酔生夢死 |
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子供が法廷に引き出された。
走っている車に石を投げたというのだ。
「何か弁明することはあるか」
判事が尋ねた。
「僕は石を投げませんでした」
子供が答えた。
「ただ投げようとしただけです」
「投げようとしただけだって」
判事が繰り返した。
「よろしい。投げる意志があったということだな。
妨害行為は成立する。
罰金五ドル」
父親が子供の手を取って法廷から出ようとした。
判事が呼び止めて言った。
「おいおい、まだきみは罰金を払っていないんだよ」
「はい」
父親が答えた。
「私は払うつもりだったのです。
法の目で見ると、意思があれば行為は成立するわけですから、
つまり、私はもう罰金を払ったわけです」