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毎週のジョーク - [06]


王子さま

メイベルがおめかしをしているのを見て、同僚のアイリーンが尋ねた。
「めかしちゃって、何かいいことあんの、あんた?」
「うん、とうとう王子さまを見つけちゃったの」
「あら、どうしてその人が王子さまだってわかるの?」
「だって、彼の名前はカリフォルニア州で
一番多く税金を取られている人のリストに出ているのよ」
とメイベルは言った。
「収入の大半は政府にもってかれているけど、
いままで、二度も胃潰瘍にかかってるのよ。
王子さまに間違いないわ」


考えること

財テクで金儲けの味を覚えたOLが、昼食を食べながら話し合っていた。
「あなた、近頃お金のことばかり考えてるみたい」
と一人が言った。
「あら、違うわ」
と相手のOLは言った。
「男の人のことだって考えるわ」
「どんな男のこと?」
「もちろん、お金持ちの男よ」


景気の落ち込み

不景気とは、空きっ腹にズボンのベルトをきつく締めてがんばるときのこと。
不況とはきつく締めるにもそのベルトがない状況。
大不況とは、ズボンさえなくなってしまう場合をいう。


無借金経営

大不況とは、持っていない金は使えなくなる期間のこと。


お友だち

「コープランドがこの間の大暴落で文無しになったの知ってるだろう。
あれ以来、友だちが半分に減ったそうだ」
とアーヴィングが言った。
「残った半分は?」
「まだ、そのことを知らないんだ」


満期

株で失敗して万策尽きたハミルトンが、
マフィアの高利貸しから一万五千ドル借りることにした。
「うちのはこういうやり方なんだ」
と金貸しは言った。
「いま一万五千ドルあんたに貸すけど、これは二年ものの手形みたいなもんだ。
あんたは、手形が満期になるまで毎週元利を積み立てて行くんだ」
「で、万が一私の払いが滞ったらどうなるんです?
手形の満期がその分だけ遅れるんですか?」
「いや、そんなことはない」
とマフィアは言った。
「あんた自身が満期になるんだよ」


財テク症候群

ドナルドソンが、かかりつけの医師の診療を受けた。
「あなたの症状は昔からよくあるもので、珍しいものじゃありませんよ、
ドナルドソンさん」
と医師は言った。
「進んだものか退いたものかわからなくなり、気分の変化が激しく、
方向感覚がなくなり、痙攣、しゃっくり、小さなことにオーバーに反応してしまう」
「どうしたらいいでしょう、先生」
「私があなたなら、取引きしている株屋を変えますな」


ジャンク・ボンド(屑社債)

新しい顧客を開拓しに、株屋が独り暮らしのニコルスン老人を訪ねた。
「今晩は、ニコルスンさん」
と株屋は言った。
「実は、ジャンク・ボンドで大儲けする話を持って来たんですがね」
「そりゃ、ご苦労さん」
と老人は言った。
「でもな、わしは株のことは何にも知らん。
正直に言えば、ジャンク・ボンドと紙屑の見分けもつかんのだ」
「いいんですよ」
と株屋は言った。
「実際の話、違いなんてないんですから」


成功者

無一文から叩き上げ成功したリチャーズ氏が、小学校の卒業式に招かれた。
彼は、優秀な成績をおさめた子供に賞品を配った後、祝辞を述べた。
「諸君」と彼は言った。
「教育は大事です。
算数を教わって我々は、2×2が4、5×5は25、
8×7は……ええ、とにかく色々と増えるようになるわけです……」


五つの理由

中古車販売をやって成功しているグリースンが、
その年の、町の“当り男”に選ばれ、地方のテレビ局に出演した。
「あなたが成功したのは、どんな理由があるとご自分でお考えでしょうか?」
とテレビの司会者が尋ねた。
「私の成功した理由は五つあります」
とグリースンは言った。
「一つは、私の主義として他人をいつも、
自分がそう扱ってもらいたいと思うように扱ってきたことです。
第二に、商品にいつも公正な、どこに出しても恥ずかしくない値段をつけていること。
第三に、いつも正直一本にやってきたこと。
第四に、従業員にはいつも気前よく報酬を払ってきたことです」
「五番目は?」
と司会者は尋ねた。
「五番目は、三十年前の盗みが見つからないまま時効になって
五百万ドルが私のものになったことです」


