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毎週のジョーク - [02]


騙されている

二人のアイルランド人が墓地を散歩していた。
『死せるにはあらず、ただここに眠れるのみ』
と刻まれた墓碑を見て、一人が言った。
「こんなこと誰も信じやせん。
騙されとるのはこの死んだ奴だけだろうよ」


交換

夫が死に、その死体は葬儀屋に安置された。
妻が、葬儀の手配がうまく進行しているかどうか見に行った。
ところが、紺の服を着せるようにと言っておいたのに、茶色の服が着せられていた。
妻が抗議すると、葬儀屋が言った。
「どうも申し訳ありません。
午後にあなたがこちらへ見えられるまでには必ずきちんと手配しておきますので」
午後、彼女が来てみると、望み通りになっていた。
「これで問題ございませんでしょう」
葬儀屋が言った。
「第二安置室のご婦人が茶色の服をご所望でした」
「あら、そう」
未亡人が言った。
「洋服を交換したのね」
「いえ、そうではございません、奥様」
葬儀屋が答えた。
「私どもは、頭を交換いたしましたので。
そのほうが楽でございますので、ハイ」


グッドアイディア

葬儀屋はいかにも不満気にその死者を見つめた。
トラックが外を通るたびに、死者のカツラがずれ落ちて禿げ頭がむき出しになるのだ。
死者の妻が、葬儀屋がこぼすのを聞いてカツラをとめる糊を見つけてくることにした。
糊を買って帰ると、葬儀屋は、問題は解決したと言う。
「あら、糊を見つけたのね」
彼女が尋ねた。
「いや、留め金を打ち付けたのです」
葬儀屋が答えた。


妻の幸福

「なぜ君はそんなに僕に当たり散らすんだい?」
と夫は言った。
「君を幸せにしようとこんなに一生懸命努めてるじゃないか」
「でも、あんたはあたしの最初の夫がしてくれたことで、まだしてくれていないことが一つあるわ」
と妻。
「そりゃ何だい?」
「彼は死んでくれたわ」


夏が好き

働きづめのビジネスマンが何故夏が好きなのか説明していた。
「去年の八月、僕は可愛い女性を海岸に連れていった。
まず、彼女が僕を砂に埋め、次に僕が彼女を砂に埋めた。
今年の八月、何があろうともあそこに行って彼女を掘り出すつもりなんだ」


悲劇

「私の人生は平穏とはほど遠いものだった」
バーのカウンターに身をかぶせるようにして飲んでいた紳士が、偶然隣り合わせた男に言った。
「私は三人の妻に先立たれた。
最初の二人は毒きのこにあたって死んだ。
三人目は、可哀相に、脳震盪が原因で死んだ」
「脳震盪だって?」
隣りの男は小声で言った。
「どうしてそんなことになったんだい?」
「とても悲しい出来事だった」
と、やもめ男はため息をついた。
「彼女はどうしてもきのこを食べてくれなかったものでね」


思い残すこと

イメルダは不治の病にとりつかれていた。
結婚して二十年、何一つ不自由なく暮らしてきたことを思うと神様の思し召しに従う決心がついた。
そこで、彼女は夫のトニーをベッドに呼んだ。
「トニー、私はもう長くは生きられないわ。
あなたはまだ若いし、再婚のチャンスはあるわね。
私はこれまで幸せだったから思い残すことはないけど、ひとつだけお願いがあるの」
彼女は弱々しく夫の手を掴んで続けた。
「再婚した相手に、私のドレスや宝石は絶対に渡さないでね」
「マリア、君はなんてつまらないことを心配しているんだ」
夫は優しく妻の手を握り返して言った。
「僕はそんな男じゃないよ。
それにキャティは宝石に興味がないんだ」


