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スミレ博士の研究室 - [第十一回]

新・制御理論

 今あなたは、自動車の運転をしていると思って下さい。走っている道路の幅、曲がり具合、前の車との距離を目で見て、足でアクセルやブレーキを踏んでスピードを調節し、手でハンドルを操作して道路に沿って走っているはずです。これらを自動には出来ないだろうか。目はセンサーに、手や足は各操作部への指令となり、自動車を走らせます。これが制御です。
 古典制御理論において主流となるのがPID制御です。現在行われている制御のほとんどがこのPID制御だと言っても過言ではないでしょう。このPIDの欠点は、多変数を扱いにくいということです。先程の自動車の例で言うと、ハンドル操作のみならば比較的容易に制御システムを構築できるのですが、加えてアクセル、ブレーキ、ギアチェンジなどが入ってくるとシステム構築は非常に複雑で困難なものになります。
 そこで、現代制御理論の登場です。状態空間を考える現代制御理論では、多変数を容易に扱う事が可能であり、コンピュータを用いた制御を考える場合に非常に有効です。しかしながら、現代制御理論はまだまだ研究段階にありごく小数の例を除いては実際のシステムに用いられてはいません。現状では理論が先行してしまっている状態だと言えるでしょう。

 前置きが長くなりました。本題に入りましょう。
 みなさんにも、仕事をしているうちに眠ってしまい、目覚めると仕事が終わっていたという経験があることでしょう。これが有名な、靴屋の小人現象です。こんな便利なものを利用しない手はありません。しかし、小人を自由自在に呼び出すためにはどうしたらよいのでしょうか。そこで私は、悪魔博士に依頼して、悪魔を利用する事にしました。小人も悪魔も似た様なものでしょう。私はさっそく悪魔学の博士に頼み、悪魔召喚術士第二級の資格を持つ学生を貸してもらい、実験にとりかかりました。
 あまり大物を呼ぶと大変なので、小物の悪魔を呼び出してもらうことにしました。呼び出された悪魔と契約を結ぶと、私は制御システムに組み込んでみました。その結果、素晴らしい制御効果が得られました。異常とも言える整定時間の短さに私は小躍りしました。ところが、そううまくはいかないもので、変数が増えるとうまくいかないのです。そこで私は、もう少し上級の悪魔と契約して制御を行いました。これはうまくいきました。やはり悪魔を利用するという私の考えは正しかったのです。
 現在、実用化に向けて研究を続けています。今のところ、悪魔との契約に寿命が数年分必要であるということが問題となlっています。しかも、ある程度上級の悪魔ともなると、魂を要求してくるのです。ま、いざとなれば、その辺の不良少年でも連れてきて契約させればいいことです。彼らも人の役に立てるし、家族も厄介払いができるし、高精度な制御システムを必要とする人々も喜ぶ。まさに一石三鳥です。
 この夢のようなすばらしい悪魔制御理論に関する論文が書きあがったら、早速学会で発表するつもりです。私の高度な研究を理解できない馬鹿どもにはもったいないくらいですけどね。

 それでは、科学する心を忘れずに。


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