家を新築した夫人が、工務店の親爺に文句を言った。
五百メートルほど先の線路を汽車が通過するたびに家全体が大揺れすると言うのだ。
「それはもうひどい揺れ方で、
あたくしなんかベッドから放り出されてしまいますのよ!」
夫人は言った。
「あたくしの言っていることが大袈裟だっておっしゃるのなら、
あなたご自分でベッドに寝てみてくださいな」
工務店の親爺は諦めたように肩をすくめると、
夫人に言われたまま寝室のベッドに横になった。
そこへ、突然ご亭主が帰宅し、寝室の戸口に顔を出した。
「いったい全体、あんたはそこで何をしているのかね?」
ご亭主は親爺に怒鳴った。
工務店の親爺は消え入るような声で言った。
「あっしが汽車を待っているって言っても信じちゃもらえませんでしょうな?」
オールドミスのミス・クランショウの家に強盗が入った。
強盗「怖がらねえでもいいんだ。あんた、何もしやしねえ。
あんたの金だけ欲しいのよ」
ミス・クランショウ「出てお行き。あんたも他の男と同じだよ」
ある母親が精神病医に、
自分の息子が狂人であるという診断書を書いて強制入院させてくれるよう頼んだ。
一体何をしたのか、と医者は尋ねた。
「クリスマスの日、真夜中に起き出して、
食料庫にしまってあったミートパイを全部食べちゃったんです」
「単なる大食ですな」
「もっとひどいことがあるんです───先日、息子は小間使いを階段から投げ落として、
ファックしちゃったんです」
「単なる堕落ですよ、奥さん。
お話の内容が、例えば息子さんが小間使いを食べ、
ミートパイをファックしたというのであれば、
間違いなく強制収容の必要がありますがね」
カルロスが、すっかり憔悴しきった顔で医者をたずねてきた。
「私は五人から六人の女と、一日それぞれ三回セックスをするんです」
「それですな。それがあなたの病気の原因ですよ」
医者がカルロスを見ながら言った。
「やっぱりそうか」
カルロスがほっとしたように言った。
「私はまた、そのう、
マスターベーションの所為ではないかと心配していたんです」
初めての子供を持つ若い父親が、産科医院の待合室でベテランの父親にたずねた。
「私たちの初めての子供なんですよ。
お産のあとどれぐらいしたら、女房と夫婦関係が持てるんでしょうね」
答えて曰く。
「そうだね、場合によりけりですな。
奥さんが個室にいるのか、大部屋にいるのか」
どうしても子種を宿せないフランスの女王が、
不妊に霊験あらたかと噂の高いパリのシャトル寺院へ徒歩で巡礼することにした。
途中、とある橋にさしかかったとき橋の下にいた洗濯女が声をかけた。
「そこの人、シャトル寺院に巡礼かね?」
「はい」と女王は答えた。
「神さまがどうしても子供を授けて下さらないので……。
あそこへ行けば子供が授かると耳にしたものですから」
「無駄だね!」と洗濯女は言った。
「こないだまで奇跡をほどこしていた大男の坊主は死んじまったよ」
男に出来る女への最大の侮辱 ───「溺れそうだよ」
女に出来る男への最大の侮辱 ───「入ってるの?」
はじめて二人だけの朝をむかえ、新郎が新婦に言った。
「ハニー、朝食の時間だけど何が欲しい?」
「あたしの好きなもの、知ってるでしょ」
「もちろん知ってるさ、だけどときには食事もしないと」
田舎の町の交通裁判の法廷に、気の強そうな中年婦人が交通警官に連行されてきた。
軽い酒気帯び運転、及び赤信号無視が違反内容である。
判事はじろりと婦人を一瞥して尋ねた。
「あなたの職業は?
