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毎週のジョーク - [07]


失職

「ジョーンズの奴、今度の事故で保険金が全額払われるものとアテにしてるんだ。
彼、この怪我でこれまでの仕事を続けることができなくなるというんでね」
シャープがアルフィに報告した。
「ヤツ、どこを怪我したんだ?」
「手の親指がチョン切れちゃったのさ」
シャープが言った。
「親指だって」
アルフィが驚いた。
「それでヤツの仕事ってのは何なんだ」
「それが、ヒッチハイカーなんだ」
シャープが答えた。


助手

水道屋は穏やかな人物だったが、使っているアルバイトが
ひどい怠け者だという事実を心から消し去ることができなかった。
長い間、彼は何も言わずにいたが、ある日とうとう我慢の限界がきた。
「おい、ビル、ポケットに両手を突っ込んで立っているのだけはやめてくれないか。
俺の神経にさわるんだ」
と水道屋は言った。
「頼むから、片手ぐらいポケットから出せ」


休み時間

昼休みだった。
工員たちは、食後の一休みをしていた。
その辺をぶらぶら歩きまわっていたジェイクがいきなり大声をあげた。
「どうしたんだ、ジェイク」
と仲間の一人が尋ねた。
「指にトゲを刺しちまったんだ」
とジェイクは言った。
「なら、早く抜けよ。
何してるんだ?」
「おい、冗談言うな」
とジェイクは言った。
「今は俺の時間なんだぜ。
もったいなくてそんなことできるか」


時間短縮

ストライキ中の労働者に、怠け者のロニーが尋ねた。
「いったい何のためにストをやってるんだい?」
「時間短縮のためだ」
と労働者が言った。
「なるほど、そりゃあいい。
成功を祈るぜ」
とロニーは言った。
「俺はいつも、一時間が六十分てのは長すぎるって思ってるんだ」


うるう年

「あーあ」
アルバイト学生のジョニーがぼやいた。
「一年に休みが三百六十五日あればいいのになあ」
「お前、どうかしてるんじゃねぇか」
ビルが言った。
「それじゃあ、四年に一日は働かなきゃならねえじゃねえか」


今と昔

「わしが若い頃は」
と父親が息子に言った。
「一日十二時間働いたもんだ」
「なるほど」
と息子が言った。
「昔はよかったよ。
今日び、一日の仕事をするのに十二時間もかかるやつはすぐにクビだもんね」


無能ぞろい

弁護士事務所に新しいパートナーが加わった。
所長が新入りに説明した。
「うちのシステムは週四日制なんだが、
問題は、自分の仕事を仕上げるのに、
みんな五日かかるってことなんだ」


善は急げ

大百姓のジャクソン夫妻は、息子が六人もいる大世帯だったが、
成人した息子たちはみな都会に出て結婚し、今は夫婦二人きりで暮らしていた。
年に一度、息子たちに声をかけ、一族が故郷の家で顔を合わせるようにしていた。
今年も一族の再会の日がやってきた。
日曜日の朝、六人の息子とその細君たちが食堂の大テーブルの回りに座った。
ジャクソン老人は一同を眺めて言った。
「このテーブルに孫の姿がないのは寂しい。
わしはみんなに言っておこうと思うが、
わしらに初孫を与えてくれた夫婦には、五万ドルやることにした。
では、お祈りをしよう」
ジャクソン氏が神への感謝を唱え終わって目を開くと、
食卓には、老妻のほか誰一人いなかったのである。


コロガル財テク

何をやっても長続きしないろくでなしの息子が、
放浪生活からペンシルヴァニアの父親の家に戻ってきた。
息子は父親に自慢した。
「父さん、僕は全財産の五千ドルをはたいて、コロラドの銀山を買ったんだ」
「だからおまえはダメだっていうんだ」
と父親は言った。
「そんな鉱山は一文の値打ちもない。
騙されたんだよ」
「まあ、そうかもしれないけど、僕は一セントも損するどころか、
四万五千ドルも儲けたんだ」
と息子は言った。
「コロガル銀山っていう景気のいい名前の会社を作って、
株の半分をペンシルヴァニアの百姓に、五万ドルで売ったんだもの」
「まさか!」
と父親は言って顔面蒼白そうはくとなった。
「そいつを買ったのは、オラだ」