告白

ジョーは死につつある妻を看取っていた。
妻の声はほとんどささやきに近かった。
「ねえ、ジョー……」
あえぎながら妻は言った。
「お別れする前に言っておきたいの……。
金庫から一万ドル盗んだのは、このあたしなの……。
そのお金は、あなたの親友のチャールズとの浮気に使ったの……。
まだあるわ、あなたの女をこの街にいられないようにしたのもこのあたしよ、
あなたの脱税をお役所に密告したのもあたしなの……」
「もういいじゃないかダーリン、くよくよ考えるのはよしなさい」
ジョーは答えた。
「おまえに毒を盛ったのは、このわたしなんだ」


はい一回

静かな独り住いの老人が八十五歳の誕生日を迎え、地元の新聞記者にインタビューされた。
記者は、老人の友人や隣近所の人々がみな一様に、
老人は亡くなった妻との間にいさかいらしいいさかいを起こしたことがない、
と言っていることを話し、もしそれにコツがあったら教えてもらいたい、と言った。
「よろしいとも、お若い方」
と老人は答えた。
「どうしてそうなったか教えて進ぜよう。
わしらがハネムーン旅行から馬車で帰って来たときのことじゃ。
馬車を引いていた牝馬がつまずいた。
わしは『はい一回』と言った。
それからまたしばらく行くと、牝馬の奴またもつまずきよったんじゃ。
わしは『はい二回』と言った。
そして、その老いぼれ牝馬の奴が三度目につまずくと、
わしは黙って拳銃を取り出して馬を射殺したんじゃ。
家内はこれを見てひどく腹を立て、わしに向かって大騒ぎしおった。
わしはしばらく家内を喚かせておったが、彼女の言葉が途切れたときに言ってやった。
『はい一回』
それからは、なあ、お若いの、お分かりじゃろう、
わしは女房と喧嘩したことはただの一度もなかったよ」


勝った!

田舎に住む老夫婦が遊覧飛行機に乗ってみることにした。
料金を聞いて二人は叫んだ。
「十ドルだって!? それは高い。高すぎる」
そこでパイロットが条件を出した。
飛行中二人が一言も喋らなかったら無料にする、
その代わり一語でも喋ったら十ドル貰うというのだ。
飛行が終わった。
言葉は一言も発せられなかった。
着陸すると、パイロットは彼らがずっと喋らずにいることが出来るとは思わなかったと言った。
「そうじゃろう」
老人が答えた。
「ほんとはあんたが勝つところだったんじゃよ。
婆さんが落っこちたときは、わしゃ思わず叫び出すところだったんじゃ」


原因は

走っている車にハイウェイパトロールが横付けして道路の端に誘導した。
「あなた、奥さんを三マイルほど前で落としてますよ」
警官が言った。
「ああそれでなのか」
男がホッとしたように言った。
「俺はてっきり、まったくのツンボになったのかと思って心配していたんだ」


悲惨な話

これは、あるイギリス人に起こった悲惨な物語である。
その男は、彼が妊娠させる能力を持たないという理由で妻に離婚を申し立てられた。
と同時に一方で、小間使いには彼女の子供の父親が彼であることを認めよという訴えを起されたのだ。
こんな酷いことはない。
しかもそのうえ酷いことには、
彼はこの訴訟で二つともに敗訴してしまったのである。


禁じられて

「ネリー」
夫が妻に言った。
「きみ、今回のパーティーにスミス夫人を招待しているが、
間違っても死だとか、自殺だとか葬式の話をするんじゃないよ。
スミス爺さんは、屋根裏部屋で首を吊って死んだんだからね」
ネリーは言われた通りに振舞った。
彼女は会話を日常のありふれたことに限った。
気候の話、知人に子供が生まれたこと、近所の人が結婚したこと、
そして話題は家事のあれこれに移り、
ここのところ雨が降り続いていて、洗濯物を干すのに困るという話になった。
「でもスミスの奥様、あなたのところがうらやましいですわ」
ネリーは言った。
「こんな悩みなんかお宅にはございませんものね。
あんなに大きい屋根裏部屋がおありなんですから、何でも吊るせますものね」


