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毎週のジョーク - [09]


過ぎたるは……

その結婚ブローカーは寄る年波で商売を続けるのが難儀になってきた。
関節炎はわずらっているし、その他にもいろいろ身体に故障が出来ていたのだ。
そこで彼は、若い助手を雇うことにした。
「お前は、この商売について何か知っているかね」彼は助手に尋ねた。
「いや、まったく知りません」若者は正直に答えた。
「そうか、それならよく聞きなさい」
雇い主が言った。
「この結婚仲介業の一番大切なことは、
商品については常にほめたてることを忘れるなってことだ。
ちょっとばかり誇大に言ったって、怪我はせん。
言い換えれば長所は拡大して言い立てることだ」
「よくわかりました」
新米の助手は微笑みながら答えた。
次の朝、老ブローカーは若い助手を連れて客の家におもむいた。
「これは、とてもいい話なんだ」
老人は若者に言った。
「かなりの報酬が見込める。この男の父親ってのはとても金持ちなんだからな。
わしが忠告したことを忘れるんじゃないぞ。
誇張しろ。いかにも惚れ込んでいるという態度を見せるんだ。
長所はオーバーに言い立てるんだぞ」
金持ちの家のテーブルにつくと、老ブローカーは話を切り出した。
「あなたの御子息にぴったりの娘御がいらっしゃるんでございますよ。
有名なラビと富裕な銀行家の血筋をひいている娘さんで、
こんないい話はこれまでなかったと思いますな」
「富裕な銀行家だなんて」
助手が口を出した。
「彼女はあのロスチャイルド家の一員なんですよ」
老ブローカーはこの口出しにヒヤッとした。
ロスチャイルド家の一員なんてことは、調べられたらすぐばれてしまうことだ。
彼はやりすぎる若い助手を叱りつけたい思いだった。
「それはともかく」
老ブローカーは続けた。
「彼女はいつも綺麗に身づくろいしてまして、
小指にはそれぞれ十カラットものダイヤの指輪をしているんでございますよ」
「十カラットですって。何を言われるんですか」
熱心な助手がまた口を出した。
「あのダイヤは少なくとも二十カラットはあります。
私はこの眼で見たんですからね。なんとも見事なものです。
でも、いくらダイヤが見事だといっても、あの娘さんのお顔ほどではありませんがね」
老ブローカーは思わず咳き込んだ。
彼は、相手の金持ちが、そんなに申し分のない女が
はたしているのだろうかと疑い始めている気配に気付いていた。
そこで、彼はちょっと調子を落とすことにした。
「まあ、正直に言いますとね」
彼は相手の父親に言った。
「彼女にもちょっとしたキズがありまして。
背中にちっちゃなイボがあるんでございますよ」
「ちっちゃなイボですって」
熱狂した助手が叫んだ。
「あれはもう、立派なコブと言ってもいいものです」
老ブローカーは若い助手をくびり殺さんばかりの眼付きでにらみつけた。
ともかく、この事態をなんとか収拾しなければならない。
さもなければ、この金持ちの客を失うことは確実だった。
「まだ、ございますんですよ」
彼はこわばった笑いを浮かべながら、金持ちの父親に、
若い助手など居ないかのように話しかけた。
「御子息はとりわけ喜ばれることと思いますよ。
この娘さんの姿のよろしいことは、まるで天使でして。
上から順に九十一センチ、五十三センチ、九十一センチということなんですよ」
「それは謙遜しすぎじゃないですか」
またしても若い助手が叫び立てた。
「彼女のおっぱいは優に百十二センチはありました。
ウエストだって、少なくとも九十九センチは切りません。
それにあのヒップ! 正味で百五十センチはありますな」


