写真

いかにも乱暴者といった若者が銀行の窓口にやってきた。
彼は無言で一枚の紙切れを窓口の出納係に手渡した。
そこにはこう書かれていた。
「俺は銀行強盗だ。
この袋を十ドル札と二十ドル札で一杯にしな。
さもなきゃ撃ち殺すぞ」
出納係はその紙切れになにやら書いて強盗に手渡した。
強盗は読んだ。
「髪をきちんとして、ネクタイをまっすぐに直せ、この馬鹿者。
お前はテレビカメラに写されているんだぞ」


備えあっても

その銀行では、強盗に備えて最新式の警報装置を備え付けた。
強盗が入ったときには、足元のペダルを踏めばいいのだ。
そうすると警察署でベルが鳴り始めるという仕掛けになっている。
それを使う最初の機会がやってきた。
銀行が強盗に襲われたのだ。
銃を突きつけられた銀行員は金を渡す前にすかさずペダルを踏んだ。
すると電話が鳴った。
銀行員が受話器を取り上げる前に、強盗が銃を突きつけながらその電話をとった。
「こちら警察署ですがね」
電話の声が言った。
「ご存知ですかね。
誰かがペダルを踏んだらしくて、こっちで警報装置が鳴っているんですよ」


先生の探しもの

ディオゲネスは、真っ昼間ランプをかざして道を歩き、何をしているのかと聞かれると、
まことを探している、と答えたギリシャの哲学者である。
あるとき、フランスの警察官ジャンダルム
ランプをかかげてパリの街を歩いているこの老哲学者を見つけて尋ねた。
「ディオゲネス先生、いったい何をお探しですか?」
「真実じゃ、わしは真実を探しておる」
と老哲学者は答えて、さっさと歩いて行ってしまった。
その次に彼の姿を見かけたのはロンドンで、警察官ボビーは尋ねた。
「ディオゲネス先生、いったい何をお探しですか?」
「真実じゃ、わしは真実を探しておる」
と老哲学者は答えて、さっさと歩いて行ってしまった。
次に彼が姿を現したのはニューヨークである。
パトロール中の警察官コップが尋ねた。
「ディオゲネス先生、いったい何をお探しですか?」
「ランプじゃ、わしのランプを探しておるのじゃ」


都会の凄さについて

二人の男が、都会について語り合った。
「俺はシカゴのサウスサイド出身なんだがね」
ひとりが言った。
「あそこではね、誰かが“いま何時ですか”と尋ねるとするね、
そしたら強盗じゃないことを確かめて、それから時間を教えるんだ」
「なんだい、そんなこと」
もうひとりが言い返した。
「俺はニューヨークから引越してきたばかりなんだが、
あそこじゃあきみ、誰も時間なんて聞かんよ。
時間を知りたければ、奴らは黙って時計を盗っちまうんだ」


緊急発言

市長よ、あなたはわが市の犯罪多発に対し、至急何らかの手を打つべきだ。
今の状態はあまりにひどすぎる。
なにしろ、強盗でさえも日没後は二人組でないと外を歩かないのだから。


不用心

ニューヨークで白昼強盗が捕まった。
警官がなんで真っ昼間に強盗なんかしたのかと尋ねた。
犯人の男が答えた。
「あっしは怖かったんでさあ。
この町じゃ、夜にそんな大金を持ち歩くなんて不用心だからね」


人相

辻強盗に襲われた男が、警察でその強盗の人相を尋ねられた。
「どうだったかね」
警官が言った。
「そいつは口ひげを生やしていたかね」
「それがはっきりしないんで」
男が答えた。
「もし生やしていたとしても、そいつは剃り落としていたに違いありません」


借金

西部開拓華やかなりし頃、つまりアメリカ西部がまだ無法地帯だった頃のことである。
ジェイクとトーマスはコロラドを駅馬車で横断していた。
突然、駅馬車が急停車した。
ジェイクは駅馬車が強盗に襲われたのだと直感した。
彼は素早く財布を取り出し、連れのトーマスに幾枚かの紙幣を手渡した。
「トーマス」
彼は言った。
「ここに五十ドルある。
君に借りていた金だが、これ返すよ」


感傷的人間

ホールドアップにあった男が哀願した。
「だけど、この時計は安物なんですよ。
私はこれをセンチメンタルな思い出のためにだけ持ってるんで、
値打ちはないんですよ」
「そんなこたあ構わねえ」
強盗が答えた。
「俺は、センチメンタルな男なんだ」


裏か表か

暗闇から二人の強盗がピストルを突きつけた。
手をあげた哀れな被害者に、強盗が言った。
「すいませんね、旦那。
硬貨を一枚、あっしに貸してくれる気はありませんか」
「も、も、も、もちろん、貸しますとも」
男は動転して答えた。
「でも、うかがいたいんですが、何にお使いになるつもりなんです」
「ああ、そのことですかい、旦那」
強盗が答えた。
「あっしと、このあっしのダチ公がね、ちょっと議論になっちまったんですよ。
それでコインを投げて決めようということになったんでさあ。
つまり、どっちがあんたの時計をとり、どっちがあんたの財布をとるかをね」