GO TO HELL

ニューヨークの強欲な衣服製造業者が死んだ。
彼は天国に行きたいと思った。
「職業は?」
天使が聞いた。
「衣服製造業者を経営してます」
「なるほど、どうしてあなたは自分が天国に入るにふさわしいと考えたんです?」
「私はタイムズ・スクェアーで、
目の不自由な人に十五セントやったことがあります」
「それだけですか?」
「いいえ、もちろん違います。
つい先週、私はリヴァーサイド・ドライブを散歩していて、靴磨きの少年を見ました。
彼は凍死しそうでした。
私は十セントやりました」
「それは記録されてるかね?」
天使はそばの記録係にたずねた。
記録係は帳簿を繰ってそれを確認した。
「他に何か?」
天使が質問を続けた。
「ええと、それで全部だと思いますが」
「この男をどうすべきだと思うかね?」
と、天使が記録係に聞いた。
記録係は答えた。
「二十五セントを返してやり、”地獄へ行け”と言っておやんなさい」


贈物

「年とった金持ちの伯父に何かプレゼントしたいんだけど」
と客が言った。
「気の毒なことに歩くのがやっとなんだ。
目は弱っているし、手は震えているし、足元もおぼつかないし。
どんなものをあげたら良いだろうか」
「そうですねえ」
店員はしばらく考えてから言った。
「いかがでしょう。
効果抜群の床用ワックスを差し上げては」


保険

どちらを向いても不景気な顔のブルックリンの町。
オショニシーが保険のセールスマンを呼んで、自宅に一万ドルの火災保険をかけた。
取り敢えず半年分の保険金を払うと、オショニシーは何気なく保険屋に尋ねた。
「きみ、もし今夜、俺の家が火事になったらどのくらい貰えるだろう?」
いままで至極愛想のよかった保険屋は、じろりと冷たい目でオショニシーを見て答えた。
「そうだね、十年てとこかな」


将来

給仕の少年が嘘をついたことを発見して社長が言った。
「ジョー、恥を知りなさい。
そんな嘘つきは将来どうなるか、よく考えるんだ」
ジョーはすかさず答えた。
「わかってます。
販売部に行ってセールスマンをさせられるんです」


悪戦苦闘の跡

社会の階段を這い上がろうとしながらいつも滑り落ちている流れ者が、下宿を探していた。
貸室の札を出しているかなりひどく傷んだ家に行くと、
家主のおかみさんが彼を屋根裏部屋に案内した。
そして、前にこの部屋に住んでいたのは発明家で、
新しい高性能爆薬を発明したのだと説明した。
流れ者は、壁にひどい染みがついているのを見て、おかみに尋ねた。
「すると、この壁の染みは化学薬品でついたものですね?」
「いいえ、それが発明家だよ」
とおかみは答えた。


教育効果

子供を上級学校に入れている父親に隣人がたずねた。
「お宅は息子さんに教育を授けて何かいいことがありましたか?」
「ありましたとも」
と父親は答えた。
「おかげで家内の息子自慢が止みましてね」


アフリカン・ルーレット

アフリカの新興国の外交官が、赴任先のモスクワでロシアン・ルーレットを見物した。
六連発ピストルの弾倉に弾を一発込め、回転させて、
いつ飛び出すかわからないようにしておく。
そのピストルを自分のこめかみに当てて、引き金を引くという、命がけのゲームである。
さて後日、ロシアの外交官が、そのアフリカの新興国を訪れたときのこと。
「貴下にぜひ、お見せしたいものがあります」
とアフリカの大使が言った。
「我々は、これをアフリカン・ルーレットと呼んでいます」
「ほほう、どんなふうになさるんです?」
大使は、ぐるりと輪になって腰掛けた六人のアフリカ美人を指差し、
「この六人の誰でも、お選びになった女が、貴下にフェラチオをして差し上げます」
「どこがわが国のルーレットに似てるんです?
危険がどこにあるんです?」
「さよう、実は」とアフリカの大使は言った。
「この中に一人、食人種がおります」