死んだも同然

「仲人さん、あんたはひどい嘘をつきましたね」
花婿候補が見合いの席で結婚ブローカーに文句を言った。
「あんたのようないい年配の人が、それに地位だって申し分ないのに、
あんな嘘をつくとは、まったく驚いてしまいましたよ」
「わしが嘘つきだって」
結婚ブローカーが憤然として言った。
「わしがどんな嘘をついたって言うんだ。
彼女が美しくないとでも言うのかね、非の打ち所のないマナーを持っていないかね。
彼女は高校もちゃんと卒業している。
ナイチンゲールのような良い声もしているじゃないか。
わしがどこで嘘を言ったと言うんだ」
「あなたは、彼女のお父さんが死んだって言いましたね」
花婿候補が言い返した。
「あれは嘘じゃないですか。
彼女が喋ってくれたんですよ。
彼女の父親は、もう十年間も刑務所に入っているって」
「なるほど、それなら聞くがね」
ブローカーがやり返した。
「あんたはそういうのを生きているって言うのかい」


見合いの相手

今から半世紀前、東ヨーロッパのユダヤ人社会では、
まだ結婚を仲介するブローカーがいた。
若いサミュエルは、そうした結婚ブローカーから若い女性を紹介された。
ブローカーの話によると、その女性は実に素晴らしい女性で、
処女であることも絶対保障するとのことだった。
はじめてその女性に引き合わされたサムは、
その結婚ブローカーを隅に呼んでささやいた。
「あんたが連れてきた女性は、いったい何です。何たるブスだ。
片目は潰れているし、足は不自由ときている。
教養もなく、頭も悪い。
おまけにあの息の臭いこと」
結婚ブローカーは平然として言った。
「どうしてそんなに小声で話すんだね。
彼女は耳も聞こえないんだよ」


完璧

きわめて腕のいい偽金づくりがいた。
彼は自分でも完璧だと思える偽十ドル札を作った。
見本にした十ドル札と、自分の作った十ドル札を顕微鏡で調べ、
その他考えられるあらゆる比較を行ったが、
見本と彼の作った札の間にはまったく寸分の違いもなかった。
しかし驚いたことに、彼がそれを使いはじめると、
まだ幾らも使わないうちにたちまち捕まってしまったのだ。
自尊心をいたく傷つけられた彼は、FBIの捜査官に彼が見本にした十ドル札と
彼の作った札を並べて出し、どこに違いがあるか指摘してみろと挑んだ。
「寸分の違いもない」
捜査官が言った。
「だが、お前が見本にした札は、偽札なんだ」


偽札の行方

朝っぱらから妻のミリーがぷんぷんしていた。
「頭にくるったらありゃしない。
今度入った牛乳屋の若造ときたら、釣銭に偽札をつかませてさ。
今度きたらただじゃおかないから」
「ほう、どれ見せてごらん」
詐欺師の亭主が身を乗り出して言った。
「あるもんですか。
運よく肉屋が集金にきたんで渡しちまったよ」


逆転また逆転

御者のシモンは、その夜疲れてはいたが、非常によい気分だった。
家に帰ってレモン入りの熱い紅茶を前に、彼は妻に、
その日彼が如何いかにしてあの悪名高いジプシーから見事な馬をまきあげたか、話してきかせた。
「俺があの馬に払ったのはたったの二十ルーブルさ」
彼は自慢した。
「少なくともあの馬は五十ルーブルの値打ちがあるぞ」
「それはよかったこと」妻が言った。
「いや、ところがよくなかったんだ」
シモンは言った。
「その馬はとても柄が小さいんだ」
「それなら、重い荷なんか引けやしないわね」
妻が言った。
「なるほど、よくはないわね」
「いや、それでよかったんだ。
その馬の野郎、ベラボウに力が強かった。
ただ、ちょっとびっこをひくんだ」
「ちっともよくはないわ」妻が文句を言った。
「びっこの馬なんて使いものにならないじゃないの」
「いやいや、それがよかったんだよ」シモンが答えた。
「あの馬鹿なジプシーめ、
そのびっこの原因がひづめにトゲが刺さっていたことだって気付いていないんだ。
トゲを抜いてやったら、すっかりよくなったよ」
「なるほど、それであんたはたった二十ルーブルで立派な馬を手に入れたってわけね」
妻がやっとわかったというように笑った。
「それはよかったこと」
「いや、それがよくなかったんだ」シモンがまた言った。
「俺は間違えて五十ルーブル、ジプシーにやっちまったんだ」
「なんて馬鹿な」妻が苛立って言った。
「ちっともよくなかったわね」
「いや、それがまたよかったんだ」
夫は笑った。
「その金はニセ札だったのさ」