違反したことを認めますかな?」
婦人は黒縁の眼鏡越しに警官と判事を睨みつけるようにして答えた。
「あたくしは、ジェイソン郡の小学校の教師です。
今日は州の視察官がみえたので校長の家でパーティーがあったのです。
ですから、確かにお酒を飲んでおりました。
でもほんのわずかです。
それに赤信号を無視したっておっしゃいますけど、
あんな田舎道に信号なんかつけるのが間違っています。
車なんか通らないところです。
まったく、バカげていますわ。
わたくしは……」
婦人のおしゃべりは際限なく続きそうなので、判事は手をあげて押しとどめた。
「小学校の先生とおっしゃいましたな?」
判事は目を輝かせて念をおした。
「そのとおりですわ。
判事さん、あたくしは、この郡でもう二十五年……」
また、際限なく続きそうなので、判事は大声で言った。
「わしは、判事になってから二十五年間、
今日という日が来るのを待っておりましたぞ。
先生、”私は酒気を帯びて運転し赤信号を無視しました”と三百回お書きなさい」
深夜、酔っ払って歩いている男を警官が不審訊問した。
「きみの名前は?」
「ジョン・スミス」
酔っ払いが答えた。
「ジョン・スミスだって?」
警官が疑わしげに言った。
「嘘だろう。本当の名前を言いたまえ」
「よろしい」
酔っ払いが答えた。
「それじゃウィリアム・シェイクスピアと書いておきたまえ」
「その方がいい。
スミスなんてありふれた名前で、本官をだますことは出来んぞ」
高速道路で、二台の車がぶつかった。
ドライバーはどちらもかすり傷一つ追わなかったが、カンカンになって、
鉄の残骸と化した車の中からはい出てきた。
お互い口汚くののしり合っているうち、
相手が久しく会っていない古い友人であることに気がついた。
「こりゃまた、ルシアンじゃないか」
「そう言うおまえは、アーネスト!」
「どこも怪我はなかったかい?」
「いいや、おまえは?」
「こっちもだ。しかし、ひでえ揺すられようだったぜ」
「ごもっともごもっとも。
そうだ!
ちょうどとっておきのブランデーが乗っかっているんだよ。
元気付けにもってこいさ。その間に、俺はおまわりを探してみるよ」
「いやあ、そいつはありがたい。話せるぜ、おまえ。
グィッ、こいつあいける! おまえもやるか?」
「いやなに、遠慮はいらないぜ。飲み干しちまって構わない。
俺か? 俺は後にするよ。
風船テストをすませてからな……」
ある男、前の晩ちょっとハメをはずし過ぎてしまって、
気が付いてみると病院で寝ていた。
ベッドのそばには友人が付き添っていた。
「どうしてしまったんだろう」
「うん」
友人が答えた。
「昨夜、君は飲み過ぎて、窓から飛び降りたのさ。
町の上空を飛び回ってくると言ってね」
「どうして止めてくれなかったんだ」
とケガした男は叫んだ。
友人は答えた。
「そのときは僕も、君がてっきり飛べるものと思い込んでいたのさ」
これはまだ、馬車がニューヨークを走り回っていた古き良き時代の話である。
冬の晩だった。
パン屋のベンと友達のカリルはストーブのそばに座っていた。
二人とももういい年齢だった。
暖かい火、友達、いい夜だったが、
残念なことにはどこを探しても一滴の酒も見当たらなかった。
「ロネル、ロネル」
ベンは大声で孫を呼んだ。
「よくきけよ、ロネル。
わしとこのカリルさんはな、のどがかわいて死にそうなんだ。
どうしても元気をつけねばならん。
それでな、良い子だからウイスキーを一本買ってきてくれんか」
「でもお祖父さん」
孫が言った。
「こんな時間に開いてる店は十ブロックも先にしかないよ、おまけに雨が降ってるし」
「誰もおまえに歩いていけとは言っておらん」
老人が言った。
「馬は馬車からはずしてあるから、お前はその馬に鞍をかけるだけでいいんじゃ。
大急ぎで行ってウイスキーを買ってこい。
十五分以内に買ってきたら一ドルやるぞ。
それ以上は待てん。十五分だぞ」
その頃の一ドルといえば大変な駄賃だった。
少年は喜んでうなずいた。
「すぐ行くよ」
彼はふっとんで姿を消した。
「道路はすべるぞ、ベン」
少年が出ていくのを見ながらカリルが言った。
「わしにはあの子が十五分で行ってこれるとは思えん。
もうちょっと時間を与えてやるべきじゃったのう」