一人の男が、ユダヤ教のラビ(僧)に助言を求めにきた。
「ラビ」と彼は言った。
「罪を犯してしまいました。
私は商人で、社会的地位もある既婚の男です。
ジョージア州のアトランタに住み、南部で手広く商売をしています。
ある時レストランで夕食をとって帰宅する途中、
大男がいきなり私を路地に引きずり込み、首を押さえつけてこう言ったんです。
『俺の珍宝を吸うんだ。この下衆野郎、やらなきゃ首根っ子をへし折るぞ!』と。
ラビ、私は罪を犯しました!」
「いえ、いえ、そうじゃありません」
ラビはなだめるように言った。
「タルムッドの法典にあるように、命がかかっている場合は、
聖書につばをかける以外のことなら何をしようと許されるのです」
「そうじゃないんです、ラビ」
男はなおも言った。
「私は罪を犯しました。
私は、その行為が気に入ってしまったんです!」


相対性理論

ユダヤ人の浮浪者が二人、アインシュタインの相対性理論について話し合っていた。
一人が、次のように相手に説明した。
「要するに、あらゆるものはすべて相対的であるってことだ。
こうであると同時に、ああでもある。
全然別のことでありながら、しかし同じことである。
どうだ、わかるかな?」
「さっぱりわからねえ」
と相手の浮浪者は言った。
「なんか例をあげて説明してくんねえか?」
「そうだな。
それじゃまず、おれがおまえの尻をファックしたと思いなよ。
俺は珍宝を尻に入れてる。おまえは尻に珍宝を入れてる。
全然別のことだが、しかし同じことだ。
わかったかな?」
「ははぁん」
と相手はうなずいた。
「だけど、一つ聞きてえことがある。
アインシュタインってのは、それで食ってたのかね?」


フランス人の女中

フランス人の女中がバンズ夫人に、ファックってどういう意味でしょうか、と尋ねた。
「それはあなた、もてなす、ということなのよ」
と夫人は答えた。
あるパーティの晩餐のとき、女中は給仕に言った。
「ビリー、そのローストダックをファックしなさい」


闇の中

列車のコンパートメントに、四人の乗客が隣合わせた。
その顔ぶれは、何かと伝統を重んじるイギリス人、ハンサムで痩せたアメリカ人、
そしてオールドミスの娘を連れた老婦人。
突然、列車は果てしなく長いトンネルの中にもぐった。
暗闇のコンパートメントの中で、激しいキスの音が、
次に平手打ちを食らわせる音が続いて起こった。
再び陽の光が差し込んだとき、四人の乗客は、静かに、考え深げに座っていた。
老婦人は心の中で思った。
「さすがわが娘。私の若い頃にそっくりだよ。
このすましたイギリス野郎め、
あどけない娘を手玉にとろうったって、そうは問屋がおろすもんか」
娘は娘で、痩せたアメリカ人をじっと見つめながら、
「この私を無視してイギリス人にキスするなんて、ホモだったんだわ。
だから私のようないい女が売れ残るのよ」
イギリス人は、考える。
「うまくやりやがって、このアメ公め。
娘とキスするのはおまえで、ビンタを食らうのはこの俺だ」
当の若いアメリカ人は、悦に入り、腹の中で笑った。
「ああ、せいせいした!
お安いこった。自分の手の甲にキスするだけで、
このイギリス野郎に、強烈ビンタをくれてやる口実が出来るんだから」


スピーディ・ゴンザレス

美人の妻を連れてメキシコを観光旅行中の愛妻家のアメリカ人は、
世界一すばやい女たらしスピーディ・ゴンザレスの異名をもつ「ペドロ・ゴンザレス」の噂を聞き、
気が気ではなかった。
ある夜更けに、ホテルの部屋のドアを叩く者があり、トイレを使わせてもらいたいと言う。
もちろん、ペドロ・ゴンザレスその人である。
アメリカ人は毛布の下で拳銃を握り締め、他方の手で妻の部分にしっかりとフタをして、
男の用がすむのを待つことに決めた。
ところがペドロが入ってくるときの隙間風で、アメリカ人は大きなクシャミをし、
ほんの一瞬妻から手を離してしまった。
慌ててフタをし直してから、彼は怒鳴った。
「おいペドロ、どこだ?」
「おお、セニョール……」
こびへつらうような声が答えた。
「俺に立ち去って欲しいなら、まず指を、俺の尻から抜いてくれないか」