悪い女

ボリスとイワンは、根っからの泥棒だった。
二人は、居酒屋の前でひとりのユダヤ人が馬車をつなぎ、中に入っていくのを見た。
「おいおい、ありゃあ良い馬だぜ」ボリスがニヤリとして言った。
「若くて強そうだ」
「盗むことにしようぜ」イワンが打てば響くように答えた。
「ちょっとやばいな」ボリスが言った。
「ユダヤ野郎、どうせ一杯ひっかけるだろう。すぐに戻ってくるぜ。
そうなると俺たちゃあ、たちまちつかまって、十年は牢屋ってことになりかねないぞ」
「よし、いい考えがある」ボリスがまたちょっと考えて言った。
「この馬を馬車からはずそう。
そしてイワン、お前はこの馬に乗って俺たちの隠れ家に行け。
全速力でだぞ。
その間に俺はこの馬の代わりに、馬車につながれていることにする」
やがて馬車の持ち主が居酒屋から出てきた。
彼は馬がいるはずのところに、人間がいるのをみてびっくり仰天した。
「いったいワシの馬はどうなったんだ」
彼は叫んだ。
「お前さんはこんなところで何をしてるんだ」
「静かに。そんなに叫び立てないでください」
ボリスがなだめた。
「私があなたの馬なのです。
まだ私は若かった。私は悪い女たちから離れることが出来なかったのです。
そんな私の悪行に神が怒られて、私を馬にかえてしまったのです。
それから十八年、ほんの数分前やっと解放のときがきて、
また私は人間に戻ることが出来たのです」
人のいいユダヤ人はすっかり同情してしまった。
「可哀想な人じゃ」
彼はため息をついた。
「そんなこととも知らず、
あんたに四六時中ひどい扱いをしてしまったことを思うと、泣けてくるわい。
ワシは、雨の日も雪の日もあんたを戸外に立たせっぱなしにしていたのじゃ。
あんたの力にあまる重い荷物を引かせもした。
ろくなものも食べさせなかった。
可哀想な友よ、何かワシにしてあげられることはあるかな」
「嬉しいお言葉です」
泥棒が答えた。
「それならお言葉に甘えて、またこれから人間としてやっていくためのお金を、
少しばかりいただけたらありがたいのですが」
「ここに五十ルーブルある」
ユダヤ人が言った。
「これを持って行きなさい。
そしてもう二度と悪い女たちにひっかかりなさるなよ」
次の週、ユダヤ人は新たに馬を買い入れるために馬市場に出かけた。
するとなんと、そこには彼の懐かしい馬がつながれているではないか。
ユダヤ人はその馬に駆け寄った。そして頭を抱き、顔をすりよせた。
「お前はほんとにどうしようもない奴じゃ」
彼は涙ぐまんばかりにささやいた。
「お前はまた馬にかえられてしまったのじゃな。
あれほどワシが、悪い女には近付くなと言っておいたのに」


