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駄作屋ボブの憂鬱
20. 魔物の出現場所ッスか?
ジョニー:この盗賊どもは魔物を操るのが得意なのか?
ボブ :そんな設定は別にないッスけど。
ジョニー:じゃあなんで魔物と一緒に襲ってくるんだよ?
ボブ :さあ。
ジョニー:さあじゃねえよコラ。いくらザコだからって、魔物と同列扱いかよ。いくらなんでもそりゃひでえだろ。
ボブ :いやあ、どうせだから一緒に出した方がいいのかなって思ったんスよ。
ジョニー:よかねえよ。大体おめえはよ、何故そこにその敵が出るのかってことを良く考えたことがあるのか?
ボブ :ないッス。
ジョニー:即答かよ。
ボブ :だって、なんでそんなこと考える必要があるんスか? 敵なんてただの障害ッスよ。手頃な相手をテキトーに出しておけばそれでいいんじゃないッスか?
ジョニー:ある種のシナリオにとってはそういう面があるのは認める。だがな、大抵のシナリオにおいてはただの障害としての敵なんてのはただ邪魔なだけなんだよ。面白さに繋がらねえ障害なら、ねえ方がいいだろ。あのな、PCだけじゃなく、NPCにもNPCの事情があってしかるべきなんだよ。例えば街道を冒険者六人が護衛する大商隊が通るとするよな。
ボブ :護衛の依頼ッスね。
ジョニー:まあそうだ。そこで、敵が襲ってくるとする。その敵がよ、例えばゴブリン三匹とかだったらどうだ?
ボブ :どうだって、襲ってきたんなら倒すッスよ。
ジョニー:そりゃまあそうだが、今のような状況でゴブリン数匹が何の策もなく襲ってくるのはおかしくねえかってことだよ。
ボブ :別にいいんじゃないッスか? 対象レベルの低いシナリオなら、その程度でも問題ないと思うッスけど。
ジョニー:そりゃPC側にとってはそうだろうよ。だが、もしおまえがゴブリンどもの頭だったらどうする? たったの三匹で襲いかかったりするか? 冒険者六人の腕前はそりゃわからんかもしれんが、大商隊だけに人数はかなりいるんだぞ? いくら訓練をつんでねえとはいっても、そいつらが皆武器を持ってかかってきたらどうなる?
ボブ :それは、まあ、ボコボコにされるッスねえ。
ジョニー:当然だな。本気で襲うのなら数を揃えるだろうし、作戦をたてる頭があるなら罠にはめたり狭い場所で奇襲をかけたり、まあ色々あらあな。大体な、護衛なんてのはよ、そりゃ襲ってくりゃ撃退するのも仕事だが、護衛がいるというだけで襲われる確率は大分低くなるんだ。護衛ってのはいるだけでかなりの効果があがるもんなのさ。そこにノコノコと数匹で襲ってくるなんざ、よっぽど低脳な魔物でなきゃありえねえんだよ。
ボブ :そうッスねえ……。
ジョニー:他にはな、魔物の出現場所に関しても色々と問題があるんだな。高レベル用のシナリオだからって、本来洞窟内に潜んでるような強い魔物が屋外で大量に出現したり、その逆に空飛んでるはずの魔物が洞窟内に出たりとかな。あとは基本的に単独行動するタイプの魔物が集団で襲ってきたりなんてえのは何か理由がない限りは普通ありえねえんだよ。もしそんな異常なことが起こったとしたら、そのことに疑問を抱いて解決策を見出すのが冒険者ってもんだ。それを何の考えもなしにやられちゃあ、一体何をどう考えりゃいいのかわかりゃしねえんだよ。
ボブ :そこまで考えないとダメッスかねえ?
ジョニー:当たりめえだろ。大体ドラクエだのファイナルファンタジーとかだってよ、場所によって出現する魔物が違うだろ? 平野、森、海辺、洞窟なんかでは、その場所に応じて敵の種類だってかわってくるだろうが。変なトコばっか真似しやがって、どうしてそういうところは真似しねえんだ。
ボブ :うう、確かにゴブリンと盗賊を一緒に出したのは俺のミスッスけど、でもあれは森の中ッスから、ゴブリンが出るのも盗賊が出るのも別々になら問題ないッスよ。
ジョニー:わんさか出てくるのには問題があるが、まあ別々に出すならそれはそれでいいだろう。だがな、おまえの作ったこのシナリオの最後に、封印されてた遺跡ってのが出てくるだろ?
ボブ :出るッス。
ジョニー:なんでその遺跡の中にゴブリンがうろついてんだよ。ずっと封印されてて、誰も出入り出来なかったんじゃねえのかよ。
ボブ :それは……きっと封印を解いた後に入り込んだんッスよ。
ジョニー:阿呆。んな短時間にあれだけ大量の魔物が入り込むなんて不自然もいいとこじゃねえか。
ボブ :だって、敵がなんにもいなかったらつまらないじゃないッスか。
ジョニー:成長しねえ野郎だな。敵と戦わせておけば面白いだろうってのは勘違いもいいとこだっつーの。なにも戦闘だけがCWの面白さじゃねえだろ? 戦闘がしたいだけなら連戦シナリオでもやってりゃいいんだよ。遺跡ならではの仕掛けだのなんだのを出せばいいだろが。
ボブ :それはそうッスけど、でも戦闘の一回や二回はあった方がいいじゃないッスか。
ジョニー:それはそれで構わねえだろうよ。
ボブ :だって、敵を出すと兄貴怒るじゃないッスか!
ジョニー:敵を出すから問題にしてんじゃねえんだよ。なんでそこでゴブリンが出るんだっつってんだ。ずっと封印されてたんだから、平素は普通に生活してるような魔物を出すのはおかしいってんだよ。
ボブ :どういうことッスか。
ジョニー:だからよ、魔法生物だとかよ、場合によってはアンデッドの類だよな。そういうのなら封印された遺跡内にいたっておかしかねえだろう。むしろ、封印された遺跡内にゴブリンだのがいたなら、そりゃあ封印されたと言いつつどっかに抜け穴でもあったんじゃねえかと疑うのが普通だろ。俺が普段設定をしっかりしろって言ってんのはよ、何も同行NPCが神の子孫だったとかそういう馬鹿げた設定に凝れって言ってんじゃねえんだよ。今挙げたような出現する魔物の種類だとかよ、そういうさりげない部分に凝ってこそ設定がシナリオに生きてくるんだよ。
ボブ :む、難しいんスねえ。
ジョニー:そら難しいこた難しいんだろうがよ、ゲーム作るんだからそんぐらい当然だろう。しっかり考えるクセをつけとけ。慣れりゃ無理に考えるまでもなく自然と気にするようになるよ。
ボブ :そ、そうッスか。なんとか頑張ってみるッス。
ジョニー:まあボチボチ頑張んな。ところでボブ、例のテープだがな。
ボブ :なんスか?
ジョニー:確かにこの前の会話は上書きされてなかったが、なんかビープ音みてえなのが入ってんだよな。まさかおめえこれは……。
ボブ :ああ、FM7の幻魔大戦ッスよ。兄貴が喜ぶと思って入れておいたッス!
ジョニー:…………。
ボブ :兄貴AVG好きッスもんね! いやあ、良いことをすると気持ちがいいッス。
ジョニー:地獄の断頭台ッ!!
ボブ :ぶべらっ!?
ジョニー兄貴のお言葉
- 魔物には魔物の生活がある。
- だから、どこにどんな魔物が出現するかってのは大事だぜ。
- 同行NPCの設定に凝る前に凝るべき部分は無数にあるんだぜ。
- エロテープは弁償しろよ。
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