野心家の父

大学生の息子を持つ父親同士が話しをしていた。
「お宅の坊やは野心家かね?」
「そうなんだよ」
と相手が答えた。
「将来は大成功して大金持ちになるんだって言っててね、
私のことをまるで貧乏な親戚を見るような目つきで見る始末なんだ」


ビジネス戦略

十歳になるケネスは、夏休みの間、公園でソーダ水を売ることにした。
そこで彼は、父親にねじ回しを貸してくれるよう頼んだ。
「栓抜きだろ、違うかい?」
父親は、息子が必要な品をとりちがえているのだと思って言った。
「いやちがうよ」
息子が答えた。
「ねじ回しだよ。
まず、水飲み場の水を止めてしまうんだ」


知っている

ジェイミーが、海岸の家族たちがたむろしている場所に戻ってきたのは、
もう夕方近くだった。
両親たちは、帰り支度をしていた。
「早くおいで、どこへ行っていたの?」
母親が言った。
「これからレストランへ夕食に行くのですからね」
「ボク、お腹すいてない」
少年が答えた。
「コーンアイスクリームを五つ食べたし、ホットドッグを八つも食べたんだもの」
「おやまあ、何でそんなに食べたの?」
母親は驚いた。
「お前、お金なんか一銭も持ってなかったでしょ?」
「お金なんていらないよ」
息子が答えた。
「迷子になったふりして、浜辺を泣きながら歩きまわればいいんだ」


わずかなインク

「インクって、とても値段が高いの? パパ」
ヴィクターが尋ねた。
「いや、そんなに高くない。何故だい?」
父親が答えた。
「うん、ママったらひどく大騒ぎするんだもの」
ヴィクターが答えた。
「ボクが、ほんのちょっぴり、
インクを客間のじゅうたんの上にこぼしただけでね」


比率

ウェズリー少年は母親に連れられてマリノの店に行った。
母親が果物や野菜を買っているあいだ、店主のマリノは、
少年がじっとさくらんぼを見つめているのに気づいた。
マリノは、少年の手のひらいっぱいさくらんぼをとってもいいと言ったのだが、
少年は断った。
「どうしたんだい、坊や」
マリノが尋ねた。
「坊やはさくらんぼは、嫌いなのかい?」
「いいや」
少年が答えた。
「それなら遠慮しないでとりなさい」
少年はそれでもとろうとしなかった。
親切なマリノは、大きな手いっぱいにさくらんぼをすくって、
少年の帽子に入れてやった。
帰り道、母親が息子に尋ねた。
「マリノさんがすすめてくれたとき、
どうしてお前はさくらんぼを自分でとらなかったの?」
「おじさんの手の方が、ボクのよりずっと大きいからさ」
子供が答えた。


深謀

ジミーが友達の誕生パーティーから帰ってきた。
ジミーの性癖くせをよく知っている母親は、
息子の眼をまっすぐ見ながら尋ねた。
「ほんとでしょうね。
スミスの奥さんに、ケーキのおかわりをねだらなかったというのは」
「ホントだよ」
ジミーが答えた。
「ボクがおねだりしたのは、ケーキの作り方だよ。
ママが、これと同じようなケーキを作れるようにって言ってね。
そうしたら、あの人がボクに自分の分のケーキを二つもくれたんだ」


馬鹿な使いかた

男が共通の知り合いのことを話していた。
「一体ジョウ・ドノヴァンのやつどうしたんだろう?
四、五年前に、伯母さんから遺産をガッポリもらったってのに、
今じゃすっかりすっからかんだそうだよ」
「そうなんだ」
と相手が相槌を打った。
「ひと財産あったんだが、酒と女に大半使い、
その残りを馬鹿なことに使っちまったらしいんだ」


ツキ

「俺のツキももう終わりだな」
とガーションが嘆息した。
「一体どうしたんだ?」
と友達のマリウスが尋ねた。
「三週間前、祖父が死んで遺産を五万ドル貰ったんだ」
「それがどうして運が悪いことになるんだい?」
とマリウスが尋ねた。
「二週間前、伯母が死んで遺産を二万ドル貰い、
先週は伯父が死んで三万ドル貰ったんだ」
「で、どうして運のつきなんだ?」
「今週は、誰も死ななかったんだ」