移民

十九世紀、アメリカに移住したアイルランド人たちは、男も女も必死になって働いた。
そしてこの新天地で、自分たちの場所を獲得していった。
だがケリーだけは違った。
ケリーは根っからの怠け者だった。
ケリーはあちこち放浪して歩いた。
彼の哲学は、骨折って働くよりも物乞いの方がマシというものだった。
そうした彼の生活では、
しばしば法の手にがっちり掴まれてしまうことがあるのも、止むを得ないことだった。
法律というやつは、そんな哲学には冷たいものなのだ。
というわけで、彼は捕らえられ、浮浪罪で法廷に立たされた。
「お前の職業は」
いかめしい判事が尋ねた。
「あっしの職業をおききになってるんで」
ケリーは陽気に答えた。
「あっしは船乗りでさあ」
「お前が船員だと」
判事はケリーを見つめた。
「お前が一度でも船に乗ったことがあるとはとても思えんな」
「なんですって」
ケリーは自分の正直さを疑われて抗議した。
「判事さん、それじゃあ、アイルランドからあっしが馬車で来たって言うんですかい」


隠し場所

金持ちのくせに、貪欲で有名な農場主がいた。
農園からあがる収入だけでは満足できない彼は、密造酒の醸造を思いついた。
しかも、密造した粗悪なウイスキーを、
市価の二倍で農場の雇い人たちに売りつけたのだ。
そんなある日、彼は町の仲間から、
彼がウイスキーを密造していることが噂になっており、
連邦政府の捜査官が内偵しているということを聞かされた。
そこで彼は、捜査の手が入る前に密造酒を隠しておくことにした。
彼は、信用している雇い人のジェフを呼んで言った。
「ジェフ、町の奴らが言うことには、政府がうちの密造酒に目をつけているらしい。
奴らが来る前に、このウイスキーをどこかに埋めこんどかなきゃならん」
ジェフは言われた通り、十ガロン入りの大ビンを肩に担いで、農場のはずれに出かけた。
そして、数分後にはもう戻ってきた。
「一体どうしたんだ、こんなに早く隠せるわけがないじゃないか、何をやったんだ」
農場主は怒鳴りつけた。
「旦那のおっしゃるとおり、ウイスキーは埋めちまいましただ」
ジェフは言った。
「それで、このからっぽのビンをどうしたらええだか聞こうと思って」


悪は栄える

もし誰かがアメリカで幸せにやってるなら、考えられることは、
そいつは何か悪事に手を出しているに違いない、ということである
──クラレンス・ダロウ


視力の弱い男

徴兵検査を受けることになった臆病者が、なんとかして兵役から逃れたいと考えた。
身体検査で視力を調べられることになった。
医者が視力検査表を指して言った。
「さあ、あの表を見て」
「どの表ですか?」
臆病者は医者に言った。
その結果、彼は、視力が極端に弱いという理由でまんまと兵役逃れに成功したのだった。
その夜、ほっとした彼は映画を観に行った。
後方の座席に座ったのだが、
なんと、隣席に座っているのは今日視力検査をした医師ではないか。
しかもまずいことにその医師は彼が誰かわかった様子だ。
とっさに若者は言った。
「すみません、ちょっとお尋ねしますが、このバスは何時に出るのでしょうか」


自信の商品

裁判長が被告の牛乳屋に言った。
「お前は、牛乳に水を入れて売ったという件で訴えられている。
有罪を認めるかね」
「認めません。私は無罪です」
牛乳屋が答えた。
「しかし、すべての証言は、
お前が牛乳に二十五パーセントも水を入れて売ったことを示しているぞ」
裁判長が言った。
「それは、私の売る牛乳が非常に高品質なことを示していることになります」
牛乳屋が答えた。
「百科事典によれば、牛乳は八十パーセントから九十パーセントまでが水だと言います。
証人たちは、私が牛乳というよりはクリームを売るべきだとでも言いたいのでしょうか」


ひと足違い

ハリウッドの大物の映画プロデューサーなのに、
すぐ人の口車にのせられてしまう男がいた。
銀行の彼の貸金庫の中は、まったく無価値な石油会社の株券の、
まさに貯蔵庫の観があった。
どれもこれもみな、うまいことを言って売りつけられたものだった。
ある日、パーティでほんのちょっと知り合っただけの男が彼を訪ねてきた。
そして、金鉱を買わないかと持ちかけた。
実に“手頃”な値段で、今が絶対の買い時だと言うのである。
プロデューサーは考えてみると答えた。そして言った。
「近いうちに電話するよ」
三日後、大物プロデューサーは約束通り電話して、宣言した。
「私の弁護士は、私が狂っていると言っている。
だが私は、その金鉱を買うことに決めたよ」
「あんたはちとばかり遅すぎたよ」
電話の向こうの声が苦々しげに答えた。
「奴はつい昨日刑務所に入っちまったんだ」