慎重な男

ある男が、仕事のことを考えながら夜の通りを歩いていた。
そのとき一人の男が駆け寄ってきた。
「おい、大将、ここら辺でお巡りを見なかったかい」
その男が尋ねた。
「いや」
通行人が答えた。
「あんたはどのくらい歩いてるんだ」
「二十分くらいかな」
通行人が答えた。
「オーケー、大将、俺はピストル強盗だ。手をあげな」
男が言った。


まぬけ

辻強盗が言った。
「大人しく金を出しな」
しかし、男は激しく抵抗し、ひどい殴り合いになった。
結局、強盗が勝利をおさめ、男は道路にぶっ倒れた。
強盗は素早く男の身体を探った。
しかし、ポケットから出てきたのは、たった七十五セントだった。
「こりゃ、なんでえ」
強盗が言った。
「たった七十五セントぽっちしか持ってないくせしやがって、
一体なんだっておめえはあんなにむきになって闘ったんだ?」
「うん」
ふうふう言いながら男が答えた。
「俺は、ひょっとして靴の底に隠してある千ドル札を
お前に見つけられたら大変だと思ったんだ」


凶器

もう深夜に近かった。
その店はちょうど扉を閉めるところだった。
そこへ棒切れを振り回しながらひとりの男が入ってきた。
「騒ぐな」
男は怒鳴った。
「金を出せ、さもなきゃたたっ殺すぞ」
店員は慌ててレジのところに行った。
「ここに金がある。持って行け」
彼は叫んだ。
「そして、それで銃でも買ってきやがれ。
そんなしょうもない棒切れで人を殺そうなんて、とんでもない奴だ」


恥知らず

婆さんが町で大男の拳銃強盗に出会った。
ピストルを突きつけられて彼女は七ドル九十二セント入った財布を
しぶしぶ強盗に渡しながら言った。
「恥を知りな、こんな貧乏な年寄りを襲うなんて、
あんたみたいな大きな男は銀行を襲うべきなんだよ」


難問

夜の街頭だった。
ジャックが歩いていると暗闇から男がピストルをつきつけた。
「金か、命か」
男がドスのきいた声で言った。
ジャックは黙って手を上げた。
沈黙が流れた。
とうとう強盗が苛立って言った。
「早くしろ、金か、命か、どっちかだ」
ジャックがキイキイ声で怒鳴りかえした。
「急かすな。
どっちにするか今考えてるとこなんだ」


初心者

「手を上げろ!」
強盗が言った。
「金か、さもなけりゃ何か他のものを出せ」
「他のものって?」
と襲われた男が言った。
「おい、まごつかせるな」
と強盗が答えた。
「俺は初めてなんだから」


性善説

ある男、税金がどうしても払えず、とうとう商店に強盗に入った。
金庫まで辿りつくと扉にこう書いてあった。
「ダイナマイトは使わないで下さい。
この金庫には鍵はかかっていません。
取っ手を回すだけで結構です」
彼は書いてある通り取っ手を回した。
すると、頭の上にドシンと砂袋が落ちてきた。
同時に店内は投光器で明るく照らし出され、非常ベルはけたたましく鳴り響く。
ダウンした強盗は担架で運び出されながら、うわ言のように何度もうめいた。
「俺は性善説を信じていたのに……」


治療

その男は盗癖に悩んでいた。
そのために刑務所入りしなければならなかったことも数多かった。
しかも、盗むものといえば大抵はほとんど価値のないものばかりで、
欲しいとも思っていないものなのだ。
それなのに彼は盗む衝動に打ち勝てなかったのだった。
盗癖克服の最後の頼みとして、彼は精神分析医の治療を受けることにした。
医者は二年にもわたって、この難病の治療に取り組んだ。
彼は患者の意識の奥底の秘められた部分を探り、もっとも内奥の秘密を明るみに出した。
そしてついに、病気は完全に治ったと告げる日がきた。
「先生、何とお礼を言っていいかわかりません。
どんなお礼をすればいいのか……」
元泥棒は、感激して言った。
「いやいや、喜んでもらって嬉しいですよ。
でも、あなたがよければだが、その感謝の意を表す方法が一つあるんですがね」
精神分析医が遠慮がちに言った。
「なんでしょう、できることなら何でもしますよ」
「もう再発はしないと思うから言うんですがね」
医者が言った。
「あなた、私のところからトースターを持っていった覚えはありませんかな」

神の眼

賢者がいた。
あるとき彼は隣町で説教することになり、馬車を雇った。
途中、見事に実ったとうもろこし畑にさしかかった。
御者は誘惑に負けて馬車から飛び降りた。
「旦那」
彼はまわりを素早く見回しながら言った。
「誰かが見えたら、怒鳴ってくれませんかい。
あんたが見張りをしているうちに、
ちょっくらこの見事なとうもろこしを頂いちまおうって思ってるんで」
御者が最初の穂を摘むか摘まないうちに、賢者の声がした。
「誰かがみてるぞ」
御者は慌てて馬車に飛び乗り、馬をいっぱいに走らせた。
だが、後ろを振り返ってみても人の影一つ見えなかった。
「どういうことなんです」
彼は文句を言った。
「誰が見てたんで」
「神じゃ」
賢者は、ただ一言答えた。