ご先祖運

シミったれは、一緒に暮らすには愉快な相手ではないが、
先祖に持つにはすばらしい人間である。


夢とうつつ

広大な農地と牛の群れと大穀物倉庫を所有している豪農のテヴィエルが、
重い病気になった。
熱が四十三度にも達し、医者は、医学では救うことはできない、
あるのは祈りだけだ、と言った。
テヴィエルは、残っている力を振り絞って、細君に、
お寺に行って寄進をし、祈ってもらって来てくれ、と言った。
細君は言われた通り、お寺に五十ドル寄進し、
神に夫の生命を助けてくれるよう熱心に祈った。
まるで神がその祈りを聞き届けてくれたかのように、
テヴィエルは奇跡的に回復した。
しかし、細君がお寺に五十ドル寄進した話をすると、烈火のごとく怒って言った。
「この白痴たわけ女が!
五十ドルもムダ遣いしよって」
「でも、あなた、お寺に寄進しろって、
あのときおっしゃったじゃありませんか」
と細君が抗議した。
「だから何だ?」
とテヴィエルは怒鳴った。
「おまえにゃ、わしが熱で夢うつつなのがわからんかったのか」


忠告

マクタヴィッシュが、長わずらいの友人を病院に見舞った。
行ってみると、友人は意外にも晴々とした顔をしていた。
「なかなか元気そうじゃないか」
とマクタヴィッシュは言った。
「実は、きみ、僕はもう死ぬんだと思ってたんだ」
と友人は言った。
「ところが、医者は、アメリカ人が発明した新薬を使えば治るっていうのさ。
五百ドルかかるそうだけど」
「五百ドル!」
とマクタビッシュは言った。
「そりゃ大金だぜ、きみ。
そんな金払うだけの値打ちがあるかどうかよく考えた方がいいぞ」


町医者のスカイデール氏が懸命に働き、息子を米国一の医科大学に入れた。
その息子が町に戻って来て、父親の手伝いをすると
言ったときの老医師の喜びは大変なものだった。
帰ってきた息子は、長年の父母の労に報いるため、
ヨーロッパ旅行に出かけることを提案した。
「いままで働きづめに働いてきたんだもの休暇が必要ですよ」
と息子は父親に言った。
「お留守の間は、ぼくがちゃんとやっときますから」
二ヶ月のヨーロッパ旅行から帰ってきたスカイデール医師は、
息子に留守中どうだったか尋ねた。
「万事うまく行ってます」
と息子は言った。
「お産を五つやり、盲腸の手術を二つしました。
一番うまくやったのは、ヴァンダービルト夫人の喉頭炎こうとうえん
新しく出た抗生物質で完全に治したことでしょう。
あの人が長年苦しんでいた咳は、ぴたりと止まりました」
「何てことだ!」
と父親の医師は叫んだ。
「せっかくうまく行ってたものを、おまえはめちゃめちゃにしてしまったぞ。
おまえが大学を出られたのも、我々がヨーロッパ旅行できたのも、
ヴァンダービルト夫人の咳のおかげなんだ」


大誤診

「あなた、大きなミスでもなさったの?」
とフィールドデール医師の細君が浮かぬ顔をしている夫に言った。
「そうなんだ」
と医師は答えた。
「重大な誤診をしたんだ」
「どんな誤診なの?」
「ホラ、一週間前にうちに来たシンプソン夫人さ。
消化不良の診断をしといたんだけど、
今日偶然わかったのは、あの人の夫は大金持ちの不動産屋で、
二千五百ドルの手術ぐらいなら平気で払うってことなんだ。
盲腸でもとっとくべきだったよ」


書く

開業したばかりの医者がまず覚えるのは、
処方箋はできるだけ読めないように、
請求書はできるだけはっきりと、
書くことである。


寿命

病院で、医師が入院患者の回診を行った。
「先生、わたしには正直におっしゃっていただきたいんで」
と患者のサムが言った。
「わたしはどれぐらいもつでしょうか?」
「きみにショックを与えるつもりはないんだが」
とミード医師は言った。
「サム、これからは、支払いはキャッシュで頼むよ」


執着

精神科医が患者に言った。
「一時間の料金をこれからは七十五ドルにします」
「そりゃまたどうしてです。
他の患者はみんな五十ドルじゃありませんか」
「治療の一部ですよ」
と医者は言った。
「あなたの金や物に執着する気持ちを少なくしてあげるためです」