反復の思想

「我々の仕事で一番大事なことは」
と広告会社の社長が社員に広告哲学を説いた。
「反復、反復、反復だ。
反復こそ広告の真髄なんだ。
何か売ろうと思ったら、
あらゆる手段で商品名を鳴らし続け、人々の頭に叩き込む。
うんざりだ、しつこいぞなんて言われても気にしちゃいかん。
とにかく反復、反復、反復なんだ。
で、きみは、何の用で来たのかね?」
「昇給、昇給、昇給の、お願い、お願い、お願い、に来たんです」


解放以前

リンカーン大統領は奴隷を解放したが、アメリカ人の経営者の中には、
まだそのことを知らない者がいる。
ニューヨークでコンピュータのソフトウェアの会社を
手広くやっているラビノビッツは、まさにそういう経営者の一人である。
彼は、五年ぶりで新入社員を一人雇い入れた。
そして一週間後、彼は新入社員を呼びつけて小言を言った。
「きみを雇ってまだ一週間にしかならんのに、
きみの仕事が一ヶ月も遅れているのはどういうことだね?」


ユダヤ商法

航空機メーカーのロッキード社が、部品を海外の下請メーカーに作らせることにした。
ポーランド、日本、イスラエルが入札に応じた。
ポーランドの価格は三千ドル、日本が六千ドル、イスラエルが九千ドルだった。
ロッキード社の担当者は、それぞれの国に出かけて実情を調査することにした。
ポーランドに行った担当者は、現地のメーカーで値段の内訳の説明を受けた。
「原材料費が千ドル、工費が千ドル、
一般管理費及びささやかな利益で千ドル、合計三千ドルです」
担当者は、次に日本に飛んだ。
「材料費は二千ドル、工費が二千ドル、
一般管理費と利益が二千ドルです」と日本人は言った。
最後にイスラエルに行った担当者は、まず部品の見本を見た。
それはポーランドが作ったものとよく似ていた。
担当者は言った。
「何故、これは九千ドルもするのかね?」
「あたしの取り分が三千ドル、あんたの取り分が三千ドル、
ポーランドの阿呆あほうに三千ドルですよ」


世界まるごとハウ・マッチ

何か目ぼしい買い物がないかとアメリカにやってきた成金日本のビジネスマンが、
飛行機で田舎牧師のレイノルズ師と隣り合わせた。
ビジネスマンは早速、
金ならいくらでもある、あんた何かいい売り物を持ってないか、
とブロークンな英語で田舎牧師に言った。
レイノルズ師は、二言目にはカネ、カネと叫ぶ成金男を憐れんで言った。
「こう言っちゃなんだが、
カネなんぞよりはるかに大切なものがたくさんあるちゅうことを
あんたに教えて進ぜよう」
「OK。ハウ・マッチ?」
と男は言った。


土地

「有名な海賊のキッド船長が地中に隠したという宝なんだけど、
いくら探しても見つからんのは変だと思わないかい?」
とトムが言った。
「いいや、ちっとも」
と土地で失敗したビルが苦々しい顔で言った。
「全財産を土地にぶち込んで取り戻せんなんてありふれた話さ」


おかど違い

「ホラ、見て下さい」
とテナントが大家に言った。
「このひどい雨漏り。
いつまでこんなことをガマンしなければならないんです?」
「いったいあんたはわしを何だと思ってるんだ?」
と大家が言った。
「天気予報屋じゃないんだ、わしは」


転職のすすめ

弁護士のドウスンが、自宅の水道の蛇口がゆるんだので、
水道屋を呼んで洩れを直させることにした。
水道屋は道具箱を担いでやってきて、ものの五分で蛇口を修理した。
「いくらだね?」とドウスンは尋ねた。
「往復の距離、部品、実際に仕事にかかった時間、
全部合わせて四十八ドルですな」
と水道屋は言った。
「何だと? たった五分の仕事で四十八ドルとは途方もない!」
とドウスンは叫んだ。
「私は弁護士だが、そんなふうな料金はとても取れないよ」
「俺だってそうだったよ」
と水道屋は言った。
「弁護士だった頃にはな」


高度利用

ポーランド人のドブザンスキーが不況のデトロイトを捨て、
カリフォルニアに移ることにした。
カリフォルニアにやって来たドブザンスキーは、たちまち、
凄腕の不動産屋エディにつかまった。
不動産屋はドブザンスキーに、昔の古い屋外便所を売りつけた。
しばらくして、不動産屋が通りがかりに見ると、
屋根からテレビのアンテナが出ていた。
それからさらに一週間して、不動産屋が通ると、
テレビアンテナは二本に増えていた。
不動産屋は街でドブザンスキーに会うとわけを尋ねた。
「いや、なんでもねえよ」とドブザンスキーは言った。
「あんな屋敷に一人で住むにはもったいねえから、
地下室をメキシコ人に貸したんだ」