「心配するな、カリル」
ベンが言った。
「わしんとこの孫はこのイーストサイドで一番すばしこい上
よく時間を守る子なんじゃ」
彼は時計を取り出した。
「いま、馬小屋から駈け出した頃じゃ」
カリルもまた時計を眺めて、少年が馬を走らせるさまを思い描いた。
「今ごろはチェリー・ストリートだな」
数分後ベンが言った。
「うん、そろそろオーチャード・ストリートにさしかかっているだろうて」
カリルがあいづちを打った。
「ちょうど七分経ったぞ、ロネルは今ごろ馬を店の前につないでいるぞ」
「彼は三十秒で酒を買わなくちゃならんのだな」
「そうよ、いまちょうど七分半。
もし彼が行きと同じ速さで帰ってくれば、十五分きっかりに戻ってくるぞ」
「九分経った。もうオーチャードだな」
「馬は調子よく走ってるぞ。
道は雨ですべるだろうに、彼は上手に乗りこなしているわい」
「十四分!」
ベンが叫んだ。
「もう着いて馬を馬小屋に入れてるだろう。
カリル、今から一分後にあの子はここに現れるだろう。
俺の言う通りにな」
二人は息をひそめ、全身を耳にして座っていた。
階下の玄関のあたりで駆けてくる足音がした。
「カリル!」
ベンが歓声をあげた。
「言ったじゃろう、あの子はこのイーストサイドで一番すばしこく、
一番時間を守る子だって。
十五分に二秒前、ほらあの子だ」
ドアが開いた。
二人の老人は喜びと期待で飛びあがらんばかりだった。
「お祖父さん」
少年が言った。
「ぼくは今までずっと鞍を探していたんだけど、どこにも見当たらないんだ」
列車の喫煙車両に、一人の男が血相をかえて飛び込んできた。
「次の車両でご婦人が気を失って倒れている!
誰かウイスキーを持っていないか?」
ただちに六本と半分のポケット・ウイスキーが差し出された。
彼は一番近いビンを受け取るとゴクリと一口飲み、それを返しながら言った。
「ありがとう。
ご婦人が気を失っているのを見ると必ず気持ち悪くなるんだ」
「シスター」
司祭が修道女に言った。
「みかけだけだとしても、悪は避けなければなりません」
「それはどういうことですの」
修道女は心配そうに聞いた。
「あなたのサイドボードには」
司祭は言った。
「カットグラスのビンがいくつか並んでますね。
そしてそれぞれに強い酒が入っているように見える」
「でも司祭様」
修道女は抗議した。
「あれは何でもありませんよ。
あのビンがとてもきれいだったものですから、床を磨く液体とか、
家具のつや出しなんかを入れておいたのです。
ほんのみかけだけですのよ」
「その点を私は言っているのです」
司祭は言った。
「私は、危うくあの真ん中のビンのを一杯やるとこだった」
北アイルランドの田舎の老婦人が海外旅行から帰ってきた。
税関で、何か申告しなければならないようなものはないかどうか聞かれた。
「何もありませんわ」
「そのビンはなんですか?」
「あらこれ、聖水ですわ。
ご存知でしょ?
すべての病気を治すというフランスの奇蹟の泉、ルールドの聖水なんですのよ」
税関吏がビンの栓を抜いた。
「オランダのジンじゃありませんか」
税関吏が言った。
「ああ、神様」その老婦人が天を見上げて叫んだ。
「何という奇蹟でしょう」
女が言った。
「あたしは毎晩酔っ払っている男の人になんか、とても同情出来ませんわ」
男が答えた。
「毎晩酔っ払っている男には、同情なんかいらないだろうよ」
男は楽しそうに歌を口ずさみながら、
鍵を差し込もうと彼なりに最大の努力をしていた。
しばらく経った時、二階の窓から一つの顔がのぞいた。
「あっちに行け、このバカ!」と二階の男が怒鳴った。
「入る家を間違っているぞ!」
「バカはおまえだ!」と下の男は怒鳴り返した。
「顔を出す窓を間違ってるんだ」
酔っ払った紳士がふらふら歩いていた。
彼は、ふたの部分と横側に穴をあけた箱を大切そうに抱えていた。
友人が彼を呼びとめて聞いた。
「おやおや、その箱には何が入っているのかね」
「うん」酔っ払いが答えた。
「マングースさ」
「マングースだって? 一体そんなものをどうするんだい」
「うん」酔っ払いがもつれた舌で言った。
「僕のことはよく知ってるだろ。
今はそんなに酔ってないが、そのうち酔っ払うに決まっているんだ。