思いで

三人の修道女が街を歩いていた。
そのうちの一人が、カリフォルニアで見たグレープフルーツが
どんなにばかでかかったかを大げさな身振りで話した。
二人目も、やはり大げさな手つきで、ハワイのバナナがどんなに巨大だったかを話した。
すると、少々耳の遠い三人目が尋ねた。
「どの神父さま?」


借り

ユダヤ教の若いラビ(僧)が、カソリックの実態を学ぶべく、懺悔室に神父と同席していた。
二人の婦人が恋人と交わりを持ったことを告白し、
さらに問い詰められて、一度ではなく三度であることを認めた。
婦人たちは罪の償いとして、お祈りを三度唱え、慈善箱に十ドル入れるように告げられた。
その時電話が鳴り、神父は死にかけている男に聖油を施すため、出かけることになった。
彼はラビに言った。
「あんたはここにいて、残りの告白を聞いてやってくれ。
今は土曜の夜だから、
今日中に懺悔をすませなかった人たちは、明日の聖餐式に出られないことになる。
ま、要するに、神はひとつだ。
とにかく十ドルもらうのだけは忘れんように」
神父は立ち去り、あとには不安でいっぱいのラビが残された。
最初の少女が入ってきて、恋人と交わったことを告白した。
「三度ですか?」
とラビは言った。
「一度だけです、神父さま」
「三度でなかったというのは、確かですか?」
「確かです、神父さま、一度だけです」
「それではこうしなさい。
まずお祈りを三べん唱え、慈善箱に十ドル入れなさい。
それで教会は貴女に対して、ファック二回の借りになります」


無人島

定期船が沈没し、一人のたくましい船乗りと六人の女が無人島に流れ着いた。
六人の女にかしずかれ、
食事とセックスのサービスを受ける暮らしが極楽に思えたのもつかの間、
やがて彼はそれを次第に重荷に感じ始めた。
ある日彼は、沖合いで筏に乗った男がこちらに手を振って合図しているのを発見し、
さっそく新来者を迎えるために海へ飛び込んだ。
船乗りは、その男に泳ぎ寄りながら心中密かに、
これで女どもを満足させる労力が半分になったと喜んだ。
筏に近づいてみると、その男はしきりに髪を手で撫で付けながら言った。
「僕を助けてくれるのね、嬉しいわ」
「チクショウ!」
と船乗りはうめいた。
「これで日曜日もなくなった」


題名

若い作家が、アフリカの冒険旅行から帰って出版社を訪ね、
『私はゴリラをファックした』と題する手記を売り込んだ。
「すばらしい出来だと思います」
と、編集者は言った。
「でも、このタイトルが、ちょっとね……」
「露骨すぎますか?」
作家は尋ねた。
「いや、そういうんじゃなくて」
と編集者は言った。
「要するに、近頃の傾向としては、すべからく自己啓発風といいますか、
あなたにも出来る、といったニュアンスでないと、なかなか」
「よくわかります」
気のいい作家は、すぐ同意した。
「では、こうしましょう───いかにして私はゴリラをファックしたか」
「いいですねえ」
と編集者は言った。
「じつにいいです。
でも、まだちょっと足りませんね。いわゆる政治性が欠けている」
「わかった!」
と作家は言った。
「こうすればいいんです
───いかにして私はFBIのためにゴリラをファックしたか」
「すばらしい、最高です!」
と編集者は言った。
「しかしこれだと、宗教に関する要素がまるで入ってませんね」
「なるほど」
と作家は言った。
「それじゃ、こうしましょう
───いかにして私はFBIと神の名においてゴリラをファックしたか」
「言うまでもないと思いますが」
編集者は身を乗り出して言った。
「あなたのように協力的な若い人と仕事をするのは、実に気持ちのいいもんです。
たいていの作家連中というのは、自分を何様と思っているのか、
ほんのちょっとした手直しでも嫌がりますからね。
そこで、もう一つだけ考えてもらえれば、
部長から即オーケーが取れると思うんですよ。
一つだけ、もちろん、もし出来ればの話ですよ、
出来れば、その、少しだけホモセクシャルの要素を」
「おっしゃることはよくわかります」
と若い作家は言った。
「でも、変更はこれで最後にしてもらいますよ
───いかにして私はFBIと神の名において、牡のゴリラをファックしたか!」