催促は丁寧に

紳士服の販売会社の社長ジョー・メンデルスゾーンは、
長いこと代金を払わない客に請求の手紙を書いた。
言葉遣いなどにはあまり自信のあるほうではなかったので、
ジョーは念のため女房に手紙を見せた。
「このお手紙」
とメンデルスゾーン夫人は言った。
「とてもよく書けているし、あなたの言葉遣いもとっても丁寧で控えめよ。
でもあたくしなら、二つだけ表現を変えるわ。
“嘘っこき”と“かたり野郎”ってとこよ。
“嘘つき”と“詐欺師”にしたほうがよくわかると思うわ」


売掛金の回収

ツケをなかなか払わないお客をたくさん抱えて弱っていた肉屋が一計を案じた。
ある日彼は店の窓に一枚の張り紙をした。
「ツケを払わないお客様がいらっしゃるため当店は近く閉店致します。
つきましては、払いのたまっているお客様の名前と金額を
近くここに掲示致しますのでよろしくお願いします」
肉屋は今も繁盛している。


ある解決

仕立て屋のシャピンスキーはこのところ商売の方がさっぱりで、
金持ちのコーエンから百ドル借りた。
期限が来たがどうにも金策がつかない。
そこで彼は、やはり大金持ちのメンデルに百ドル借り、一週間後に返すと約束した。
それから一週間経ったが、やっぱり金詰りはひどく、
シャピンスキーは仕方なくまたコーエンのところに行って百ドル借り、
それをメンデルのところに持って行った。
こんなことがしばらく続くと、シャピンスキーはすっかりくたびれてしまった。
そこで彼は、二人のところに出かけ、
今後は直接二人で百ドルをやりとりしてくれるよう頼んだのである。


遠い親類

ベンジャミン・フランクリンに借金を申し込み五十ドル借りた遠縁の男が、
借用証を書くから紙を一枚くれと言った。
「なに」
とフランクリンは答えた。
「きみは、私の金だけでは足らず、便箋までも無駄にしたいと言うのかね?」


紳士

「五ドル貸してくれませんか。
紳士の言葉にかけて、必ず土曜日に返しますから」
「いいとも、その紳士ってのを早く連れておいで」


定義

放火とは、巨額な火災保険と巨額な抵当との間で生じる
摩擦熱によって起こる火事を言う。
不景気という名の乾燥状態で発火することが多い。


さては

洋服屋の大会が開かれていた。
ベンジャミンにアイザックが言った。
「ベン、気の毒なことになった。
きみの店が昨日火事を出して丸焼けになったぞ」
するとベンは神経質にあたりを見回しながらささやいた。
「でかい声出すな、昨日じゃないよ。
明日、明日だよ、火事を出すのは」


兼業

アメリカの田舎の町では、警官が他にも職業を持っていることが多い。
中西部のその小さな町の警官も、獣医を兼務していた。
最近のこと、電話が鳴り、奥さんが受話器をとった。
「ホイッティッカーさんはいらっしゃいますか」
隣人のヒステリックな声がひびいた。
「獣医としてでしょうか、それとも警官としての主人をお呼びですか」
ホイッティッカー夫人が尋ねた。
「両方よ」
隣人が叫んだ。
「うちのブルドッグの口が開かないのよ。
そして、その口に泥棒がはさまっているんです」