そうなると僕は、蛇が見えてくるんだ。
僕は蛇が怖くてしょうがない。
それでマングースを持っているのさ。
マングースは蛇捕りの名人だからね」
「そんな馬鹿な」友人が言った。
「君が見る蛇ってのは本物じゃないんだぜ。
幻覚にすぎないんだ、つまり想像上の蛇なんだぜ」
「それでいいんだ」酔っ払いが答えた。
「この箱の中のマングースも、想像なんだから」
ある晴れた日曜日の午後、年とったドイツ人と末っ子の息子が村の居酒屋に座っていた。
父親は豪快にビールをあおりながら節度ある酒の飲み方について講釈していた。
「絶対飲み過ぎてはいかん。
紳士はちょうど良いところでやめるもんだ。
酔っ払うなんて紳士の面汚しだ」
「はい、お父さん。
でもちょうど良いかどうかはどうすればわかるんですか?」
老人は店のすみを指して言った。
「あそこに二人の男が座っているだろ。
あれが四人に見えたら、おまえは酔っ払っているってことだ」
少年は長い間じっと指先の示す方向を見つめていたが、そのうち、困惑した様子で言った。
「で、でもお父さん、あのすみには一人しか座っていないんですが……」
サムがガールフレンドのジーンに言った。
「酒を飲むと君はとても綺麗だよ」
ジーンは不思議そうに言った。
「でも私、お酒なんて飲んだことないわ」
「知っているよ、でも僕が飲んでいる」
飲み屋で男がバーテンに言った。
「僕が酒を飲むのは、何もかも忘れるためさ」
バーテンが答えた。
「そういうわけでしたら、前払いでお願いします」
その男はもう一時間もバーテンを相手に
彼がこれまでしてきた様々な冒険について話し続けていた。
「へェ」
バーテンが感心して言った。
「あなたに出来ないことは一つもないみたいですねェ」
「うん」
その男が言った。
「それが一つあるんだな。
ここの勘定が払えないんだよ」
酔っ払って眠りこんでしまった客を前に、ボーイが仲間に言った。
「俺はもう二度も彼を起こしたんだ。
今度で三度目なんだぜ」
「なんでそんな男、表へ放り出さないんだ」
と仲間のボーイが聞いた。
「とんでもない、なんてことを言うんだ」
ボーイが答えた。
「そんなことが出来るものか。
あの人は起こすたびに十ドルくれるんだぜ」
そこはニューヨークの高級バーだった。
立派な紳士がやってきて座った。
しかし、その紳士は何の注文もしない。
バーテンは、何か飲み物のご注文は、と尋ねた。
紳士は、一度酒を飲んでみたが
どうしても好きになれなかったので飲まないのだと説明した。
バーテンは、ただ座っているだけの客が気になってしょうがないので、
葉巻はいかがですかとすすめてみた。
「いらないよ、ありがとう」
紳士はきっぱりと答えた。
「葉巻は一度やってみたことがあるんだがね、好きになれなかったんだ」
バーテンは、なんとかしてその客をもてなしたいと思って、
今度はゲーム室へ行ってはどうかとすすめた。
ビリヤードも出来るし、カードも出来ますよと。
「いや、結構だよ」
客は答えた。
「ギャンブルも一度やったことがあるんだが、僕には向かないね。
気を使わないでくれたまえ。
よかったらここに座っていたいんだ。
息子と待ち合わせしてるんだよ」
「なるほど」
バーテンはいかにもわかったというようにうなずいて言った。
「もちろん、たった一人のお子さんですね。
わかりまさあ」
一人の成り上がり男が酒場に入ってきて言った。
「ここに居るうちで、一番の不精者に千ドルやるぞ」
だらしなく椅子に座っていた男が応じた。
「旦那、それならあっしでさあ」
「君がかね」
気前のいい男が言った。
「この酒場でほんとに一番の不精者なのかね」
「間違いないこってさあ」
その男は答えた。
「じゃあ旦那、そのカネを丸めて、束ねてください。
そいつをあっしの尻ポケットに突っ込んでもらいたいもんで」
小奇麗に飾り立てた酒場だった。
とりわけめだつのは、釣り上げた魚の剥製だった。
一人の酔っ払いが、いかにも魅せられたようにその剥製の陳列に眺めいっていた。
一つずつ丁寧に眺めては次に移り、何かぶつぶつ言っているのだった。
そのうち彼は、巨大な魚の前に立ち止まった。
彼はそれを眼を丸くして見つめ、しばらく黙って立ちつくした。
それから吐き出すように言った。