解消

フランクとリズが婚約を解消したと聞いて、友人たちは驚いたが、彼はすぐ理由を説明した。
「浮気ぐせがあって、しょっちゅう嘘をついて、わがままで、
怠け者で、皮肉っぽい相手と、君なら結婚するかい?」
「もちろんいやだよ」
友人は同情を寄せた。
「そうだろう」
それみろとばかりに、フランクは言った。
「リズだって同じさ」


不実

メルヴィンは友達のミッチェルに愚痴をこぼした。
「うちの女房はとんでもない嘘つきなんだ!」
「どういうことなんだい?」
とミッチェルは聞いた。
「何故って、女房のやつ昨夜はミリーと一緒だったなんて言いやがるんだもの」
「どうして?」
「だって、ミリーと一緒だったのはこの僕なんだ」


縁起をかつぐな

マイアミのホテルでの出来事である。
突然、部屋のドアがノックされて愛人とベッドで楽しんでいた婦人が飛び上がって叫んだ。
「主人だわ! 早くその窓を開けて飛び降りるのよ!」
「飛び降りるって、ここは十三階なんですよ!」
愛人が驚いて言った。
「何を言ってるの!
今は迷信なんかとやかく言ってる場合じゃないでしょ!」


スワッピング

チャペック夫妻とパパドロス夫妻は、互いに年恰好も同じくらいでよく気が合った。
そこで、今年の夏のバケーションは一緒に過ごすことにし、
シャンプレーン湖のリゾートにコテージを二軒借りる手配をした。
湖は静かで、釣りもボートも楽しかったが、だんだん飽きてきてしまった。
ある日、チャペックがパパドロスに提案して言うには、
「こういつも同じ相手とばかり一緒に夜を過ごしているのも気がきかないなあ」
パパドロスがすかさず応じた。
「それじゃ今夜、相手を取り替えてみようか?」
翌朝、素晴らしい一夜の快楽にすっかり堪能しきったチャペック氏が、
隣りのコテージの首尾を聞きに行こうじゃないか、と言った
───いまだ陶酔さめやらぬベッドのパパドロス氏に。


気質

夫が帰宅して、妻が他の男に抱かれているのを見たらどうするか?
夫の気質によって様々なタイプがある。
まだすんでいないのなら、あわてて抜かないように、と声をかけるのは礼儀正しい夫。
石鹸とタオルを用意し、男が抜いたらすぐ差し出すのは思いやりのある夫。
うっしっしと笑って男の尻を筆でくすぐるのは変な夫。
他の男がすませた直後にするのが好きなんです、と言うのは気の良い夫。
正式に紹介されるまで待つのは几帳面な夫。
間男の見事なファックぶりを黙って見守るのは公平な夫。
間男のもののサイズを嘲笑するのは自惚れ屋の夫。
間男のが自分のより大きいようだと考えるのは謙虚な夫。
間男のシャツの裾を引きおろし尻を蔽うのは上品な夫。
コンドームをつけてるかどうか間男に尋ね、
もししてないなら外で出すように頼むのは子だくさんで注意深い夫。
間男がコンドームをしていても、なおかつ悩むのは嫉妬深い夫。
念のため、あとで妻に洗浄させるのは疑い深い夫。
自分のモノをこすり始めるのは興奮しやすい夫。
顔を赤らめて立ち去るのは恥ずかしがりやの夫。
請求書を差し出すのは貪欲な夫。
間男が自分のコールドクリームを使用しなかったかどうか確かめるのはケチな夫。
すんだら直ちに妻の部分に口づけするのは快楽主義者の夫。
妻への愛情が足りなかったからだと反省するのは良心的な夫。
自分の妻みたいな女に手を出す男がいるとは、と驚くのはシニカルな夫。
一言断る前に、すでに間男の尻に自分をあてがっているのは敏速な夫。


