盲亀の浮木
(もうきのふぼく)

 出会うことがきわめて難しいことのたとえ。また、めったにない幸運にめぐり合うことのたとえ。百年に一度海面に浮かび上がる盲目の亀が、たまたま海上を漂う一本の流木に出会い、その木の穴に入り込んだという、『雑阿含経』の寓話ぐうわに基づく。仏や仏の教えに会うことの難しさを教えたもの。『涅槃経』などにも見える。「優曇華うどんげの花」と対にして言うこともある。

同意語: 「盲亀もうき浮木ふぼくう」
類語: 「千載一遇

盲亀浮木
(もうきふぼく)

 ⇒「盲亀の浮木

妄言多謝
(もうげんたしゃ)

 自分の独断偏見で述べた言葉について、その後に深くお詫びする意。

猛虎伏草
(もうこふくそう)

 英雄が世間から隠れていても、それは一時のことでいつかは必ず世に出るということ。

孟母三遷
(もうぼさんせん)

 孟子の母が息子の教育にふさわしい環境を選んで住居を度々移したという故事。

孟母三遷の教え
(もうぼさんせんのおしえ)

 子供の教育のためにはよい環境を選ばなくてはならないという教え。孟子もうしの母は初め墓地の近くに住んでいたが、孟子が葬式のまねばかりして遊ぶので市場の近くに越した。すると今度は商人のまねをして遊びまわる。そこで学校のそばに引っ越すと、ようやく礼儀作法のまねごとをするようになった。孟子の母はその地こそ我が子にふさわしいとして居を定めたという、『列女伝・母儀』の故事に基づく。

同意語: 「三遷の教え」、「孟母の三居」、「孟母の三遷」
類語: 「門前の小僧習わぬ経を読む

孟母断機
(もうぼだんき)

 ⇒「断機の戒め

餅は乞食に焼かせよ魚は殿様に焼かせよ
(もちはこじきにやかせよさかなはとのさまにやかせよ)

 ⇒「魚は殿様に焼かせよ

餅は餅屋
(もちはもちや)

 物事にはそれぞれの専門家がいるということ。京都系いろはがるたの一つ。うすきねさえあれば誰にでもできそうだが、プロのついた餅は味が違う。

同意語: 「餅屋は餅屋」
類語: 「つまらない商売にも秘訣はある」、「海の事は漁師に問え」、「芸は道によって賢し

沐猴にして冠す
(もっこうにしてかんす)

 見かけは立派でも心は粗野で、君主にはふさわしくないということ。「沐猴」は猿。猿のくせに王冠をかぶるの意。『史記・項羽本紀』に、故郷を懐かしみ、天下統一の大業をおろそかにしようとした項羽こううが「楚人そひとは沐猴にして冠するのみ」とののしられたという故事による。

持ったが病
(もったがやまい)

 持たなければいいのになまじ持ったがために、それに関わる面倒なことに悩まされること。

類語: 「匹夫ひっぷ罪なしたまいだいて罪あり

本木に勝る末木なし
(もときにまさるうらきなし)

 何度か取り替えてみても、やはり最初の相手が一番よかったということ。「本木もとき」は接ぎ木のもとになる木、「末木うらき」は枝やこずえ。最初の妻を本木に、後妻を末木にたとえるなど、多く男女関係について言う。

類語: 「女房は替えるほど悪くなる」

元の木阿弥
(もとのもくあみ)

 (1)いったんよくなったものが、また以前の悪い状態に戻ること。
 (2)せっかくの苦労や努力がむだになること。
 戦国時代の大名、筒井順昭が病死した際、嗣子しし順慶じゅんけいがまだ幼少だったので順昭に声のよく似た木阿弥もくあみという男を薄暗い寝所に寝かせて喪を隠した。やがて順慶が成人して順昭の死が公表されると、木阿弥はまた元の低い身分に戻ったという故事による。

求めよさらば与えられん
(もとめよさればあたえられん)

 ひたすら神に祈るなら、神は必ず正しい心と正しい信仰を与えて下さるということ。転じて、何事もただ待つのではなく、自ら積極的に求める態度が必要だということ。『新約聖書・マタイ伝』山上さんじょう垂訓すいくんに見えるイエスのことば。“Ask, and it will be given to you.”

