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毎週のジョーク - [10]


倫理観の探求

モスコウィッツ氏の息子、サミーは前途有望な少年だった。
ある日サミーが父に尋ねた。
「パパ、みんなよく職業道徳っていうでしょう、どういう意味なの」
モスコウィッツ氏はにっこり笑って言った。
「いいぞ、息子よ。
お前が誰にも教えられず、自分でこういうことに興味を示すとは実に嬉しいことだ。
お前の質問はとても微妙な問題を含むものなので、たとえ話で説明してみよう」
モスコウィッツ氏は言った。
「店に一人の女性がやってきたと考えてみよう。
彼女は小額の買物をして二十ドル札をカウンターに出したとする。
お前が彼女に十八ドル十二セントの釣り銭を出そうとしているところに
別の客がやってくる。
そこでお前がその客の相手をしているうちに、
彼女はお釣りを受け取るのを忘れて店を出てしまっていたとする。
お釣りはカウンターにあるのだ。
息子よ、その場面をちゃんと思い描いてみたかな」
「はい、パパ」
「さて、そこで職業道徳が問題になる。
共同経営者にこのことを言うか、言わないか、
それは職業道徳の重要な問題なんだね」


教訓

これは一つの教訓物語である。
だが年老いた祖父に話すことは賢明ではない。
スポールニク爺さんは、とても賢い老人だった。
彼は十代の孫に、いつも「身体に気をつけろ、金なんか気にするな」と教えていた。
孫はその教えを守って、戸外での生活に熱中していた。
ところが、彼がそのように健康に気をつけているうちに、誰かが彼の金を盗んだのだ。
しかし犯人はいたるところに手がかりを残していた。
犯人は簡単に見つかった。
それはスポールニク爺さんだった。
孫は爺さんを問い詰めた。
「そうじゃ、わしがやった」
爺さんはただちに認めた。
「これをお前は、自分のよい教訓にしなけりゃならんぞ。
つまり、金なんかに目を付けるな、祖父じいさんに目を付けろとな」


教育

テネシーの山奥で、二人の山男が木陰に座って雑談していた。
そこへ一人の男の子がひな鶏を抱えて通りかかった。
「おい、その鶏はどうしたんだ」
山男の一人が尋ねた。
「かっぱらってきたのさ」
少年が答えた。
山男は友達を見て言った。
「あれは俺のせがれだ。
泥棒はするかもしれん。
だが、嘘は決してかんぞ。


しつけ

窃盗のプロが家で幼い息子に言ってきかせている。
「いいか」とプロは噛んで含めるように言う。
「おまえがジャムをこっそりと舐めたことは何とも言ってやしないんだよ。
問題は、指紋なんだ。
あんな指紋を残しちゃいけないってことをしっかり覚えとくため、
パパはおまえのお尻を打つからな……」


敵の味方

「畜生め!」
とジョーがぼやいている。
「俺の大事な車を持って行かれちまったよ」
「どうして保安官に知らせないんだ」
それを聞いた男が言った。
「そんなことができるもんか」
ジョーが腹立たしげに答えた。
「俺の車を持っていったのは、保安官の野郎なんだ。
あいつは月賦屋の味方だからな」


車の盗み方

「最近ハリーを見ないけど、彼はどうしてるんだい」
ジョーがボブに尋ねた。
「おや、知らなかったのか」
ボブが答えた。
「あいつは、車を盗んで三年間の懲役をくっちまったんだよ」
「なんで車なんか盗んだんだ」
ジョーが慨嘆した。
「どうして奴は車を買わなかったんだろうなあ。
他の奴らがみんなやっているように買って金を払わなければよかったのに」


妨害

「ぼくの伯父に、パトカーのサイレンがとても嫌いなのがいるんだ。
やりきれんて言うんだよ」
「なるほど」
連れの男が尋ねた。
「どうしてだい?」
「うん、伯父が言うには、仕事の邪魔になるんだって」