整形

大きすぎる鼻の形を変えてもらうことで、
ダルシマー夫人が整形外科医に相談した。
「二百ドルですな、手術料は。奥さん」
と外科医は言った。
「二百ドルですって!」
と夫人は叫んだ。
「もっとお金のかからない方法はございませんの?」
「そうですね」
と外科医は言って考えた。
「電柱に正面衝突するという手もあります」


百万ドルの心臓

医者は診察の結果をマクファーレンに説明した。
「お気の毒ですが、マクファーレンさん、あなたの心臓は予想以上に悪い。
移植をお受けになるしかありませんな」
と医者は言った。
「大手術でお金もかかりますよ」
「いくらくらいでしょうか?」
とマクファーレンは尋ねた。
「さようですな。
今私が冷蔵庫に保管しとるのでは、三十五歳の男性のがありますな」
と医者は言った。
「この男は適当に運動もし、油ものは食べず、心臓の状態は良好です。
これだとお値段の方は十万ドルですな」
「なるほど」
とマクファーレンは言った。
「心臓なんてしょっちゅう買うもんじゃないからな。
もっといいのはありませんか?」
「二十歳の十種競技デカスロンの優勝者の心臓ってのがありますな」
と医者は答えた。
「この男は酒もタバコもやらず、爆発事故で頭を吹っ飛ばされるまで、
身体は完璧な状態でした。
この心臓は二十五万ドルです」
「ねえ、先生、これは私の生命に関わることなんです。
もっといいのはないんですか?
一番いいやつはどんなんです?」
「あなたが本当に最高級の心臓を移植して欲しいっておっしゃるんでしたら、
今日たまたま手に入ったので、六十五歳の男のがあるんです。
この男は、タバコも酒もメチャクチャにやったし、
運動なんか一度もしたことがなく、でぶでぶに太ってました。
コレステロールも高かったんです。
これは百万ドルです」
「でも、何だってそんなに高いんです?」
とマクファーレンは尋ねた。
「この男は金貸しでね、その心臓の強さといったら、
天下一品だったんですよ」


商売第一

医者のマクリーンがカントリー・クラブの会員になった。
ボールに名前を書いておけば、無くしても、
誰かが見つけたときには届けてくれる、
とクラブ付きのプロが説明した。
「なるほど」とマクリーンは言った。
「わしの名をこのボールに書いてくれたまえ」
プロが書いていると、マクリーンは言った。
「名前の後に、医師と入れてくれたまえ。
わしは医者なんだ」
プロが書き入れた。
「ついでに」
とマクリーンは言った。
「診療十時から三時、というのも入れてくれたまえ」


未亡人が死んだ亭主のことを愚痴っていた。
「ダメな男でねえ、亡くなった夫は」
と彼女は言った。
「生命保険にも入ってなかったんですよ。
あの人が残してくれたものは埋葬保険だけですもの」
「あら、ご主人が残してくれたお金で、
あなたが今してらっしゃるダイヤの指輪をお買いになったんじゃなくって?」
と相手の女が尋ねた。
「ああ、それも埋葬保険のうちなの」
と未亡人は言った。
「棺桶代が千ドル、石が五千ドルっていう保険。
これは石なの」


夫の値打ち

保険屋がドアを軽くノックした。
ゆっくりとドアが開き、黒い喪服を着た未亡人があらわれ、彼を中に招じ入れた。
彼女は黙ってお茶をついで差し出し、
保険屋は、カバンの中を探って、紙切れを一枚取り出した。
「手続きはすべて完了致しました。
ジョーンズ夫人」
と保険屋は言った。
「これがご主人の生命保険の小切手でございます」
夫人はその紙切れをじっと見つめた。
「五万ドルですね」
と彼女は小声で言った。
「善良で愛と信頼と献身に満ちたあの人の生命のお金がこれなのね」
彼女は感極まって涙を押えかねた。
「あたくし、あの人が戻ってくるものなら」
と彼女は言った。
「喜んでこのお金を半分差し出しますわ」


一大事

「この間、おまえ、足場から落っこちただろ」
サムがマイクに尋ねた。
「あのとき、みんなの話を聞いて、
おまえのカミさんはひどい大怪我をしたと思ったらしいな。
おまえが家に連れ帰られたとき、カミさんの様子はどうだった?」
「それだよ、ほんとに大変な怪我をしたと思ったらしんだ!」
マイクが言った。
「オレが着いたとき、彼女は玄関のポーチに座りこんで、
オレの生命保険証書を握りしめていたよ」