健康異聞

「私は誰はばかることなくこう申し上げるでございます、ハイ」
と不動産屋は言った。
「この町は大変健康に良いところに違いありません。
だって、あなた、この町にはたった一軒しか葬儀屋がないんでございますから」
「しかし、奴は大変な金持ちだって聞いてるがね」
と客は言った。


何かがあるぞ

「ほんのわずかな額じゃありませんか」
保険のセールスマンが言った。
「たった二十ドルで三年間、あなたのお宅に保険がかかるんですよ」
「それはこういうことかね」
トムが疑わしげに聞き返した。
「その三年の間に、ワシの家が焼けちまったら、
あんたの会社が二十万ドル払ってくれるっていうことなんだな」
「その通りです」
セールスマンが保証した。
「もちろん、はじめに慎重な調査をさせていただきますよ」
「そこだて」
トムが言った。
「そこに何か落し穴があるはずなんだ。
それをワシはどうしても知りたいんだ」


イキがいい

中古車のセールスマンが客に試乗させていた。
「ギヤを入れたとたん、ガクンとなったのはどういうことだね?」
と客が尋ねた。
「そりゃ、こいつが本物の車だって証拠でさあ」
とセールスマンは言った。
「こいつは走りたくてうずうずしとるんです」


状況次第

見知らぬ男が農家に車を乗りつけた。
男はジェンキンスを見つけると尋ねた。
「向こうの牧場にいる牡牛だがね、あれはいくらかね」
ジェンキンスは目を細くして男をじっと見つめた。
そして、しばらくしてやっと口を開いた。
「あんたは、税務署の人かね?
それともあの牡牛を買おうって人かね?
それとも、車であれをはねちまったというのかね?」


眼鏡屋が新入りの店員に料金の請求の仕方を教えていた。
「いいかね、眼鏡を合わせたら、お客はそれはいくらかって聞く。
そしたら、“二十五ドルでございます”って言って客の目をじっと見つめる。
このとき目がパチクリしてなかったら、“フレームのお代が”って言う。
そしてすかさず、“レンズは十五ドルでございます”って言うんだ。
ここで、またじっくり客の目を見つめる。
ちっともパチクリしてなかったら、“片方で”と言うんだ」


健全経営

ヴァーモント州の田舎町の雑貨屋のオヤジが、
問屋に品物をもっとたくさん送るように手紙を書いた。
問屋は貸し倒れを心配し、社員の一人に店を見てくるように命じた。
「ジョーンズさん」と店にやってきた社員はオヤジに言った。
「あなたは、商品に何パーセントぐらい利益を乗せているんですか?」
しばらく考え込んだのち、店主のジョーンズは言った。
「お若いの、パーセントとかはわからんがな、わしの商売のやりかたは、
五ドルで品物を仕入れたら、十五ドルで売るんじゃ。
そうすりゃ、大損することはあるまいて」
ジョーンズが問屋から送ってもらう商品は倍に増えた。


おお、カリフォルニア!

カリフォルニアに旅行したフロリダの男が、果物屋の店先でメロンを見て行った。
「これが、この辺じゃ一番大きなりんごかね?」
「あんた、ぶどうをいじくらんでくれ」
と果物屋のおやじが言った。


アイディア

夏とはいえど片田舎。
万屋よろずやを経営し、土地の郵便局長も兼務しているサイラスじいさんにとって、
週に一度、駅に郵便物を取りに行く仕事が気がかりで仕方がなかった。
じいさんが駅まで行き、郵便物を受け取り、
受け取りにサインをして帰ってくるまでの十五分間に、
旅行者が通りかかり、車にガソリンを入れようと思って店に寄ったのに、
じいさんは留守。
そこで、あきらめて行ってしまうという損失が、心配で心配でたまらなかったのだ。
「もしかしたら、ガソリンだけではないかもしれないぞ。
ウイスキーや蜂蜜や、クッキーや、
ピクルスなんかも買おうと思ってるかもしれないんだ」
とじいさんは考えつくと、心臓がドキドキした。
そして、必死に考え、次のような貼り紙をすることにした。
「十五分ばかり留守にします。
なお、いまはもう出て行ってから十分も経っています。店主」