不思議

「きみの兄さん、また牢屋に入れられてるんだって」
ロジャーにボブが尋ねた。
「うん、そうなんだ」
ロジャーが答えた。
「ちっぽけなガラスの欠片をとったせいでね」
「ほう、そんなことで牢屋に入れるなんてことができるのかね」
「うん」
ロジャーが答えた。
「不思議なことに、そのガラスの欠片がダイヤモンドに変わっていたのさ」


警察コネクション

「うちの兄貴が新しい仕事についたよ」
ボブがジョージに言った。
「へえ、どんな仕事?」
ジョージが尋ねた。
「うん、警察署とつながりがあるんだ」
ボブが答えた。
「警察とだって? どんなつながりだい?」
「いや、ほんのちょっとしたことさ」
ボブが答えた。
「手錠でつながっているだけなんだよ」


転職

「僕の兄貴は何をやってもまったくついてないんだ」
ビルが友達のフレッドにこぼした。
「まず、彼は雑貨屋を始めたんだがうまくいかなかった。
それから靴屋を開いたんだがこれも失敗してしまった。
その次、今度は銀行を始めたんだ。
これはとてもうまくいったんだが、結局やめなければならなくなってしまった。
もう銀行を始めることは出来ないだろうな」
「それはまたどうしてだい」
フレッドが尋ねた。
「働きすぎで病気にでもなったのかい」
「いや、そうじゃない」
ビルが答えた。
「刑務所に入れられちまったんだ」


正直者?

銀行の人事部長が出納係の職を求めてきた男と面接した。
感じの良い男だった。
部長は雇う前に、一応前歴を調べることにした。
部長は、その男が前に勤めていたところに電話をかけた。
「以前あなたのところに勤めていた男を、
今度ウチの銀行で出納係として採用しようと思うんですがね」
彼は以前の雇い主に言った。
「それで、彼が完全に信頼できる人物かどうかお伺いしたいんですが」
「正直な人間だ、と」
電話の向こうの声が言った。
「言わなきゃならんのだろうねえ。
なにしろ、横領罪で今までに九回も捕まっているが、
その都度、無罪を勝ち取っているんだからな」


野心

「どうしてきみは、前の会社を解雇されたのかね」
と人事部長が尋ねた。
「少しばかり野心を抱きすぎまして」
と男が答えた。
「それはどういう意味だい、野心を抱きすぎたって」
「仕事をうちに持ち帰りたいと思ったんです」
「ほほう、それでクビになったとはね。
何というところに勤めていたんだね?」
男は答えた。
「信託貯蓄銀行なんです」


高飛び

「あいつ、銀行に勤めていたんだがね、辞めてしまったんだ」
ディックが言った。
「どうしてだい。休息が必要ってわけかね」
ハリーが尋ねた。
「いや、そうじゃない」
ディックが答えた。
「捕まりたくなかったんだ」


頼もしき部下

ある大きなレストランチェーンの経営者が、最も信用していた部下に裏切られた。
彼は店の金を何万ドルもくすねていたのだ。
「私はことをおおやけにしたくないんだ」
経営者が言った。
「おまえに辞めてもらって、あとのことはみんな水に流すことにしよう」
「何故、私を首になさるんですか」
部下は尋ねた。
「ヨットも、別荘も、立派な家も、宝石も、
私はあなたがお考えになる贅沢はみんな手に入れました。
私にはもう欲しいものなんてありませんよ。
ですから、私は今では最も信頼出来る部下じゃありませんか」