親族

牧師の家の玄関口にロバの死骸が捨てられていた。
牧師は早速、警察に電話した。
電話を受けた警官は、その牧師をよく知っており、冗談に言った。
「思うに、あなたは牧師さんだ。
死んだものの面倒をみるのは牧師の役目だと思いますがね」
「その通り」
牧師が答えて言った。
「でも死んだものがいた場合、
まず第一に親族に知らせるのが普通のしきたりですからね」


行政改革

静かな田舎町の議会で警察の予算削減が議題に上った。
証言台に立った署長に議員の一人が質問した。
「いま、あなたの部下は何人いますか?」
「三人です」と署長は答えた。
「多忙ですか?」
町議は質問した。
「いいえ」
と著長はぶっきらぼうに言った。
「あなた一人でも十分こなせる程度の仕事じゃありませんか?」
「その通りです」
と署長は認めた。
「では、人員整理をしてはどうでしょう?」
と町議は提案した。
「そうすれば」
と署長はのんびりと答えた。
「すぐに忙しくなって、三人を呼び戻すことになるでしょうな」


逮捕したのは?

指名手配中の犯人を六方向から撮った六枚組みの写真が出来上がった。
早速、捜査本部は各警察に配布した。
数日後、田舎の警察から手紙が来た。
「指名手配犯の手配写真、確かに受領。
現在の時点で、五人までは逮捕するも、
残り一人については目下鋭意捜索中であり、
逮捕も時間の問題と思われる」


訓練中

フラハーティは、市警の一員になったばかりだった。
実を言えば、まだ訓練中と言ってもよかったのだ。
だがその夜、彼はとても得意だった。
夜勤の警部が、あの悪名高いマンハッタンの辻強盗の捜査のため、
彼をセントラルパークに派遣したのだ。
「強盗野郎は捕まえたか」
警部は意気揚々と引き上げてきた新米警官を見て言った。
「はい、野郎そのものってわけではありませんが」
フラハーティ巡査は言った。
「でも、被害者を四人、連行してきました」


目減り

ヘネシー夫人が心配そうに警察にやってきて言った。
「お巡りさん、私の夫が先週の木曜日からいなくなりましたの」
「彼の特徴は?」
巡査部長が鉛筆をとりながら尋ねた。
「はい、ええと、足は片方が義足、髪の毛なし、左眼なし、歯なし、
盲腸なし、扁桃腺もなし、目立つ点なし……」
ヘネシー夫人は、ちょっと考えこんだ。
「ちょっと待って下さいな」
彼女は遠くを見るような目で言った。
「考えてみれば、あのひと、もうすでにずいぶん目減りしていたわけね」


報告書

セントルイス市警のパトリック・マーフィは正直で勇敢、非常に優秀な警官だった。
法の番人として要求されるあらゆる資質を備えていた。
読むこともできたし、書くこともできたが、
ただ一つ、彼の弱点はつづり字に弱いということだった。
ちょっとこみいった言葉になると、それを正確に綴ることができないのだ。
ある日、彼がパトロールしていると、馬の死骸が道路に放置されていた。
そこはペスタロッツィ通りとコシュウシコ通りの交差点だった。
そうした場合、警官たるものが何をすべきか、マーフィはきちんと知っていた。
保健局に報告書を出すのだ。
そうすれば、死骸はただちに車で運ばれることになる。
彼は報告書を書き始めた。
だが、その馬の死骸がみつかった場所の名を書くだんになってハタと行き詰った。
ペスタロッツィ、コシュウシコ、この異国風な名称をどう綴ればいいのか。
マーフィは大きなため息をついた。
しようがなかった。
彼は死んだ馬の尻尾をつかみ、二ブロックも引きずって行かなければならなかった。
彼はその死体をオーク通りとメイプル通りの角に置いた。
そこで、彼の保健局への報告書は完成したのである。