遊泳許可

海岸で母子が話している。
「ママ、ぼく海に入ってもいい?」
「いけませんよ。
ここは深いし、サメが出るんですから」
「でも」
と息子は口をとがらした。
「パパは泳いでるじゃないか」
「パパはいいの」
と母親は言った。
「保険に入ってますからね」


耳に辛い

六十をいくらか過ぎたミコーバー老人が、
二十歳以上年下の未亡人メアリーと結婚した。
年齢の差からいって、
ミコーバー老人のほうが先に死ぬのが順序というものだと考え、
彼は財産や保険のことを話した。
「まず、保険のことだが」
と彼は言った。
「わしは保険には一つしか入っていない。
十万ドルの保険じゃ」
「そんなことをおっしゃいますな。
耳に辛うございます」
と花嫁は言った。
「あたくしは、長い間一緒に楽しく暮らしとうございます。
ところで、その十万ドルの保険ですけど、普通の生命保険ですか、
それとも事故の場合には倍額保障のついているものかしら?」


急なこと

一代で財を成したファーレイ老人がある朝目を覚ますと、
糟糠そうこうの妻が夜の間に冷たくなっていた。
老人はベッドから飛び起き、急いで寝室を出ると、廊下にいる召使いを呼んだ。
「メイベル」と老人はどなった。
「はい、旦那さま」
とファーレイ老人の大声に驚いて、台所から召使いが飛び出してきた。
「何でございますか?」
「朝食のゆで卵は、一個でいい。
わかったかね?
卵は一つだけ茹でなさい」

糟糠そうこうの妻:貧しい頃から共に苦労を重ねてきた妻のこと。


留守中の注意

アンガス爺さんのおかみさんが臨終の床についていた。
爺さんは夜中つきっきりで看病していた。
ある日、やむをえない用事で、爺さんは出かけなければならなくなった。
「わしがおらん間に死んじゃいかんぞ」
と爺さんはおかみさんに言った。
「でもどうしても死ぬときは、おまえ、
その前に電気を消すのを忘れんようにな」


副配当

優良企業として堅調だったフーバー産業が突然倒産した。
その日、クロンショウ氏は家に帰ると細君に言った。
「ねえ、おまえ、我々はこのマンションも車も売らなきゃいけない。
おまえの宝石や毛皮も処分しなければならないんだ。
むろん、お手伝いのメアリーにもヒマを出さなきゃならないよ」
「いったいどうしたの?」
と細君は愕然がくぜんとして言った。
「私が借金までして投資していたフーバー産業が今日、潰れたんだよ」
夫は言った。
「私は文無しの素寒貧すかんぴんなんだ」
細君は逆上した。
「あなた、いまさら、あたしは貧乏人の暮らしなど出来ませんわ、ムリよ!」
と彼女は叫んだ。
そして、開いている窓に駆け寄ると、十八階から身をおどらせた。
クロンショウ氏は細君が落ちていくのを窓から見ていたが、
やげて顔を上げて一人つぶやいた。
「これは、これは。
フーバー産業の副配当は予期していたよりずっと大きかったな」


浜風

「オレんとこのカミさんな」
デービスが言った。
「どうもだいぶ病気がひどいらしいんだ。
医者は、海岸へ転地させろって言うんだが、そんなカネなんかないしな」
「それは大変だな」
アレックスがうなずいた。
「それで、どうしてるんだい?」
「海辺とそっくりな風を起こす方法を思いついたんだよ。
彼女に、その風を送ってやってるよ」
デービスが答えた。
「どうやるんだい?」
アレックスが尋ねた。
「うん」
デービスが言った。
「ニシンで彼女をあおいでやってるんだ」


休暇

「あなた、今年の夏休みどこかへ行った?」
とアリスが友達のメリッサに尋ねた。
「ローマへ行かなかったわ」
とシブちんの亭主と結婚しているメリッサは答えた。
「あら、パリじゃなかったの?」
「いいえ、パリに行かなかったのは去年。
今年はローマに行かなかったのよ」


いっつも愛している

「キミがボクに愛情を示すのはお金のいるときだけじゃないか」
とシムキンが妻をなじった。
「あら、しょっちゅうだからいいじゃない」
と細君は言った。


ただひとつの楽しみ

「わかったわよ、そんなにしつこく言わなくても」
と細君が怒って言った。
「確かに認めるわ、あたしがお金を使うのが好きだってこと。
でも、言っときますがね、あたし他にどんな贅沢をするかしら?
ひとつでもあったら言ってちょうだい!」


よかったわ!