四十二丁目

出張でニューヨークに来た商社マンが、女が欲しくなった。
友人に相談したところ、地下鉄に乗って四十二丁目で降り、
最初に微笑みかけてきた女と交渉すればいいと教えられた。
さっそく地下鉄で出かけたが、路線が複雑で頭が混乱し、七十二丁目で降りてしまった。
キャンディストアのところで女が一人微笑みかけてきたので交渉すると、
うまくまとまって女のアパートのベッドに落ち着いた。
二人で楽しんでいると突然、ドアの外で足音がした。
「急いで!」
女が声をひそめて叫んだ。
「うちの人よ! あなた、時計の修理に来たことにするのよ」
商社マンが椅子に乗って、寝室の時計をいじくりまわしているところへ夫が入って来た。
「誰だ、あれは?」
「時計の修理に来ただけよ、あなた」
女に調子を合わせようと、商社マンは時計の針を回して時計をボンボンと鳴らしておいてから、
弱々しい笑みを浮かべて夫の方へ振り向いた。
「このとんちき野郎め」
と夫が言った。
「俺は四十二丁目と言ったんだぞ!」


二十年

酒場で、紳士が感慨を込めて言った。
「ああ、二十数年もの長い間、妻も私も、それはそれは幸せだったのに……!」
「それから、どうなったんです?」
とバーテンダーが尋ねた。
「それから、二人は出会ったのさ」


たった二ドル

バーで一人で飲んでいた紳士が、隣の若い女性に尋ねた。
「すみませんが、今何時でしょうか?」
するとその女性が大きな声で言った。
「まあ、なんて失礼な! 一体どういうおつもりなんですの!?」
バー中の客の目が自分に注がれているのを知って、紳士は真っ赤になってしまった。
そして呟くように言った。
「私はただ、時間を聞いただけなんです」
すると、その女性は前よりもっと大きな声で言った。
「いいかげんにして下さい! 警察を呼びますよ!」
紳士はたまりかねて、自分のグラスを持つと隅のテーブルに移り、
小さくなって、なんとか注目を集めずに外に出る方法はないものかと考えていた。
しばらくすると、さきほどの女性がやってきて、彼の前に座った。
そして、そっと言った。
「さっきは失礼しました。実は私、心理学専攻の学生なんです。
今、衝撃的状況に瀕したときの男性の反応について論文を書いてるんですの」
黙って彼女を見つめていた紳士が、突然彼女に向かって叫んだ。
「なんだって、たった二ドルでやらせるっていうのかい!?」


黒いあざ

眼のまわりに黒いあざをつけてディナーパーティーに出席した男。
わけを聞かれて、暗がりでドアにぶつかったと答えると、みんなが笑った。
「本当のことを言えよ、誰に殴られたんだ?」
「そんなら教えてやろう」
信じようとしない連中に腹を立てた男は、嘘をでっち上げて一杯食わせてやることにした。
「家を出ようとしたら、ズボンの前のボタンが一つとんでるのに気がついた。
そこでお隣へ行って、奥さんに縫い付けてくれるように頼んだ。
奥さんが屈み込んで糸を食い切ろうとしたとき
───ちょうどそこへ旦那が帰って来たのさ」


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