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スミレ博士の研究室 - [第十二回]

世界は本当に存在するか

 コギト・エルゴ・スム(我思う故に我あり)。我々が、いや、世界そのものが存在するかどうか確かめようがないが、そんな不確かな世界の中で、そのように疑問に思っている私の心だけは確実に存在するのだ。
 「我思う故に我あり」というのは、デカルトの言葉です。
 今回は短めにいきましょう。何と言っても、失敗してしまった実験の話ですから。

 存在確認眼鏡を完成させた私は、早速助手の一人にそれをかけさせました。眼鏡の脇のつまみでレベルを調節することが出来ますので、最初は最低レベルにさせました。しかし、何の変化も見られないと言うではありませんか。そんなはずはありません。そこで私は、レベルを上げるように助手に言いました。
 つまみを捻って、レベル自動調節に合せてしまった彼は、そのままあっちの世界へと行ってしまいました。今は私の研究室の地下にある倉庫で、多くの失敗作に埋もれて、不確かな世界を見詰め続けています。いえ、彼には「」が見えているのかもしれません。
 テープに録音した彼の最後の言葉です。

「……この部屋には誰もいない。へ、部屋もない! いや、見渡す限りの地平だ。建物はどうしたんだ? 山や川は? ああ、地球も存在しないのか? 宇宙だ。宇宙に浮かんでいる。たくさんの星が……消えた。真っ暗だ。真っ暗? いや、違う。ここは、これは!? うわぁぁあああぁああああぁぁぁぁぁぁ…………」

 ……これは、聞かなかったことにしましょう。

 それではみなさん、科学する心を忘れずに。


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