人使い

マンハッタンでデパートを経営しているソル・ギンズバーグが社長室で執務していると、
売場主任のスタインが血相を変えて飛び込んできた。
「社長」とスタインは言った。
「私はたった今、イアン・リーヴィーの奴が
店の売上金をくすねている証拠をつかみました。
前からどうして婦人用袋物の売上げがかんばしくないのか、妙だと思ってたんです。
やっと分かりましたよ」
「そうかね」とギンズバーグは答えた。
「あのリーヴィーがコソドロだと言うんだね?
何とかせにゃならんわけだ」
スタインが出て行ってしばらくしてから、ギンズバーグはリーヴィーを呼んだ。
「きみは週にいくら貰ってるのかね?」
「百ドルです」とリーヴィーは答えた。
「それじゃとても充分とは言えんな」とギンズバーグは言った。
「どうだね、今日からきみのサラリーは週に百五十ドルにしては」
リーヴィーは満面の笑みを浮かべて社長室を出た。
すぐにスタインがやって来た。
「社長」とスタインは苛立ちを押し殺して言った。
「こんなときにリーヴィーのサラリーを上げるなんて一体どういうおつもりでしょうか?
店の売上げをちょろまかしたご褒美ですか?」
「なるほど、きみの顔を見て、きみの言うことを聞いていたら、また考えが変わった」
とギンズバーグは言った。
「もう一度リーヴィーを呼んで話をしよう」
またリーヴィーがやって来ると、ギンズバーグは言った。
「さっき私は、今日からきみの週給は百五十ドルだと言ったかね?
ありゃ間違いだった。
二百ドルのつもりだったんだ」
リーヴィーは飛んで帰って、スタインに昇給の自慢をした。
これを聞いてスタインは、社長室に殴り込まんばかりの勢いでやって来て激しく迫った。
「社長、ギンズバーグ社長」とスタインは怒鳴った。
「あなたには呆れましたよ。
泥棒を昇給させるなんて聞いたことがない。
こんなんじゃみんなやる気をなくしますよ」
「まあ、きみ、そう興奮するな」とギンズバーグは穏やかに言った。
「わしを馬鹿だと思うかね?
わしはリーヴィーを今週限りでクビにするつもりなんだ。
しかし、あの悪党には、週給百ドルの仕事を失ったと思わせたくない。
二百ドルふいにしたとほぞをかませてやりたいんだ」


罪は罪

「私は一度、盗みをしたことがあります」
男が神父に告白した。
「どこから盗んだのかね」
神父が尋ねた。
「銀行からです」
男が答えた。
「いくら盗んだのかね」
「五十セントです」
「それは何という銀行だったのかね」
神父が尋ねた。
「うちの子供の銀行です」
男が答えた。


子供銀行

小さな女の子が二人、子供銀行(貯金箱のこと)に貯金することについて議論していた。
「私はそんなこと、とても子供っぽいことだと思うわ」
女の子が言った。
「そうよね」
もう一人の子が同意した。
「それに、貯金をすすめるなんて、
子供たちに守銭奴になれって言ってるようなもんだって思うわ」
「そればかりじゃないわ」
最初の子がいった。
「何よりも悪いのは、それが親たちを銀行強盗にしてしまうってことよ」


教育効果

子供銀行は子供達に庶民の惨めさを教え、親には銀行強盗の楽しさを教える。
──ウォールストリート・ジャーナル


人の本性

たまたま鍵がかけてあったというだけで泥棒にならずにすんだ人は多い。


町の民度

「この町には鷹揚おうような買い手など一人もいないんだ。
あれこれ口うるさい客ばかりなんだからなあ」
商店主がため息をついて言った。
「たとえば草刈り鎌ひとつ買うにしたって」
彼は続けた。
「百姓どもはまず、それが本当の鉄かどうか地面に叩きつけて音を調べるんだ。
次には刃に息を吹きかけて曇りがないかどうか確かめる。
それから切れ味をみるために髪の毛を抜いて刃にあててみるんだからなあ。
その挙句、全部が上々ということになると、奴はそれを盗もうとしやがる始末だ」