ニューヨークのお巡り

学校は落第する、読み書きは出来ない、そのうえ手がつけられない乱暴者……、
そんな息子を持ったアイルランド人の方針は一つしかない。
息子を警官にするのである。


三十六計逃げるにかず

警官登用試験が行われていた。
試験委員が尋ねた。
「悪漢どもを乗せた車に君が追われているとする。
そのスピードは時速七十五マイルだ。
さて、君はどうするかね」
若い受験生が答えた。
「時速八十マイル出します」


暴徒

神学校を出たばかりの若い牧師が考えた。
聖職につく前に警察の仕事を経験すれば、
将来いろいろ役に立つに違いないと。
そこで彼は警官の試験を受けた。
身体検査に無事パスしたあと、口頭試問を受けることになった。
口頭試問では、危急の際の対応、的確な判断力と行動力など
さまざまなことが尋ねられた。
そのうち、一人の試験官が質問した。
「狂暴化した群集がいるとする。
彼らを解散させるには、きみはどうしたらいいと思うかね」
若い聖職者は、ちょっと考えて言った。
「はい、献金箱を持ってまわります」


手が足りない

「それでどうしてきみはその泥棒を捕まえなかったのだね」
署長が呆れたように部下の警官に言った。
警官が憤然として答えた。
「署長、お言葉ですが、
あの場合どうすれば私に奴を捕まえられたっておっしゃるんです?
私の両手は、両方とも完全にふさがっていたんですよ。
片手には警棒を握っていたし、もう一方の手には拳銃を持ってたんです」


知能と犯罪

刑務所に収監される犯罪者の中に白痴が多いのは、
白痴だと刑事にも捕まえられるからである。


本物同士

ベテラン刑事に市民が尋ねた。
「テレビ映画に出てくる悪党は実に悪賢いが、
本物の悪党もあんなにずる賢いものですか?」
「いや、そんなことはないね」
とベテラン刑事は答えた。
「奴らは大概間抜けだよ。
でも、警察の方も同じぐらい間抜けなもんだから、ちょうど釣り合うわけさ」


士気

「きみ、目のまわりに黒いあざなんてこしらえてどうしたんだい?」
とティムが色男のボブに尋ねた。
「これは警察の士気がたるんでるせいなんだ」
とボブは言った。
「公僕のくせにまるでなっちゃいないよ、近頃のお巡りは」
「強盗にでもやられたのかい?」
「いや、違うんだ。
知ってるだろう、例のむちむちの金髪ねえちゃん、
亭主が巡査をやってるあの女さ」
とボブは説明した。
「亭主がパトロールの途中で家に寄ったんだ、勤務中だってのに」


警官も人の子

ピカソ描くといった容貌の娘だった。
彼女は警察に駆け込んできて叫びたてた。
「お巡りさん、男が私をつけてきてるんです。
そして私から何かをとるつもりなのですわ。
きっとひどく酔っ払っているのよ」
警官は、その娘の顔をちらっと見て言った。
「そうですな、お嬢さん。
そいつはもう何もわからないほど酔ってますよ」


現場検証

若い警官が捜査法の試験を受けていた。
「さて、次のような場合、君ならどうするかね」
と試験官が質問した。
「ある夜、チャーミングな若いが、男に抱きすくめられて、
無理矢理キスされたと訴えてきたとしよう。
どうすればいいかね」
若い警官はためらうことなく即座に答えた。
「はい、私ならそのご婦人の協力を得て、現場を再現します」


魔法の湖

ある所に、好きなモノを叫びながら飛び込むと、
それでいっぱいになるという魔法の湖があった。
ドイツ人は、
「ビール!」
と叫んで飛び込んだ。
すると、湖はビールでいっぱいになった。
フランス人は
「ワイン!」
と叫んで飛び込んだ。
すると、湖はワインでいっぱいになった。
日本人は、
「サケ!」
と叫んで飛び込んだ。
すると、湖は日本酒でいっぱいになった。
ベルギー人はあれこれ考えた末、ようやく決めたようで、湖に向かって走り出した。
が、途中で石につまずいてしまい、彼は、
「クソ!」
と叫びながら湖に飛び込んだのである。


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