類語: 「叩けよさらば開かれん

物言う花
(ものいうはな)

 言葉を話す花、つまり美人のこと。これに対し、草木の花を「物言わぬ花」と言う。

類語: 「解語かいごの花

物言えば唇寒し秋の風
(ものいえばくちびるさむしあきのかぜ)

 人の悪口を言えば、後味の悪い思いをするということ。また、よけいなことを言うと、そのために災いを招くということ。芭蕉の句。「人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ」という座右の銘に添えられている。

類語: 「言わぬが花」、「口は禍の門」、「災いは口よい出ず」

物がなければ影ささず
(ものがなければかげささず)

 光をさえぎる物がなければ影はできない。原因がなければ結果は生じないということ。

類語: 「火の無い所に煙は立たぬ」、「蒔かぬ種は生えぬ

物盛んなれば則ち衰う
(ものさかんなればすなわちおとろう)

 盛んなものはいつか衰えるのが自然のことわりであるということ。『戦国策・秦策』に「日中ひちゅうすればすなわち移り、月満つれば則ちくと。物盛んなれば則ち衰うるは、天の常数なり」とある。

同意語: 「月満つれば即ちく」

物は言いよう
(ものはいいよう)

 物事は話し方ひとつでよくも悪くも受け取られるということ。「物も言いよで角が立つ」から。内心ではへたくそと思っても、「個性的な絵ですね」と言えば、めているようにも聞こえる。

同意語: 「物は言いなし」、「物も言いようで角が立つ」、「物も言いよで角が立つ」
類語: 「丸い卵も切りよで四角

物は考えよう
(ものはかんがえよう)

 物事は考え方ひとつでよくも悪くも感じられるものだ。

物は相談
(ものはそうだん)

 (1)困ったときは、人と相談すれば解決法が見つかるかもしれないということ。
 (2)相手に相談をもちかけるときに使うことば。


同意語: 「物は談合」
類語: 「膝とも談合

物は試し
(ものはためし)

 物事は実際にやってみないと成否は分からないということ。何もしないで諦めてしまうことはない。

物見遊山
(ものみゆさん)

 物見とは祭や行事などを見にゆくこと。遊山は山や野に遊ぶことで、気晴しに見物や遊びに出かけること。

物も言いようで角が立つ
(ものもいいようでかどがたつ)

 同じことでも言い方一つで、相手の感情を害して不快にさせることがある。口のきき方には十分に注意せよということ。

同意語: 「物は言いよう
類語: 「丸い卵も切りよで四角

桃栗三年柿八年
(ももくりさんねんかきはちねん)

 桃と栗は芽を出してから三年、柿は八年で実を結ぶということ。結果を急ぐことを戒めるたとえとして使うことが多い。

股を刺して書を読む
(ももをさしてしょをよむ)

 わき目もふらず勉学にいそしむたとえ。昔中国で、蘇秦そしんという人が、眠くなるときりで股を刺し、痛さで眠気を覚ましながら読書に励んだことから。

貰う物は夏も小袖
(もらうものはなつもこそで)

 ⇒「戴く物は夏も小袖

両刃の剣
(もろはのつるぎ)

 使い方によっては非常に役立つが、一方では危険を招く恐れのあるもののたとえ。「両刃もろは(諸刃)」は刀身の両辺に刃をつけたもの。

門外不出
(もんがいふしゅつ)

 貴重な物を家の外には絶対に出さずに大切に秘蔵すること。他人に見せたり持ち出さない。

門前市を成す
(もんぜんいちをなす)

 訪ねてくる人が非常に多いこと。門の前には人だかりがして、まるで市がたったようなにぎわいだの意。

類語: 「門庭市のごとし」
反意語: 「門前雀羅じゃくらを張る

門前雀羅
(もんぜんじゃくら)

 ⇒「門前雀羅を張る

門前雀羅を張る
(もんぜんじゃくらをはる)

 訪れる人もなく閑散としていること。「雀羅じゃくら」はすずめを捕らえる網。前漢の武帝時代、〓公てきこう(〓は、上部が「羽」で下部が「隹」)が廷尉ていい(刑罰を司る官)の職を免じられると来客はすっかりとだえて、門前に雀羅を張り巡らせるほどさびれてしまったという、『史記・汲鄭伝・賛』の故事に基づく。

同意語: 「門前雀羅じゃくらもうくべし」
類語: 「閑古鳥かんこどりが鳴く
反意語: 「門前市を成す

門前の小僧習わぬ経を読む
(もんぜんのこぞうならわぬきょうをよむ)

 日ごろ見聞きしていると、いつの間にか習わないことも覚えてしまうということ。江戸系いろはがるたの一つ。寺の門前に住む子供は、読経を聞くうちに般若心経はんにゃしんぎょうの冒頭くらいは唱えられるようになるものだ。

類語: 「勧学院かんがくいんすずめ蒙求もうぎゅうさえず」、「孟母三遷もうぼさんせんの教え

門に倚りて望む
(もんによりてのぞむ)

 ⇒「倚門いもんぼう