広告の効用

「広告費の工面はできたのかい?」
同業者のマービンがビルに尋ねた。
「ああ、一度はね。
でも、夜警求むの広告を出した途端、泥棒にみんなやられちまったよ」


贈り主

郊外の新しい家に引っ越してきた若夫婦のところに、
ある日、町の劇場にかかっている評判の芝居の招待券が二枚送られて来た。
送り主の名は書いておらず、
「誰だと思う?」とタイプで打った便箋が一枚入っているだけだった。
二人はいろいろ考えてみたが、こんな気のきいたことをする親戚や知人は
どうしても思い当たらなかったのである。
二人は芝居に出かけすっかり堪能して帰ってきて、やっと贈り主が誰だかわかった。
家の中の金目のものはみんななくなっていて、
「これでわかったね」とタイプで打った便箋がテーブルの上に置いてあったからだ。


改心

ある家族が夏の山荘開きに行くと、窓に打ちつけてあった板が外され、
泥棒に入られたとすぐにわかった。
中に入ってみるとテーブルの上に一枚の手紙が置いてあった。
「拝啓。人生の裏街道ばかり歩んできた悲しさで、また泥棒に入ってしまいました。
お宅の部屋を拝見させていただくと、
キリストを抱いたマリア様の絵が壁にかかっているではありませんか。
子供の頃母の寝室で見た絵と全く同じものです。
それで思い出しました。
母は常日頃私に、まっとうな暮らしをするんだよと言い続けていたことを。
私はお宅様の絵のおかげで目が覚めました。
これからは必ず真面目に暮らします。
そんなわけで部屋は荒らしておりません。
どうぞご心配なく。敬具。
(追伸)絵は更生の思い出に頂いてまいります」


返信

その一家は数日間、家を空けることになった。
主婦は、厳重に戸締りをしたうえ、ドアに食料品屋にあてて一筆書き残した。
「全員出かけています。何も物を置かないでください」
やがて帰宅すると、家中が荒らされ、
値打ちのあるものは根こそぎ盗まれていたのだ。
そして、食料品屋にあてた書置きにこう付け加えられているのを見たのだった。
「ありがとう。
私どもはほとんど何も置いときませんでした」


泥棒

「そのセールスマンにとられたという五十ドルはどこにしまってありましたか?」
と警官が若い女に尋ねた。
「ストッキングの中よ」
と女は答えた。
「そのとき穿いていたんですね?」
「いいえ、脱いだときお金を見つけられたんですわ」
と女は言った。
「脱いだとき? そりゃまたどうして脱いだんです?」
と警官は聞いた。
「まさか、泥棒に来たんだなんて思わなかったのよ」


本職

「相変わらず、あの奥さんにつきまとっているのかい」
マークがウィルに言った。
「うん」
ウィルが答えた。
「昨夜も彼女のところにいたんだがね。
そしたら突然、亭主が帰ってきちまったのさ」
「ほう、それでどうしたい」
マークが興味津々に尋ねた。
「うん、それで俺はとっさに言ったのさ。俺は泥棒だってね」
「なるほど、それはまた、うまい考えだったな」
マークが感心して言った。
「いや、それがそうじゃなかったのさ」
ウィルが顔をしかめた。
「あの亭主め、自分もそうだって言いやがって、
おかげで俺は身ぐるみはがされてしまったんだ」


長く判事を勤めていた男が退職して、牧師になった。
そして初めて結婚式の司会をすることになった。
「汝は、この男を汝の夫として認めるか」
彼は言った。
「はい、認めます」
花嫁が答えた。
「そして汝」
元判事は花婿に向かって言った。
「被告はそれに対して何か言うことはあるか」


絶望

若い男が自殺した。
現場検証にやって来たベテラン警部に新聞記者が質問した。
「絶望のあまり自殺したらしいんですが、警察も認めますか」
「確かに自殺ではある」
と警部は答えた。
「しかし、絶望というのは間違いでね。
こんな若僧に絶望などがわかってたまるか。
まだ、独身じゃないか」