「こんなでかい魚を釣ったなんて、そいつは大ウソつきに決まってるぜ」
家に落ち着かず、毎晩飲みに出る亭主を持った妻がいた。
彼女を特にイライラさせたのは、
彼が出ていくときいつも「おやすみ、三人の子のママさん」と言うことだった。
彼女は、もうそれに我慢が出来なくなった。
ある晩、例によって彼が帽子をとり、
それからドアのところから「おやすみ、三人の子のママさん」と言って出ていこうとした。
彼女はすかさず答えた。
「おやすみ、一人の子のパパさん」
彼はそれから毎晩、家に居るようになった。
それはとても大切なパーティーだった。
ブラウン夫人は、夫にどうしても注意しなければならないと考えた。
「あなた」と夫人は言った。
「今晩もうお酒を六杯もおかわりしていらっしゃるのよ」
「うん、ちゃんとわかってるよおまえ」
ブラウン氏は答えた。
「わしはおかわりしてもらいに行くたびに、
みんなにこれはおまえに頼まれたものだとことわっているから大丈夫さ。
誰もわしが酒呑みだとは思わんよ」
「ジャックが昨日の晩、家に帰る道で強盗にあったんだってね」
トムが友人に言った。
「ああ。あれしかあいつが無事家に帰る方法はなかったさ」
「あんたはたった一度酔っ払ったことがあるだけで、
こんなにダメな人間になってしまったっていうんですか?」
と精神分析医が聞いた。
「ええ、そうなんです」
患者が答えた。
「たった一度酔っ払ったことがあるんですが、そのとき結婚してしまったんで」
「可哀想なマックス」
マックスの姉が言った。
「結婚してもダメだったのね。
相変わらず酒びたりなんですって?」
「うん」
マックスが頷いた。
「だけど以前は楽しみのために飲んでいたけど、
結婚してからは苦しみを逃れるために飲むようになったんだ」
もうろくして、髪も真っ白になった三人の老紳士が、公園のベンチに腰掛け、
互いにいかにして実り豊かな老年を迎えることが出来たかを話し合っていた。
「今年で八十七歳になります」
と一人が言った。
「酒、煙草はいっさいやらず、夜更かしせず、
罪深い性の誘惑を断固しりぞけてきたおかげで、今日の私はあるのだと思います」
「私が九十三歳の今日まで健在なのは、
蜂蜜と小麦胚芽入りのパンとミルクだけの食事を厳しく守ってきたからです」
と二人目が言った。
「私が十八歳になったとき」
と三人目が言った。
「父が私に、こう言ったんです。
もし父と同じくらい人生を楽しみたいのなら、黒い葉巻を吸い、
酒は強いやつを飲み、毎晩違う女とどんちゃん騒ぎをやれ、と。
その通りに私はやってきました」
「驚いた!」
と一人目が言った。
「信じられない!」
と二人目が言い、続けて、三人の中では最も年輩に見えるその三人目の男に尋ねた。
「失礼ですが、お歳はおいくつかな?」
「二十二になります」
ある男が二十歳になったとき、日記にこう書いた。
「今日、二十歳になった。
両手でやってもペニスを折り曲げられない」
三十歳になって、またこう書いた。
「今日、三十歳になった。
両手でやってもペニスを折り曲げられない」
四十歳のときも同じ。
四十五歳、五十歳、五十五歳のときも同じように書いた。
六十歳になって「今日、曲げられた」と書いた。
「私は強くなったに違いない」
銀河系のある星を訪れた宇宙探険隊の一行が、宇宙人の生殖の仕組みを見せてもらった。
複雑な機械が持ち出され、スイッチが入り、
子供の望ましい性質や特徴を記入したテープがするすると飲み込まれると、
機械が回転し始め、青白い火花が散り、数秒後、宇宙人の赤ん坊が取出口から出てきた。
「さて今度は……」とその星の指導者が言った。
「あなた方、地球人の子供の作り方を見せていただけますかな?」
緊急の話し合いがもたれたのち、
女性隊員の一人が──宇宙親善のために──その役を志願し、
探険隊の隊長とテーブルの上で交わった。
「実に面白い」と星の指導者は言った。
「で、赤ん坊は?」
「そうそう、申し忘れましたが我々の赤ん坊は十ヶ月経たないと産まれないのです」
「ほほう、だとすれば、終わる間際に猛烈に急いだのは、あれは何のためです?」
メイベルがジェーンと友達のうわさ話。
「あのロマンチストのパッシー嬢ったら、