友情と取引

ユダヤ人のジェイコブがスーツを新調することにした。
彼は、同じ移民仲間のファインスタインが開いている店にやってきた。
用件を聞くとファインスタインは言った。
「あんたと俺の仲だ、特別にまけることにするよ。
このスーツは、五番街の店じゃ一着二百ドルで売ってるものなんだ。
でも、あんたに二百ドルくれとは言わない。
百八十だってもらうわけにはいかん。
百七十ドルだってもらわん。
そう、百五十ドルでいい」
「俺だって、きみに損させるつもりはないんだ。
いくら同郷のよしみだからといってもさ」
とジェイコブは言った。
「だから、このスーツを三十ドルで売ってくれなんて言うつもりはないよ。
五十ドルでもいやだ。
七十五ドルだって気がとがめる。
だから、ほら、ここに百ドル耳を揃えて出すよ。
どうだい?」
「売った」


余裕

小さな村に、貧しいユダヤ人の仕立屋が住んでいた。
仕立屋といっても、つくろい専門のしがないその日暮らしの職人で、
自分自身はみるかげもないボロをまとっていたのである。
ユダヤ教の寺院にさえ彼はまるでかかしのような姿でやってきたので、
導師ラバイも信者たちもほとほと参っていた。
ある日、親切な金持ちの男が、彼に言った。
「なあ、仕立屋、おまえも仕立の専門家なら、そんなボロを下げてちゃいかん。
なぜ自分の服のつくろいをせんのだ?」
「あっしに何ができましょう、旦那」と仕立屋は言った。
「あっしはその日その日を食うだけで精一杯なんです。
金の入らん仕事なんかする余裕はありませんです」
金持ちは仕立屋の説明を聞いて、ポケットから大枚百ドル取り出して言った。
「さあ、わたしがおまえの客になってやろう。
ほら、この百ドルはおまえの服をつくろう手間賃だ。
わかったな、それでおまえの服を直せばいい」
しばらくして、金持ちは仕立屋に出会った。
仕立屋は相変わらずボロボロの服を着ているではないか。
「おい、仕立屋」と金持ちは怒って言った。
「おまえは自分の服の直し代百ドルを受け取ったろうが。
それなのに、まだ、この前と同じボロを着とるのはどういうわけだ?」
「旦那、すんませんが、百ドルお返しせにゃいけません」
と仕立屋が言った。
「あっしは家へ帰って自分の服をよく調べてみました。
こんなボロを直すのに、たった百ドルではとても合いません。
この仕事はお断りいたします。
儲けにならん仕事をする余裕は、あっしにはないんですよ」


ビジネス・レター

支払い期限がとっくに過ぎているのにいっこうに払ってくれない取引先に、
経営者が手紙を書いた。
同情をそそるように、幼い娘の写真を同封し、写真の下に、
『お金が必要な理由です』
と書き添えた。
返事はすぐに来た。
官能的なビキニ姿の金髪美人の写真が同封してあり、
『お支払い出来ない理由です』
と書いてあった。


上流夫人

肉屋が、買い物にきたウインザースプーン夫人に丁重に断った。
「奥さん、すいませんが、
奥さんにはもう貸し売りはできかねますんで、はい」
と肉屋は汗をふきふき言った。
「たまっている請求の額が普通じゃないんです」
「そんなこと知ってますわ」
とウインザースプーン夫人は言った。
「請求がまともなら、あたしはちゃんと払ってあげます」


人生は楽しく

収入をはるかに越える贅沢を続けてきたホジスン氏は、
借金取りにはすっかり慣れっこになっていた。
ある日、やってきた借金取りの一人に、彼はにこやかに応対し、
シャンペンまで振舞った。
「ホジスンさん、うちの借金も払えんあなたが」
と借金取りは言った。
「どうしてシャンペンなんかおごるんです?」
「そう怒りたもうな」
とホジスン氏は愛想よく言った。
「請けあってもいいが、これだって金なんかまだ払っちゃいないんだ」


都合

「請求書の金を払ってくれないか?」
「木曜日まで待ってもらいたい」
「木曜は、よそに出かけることになっているんだ」
「俺もさ」


急がない男

「タイロン、きみに五ドル貸してからもう一年になるよ」
と気弱なウーディが言った。
「なんだってそうかすんだ?」とタイロンは言った。
「僕はまだあの五ドル、全部使いきっちゃいないんだ」


金持ちの哲学

「いつも裕福そうにしてらっしゃる。
何か秘訣をお持ちですかな、サイドウェルさん」
と、隣の人に尋ねられて、サイドウェル氏は答えた。
「あたしのモットーは簡単です。
古い借金は絶対に払うなってことですから」
「でも、新しい借金はどうするんです?」
「古くなるまで放っておくんです」