訓練ずみ

「拷問なんてちっとも受けなかったってきみは言うのかね」
弁護士が拘置所でロジャーに聞いた。
「ええ、全然」
ロジャーが答えた。
「彼らは入れかわり立ちかわり、きみに質問を浴びせなかったかね。
きみがその時間にどこに居たか、夜昼なしに追及しなかったかね。
説明するまで眠らせなかったのではないのかね」
「ええ、その通りでさあ」
ロジャーがうなずいた。
「彼らは自白させようとしてきみを殴ったのではないのかね。
水もタバコも与えなかったのではないのかね。
きみを投げ飛ばしたりもしたのではないのかね」
弁護士はさらに追及した。
「ええ、そういったことを全部やりましたよ」
ロジャーが答えた。
「それでもきみは拷問を受けなかったと言うのか」
弁護士が叫んだ。
「きみにだって神経があるんだろ?」
「もちろん、私にだって神経はありますよ。
でも、弁護士さん、私が結婚している人間だってことを忘れんでください。
その程度のことは拷問でも何でもない。ただの日常の延長なんです」


自分の意見

殺人事件の裁判で陪審員の選任が行われた。
弁護人が陪審員候補に質問した。
「あなたは結婚してますか」
「結婚して十年になります」
陪審員候補が答えた。
「それであなたは自分の意見をお持ちですか」
弁護人が尋ねた。
「この十年間というものは持ったことがありません」
陪審員候補が答えた。


そこが知りたい

裁判長が言った。
「つまり、きみの細君はきみに殺されると言って脅えているというのかね」
「その通りです、裁判長閣下」
男がうなずいた。
裁判長は証人席のその男の方に顔を寄せてささやいた。
「男と男ということで聞くのだが」
裁判長は言った。
「きみはいったいどうやってそんなふうに持っていったのかね」


うっかりと

判事が厳しい顔で訴状を読んでいた。
そのうち彼は信じられないというように眼をみはった。
彼は被告に尋ねた。
「フィッツウィリアムさん。
あんたは、奥さんを三階の窓から放り投げたのは、うっかりしていたからだ、
と言おうとしているのかね」
彼は氷のように冷たい声で言った。
「私は様々な弁明をこの法廷でたくさん聞いてきたが、
妻を三階の窓から放り投げたのが、うっかりしていたためだなんていう弁明は、
聞いたこともない」
「でもそれが真実なのです。裁判長閣下」
フィッツウィリアムは断固として主張した。
「私どもは前は一階に住んでおりました。
ところが私はそこから引っ越したのをうっかり忘れていたのであります」


動機

スミス氏は妻殺しで起訴された。
弁護側の唯一の申し立ては、被告が一時的に心神喪失に陥っていたということで、
それを説明するため、スミス氏自身が証人席に立った。
「裁判長閣下」
彼は語り始めた。
「私は静かで平穏な生活を愛し規律を重んずる男であります。
他人に迷惑をかけることなどまったくしたことがありません。
私は、毎朝七時に起き、七時半に朝食をとり、九時に会社に出ます。
午後五時に会社を出、六時に帰宅、夕食のテーブルにつき、それを食べ、
そのあと新聞を読んだり、テレビを見たりして寝る、
これが毎日の私の変わらぬ日課であります」
スミス氏は話し続けた。
「七時起床、七時半朝食、九時出社、五時退社、六時帰宅して夕食、読んで見て、寝る、
これが私の毎日なのでありました。問題のその日までは……」
スミス氏は激情にかられ、声をのんだ。
弁護士が優しく言った。
「さあ、続けなさい、スミスさん。
その問題の日にどういうことがあったのですか」
「その問題の日」
スミス氏は続けた。
「私は七時に起き、七時半に朝食をとりました。
九時に会社に行き午後五時に会社を出、六時に家に帰りました。
するとテーブルの上には夕食が用意されておらず、妻の伝言もないのです。
私は家中を探し回り、彼女が見知らぬ男と寝室のベッドにいるのを見つけたのであります。
それで……それで私は彼女を殺しました」
「彼女を殺したときのあなたの精神状態はどういうものでしたか」
弁護人が書類をめくりながら尋ねた。
「私は怒り狂っておりました」
被告が答えた。
「怒りのあまり狂乱していました。
他のことは考えられず、私自身をコントロールすることも出来ませんでした」
彼は陪審員席を見回して、証人席の椅子を叩いて叫んだ。
「皆さん、私が六時に帰ってきたとき、夕食の用意は全然してなかったのですぞ!」