仕事は仕事

サムは、その地域で隠れもない盗っ人だった。
そのサムがある日、町のユダヤ教会にラビを訪ねてきた。
「導師さま、あっしは金貨の詰まった財布を拾ったんですが、
これを持ち主に返してやりたいと思いまして」
サムは言った。
「ついてはそのことであなたの力をお借りしたいんです」
「おう、もちろん喜んで」
意外な男の意外な申し出にびっくりしながらラビは喜んだ。
「さっそく教会の集まりで、心当たりの人がいないか聞いてみましょう。
きっとその持ち主ははっきりすると思いますよ」
サムが立ち去ってから数分後、ラビは自分の時計がなくなっていることに気付いた。
彼はただちに人をやって、サムを追わせた。
はたして時計はサムのポケットに入っていた。
「私にはお前がわからない」
ラビは悲しげにサムに言った。
「お前はここにやってきて金貨の詰まった財布を返すと言う。
そのすぐあとで、たかだか五ドル足らずの安物の時計を盗んでいく。
まったく理解できない」
「なにがわからないと言うんで」
サムが答えた。
「拾得物を返してやる、これは旧約聖書の教えにのっとった善行でさあ。
だけど、盗み、これは仕事なんでさあ」


生存競争

チビのスリ男がうやうやしく神に祈りを捧げていた。
彼は言った。
「神よ、あなたの油断なく怠らない警官たちに感謝します。
たくさんのヤクザ者たち、盗賊たち、スリどもを罰せられ、
牢獄に送り込まれていることに感謝します。
もし、あなたのそのような御業みわざがなければ、
神よ、私の職業はあまりに競争が激しすぎて、
私のようなちっぽけなものには、
とうてい人なみの生活をたてることができなかったでありましょう」


同じ手

「アブラム」
ユダヤ教の神学生が仲間の神学生に言った。
「ぼくは大変な罪を犯してしまったんじゃないかと思うんだ」
「どうせ、大したことじゃないだろうさ」
仲間が軽く答えた。
「ところで、大変なことってどんなことをしたんだい」
「ぼくはロウソクを一箱盗んじまったんだ」
「ふーむ」
アブラムがうなった。
「それは大変だ。償いをする必要があるぞ」
「うん、どうすればいいだろう」
神学生は心配げに尋ねた。
「ひとつ方法がある」
アブラムが答えた。
「きみは贈物として、聖餐用のぶどう酒を五本、
ユダヤ教の教会へ持っていって償いの心をしめせばいいんだ」
「ぶどう酒五本だって」
あわれな神学生が叫んだ。
「きみは何を考えてるんだ。
きみはぼくが文無しだってこと、知ってるじゃないか。
どうやってそんな酒を手に入れられるというんだい?」
「ロウソクを手に入れたのと、同じ方法を使えばいいのさ」
アブラムが答えた。


あきらめ

そのラビはとても人気があった。
ほんの一週間前、ユダヤの祭日ハヌカーの贈り物として彼は、
信徒から新しい毛皮の帽子を贈られた。
ところが、誰かがその新しい帽子を盗んでしまった。
こんな悪事をしでかした奴が誰か、見つける方法は一つしかなかった。
そこでラビは、その町の盗っ人どもの元締めであるルイのところに出かけた。
「どうしてるかね、ルイ」
ラビはその盗っ人の親玉に言った。
「ところで、私の新品の毛皮の帽子が盗まれてしまったんだ。
それが返ってくると思うかね」
「そうさな」
ルイが答えた。
「ことと次第によるわな」
「ことと次第だって」
ラビが尋ねた。
「どういうことだね」
「うん、それを盗った奴がだな」
盗っ人の元締めが答えた。
「俺たちの仲間がそれを盗んだのだとしたら、あんたは返ってくるものと思っていい。
だけどだよ、もしそれを盗んだのがあんたの仲間だったら、そのときはラビ、
その新品の毛皮の帽子は、初めからなかったものと諦めた方がいいだろうな」


盗人

長い間ミネソタ州の僧正ビショップを勤めたホイップル博士が、
あるとき西部に出張し、あるインディアン村で神の教えを説くことになった。
村に着いた博士は、集会が行われる場所に出かける前に、
酋長に身の回りの品を宿舎に置いていっても盗まれないかと尋ねた。
「この辺り百マイル以内には白人は一人もおらんですよ」
と酋長は答えた。


教育の力

学歴のない男は貨物列車の積荷をくすねるかもしれない。
しかし、その男が大学教育を受ければ、
鉄道をそっくり盗むかもしれないのである──セオドア・ルーズヴェルト


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