特権

開拓時代の小さな町の酒場だった。
いましも六人の荒くれ男がケンカを始め、
二組に分かれて撃ち合いがおこった。
いきなり、酒場のドアが開いて、
弱そうな小男がちょこちょこと入ってきた。
撃ち合いは途端にやんだ。
カウンターの後ろに命からがら隠れていたバーテンが立ち上がって言った。
「旦那、六丁の拳銃が撃ち合っている中を平気で歩いて来るなんて、
すげえ肝っ玉してますな」
「全然」と小男は言った。
「僕は、あの六人みんなに金を借りてるんだ」


真の友人

「ボビイの奴、わざわざ僕に金を貸してくれるって言ったんだ」
とジョンが言った。
「で、きみは借りたんだろうね?」
「いや、とんでもない、借りなかったよ。
あんないい友達は失いたくないんでね」


持ちすぎ

「ミリーったら、もう二十年も同じこうもり傘を持っているそうよ」
とパットが呆れ顔で言った。
「二十年ですって?」
ミリーをよく知っているアンが言った。
「それは持ちすぎだわ。
そろそろ返した方がいいわ」


頭の回転

税務署から教会に電話がかかってきた。
「お宅の教会のメンバーでジェイク・マリガンて男の
調査をやってるところなんですがね、牧師さん」
と署員は言った。
「この男は、あなたの教会に五千ドル寄付したって
言ってるんですがね、確かですか?」
牧師は素早く頭を回転させて言った。
「小切手はまだ届いておりませんが、二、三日中にきっと来るはずです。
私がこれからジェイクに電話して、
忘れてるのを思い出させればいいだけのことです」


説得

ユダヤ教の導師ラバイが、疲れきって寺院から帰ってきた。
細君が疲れたわけを尋ねた。
「大変な議論をしてきたよ」と導師は言った。
「貧しい者を助けるのは裕福な者の義務だと諭したんだ」
「おや、おや」と細君は言った。
「で、みなさんは納得なさいましたの?」
「半分はな」と導師は苦々しげに言った。
「貧乏人は納得しとったよ」


時は金なり

教会の募金委員会の委員が、
町一番のドケチ富豪ペンドルトン氏を訪ねた。
「今日参りましたのは、町に住んでいる異教徒の人々を
キリスト教に改宗させるための基金にご寄付いただくためです」
と委員は言った。
「去年は一ドルいただきましたが……」
「何ですと!」とペンドルトン氏は言った。
「まだ改宗させとらんのかね?」


社会事業の寄付を集めているボランティアが、町の銀行家を訪問した。
「あなたのお名前をリストのトップに載せさせていただきました」
とボランティアは言った。
「大変気前のよい方だと聞いておりますので」
銀行家は、黙って小切手を書いて渡した。
「五ドルの小切手です」と彼は言った。
「これで、その噂とやらを否定していただきたいものですな」


包み紙

小さなアリスは、彼女の小さなクラブのため
寄付金を集めて隣り近所をまわっていた。
銀行員のリフキン氏は、アリスを居間に招じ入れると、
テーブルの上に十セント硬貨と一ドル札をおいて言った。
「アリス、きみの好きな方を取っていいんだよ」
アリスは、十セント硬貨を取って言った。
「お母ちゃまは、いつも一番小さいのを取りなさいって教えるの」
それから彼女は、一ドル札も取って言った。
「でもおじちゃま、お金がなくらないように包むのに、
この紙もいただいていいでしょ」


高い精神

チャリティ・コンサートのチケットを売りに来た若い女性に、
裕福な紳士は丁寧だがきっぱりと言った。
「残念ですがお嬢さん、
私は都合が悪くてどうしてもそのコンサートには行かれません。
けれども、精神において、私はあなたがたにご一緒しますよ」
「素晴らしいですわ」
と若い女は言った。
「では、あなたの精神はどこにお座りになりますの。
A席ですか、それともB席でしょうか?
A席は十ドル、B席は五ドルですわ」
「A席にいたしましょう」
紳士は仕方なく答えた。