原因

「こうしたあらゆる証言、証拠にもかかわらず」
検事が言った。
「あなたは、あなたの夫が傷心のあまりに死んだとまだ言い張るつもりですか」
「その通りですわ」
被告が答えた。
「もし彼が、私の心を傷つけなければ、私は彼を撃ったりはしなかったでしょうよ」


妻の犯罪

「裁判官さま、私はひどく痛い目にあいました。
妻は私のスーツを窓から放り投げたのです」
ヘンリーが判事に向かって言った。
「なるほど、しかし痛い目にあったとは言っても、
別に怪我させられたわけではないでしょう」
判事は興奮したヘンリーをなだめた。
「怪我がなかったって」
ヘンリーが真っ赤になって答えた。
「そのスーツの中には私が入っていたんですよ」


中身

「二階がとっても騒々しいけど、何かしてるの」
勉強仲間のアンがローズに尋ねた。
「ママがパパのズボンを引きずっているのよ」
ローズが答えた。
「あら、ズボンを引きずるだけで、あんな音がするの」
「きっとズボンの中に、まだパパが入っているんじゃない」


準備

「うちのママがね、銃を買ってきたんだぜ」
ボビーがジミーに話していた。
「きみんちのお父さんが買わせたのかい。
どんな銃を買ってこさせたんだい?」
ジミーが聞いた。
「パパは銃を買ったことなんて知らないよ。
ママがパパを撃つつもりだってことさえ知らないんだからね」


チャンス

「俺は運転手のチャーリーを今度こそクビにするぞ」
夫が怒って言った。
「あいつめ、もう四度も俺を殺すところだった」
「あらまあ」
妻がとりなした。
「そう言わないで、もう一度チャンスを与えてやって」


鉄拳の報酬

「オレは女房のヤツを殴りつけてやったんだ。
女房もこいつの味は忘れんだろうて」
若いロジャーがボブに拳を固めてみせながら得意気に言った。
「うん、おいらも二十年昔に一度家内を殴りつけてやったが、
あいつはまだそのことを忘れやがらねェんだ」
ボブがいまいましげに答えた。


署長の好意

「パパリチオの旦那、お宅の奥さんが警察に捕まって
接見禁止になってるそうじゃござんせんか?」
と出入りの鉛管工がいかがわしいナイト・クラブを経営しているパパリチオに言った。
「そうだよ」とパパリチオはぶっきらぼうに返事をした。
「いいことを教えてあげまさあね」と鉛管工は言った。
「あっしはこう見えても元警官でね、あの署長はよく知ってるんでさあ。
ありゃ堅物に見せかけてるが全然そうじゃねえんで、
ちょっぴり鼻薬をかがせりゃ、どうにでもなりますよ」
「そいつは、いいことを教えてくれた」とパパリチオは言った。
「署長に言っといてくれないかね。
こんなふうに家内をあそこに引き留めておいてくれたら、
好意の礼として一日二十ドルずつ払ってやるってな」


一番大事なもの

ロンが帰宅すると電話が鳴った。
電話の声が言った。
「俺たちはあんたのカミさんを誘拐したぜ。
今日、ゴルフ場でな」
「ああ、神さま。なんて間が悪い日だろう」
ロンがうめいた。
「今日、家内はよりによって僕の一番良いゴルフクラブを持って出ていったんだ」