自分には出生の秘密があるなんて言っていたわよ」
「それは本当よ。
誕生日が秘密なのよ」
ミュリエルとメイベルは仲の良いお茶飲み仲間。
「私、三十になるまで結婚しないわ」
「私、結婚するまで三十にはならないわ」
オールドミスのキャロルがジーンに得意気に言った。
「私は、もう何千回と結婚してくれって頼まれたわ」
「知ってるわ、頼んだのはあなたのお父さんとお母さんでしょ」
クララがうきうきしながらモードに言った。
「信じてもらえないかもしれないけど、この夏、
七人もの男性にノーと言ったの」
「あら、信じるわ。
何を売りつけられそうになったの」
メイがエドナに自慢たらしく言った。
「いまカナダに行ってるあたしのフィアンセったら、
国に帰って世界で一番美しい女の子と結婚するんだって、
みんなに言いふらしてるそうよ」
「ひどい男ね。
あなたとこんなに長いあいだ婚約しているのに」
ジェーンがジョアンに言った。
「ヘンリーが初めてプロポーズしたとき、あたしオーケーしなかったの」
「当然よ。
彼が初めてプロポーズしたとき、あなたはそこにいなかったもの」
セリアがエドナに聞いた。
「あなた秘密を守れる?」
「守れるわ。
でも、次の
「男の人に何か言っても片方の耳から入ってもう片方の耳に抜けてしまう」
と女が言った。
「女に何か言うと」と男がすかさず言い返した。
「両方の耳から入って口に抜ける」
ジョンは、大学で同級のマリアと結婚したかったが、
父親から結婚の害をさんざん叩き込まれて臆病になっていた。
「結婚の約束をしなければ、
あなたの要求は何ひとつ受け入れるわけにはいかないわ」
煮え切らないジョンにしびれを切らしたマリアが言った。
そこで、ジョンは一計を案じた。
試験的に結婚して、三ヶ月間様子をみる。
もし失敗だと思えばすぐにやめるという約束でやってみる。
家に帰り、そのことをさっそく話すと父親は苦りきった顔で言った。
「その失敗作がおまえだ」
父親が息子をしかりつけた。
「どうしておまえはお母さんの言うことをきかんのだ、おい。
おまえは、俺より偉いとでも思っているのか」
ボブが、母が毛皮のコートを着るのを見ながら言った。
「お母さんが着るそのコートのおかげで、かわいそうに、
その動物はひどく苦しんだことだろうなあ」
母親はボブをしかりつけた。
「お黙り、お父さんをそんなふうに言うことは許しません」
高校生のジュリーは、最近占いに凝っていた。
ある日、友人ととても良く当たると評判のジプシー占いに行ったジュリーは、
彼女の父親が翌朝死ぬと予言されて、青くなって帰ってきた。
心配させないために、両親にはそのことは黙っていた。
その晩ジュリーは不安で、まんじりともせずに朝をむかえた。
おそるおそる階下におりていったジュリーは、食堂で、
いつもと変わらずに朝食をとっている父親を見つけて、ほっと胸をなでおろした。
「よかった、やっぱり予言は当たらなかったわ」
それから、牛乳を取り込むために台所の扉を開けたジュリーは、びっくりして息をのんだ。
そこに、長年彼女の家に出入りしていた牛乳配達が、倒れて死んでいたのだ。
艶福家で名高いプレイボーイの伯父貴に若い甥っ子が、
恋に成功する秘訣を教えろとねだった。
「そうだな」と伯父はまじめな顔で答えた。
「誠実さと賢明さの二つだね」
「誠実さってどういうことなの?」
「どんな相手だろうが、どんな事情があろうが、どんなに厄介なことになろうと、
約束は絶対に守ることさ」
「で、賢明さっていうのは?」
「どんな約束でも平気で破ることさ」
真夜中。
けたたましい電話のベルで、医者は叩き起こされた。
電話に出ると、すっかり取り乱した男の声が聞こえた。
「もしもし、もしもし、息……息子が、コンドームを飲み込んでしまって」
「よろしい、心配ご無用だ。
すぐに行きましょう」
電話を切り、医者がパジャマから服に着替え終わったとき、再び電話が鳴った。
医者が再び電話に出てみると、同じ男の声がした。
「もうけっこうです、先生。
他のが、もう一つ見つかりましたから」
駆け落ちするつもりで二人の恋人がタクシーに乗り込んだ。
「いくらだい」
運転手が答えた。
「いいんですよ、旦那。
そちらのご婦人のお父さんがすっかり済ませてくださっているんで」