「この家具の支払いも、あと一回を残すだけになったな」
ジョーンズ氏が言った。
「まあ、よかったわ」
ジョーンズ夫人が答えた。
「そしたらこれを捨てて、新しいのが買えるわね」


痛み分け

「家内が電気会社と大ゲンカしてね」
とジムが言った。
「どっちが勝ったんだい?}
とビルが尋ねた。
「引き分けだね」
とジムが説明した。
「うちは電気を止められ、電気会社は一文も取れなかったんだ」


一人に限定

「きみの奥さん」
ジョーが尋ねた。
「きみがウチでタバコを吸うのを禁じてるんだって?」
「それどころじゃないよ」
ハリーが答えた。
「どこでにしろ、彼女は僕にタバコを吸わせないんだ。
二人ともがタバコを吸うなんて、費用がかさみすぎるってね」


収入

ボスが最近結婚したばかりの社員に言った。
「きみの奥さんは、
きみの収入で世帯をやりくり出来るようになったと思うが、どうかね」
「ええ、おかげさまで」
と新婚の男は言った。
「家内はいいんですが、問題はぼくです。
自分の収入の道を別につくらなくちゃなりませんので」


投資先の違い

結婚を申し込みに来た若者に、娘の母親が言った。
「うちの娘は、歌が歌え、ピアノが弾けます。
バレエは子供の頃からやってますし、絵も描きます。
植物学も勉強しましたし、フランス語も出来ます。
どこに出しても恥ずかしくないだけの投資をしたんですの。
ところで、あなたは何がお出来になりますの?」
「ボクはお嬢さんとは別の方へ投資したんです」
若者は言った。
「いざとなれば、簡単な料理ぐらい作れます。
それに、お義母かあさんとの同居に耐えられる精神力も持っています」


先見の明

婚約指輪を買いに来た若者が宝石屋に名前を彫ってくれと頼んだ。
「何というお名前です?」
と宝石屋は尋ねた。
「ジョーよりメイベルにと彫ってほしいんだ」
「まあ、悪いことは申しません」
と宝石屋は言った。
「ただ、ジョーより、と彫ったらいかがでしょう」


下等な男

「あんたって最低の下等な人間よ」
と腹を立てたメグが新しいボーイフレンドのデニスに言った。
「ヨボヨボのお婆さんを打ちのめして、
一生懸命貯めたお金を盗むのはあんたみたいな男だわ」
「そんなことはないさ」
とデニスは言った。
「ところで、そのお婆さんてのはどこに住んでるんだい?」


銀行員

「金がすべてではない。
絶対に金がすべてではない」
と銀行員のマクジョージが、フィアンセのナンシーに言った。
「他にも価値のある大切なものはいっぱいあるんだ。
株とか国債とか信用状とか手形とか……」


バカだな

「私の父が全財産を失っても」
マーサが尋ねた。
「あなた、変わらずに愛してくれる?」
「おや」
ジミーが言った。
「君のお父さん、全財産をスってしまったのかい?」
「そんなことはないわ。仮にの話よ」
マーサが答えた。
「もちろん、変わるわけないじゃないか」
ジミーはマーサを引き寄せた。
「バカだな、君は」


ポイント

若い娘がボーイフレンドに父親の自慢をしていた。
「父は生まれつき商才があるの」
と彼女は言った。
「二十五歳のとき、もう五十万ドル儲けていたんだって。
あなた、父がどうやって儲けたか聞きたい?」
「いや、それはどうだっていいよ」
とボーイフレンドは言った。
「でも、君のお父さん、
まだその五十万ドル持ってるの?」


最初の考え

「悪いけど、テッド」
とシニーは言った。
「どうしてもあなたを愛するようにはなれそうもないの」
「そいつは残念だな」
とテッドは言った。
「不動産屋の伯父おじが百万ドルの遺産を
残してくれたっていう通知をもらったばかりなのに」
「あたしって最初の考えがいつも間違ってんのよ、テッド」


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