テクニック

かみさんの尻に敷かれっ放しの亭主が警察署を訪れて、
前夜押し入った泥棒に話がしたいと申し出た。
「何で犯人に会いたいんだね」
と看守が尋ねた。
「もう自供しましたよ」
「そんなことはどうでもいいんです」
と男は言った。
「私はね、どうやったら妻を起こさずに家に入れるかを聞きたいだけなんですよ」


ものは相談

ハリーは飲みすごして、深夜の帰宅となった。
家の前にくると、玄関のところで泥棒がゴソゴソしているのを見つけた。
ハリーは声をかけた。
「おやおや、ちょっと待ちな、おっさん。
取引きしようじゃないか。
もし、君が先に家に入るならドアの鍵を開けてやるが、どうだい」


盗賊と女

山賊は、金かさもなくば生命か、と二者択一を許す。
女は、金も生命も要求する──サミュエル・バトラー


女心

変装の名人といわれた有名な泥棒を捕まえた私立探偵が
新聞記者にインタビューを受けていた。
「それにしても」と新聞記者は感心して言った。
「あんなにみごとに女に変装しているのによく男だと見抜きましたね」
「なに、あいつは口ほどにもないドジ野郎ですよ」
と探偵は答えた。
「変装術には長けているかも知れないが、間抜けです。
婦人服店の前をウインドーを覗きもしないで通りすぎるなんて、話になりませんよ」


安物

シュメンドリクが家で女房と二人夕食のテーブルを囲んでいるときだった。
警官が踏み込んできて彼を逮捕したのだ。
彼が盗みをはたらいたことははっきりしていた。
繁華街のデパートから一着それぞれ三ドル九十五セントの衣類を二十九着も盗んだのだ。
目撃者もいたし、
その安物の衣類はシュメンドリクの家に隠されているのが見つかったのだ。
「シュメンドリク」
判事がいかめしい口調で言った。
「お前はこれらのドレスを盗んだことを認めるか」
証拠がこうはっきりしていては、否定することは難しかった。
シュメンドリクは頭を垂れてもごもごと答えた。
「へえ、認めます」
「刑を言い渡す前に」
判事が言った。
「わしは、お前にちょっと尋ねたいことがあるのじゃが」
「へえ、なんでごぜえましょう」
「お前はどうしてこんな三ドル九十五セントなんていう
安物のドレスばかり二十九着も盗んだのかね。
隣りの棚には、何百ドルもする高価なガウンや毛皮がいっぱい並んでいたのに」
「どうか裁判長さま、もうやめてくだせえ」
シュメンドリクは哀願した。
「あっしがその安物をうちに持ち帰ってからというもの、
女房の奴にそのことでずっとがみがみ言われっぱなしなんでごぜえやす」


ご同業

泥棒が家で、盗んできた品物を整理していた。
三百九十九ドルの正札のついた背広を見つけた泥棒のおかみさんが叫んだ。
「あんた、こんな背広が三百九十九ドルだってさ。
まるきり泥棒じゃないか」


亭主の職場

「これが最後の二十ドルなのよ」
泥棒の妻がグチをこぼした。
「あなた、早くお金をなんとかしてくれなくちゃあ」
「わかってる、わかってるよ」
泥棒が答えた。
「だけどお前、銀行が閉まるまで待ってくれよ」


拷問

父親が息子を連れてコンサートに行った。
あるソプラノ歌手の歌は、もう何と言っていいのか、
全く聞いちゃいられないひどいものだった。
「パパ」
息子が言った。
「あの女の人が刑務所慰問コンサートで歌ってるって、本当なの?」
「ああ、本当だとも。
もしもおまえが悪いことをしようなんて気になったら、
そのときは、まずあの女の歌を聞く覚悟をするんだな」


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