命綱

スコットランド人が二人、連れ立ってスイスに出かけ、山に登った。
ところが、一人が足をすべらせクレバスに落ちてしまった。
連れの男がのぞき込むと、その男は、
ほとんど指一本でかろうじて転落を免れていた。
「大丈夫か、マクファースン」男が呼びかけた。
「大丈夫じゃない」マクファースンが答えた。
「きみ、下の村に行ってロープを手に入れてきてくれ。
それまで俺は、なんとか頑張ってみる。
頼む、早くしてくれよ!」
一時間ほど過ぎた。
断崖の上からまた男の顔がのぞいた。
「まだそこにいるか、マクファースン」
「いるぞ。ロープは持ってきたか?」
「いや」男が答えた。
「下の村のやつ、汚いったらないんだ。
ロープ一本に二ドルも請求しやがるんでな」


十人

スコットランドのアバディーンの海岸で
海水浴をしている十人のスコットランド人に、
金持ちのアメリカ人旅行者が言った。
「きみたちのうちで、
一番長く海に潜っていた人に十ドルあげよう」
海岸始まって以来の大量溺死事件のため、死体の捜索は今も続いている。


経済事情

テームズ河でボート競技が行われた。
日本人の成金観光客タナカが、英国人の友人と連れ立って行ってみると、
女王陛下を始め、チャールズ皇太子、ダイアナ妃など
王室の人々も見物に来ていた。
ボート競技の空き時間を利用して、余興が行われた。
一団の少年たちが、観客が河に放り込んだ銅貨を
水に潜って拾って来るゲームが行われると、
人々は競って銅貨を河に投げ始めた。
タナカはこれを見て興奮し、財布を取り出すと、
日本の一万円銀貨を投げようとした。
これを見て、英国人の友人は、タナカの腕をおさえた。
「そんな大金を投げちゃダメだ。
チャールズ皇太子だって飛び込んじゃうからね」
と彼は言った。
「もし、きみが持っている十万円の金貨ってやつを放り込んだりしてみろ、
女王陛下だって飛び込んじまうぜ」


抵抗

スコットランド人のマキントッシュが、三人組の強盗に襲われた。
マキントッシュは激しく抵抗し、
強盗と派手な立ち回りをやった末、とうとう殴り倒されてしまった。
さぞかし大金にありつけるものと、マキントッシュの懐を探った強盗は、
わずか二十五セントしか持ってないのを知ってがっくりした。
「何だい、さんざん手間取らせやがって、
たった二十五セントしか持ってないくせに」と一人が、
マキントッシュに引っかかれて痛む傷をなでながら言った。
「いや、それでよかったかもしれんよ」
ともう一人の強盗は言った。
「もし、二ドルも持っていたら、今ごろ俺たち三人とも、
こいつに殺されていたに違いないぜ」


救急病院にて

スコットランドのグラスゴウのあるゴルフ場の近くの救急病院で、
医者が、飛んできたゴルフボールをはずみで呑み込んでしまい、
それがノドに引っかかった男の手術をしようとしていた。
手術室の外を落ちつかない様子で行ったり来たりしている男に気づいて
看護婦が尋ねた。
「身内の方ですか?」
「いや、違います」と男は言った。
「ボールの持ち主です」


二十五年に一度

スコットランド人のマクタヴィッシュ爺さんは、
二十五年間、同じゴルフ場でプレーをしている。
しかも二十五年間、彼はボールをたった一度しか変えていない。
ある日、マクタヴィッシュ爺さんは、
ゴルフ場の売店にボールを買いにやってきた。
爺さんは言った。
「やあ、また来たよ」


手紙

スコットランド人が友人に手紙を催促する手紙を出した。
「何故手紙をくれない?
ボールペンなら銀行に行けばいくらでも台の上に置いてあるじゃないか」


合理主義

スコットランド人が自分の家を設計した。
一部屋だけ屋根がない間取りがあるのを見て、友人が理由を尋ねた。
「なに、あれはシャワー室さ」


手強い客

お祭りの広場で香具師やしが、スコットランドの田舎者に
万能カッターを売りつけようとしていた。
ニンジン、タマネギ、キャベツなど何でも切ってみせて、
一台買っていったら、と香具師はすすめた。
「オラは買わねえぞ」と田舎者は言った。
「そんなものは、ゼニのムダづかいだで。オラはムダづかいはしねえ」
「わかったよ」と香具師は言った。
「もしかしたら、あんたの言う通り、こりゃ無駄使いになるかもしれない。
でもな、アンタ、誰だってときどき無駄使いをするもんさ」
「ムダづかいなんかオラはしないぞ」と田舎者は言った。
「オラは今までたった一回しかしてないぞ。
それも、二十五年ほど前に、ほれ、今ここに履いている靴を一足十ドルで買っただけだ」


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